朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~ -12ページ目

朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

災害は他人ごとではありません。

被害規模が大きいので、被災地以外にも日本全体に大きな影響が出ます。

2038年に南海トラフ巨大地震が起こることが予想されています。

しかしながら、「誰も考えないし、誰も責任を取らない」日本だと。

「日本人が将来の危機に対して本気で対策をとろうとしないのは、嫌いなことを考えようとしないから」

養老孟司さんから心から心配しているメッセージをひしひしと受け取りました。

 

江戸幕府が大政奉還する前や、平安時代の貴族政治に終わりをつげ平家による武家政治へと変わる直前には、大きな地震や台風などの自然災害があったそうです。

154P 歴史の大転換期を迎える可能性は十分ある

アトキンソン まさに歴史の転換期に天変地異があり、といったところでしょうか。世界に目を転じても、隆盛を極めた国が、巨大地震や津波、洪水、火山の噴火などの自然災害によって衰退していった例はいくらでもあります。

養老 そうした歴史に鑑みても、日本が南海トラフ、あるいはそれに前後して発生するかもしれない首都直下、富士山噴火、台風などの「複合災害」を経て、大転換期を迎える可能性は十分に考えられますね。

 

 

 <目次>

まえがき

第一章 2038年、南海トラフ地震が起こる 尾池和夫×養老孟司(高知の縁、まず「地球を知る」ことが大切ほか)

第二章 被災のシミュレーションと復興ビジョン 廣井悠×養老孟司(南海トラフで想定される被害、建物の倒壊より、買い控えのほうが企業倒産につながる?ほか)

第三章 巨大地震後の日本経済 デービッド・アトキンソン×養老孟司(なぜ日本から離れなかったのか、日本には「事前対応」という発想がない?ほか)

第四章 復興後、自然環境はどう変化するのか 永幡嘉之×養老孟司(虫を通して四国の成り立ちが見える、虫が減っている理由は、人間にはわからないほか)

 

 

養老孟司さん

1937年、鎌倉市生まれ。東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。95年、東京大学医学部教授を退官し、同大学名誉教授に。89年、『からだの見方』(筑摩書房)でサントリー学芸賞を受賞

「アマゾネス」千葉県警刑事部捜査一課の高頭冴子シリーズ。

前回の新疆ウィグル自治区の民族浄化問題では、大きく活躍し立ち回った高頭が主人公だ。

高頭班の郡山が親しくしていた隣人の小湊母娘が銃殺遺体となって発見された。横田基地所属の在日米軍人曹長スチュアート・ヒギンスが殺人事件の容疑者にあがった。しかし日米地位協定が壁として大きく立ちはだかり捜査がとても難航する。

しかし、高頭と郡山は、機転を利かしたり物凄い壁を乗り越える強い勇気と抜群の行動力があった。現実にはありえないかもしれない。ハチャメチャなかなり奇抜で強引な手段で相手側に突入していった。

中山七里さんには、もう当たり前となったどんでん返し。終わりにはちゃんと用意されていた。

もう一気読み。「そうだったのか!」

 

 <目次>

一 仇讐

二 治外

三 協定

四 乱入

五 武闘

 

中山七里さん

1961年、岐阜県生まれ。2009年、『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年、デビュー

東野圭吾さんの一風変わった上質なミステリだった。

この十字屋敷は、東西南北に棟が伸びた十字の形をしている。北欧風の二階建て竹宮家の邸宅。初めから不穏な空気が漂っていた。

バルコニーから謎の転落死を遂げた主人・竹宮頼子の四十九日法要の夜、屋敷内でその夫の宗彦と秘書三田理恵子の2人が殺される事件が発生する。

外部の人物!?いや屋敷内にいたほかの親族や家政婦の鈴江!?に疑いの目がかけられる。

 

「おもな登場人物」が目次の次に書かれてあり、登場人物が多く複雑な人間関係が推測された。

 

主人公の竹宮水穂の視点と現場に置かれた悲劇を呼ぶといわれるピエロ人形の独白とを絡めて、不思議なピエロを追う人形師・悟浄真之介が登場することによって物語がさらに展開していく。

 

よくこんなことを考えるものだと感心してしまうトリックが後半に明かされた。

東野圭吾さんの一風変わった上質なミステリだった。

 

<目次>

第一章 車椅子

第二章 音楽室

第三章 嵌絵図(ジグソーパズル)

第四章 人形師

第五章 遊歩道

第六章 肖像画

解説 高橋克彦

 

東野圭吾さん

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川文庫)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP文芸文庫)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』(講談社文庫)で第48回吉川英治文学賞、2019年、出版文化への貢献度の高さで第1回野間出版文化賞を受賞

少子超高齢社会。若者の働き手が少なくなってきています。数十年前からいまの状況となることはわかっていたことでしょう。流れはもう止めることはできません。今や45歳以上の就労者は全体の6割を超えています。この比率は今後も上昇していくでしょう。

60歳過ぎのシニアとなっても、定年となる年になっても、必然的にできるだけ長く働かなければ、世の中の経済社会を循環させていくことができません。

 

高齢者雇用安定法により、すべての企業に65歳までの雇用確保が義務が義務付けられています。また70歳までの雇用についても努力義務となっています。

こういった状況のなか、ミドルからシニアにかけてどう活動していくべきか!一定のヒントが与えられました。年を重ねても、柔軟性や学習意欲、主体性を持っていくことの重要性を示していました。

 

40代から60代以降にかけずっと働き続けて欲しい人と思われる人の特長や活躍し続けられる人材になるための大切なポイントがありました。

(ミドルやシニアでなくても、こうありたいという目標になるのではないかな)

・人は見かけが9割、表情・態度・服装に気を遣う(清潔感、他者配慮、かわいがられ力)

・ネガティブワードを吐かない、年齢相応の器の大きさを持つ(コミュニケーション力、人の話を受け入れる、きちんとしたやりとりが行える)

・仕事では口だけを動かすのではなく手を動かす(問題発見能力、作業を分担する、貢献する)

・真摯に学び続けることができる(インプット・アウトプットができる、環境変化に対応できる)

・若手を育成できる(世代継承、背中を見せる、立場を柔軟に変えられる)

・新しいことに恐れずチャレンジできる(まずは行動に出る、視野を広げる)

 

 

 <目次>

まえがき

第1章 ミドル・シニアの働き方の問題が解決されないのはなぜか(定年が視野に入るころ、「裏切られた」という思いを抱く多くの人たち、「妖精さん」は働く意欲が高いが、変わらぬ人事制度 ほか)

第2章 “なぜか働き続けてほしい人”の10の理由(ミドル・シニアこそ「人は見かけが9割」―表情・態度・服装に気を遣う、クールビズは実はアウト、経験に頼ったカテゴライズはせず、フラットな意識を持っている ほか)

第3章 “働き続けてほしい人”は組織の中で増やせるのか(健全な焦燥感が持てる職場環境の提供、キャリア研修の効果の差、必要なのはプロとしてのアウトプット ほか)

第4章 超高齢社会の日本に求められること(未だに社会に蔓延する様々な固定的価値観の打破、大企業こそ50歳以上の中途採用を、中小企業は若者信仰を捨てる ほか)

謝辞

 

 

【No1889】定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図 宮島忠文 小島明子 日本経済新聞出版社(2025/04)

労働条件通知書が交付されない!

社会保険に入っていない!

残業代が支給されない!

本来の支給日に給料が支払われない!……等々。

これらも~うありえません。

これらは「ヤバい」会社にあった実例です。

いずれも労働基準法違反の恐れがあります。

サラリーマンとしての常識は、この本を読んで身につけておくべき。

知らないと、とても嫌な想いをしてしまい、貴重な時間をロスしてしまう。

 

退職代行サービス会社「モームリ」に退職代行を依頼してきた利用者の実際の退職理由をもとにして、その会社がヤバい会社なのか、そうではないのか、ヤバい会社ならどういう理由でヤバいのかを(事例を基にして)解説しています。

 

退職理由事例には、会社の「ヤバ度」が五つ星で採点されていました。

いまの会社にいてこれらと似たようなケースの職場では、間違いなくヤバい会社だとわかり、また退職を前提に考えて行動すべきなのかがわかりやすく書かれてありました。

 

いまは退職・転職することはさほど珍しいことではなくなっています。

会社の環境や自分が働く意味を見つめ直して、疑問や違和感を持ったならば臨機応変に対処することが必要です。

問題は自力で解決できればよいのですが、そうできない場合にはひとりだけでは悩まずに誰か専門家に頼るべきです。

勇気をもって労働基準監督署や専門家の社会保険労務士などに相談することができれば、結果的に嫌な想いをしなくなる可能性が増えてくると思います。

 

 

 <目次>

はじめに

第1章 面接時とのギャップ・契約・給与関係(労働条件通知書等の書類がない、社会保険に入っていない ほか)

第2章 労働環境・職場の雰囲気関係(残業申請がしづらい、残業を強要される ほか)

第3章 対上司・人間関係(セクハラをされる、アルハラをされる ほか)

第4章 仕事への不安・働き方・メンタル関係(休日も仕事の連絡が来る、上司がコロコロ替わる・異動になる ほか)

あとがき

 

 

大山真司さん

転職アドバイザー。1989年生まれ、岡山県出身。大学卒業後、東証一部上場の大手サービス業に十年間従事。2022年11月に株式会社アルバトロスに入社し、転職支援事業の立ち上げを実施。求職者がマッチする企業に出会うためのサポートに尽力している

 

 

【No1888】今の会社ヤバいかも?3万人の「もう無理!」でわかる会社の見分け方 退職代行モームリ 大山真司 小学館(2025/05)

↓このとおり!

何歳から始めても、勉強は人生を彩ってくれる。勉強を始めるのに、遅すぎることは絶対ない。勉強は学んだ知識が役立つだけでなく、人生そのものを彩ってくれる。

 

何気なく行なっていることが明確化され言語化されて整理されていました。

勉強法や資格取得法としての必要な内容や疑問を解消できるような事例が書かれていて手元に置いておいていつも参照したくなるような素晴らしい本でした。

 

著者さんが目安としているインプットとアウトプットの比率が3割と7割というのに賛同します。

テキストを読む(インプット)→問題を解く(アウトプット)だけでなく、

間違えたところや怪しい箇所を再びテキストを見たり問題を解いたりすることを何度も重ねることが必要。×だったところを〇にしていく作業です。

 

著者さん自身が独学を成功しているからこそわかるコツだと思いました。

14P 大人の独学を成功させるための5つのコツ

独学を継続し成果を出すための根幹となる5つの要素。

・勉強時間を作り出す 忙しい社会人が時間を確保するために工夫する。スケジュールをブロックする、周りに宣言する、隙間時間を見つけるなど。

・自分の取扱説明書を持つ 自身の特性(モチベーションの源泉、集中できる環境・時間等)を理解する。

・効率的な勉強法を選ぶ なるべく少ない手間と時間で学習効果を得る。

・全体像を捉えてから勉強を始める 目標(試験内容や範囲等)を明確にして始める。

・徹底的に模倣する 成功者の方法や推奨される教材を参考にする。

そのほかには、目的を明確にする、目標と期限を決める、勉強道具を用意するなど。

 

このように勉強を実際にすることができたら合格に近づけるものだと経験上からそう思いました。

86P 資格・検定試験の勉強法 情報収集で範囲・内容・傾向などの全体像を把握→教材の選定(合格者のおすすめ教材など)→計画を立てる(勉強時間)→参考書でインプット、問題集でアウトプット(部分完成法がおすすめ)→再インプットとアウトプット(〇×濾過勉強法)→過去問演習の実施(本番環境、解答・解説を読む)→直前暗記リストの作成(苦手や重要点を抽出)

 

【はじめにより】

本書では、独学で(=基本的にはスクールや個別レッスン等を利用せずに自力で)なにかを学びたいと考えている大人の方に向けて、勉強時間を確保するタイムマネジメント術や大人ならではの記憶のコツ、やる気や集中力のコントロール法などを楽しくご紹介していきます。

 

 <目次>

はじめに 大人ライフは「勉強」でどんどん楽しくなる

第1章 大人の独学を楽しもう

第2章 大人のためのタイムマネジメント術

第3章 大人のための効率勉強法

第4章 資格・検定試験の勉強法

第5章 仕事の勉強法

第6章 趣味の勉強法

第7章 モチベーション&集中力アップ術

第8章 毎日を充実させる手帳術&読書術

おわりに 何歳から始めても、勉強は人生を彩ってくれる

 

【No1887】大人のごきげん独学術 自分のペースで楽しく続く!みおりん KADOKAWA(2025/03)

養老孟司さんが壇上に現れます。

会場の参加者が養老さんのそのものの存在に対して引き込まれてしまうような大きな力を感じました。朴訥として静かに語る口調に乗って、ゆっくりとかみ砕くような言葉のなかには、静かな闘志が漲っていました。

 

著書「日本が心配」に詳細が書かれてあります。

「米などの食料自給のことや、天災等の地震のこと、国民への年金も。減反するとどうなるか!いまの足らなくなるこういう状況は、じつは当初からわかっていたはずだと。

いまは当たり前は当たり前ではない。昔は貧乏だったがいまは贅沢になった。

天災が起きる前にいまできることをみんなで考えなくてはいけない。

前々からずっとこうなることがわかっている。

みんな知らんふりをしているだけ。

頭で考えたくないだけ。

地震などの天災が起こったのち、江戸幕府を終わらせ明治維新を起こしたり、大正時代デモクラシーを終わらせて軍国主義に突き進んだことがあった。

南海トラフのよる大きな地震による天災は、太平洋側はもちろんのこと、日本の国全体に大きな影響を与えることを、これまでの歴史からしっかりと日本人は学ぶべきだ」

 

養老さんは、人と人とはなぜ分かり合えないのか!の本質を突いた「バカの壁」の大ヒット作があるベストセラー作家です。

これまで10冊ほどの本を読んできました。初期に読んだ本のなかには、表面的に理解することが難しい時もあってすこし立ち止まりながら、ここはどういう意味なのか考え込むことがありました。

養老さんに会えるのは、実に嬉しくて楽しかったです。彼と同じ空間でいて同じ時間を共有できたことは、客観的に見てみるとまこと幸せです。直接声を聴いて学べるこういう機会はなかなかありません。これからも本を読んでいきたい欲望が増してきました。

 

養老さんが発することばには、人生を達観した哲学的な要素があるので理解しにくい部分もあるのかと思います。また、彼の言葉に物凄く重い含蓄があります。、虫の収集体験に裏付けられた人生を楽しむヒントのようなものがあると感じました。

 

おわりに、「人生の壁」を読んだ時の感想がこうでした。

「養老孟司さんのような人生の大先輩からぼくら後輩たちに対して、人生経験を踏まえた苦言をたくさん呈してほしい。ぼくらは僕らのためにちゃんと聞く耳を持っていたい。養老さんの知恵とか信念、価値観、性格などのなかに、心に刺さることがありました。アドバイスのような中には、いわゆる名言とか格言のような含蓄がある素晴らしい言葉がいっぱいありました」

交番や駐在所が舞台でありすべての事件は警察にかかわるものであった。

警察を定年退職し非常勤の交番相談員として働いている初老の警察OG百目鬼 巴。

彼女には県警本部の刑事部長も頭があがらない。科学捜査の知識も豊富に有している。未解決事件の捜査にあたってほしいと熱烈なお呼びが掛かっている……。

彼女の鮮やかな手腕は気持ちいいものだった。

彼女の推理により明らかになる真実には、ゾワッとかなり背筋に寒気がした。

糾弾することはなく真相を明かすだけで、その先どうするのかは本人の判断に委ねるところが始末が悪く、警察官の闇と罪に関わる事件ばかりでなんとも後味が悪い感じがした。

こう読者に感じさせるところは読ませるためのうまい手法でないかと思う。

 

 <目次>

裏庭のある交番

俊刻の魔

曲がった残効

冬の刻印

嚙みついた沼

土中の座標

本の表紙のとおり、足を延ばすことができないくらいに、あたり一面に生活に関係したゴミが散乱している。この部屋で殺人事件が起こった。

鑑定人の氏家京太郎はもちろん、特殊清掃会社の五百旗頭、元警視庁捜査一課刑事で現在探偵の鳥海秋彦などけっこう面白いキャラが出てくる。

氏家らが、容疑者のための証拠集めに東奔西走する。

今回の氏家シリーズ、止まらずにもう一気読み。

おわりの中山さんのドンデン返しはもうお見事。

なんでこうなるの!?

犯行が思い浮かばなかった。

中山さんはこちら側をけっして裏切らない作家さんだ。

 

 

異臭のするアパートで、天才ゲームクリエイターの九十九が腐乱死体となって見つかった。部屋には九十九が何者かに殺された形跡が残っており、現場に残っていた体液と一致した容疑者の御笠が逮捕される。

しかし御笠は犯行の否認、一度も九十九の家には足を踏み入れていないと主張する。弁護士は民間の科学捜査鑑定所〈氏家鑑定センター〉に再鑑定の依頼をするが、依頼を受けた室長の氏家は、容疑者の名前を見て動揺を隠せなかった。

御笠は氏家のいちばん親しい級友だった。

 

 

 <目次>

一 隠された死体

二 隠された動機

三 隠された過去

四 隠された証拠

五 隠された策謀

 

中山七里さん

1961年岐阜県生まれ。2009年『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。音楽から社会問題、法医学まで幅広いジャンルのミステリーを手がけ、多くの読者の支持を得ている

北海道の空の景色は、どんなのだろうか?

くっきりとした青ではなく、白でも黒でもないグレーだと思う。

ぼくは、桜木紫乃さんの落ち着いた書きぶりも、独特の情感あふれる世界感も、紙面上に流れるグレー的な空気感も好きだ。

 

「兎に角」

 

二葉は、今日のふたりのように当人同士が節目と決めたところ写す、とっておきの一枚の手伝いをしたいという。

「写真をさ、プリントしたら残るじゃない。データもいいけど、やっぱり不意に目に入ってきたり、思わぬところで開いたり。額に入ってもいいし、本棚にそっと差し込まれるサイズで、時々見てしまうっていうのでもいいと思うのね」

 

「グレーでいいんじゃない」

 

楽しめばいいじゃない。突き詰めんなよ。グレーでいいじゃない―

 

「「わたしね、物心ついてから、ずっと白と黒の鍵盤しか見てこなかったの。何でも、この組み合わせで、美しく奏でられると信じてた。そんな私が、唯一息子のことだけは、グレーでいいと思うようになりました。人の一生を白と黒で分けるのは難しい。あの子がピアノを捨てなかったことが、すべてです。私は自分とあのこの生きた時間に満足します。順番は逆になりましたけど、そう遠くないところでまた会えると思うの。皆さん、どうか、あの子のことを忘れていてやってくださいな」

ひとしきり礼を言って、最後にピアノにひとつキスをしてママはマツに手をひかれながら店を出ていった。

 

 

 

 <目次>

兎に角 

スターダスト

ひも  

グレーでいいじゃない 

らっきょうとクロッカス  

情熱

 

 

桜木紫乃さん

1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞受賞。07年同作を収めた『氷平線』で単行本デビュー。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で第149回直木賞、20年『家族じまい』で第15回中央公論文芸賞を受賞。ほかに『ブルース』『裸の華』『緋の河』『ヒロイン』『谷から来た女』『青い絵本』『人生劇場』など著書多数。