日常と非日常、一般人と犯罪者、そして生と死の境界線という意味か!
「東北関東大震災」、「3・11大震災」、「東北沖大地震」、「東北・関東大地震」などとメディアによって呼び方が変遷してきた大震災の名前は、いつの間にか「東日本大震災」と落ち着いていた。
海岸線からの津波で町全体が流されていく様子を、映画のようなテレビからの衝撃の映像を思い出す。
あの日の激流のなかにたくさんの生命があったと思うと辛い気持ちになる。
さきほどの報道などを見ると、被災地に残された傷跡は、10年経って復興されてきたとはいえいまだ癒えてはいないと思った。
大切な人を失った人の心は、一生涯癒えることはない。
ぼくらは、あの災害をけっして忘れてはいけない。
尊い命と引き換えにいただいた災害の教訓を、人や小説、録画等々でずっと後世まで引き継いでいかねば。
気仙沼市の海岸で女性の変死体が発見された。
遺体の遺留品の身分証から、宮城県警捜査一課の笘篠誠一郎の妻だったことがわかった。
笘篠の妻は7年前の東日本大震災で津波によって流されて行方不明のままだった。
遺体の様子からは、その女性は、その日の前夜まで生きていたのだ。
あの大震災後に、彼の妻はなぜ笘篠のもとに帰ってこなかったのか。
笘篠は、さまざまな疑問を胸に秘め身元確認のために現場へ急行した。
しかしそこで彼が目にしたのは、全くの別人の遺体であった。
妻の身元が騙られて誰かによって、戸籍や住民票などの彼女の身元が流出していた。
笘篠は、やり場のない怒りを抱えて捜査を継続していくのだ。
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笘篠は人生に勝ち負けもないと思っている。幸福の度合いを測る物差しは様々で人によって異なる。生活の上辺を見ただけで他人の人生を評価するなどあまりに傲慢だ。
百歩譲って人生の価値を決める基準があるとすれば、それは懸命に生きたかそうでないかの違いではないか。
<目次>
一 生者と死者
二 残された者と消えた者
三 売る者と買う者
四 孤高と群棲
五 追われる者と追われない者
1961年生まれ。岐阜県出身。「さよならドビュッシー」で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、作家デビュー。ほかの著書に「テロリストの家」「復讐の協奏曲」など著書多数









