旭川旅行記 2018年の旅 | 私の回想録 

私の回想録 

レミニセンス - 回想録。
過去の記憶を呼び返しながら、
備忘録として残したい。
記事が長いが何とぞご容赦ください。

4月7日土曜朝5時。夜は明け、東の空はしらじらとし始めている。
我家を出て予約しておいたタクシーで金沢文庫駅に向かう。こんな早い時間なのに駅はそれなりに人がいる。
朝帰りの若者が目立つ。タクシーの中も何か酒臭いような感じがした。
5時18分、京急快特に乗り、終着の羽田空港へ乗り換えなしで向かう。京急の誇る2ドア、クロスシートの車両。並んで空いている席が確保できた。車内には結構乗客がいる。
早朝の快速特急は非常に速度が速い。最高速の120キロでビュンビュン走るが広軌のため揺れも少なく快適である。
要塞のような3階建ての京急蒲田駅に到着。空港線への切り替えとなる。
遊園地でもないのに、ここから電車は突然後ろ向きに走り出す。
5時53分。後ろ向きの状態のまま羽田空港国内線ターミナル駅に到着。速足でAの旗があるゲートに向かう。朝食を買って保安チェックを受け、55番搭乗口に向かう。
6時45分発、旭川行きANA4781便。定刻出発。機体はもっともスタンダードなボーイング737。AIR DOとの共同運航便である。羽田上空は晴れていたが、まもなく下は雲に蔽われた。

去年の沖縄旅行の際、貯まったマイルをスカイコインに替えたものがまだ3万円分残っていたが、それが4月末で期限がきて無効になる。もったいないのでそれを予算に組み入れ、週末での旭川周辺の旅を計画した。30年以上前に北海道をレンタカーで回った時、旭川はさっと通過し、美瑛、富良野へ向かったので、実質初めての訪問といえる。
旭川を選んだ理由は、評判の動物園もあるし、天気がよければ大雪連峰の旭岳も、何より夫婦2人分の往復フライト、朝食付きホテル代と合わせて5万円以下と、九州方面と比べ安かったためである。

8時20分の定刻より少し早く到着し、ひとまずバスでJR旭川駅に向かう。回りはまだ残雪で真っ白であり、今日は予報どおり、小雪がしんしんと降っている。積もるほどではないが、やはり北の大地であると感じた。
JR旭川駅が美しく立派であるのに先ず驚かされる。駅に併設された大型のイオンモール、今夜の宿のJRインも同様に新しい建物である。

旭山動物園行の路線バスに乗る。
園の開園は10時半で、閉園は3時半と営業時間は短い。バスは10時過ぎには到着し、入園券を買って並んで待ち、開園と同時に入場。まだ雪は降っている。
  
ペンギン館に向かう。
雪に完全に埋もれた3月中旬まで、ペンギンの散歩という当園きっての人気イベントで有名である。
建物の中は3階建てになっていて、まず筒状のトンネルになった水槽の底から観察。空飛ぶペンギンと言われる場所である。次の階は水槽の横から見学。上は外から見学するメインのプールという構造である。スロープを上手に利用したこの多重構造は、その他の動物の館と共通している。ペンギンの種類はキングペンギン、いわとびペンギン、ジェンツーペンギン、フンボルトペンギンで、共同で住んでいる。一番大きなキングペンギンのみが冬季に散歩する。
  

 

あざらし館へ向かう。
特徴は多層構造の中で、円柱の透明な水槽が上下の連絡水路になっていて、そこをアザラシが通過する様がかなり面白い。アザラシは、アライグマ同様、私としては大して珍しい動物でない。カリフォルニア在住時には非常に身近な動物であり、動物園に展示すること自体に違和感がある。しかし、このように様々な角度で見てみると、なんだか妙に愛くるしい。

 

ほっきょくぐま館へ向かう。
ここも多重構造で、水中へ飛び込む、泳ぎ回るという迫力ある様子が見られるのだが、今日はその1匹がプールの周りをぐるぐると歩き回るだけ、もう1匹は発情期ということで、寝転んで雪の上を回転して体中を掻いているだけだった。
   

 

アムール虎、アムール豹、ヒグマなど極寒地域に住む猛獣コーナーを回る。
雪の中、結構元気が良かった。

     
一方、寒さに弱い動物は建物にこもり、見学はできなかった。

途中空いた小腹を、名物スープカレーで補った。具沢山で結構美味。

その他いろいろな動物の展示があったが、最も面白かったのが、カバである。
百吉と名付けられたカバがとにかく大きい。今まで見たカバの中で最大で、まるで恐竜のようだった。のしのしプールの周りを歩いて回っていた。尻を向けられたら大放糞尿、そして尻尾でビシャビシャと掃除。飛んで逃げないと浴びてしまう。
カバはもう一匹いて、少し小型。多重構造のプールを泳ぎ回っている。

旭山動物園は決して広い動物園ではなく、3時間程度で2周できてしまう。しかし構造とその展示に様々な工夫があり、実に面白い。人気があるはずだ。驚いたことにこの小さな動物園に過去8月に32万人も訪れたことがあったというのである。現在でも上野、東山に続き第3位の入場者数を誇っているそうだ。道理でトイレが考えられないほど随所に設置されてあり、どこも清潔に保たれている。そしてこんなとこまで中国人。動物を上手に活動させ、その行動を見せるという動物園は彼らにとっても珍しく、家族で楽しんでいる。評判が評判を呼んで、わざわざ旭川まで来るのであろう。
動物園は翌週4月9日から4月27日までは夏場に向けての休園となる。今回のようなシーズンオフを狙ったのは正解と思った。

動物園を出て、2時の路線バスで旭川駅方面に帰る。途中のバス停、4条18丁目で降り、旭川ラーメンの名店“ラーメン専門 つるや”を探す。4条19丁目なので少し東へ向かう。旭川市は東西の道が条、南北の道が丁目となる。

 

つるやはすぐに見つかり暖簾をくぐる。3時という時間なのにほとんど客で埋まっている。観光客もいたが、常連が多いと感じた。
私は醤油ラーメン、家内は味噌ラーメンをたのんだ。当然途中で交代するつもりだ。
旭川はラーメンの老舗、有名店も多く、醤油が基本だが味噌も提供される。麺はちぢれ中太麺と見た。
つるやのラーメンスープは、魚介、豚骨、鶏ガラミックスと思われ、濁らない程度に旨い出汁が取られている。
醤油ラーメンは見てのとおり、こってりした味と麺の舌ざわりの上品なラーメンである。味噌ラーメンはキャベツ、もやしなどの野菜が沢山入っていて、スープはピリ辛で味も濃い。どちらも実にいい味と食感が楽しめた。

 

  
近くにJRの駅がある。旭川四条という宗谷本線の駅である。一駅で旭川であり、検索すると次の電車は30分ほどで来る。乗ってみようということになり、駅に向かう。
昔からの古い高架線の駅で、乗客も駅員もいないし、改札もない。
少しすると向かいのホームに名寄(なよろ)行の電車が来た。1両のワンマン運行のディーゼル車である。
ほどなく旭川行もきて、整理券を取って乗車。1両だが、乗客は20人ほど乗っている。
 

 
旭川駅到着。朝は外から見ただけであったが、この旭川駅は2010年に旧駅舎の手前に位置を変えて、高架化され、新築された非常に美しいという言葉が適するほど、構内に木材を多く使った瀟洒な駅舎である。
道中央部に位置する旭川駅は、東西南北に函館本線、宗谷本船、石北本線、富良野線の起点となる。

駅に隣接するイオンモール、そして今夜の宿のJRインは2015年に新築され、ショッピングエリアは地元住民で大いににぎわっている。我々もお茶、酒、つまみ等を購入しておく。
  
JRイン旭川にチェックイン。枕コーナーから自分好みの枕を選べる。
部屋は小さいツインベッドルームだが、機能的な配置で、何より新しいから綺麗。一晩の宿としては十分である。アメニティーも充実している。
温泉ではないが大浴場がある。適度に熱くていい湯で、上部が半分開いた半露天の風呂もある。そこから顔を出すと旭川駅が見える。バス乗り場からは、顔を出しているのが見えているに違いない。

晩の食事は、孤独のグルメ、旭川特別篇で取り上げられた独酌三四郎という居酒屋を予約しておいた。ホテルから歩いて10分とかからないが、2条5丁目は36繁華街からはやや外れている。渋い年代物の居酒屋だ。
松重演じる井之頭五郎が注文した料理を次々とオーダーする。

お通しの大豆を煮たの
塩うに
新子焼き(若鳥の串をささない焼き鳥、旨いたれが絡む)
身欠きにしん焼き
卵焼き
ごはん (新子焼きの残ったたれをまぶす。鰻なし鰻重のご飯のよう)
キノコ汁

飲み物、私は熱燗、家内はとうきび茶。
「女将さん。ごちそうさまでした。美味しかったです。」


 

4月8日(日)充実したバイキングの朝食後、少しゆっくりしてチェックアウト。
天気はだいぶ回復したようだが、まだ雪雲がある。
Aプランの旭岳周遊では何も見えない可能性があるので、Bプランの列車周遊の旅に決める。
北島三郎の風雪流れ旅よろしく、旭川-深川-留萌-滝川-旭川とローカル電車での周遊となる。
みどりの窓口で乗車券と特急券を購入。親切な駅員さんで周遊パスと特急券の組合せが、個々に切符を買うより安いと計算してくれて、特した分は昼の寿司に回すこととしよう。



10時34分旭川発、函館本線ローカル電車でまず深川へ向かう。2両編成だが2両目に人は乗せていない。
雪の大地を西に向かう。今年のこのエリアは豪雪だったようで、畑はまだ真っ白だ。       

11時3分深川着、11時10分発の留萌本線、留萌行の1両ワンマンローカル電車に乗り換える。
留萌本線は、以前に留萌の先の増毛まで伸びていたが、留萌-増毛間はひどい赤字路線だったためごく最近、廃線となった。現在の深川-留萌間も赤字で廃線候補に挙がっているらしい。乗客はというと、車内は半分ほど埋まっていた。途中の石狩沼田駅でご婦人たちが5-6人降りた。それ以外、乗降した客はわずかであった。それぞれの駅舎もほとんどが小屋である。男3人組の騒がしい乗客が乗っていたが、我々と同じ目的の観光客と思われた。その目的は留萌の寿司である。蛇の目寿司という有名な寿司屋があり、彼らは車内から予約、注文までしていた。
車窓は一面の雪。時折降雪もある。人家は少ない。そしてこの線、自動車専用道路と並走していることに気づく。
残念とは思うが、これではよほど観光などに力を入れて乗客を呼ばないと、モータリゼーションに勝てず、廃線の運命となるのではないかと思う。

12時7分、留萌到着。13時半の電車で深川方面に戻るので、1時間半の間に観光と食事を取らねばならない。
駅前にタクシーが待っていたのでこれを利用する。

「岬経由で、蛇の目寿司までお願いできますか?」
「はい、どうそ」
岬とは留萌の唯一と言っていい観光地、黄金(おうごん)岬(みさき)である。日没が美しいということだ。
「今日も、黄金岬は風が強いよ」
「いやー、今年は雪がすごく降った。何度もホワイトアウトに会った。」
「留萌は何にもないけど、増毛までいけば海産物が手に入るよ。」
などと親切に解説してくれた。
後で知ったことなのだが、増毛の海鮮料理は、とんでもなく贅沢な盛りで新鮮なエビ、カニを中心としたどんぶりや寿司を出してくれるそうだ。



黄金岬に向かう海沿いの道路のフェンスは、あちこちなくなっていた。強風で飛ばされたらしい。
黄金岬では、何枚か写真を撮って、言われた通り風が強いので早々に車に引き上げた。
蛇の目寿司に着く。幸い外まで並んでない。季節になると行列ができるということである。
タクシーに料金+を払って謝意を述べる。店に入るとすんなり座敷席に案内された。
ここの名物は、圧巻の21貫、蛇の目スペシャル、吸い物まで付いて2千5百円。そんな量を1人で食べられる歳ではないので、2人でシェアさせてもらう。その場合、「もう1品お願いします。」という店からのリクエストがあったので、
「では、イカの塩辛とボタンエビの刺身1つ、いや2つ。それから熱燗1合」と注文した。
ボタンエビはかなり大きく、青い卵が上手に取り出されていた。頭を接続させれば20センチ以上はあると思われる大型の海老である。留萌は日本海に面しているが、ボタンエビは三陸沖など太平洋の海老ではないかと思い、調べてみたところ、ボタンエビにはいくつかの類似種があって、トヤマエビ、高山エビ、タラバエビと呼ばれるもので、留萌、増毛管内でよく取れる高級品であるということだ。しかしここでは1匹五百円と安い。

 

ボタンエビ 留萌水産センターのページから


蛇の目スペシャルには、あわび、ウニ、中トロ、蟹、赤貝など高額なネタも入っていて、よくこの値段で提供できるものだと感心した。



充実のランチの後、歩いて留萌駅に向かう。
日曜日ということもあるのか、中心地にもかかわらず、人がいない。店も閉まっている。
余裕で1時30分発の深川行ローカル電車を待っていたら、行きに同じ電車に乗っていた男3人組が息を切らしてホームに入ってきた。行きの車内での電話が聞こえた内容で、蛇の目寿司でたらふく食べたに違いない。予約注文していなければ間に合わなかったであろう。帰りの車内でも大きな声で楽しそうに盛り上がっていた。

再びの深川駅を経由して、滝川に向かう。
深川は空知管内で、北海道産の米穀流通の中心地ということで、産業があるようだ。
14時49分発、札幌行特急カムイに乗車。自由席はそれなりに乗車している。

10分ほどで滝川駅到着。
いったん駅を降りて、駅周辺を歩いてみる。ここも人が少ない。アーケード付の商店街もあるようだが、寂しい感じである。
特にすることないので駅に戻り、予定していた15時52分の特急より1本早い、22分発の旭川行特急ライラックに間に合うので、さっと乗車した。特急カムイとは色違いで、型は同じと思われる。

30分少々で旭川駅到着。空港行きバスは17時41分なので1時間15分の余裕がある。
イオンモールにはスターバックスがある。コーヒーフラペチーノをシェアし一息つく。

旭川駅近くにらーめん山頭火の本店がある。山頭火は積極的に海外展開していて、アメリカに駐在している時も、日系スーパーミツワのフードモールに山頭火があって、よく食べたものだ。今ロサンゼルスエリアはラーメン店が増えてレベルは上がったが、15年前はまともなラーメンを提供する店が少なく、山頭火は先駆者で貴重な存在だった。
さて本場の味はどうか?夕食にはちょっと早いが、行ってみることにする。実は山頭火は旭川ラーメンとは知らず、九州ラーメンかと思っていた。
塩ラーメンが山頭火の代表メニューで、しっかりした喉越しの麺と、うまみととろみのある白濁スープはさすが本場と思った。アメリカの山頭火ラーメンも同じ器、見た目も同じ、小梅も入っているが、アメリカでは麺が粉っぽく、コクの弱いスープで、本物は明らかに違っていた。もうアメリカで山頭火ラーメンは食べることはないので、いい記念になったような感じがする。旭川ラーメンは幅が広い。


 
 

駅と空港で土産を買う。旭川お決まりの"き花"。”じゃがポックル”。ちょっと探し回って、”ほっくコーン”。

19時35分、ANA4788便で旭川を後にする。2日間、週末の旭川の旅。結構楽しめた。