※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#694  ある絶望の女

 

 

 

(本放送)・・・1975年2月26日

(再放送)・・・2019年8月8日

(脚本)・・・佐々木武観

(監督)・・・鈴木敏郎

協力)・・・無し

(協賛)・・・北海道テレビ放送、近海郵船株式会社、阿寒バス株式会社、

       ホテル・阿寒湖荘、釧路空港・エメラルド・カントリークラブ

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、田中係長(山田禅二)、石原刑事(吉田豊明)、

水木刑事(水木襄)、松木部長刑事(早川雄三)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

谺のぶ子、木村豊幸、三夏伸、大林隆介、千歩憲生、本多洋子、山下勝也、

松村彦二郎、瀬良明、夏海千佳子、大堀早苗、明石潮

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

暴力で娘を蹂躙した男が殺された。

その殺人容疑者となり、故郷の阿寒湖畔へ逃げ帰った娘・・・。

彼女を追い、身分を隠して話しかける松木刑事。

娘の暗い過去を知り、不安感をいだいている。

そこへ、一組の男女が現われた。

大金持ちの未亡人と、その愛人らしき男は、

何ゆえか、娘の行く先々に姿を見せる。

刑事たちの動きを牽制しながら、

娘に接近していく彼らの目的は何か?

すべてを失った女が辿る、死への道!

次回、特捜隊、「ある絶望の女」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

#689 復讐の構図 、#694  ある絶望の女 は、ロケ地・脚本・監督・キャスティングから2本撮りしたものと考えられる。

・近海郵船のまりも号についても、#689 復讐の構図 を参照のこと。

・ホテル山浦は、2000年1月1日に阿寒の森鶴雅リゾート花ゆう香として、再オープンしている。

・ホテル阿寒湖荘は建て替えられたようすであるが、現在も同地で営業している。

・劇中でのバスガイドの歌は、アイヌのわらべ唄「ピリカピリカ」であり、「ピリカ」は「美しい」を意味する言葉。お米の「ゆめぴりか」、テレビ版「燃えよ剣」の「#25 シノピリカ」など、いくつか例がみられる。

 

 

(視聴録)

・・・開始約20分半ばまで

 

有明埠頭から釧路港へと向かうフェリー・まりも号、甲板に立ち海を見つめる若い娘は、みやぎかず子(谺のぶ子)といい、松木・石原が監視している。

話は数日前に遡る。ラブホテル一室の浴槽で、内藤えいじ(三夏伸)が部屋にある果物ナイフで背中を刺され、死体となって発見された。死亡時刻は前日の午後11時30分前後、内藤がひとりの娘を連れ込んだのを守衛(瀬良明)が目撃しており、その娘がかず子であった。三船班の訊問に、かず子は内藤の入浴中に逃げ出したというのだが、その捜査の最中、かず子は勤務先の喫茶室・レィーンボゥを辞め、故郷の北海道に向かったことから、松木・石原が尾行・監視を行なっていたのである。

 

一方、関根・水木はレィーンボゥを訪ね、マダム・つやま弘枝(夏海千佳子)に聞きこむ。内藤はかず子目当てで店に来ていたことを語るが、かず子の犯行については否定的であった。特捜隊本部に戻った関根は、これらから、かず子の殺人容疑に決定的なものが見当たらないと嘆くが、田中係長は現場の湯呑茶碗の指紋と、かず子がまりも号乗船申込書に残した指紋とが一致したことからかず子犯行説を唱え、水木も同意する。しかし、三船主任は刺された傷跡から女ひとりの犯行とは思えず、共犯者の認識を持つのだった。

 

まりも号では、ふとしたことから裕福な未亡人(後に土屋奈津子と判明、演じるのは大堀早苗)を交え、かず子・松木・石原の4人が知り合うことになるが、かず子は言葉少なに何かを考えているようだった。釧路港到着後、松木は引き続き、かず子を監視。石原は、空路で釧路空港に着いた三船主任・関根・水木と合流、釧路署へと向かうのだが、その様子を見ているサングラス男(後に岩本しんきちと判明、演じるのは木村豊幸)には気づかないようであった。

 

その後、釧路署で所轄署刑事(千歩憲生)が加わった三船班本隊は、バスで阿寒湖畔へ向かうかず子、それをタクシーで先回りして近づこうとする松木を、追跡することになる。しかし、追跡中に追い抜く車を運転していたのが奈津子と気づいた石原は、まりも号からの経緯を三船主任に報告。そこで、三船主任・石原は奈津子のあとをつけ、関根・水木・所轄署刑事はかず子・松木を引き続き追跡することにする。

 

そして、タクシーで先回りできた松木は、バスに乗り込み、かず子に偶然を装い再度近づくことに成功するが、バスの中には件の岩本も乗車していた・・・。

 

 

ストーリーは、その後阿寒湖畔のかず子の実家で、かず子の父(明石潮)、妹・さよ子(本多洋子)、恋人・五郎(大林隆介)、そしてかず子が心配で東京から駆けつけた弘枝が揃い、かず子の話をしています。が、外でかず子・松木が聞いているところ、東京で嫌な思いをしたかず子は中に入っていけず、松木もそれを見ているだけしかできない哀しみの場面で、主要登場人物が勢揃いします。

 

 

ここまで開始約26分前半、流れ流れて阿寒湖畔に辿り着くまでの展開はスムーズであり、あっという間に時間が経つところは#689 復讐の構図 (以下、前作と略称)よりも上出来であります。上記のかず子の故郷の家族・恋人に至る場面も、路線バスでバスガイド(未詳)がそこまで過剰サービスするかの疑問はさて置き、バスガイトの歌「ピリカピリカ」が流れる中、家族・恋人を回想、現実の世界で実家を訪ねる弘枝、そして彼らの話を立ち聞きする松木・かず子の流れるような映像表現はお見事。

前作・佐々木武観脚本の、前半飛ばし・後半バタバタの印象から、やや不安になるのですが、後半に内藤刺殺事件に隠れたもうひとつの事件を忍ばせておくなど、後半も見どころ充分。

鈴木敏郎監督も、まりも号の場面をストーリーに絡めるよう、前作よりも場面を豊富に撮るスタイル。さらに、前作では不自然であり意味の無さそうなエロチック・チラリズムな場面を、当作ではごく自然に大堀早苗・谺のぶ子に演じさせるなど、演出にも違いを見せています。

 

ここで思うのが、天野利彦監督の奈良・和歌山ロケ、1作目#684 十津川絶唱 、2作目#693 情熱の海 、で2作目の方が優れていたということ。鈴木敏郎監督もなぜか後の作品(当作)のほうが出来が良いのです。同じ監督さんで、2作を並行撮影していることは明らかなのですが、自分で推測ながら指摘した

>乱暴ですが1作を捨て、あと1作を優れた作品に仕上げるという選択

を、鈴木敏郎監督もした可能性も捨てきれません。

こう考えるのは、かつての地方ロケ2作以上の作品溜め撮りでは、複数の監督さんに任せることが多かったのですが、近作では同じ監督さんに任せるのが目立つのです。ですので、「選択」は無くとも「集中力分散」が起こり、出来不出来の差が大きくなったのでは?とも・・・。

 

それでは、当作が粗も無い作品かというと、やはりあるもので、典型的なのは序盤の守衛への聞きこみでしょう。この時点では、内藤から逃げ出したのはかず子という認識は無いはずなのに、かず子の顔写真を見せての聞きこみというのがわかりにくいところです。また、関根が弘枝に「店を辞めた弘枝」と、フェイント気味に聞きこみをする理由もわかりにくい。ストーリー展開に直接的影響が無いから、気にはなりにくいものの、こういうところが佐々木武観脚本であり、構成力がやや劣る脚本のまま演出するのが鈴木敏郎監督、という印象がつくのです。

しかし、それでも当作は面白く観賞できる作品と評価できます。鈴木敏郎監督としては、キャスティングに恵まれた#661 ある女刑事の逆襲 、#633 サソリ座の女 、はもちろん、松木部長刑事(あるいは夫人)を前面に出した#589 浅間山慕情 以来の快作のように感じます。

 

そして、直前作#693 情熱の海 、で触れたとおり、当作は松木部長刑事主役譚でありながら、石原刑事活躍譚にもなっているところが特徴。まりも号でのダンス、三船主任へのいつも以上の掛け合いなど、良い味を出して松木をフォローする印象が強い。石原を演じる吉田豊明は、特捜隊の放送終了後、刑事ドラマのレギュラーになったという情報は無く、後継ともいえる「特捜最前線」へのゲスト出演もありません。特捜隊で石原刑事を演じたことを矜持としたのかどうか、消息がわかれば、東映chで特捜隊特集が組まれたときに出演していただきたいひとりでもあります。

 

また、当作でサングラス男の岩本を演じた木村豊幸ですが、自分が見始めた【第3回再放送】以降】特捜隊では、「危ない」役柄を演じているのが印象に残ります。#506 銭に生きる女 、#545 汚れた太陽 など観ると、かつて「青春とはなんだ!」で演じた学生姿の風貌は皆無ですが、当作では大人の俳優として無難に演じています。近年では、特撮に出演していた経歴もあり、上映会に顔を出していたようです(特撮好み・ウルトラ大全集「ウルトラマンタロウ」上映会木村豊幸さんトークライブ・2017年12月18日の記事参照)。

しかし、今年になって、ニュースソースも無くwikiに「1948年1月31日-2019年4月3日」といきなりの逝去記載。こういうのがwikiのわからないところで、あれだけ特捜隊の放送リストを削除しまくるのに、ニュースソースが一切無し(身内の方の記載云々も無し)で根拠の無い不確定な逝去はそのままというのも変な話(これは、谷山部長刑事演じる和崎俊哉の記事も同様)です。気になったので、どうかガセ記事であってほしいと、少し触れさせていただいた次第です。

もし、正しい情報をお持ちでいる方がいらっしゃれば、wikiの訂正、あるいはこの拙ブログで教えていただければ幸いです。

 

(追加、2019.8.17)

かず子を演じた谺(コダマ)のぶ子を検索したところ、舞台女優の内山寛子であることがわかりました(ちょっと過激なブログ、2010年10月12日の記事参照)。

>NHK教育TV「学校の人家の人」のお姉さん役を8年やり

とあり、該当番組は見当たりませんが、これがきっかけとなったのかNHK「中学生日記」の風間先生を演じた男優・湯浅実さん(残念ながら2019年8月3日逝去)と結婚されたようです。

ツイッターもやっており、アップされた写真を見ると、特捜隊出演時の面影は残っていますが、2013年2月13日のツイートを最後に更新されていません。