※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#633  サソリ座の女】

 

(本放送)1973年12月19日

(再放送)2016年12月15日

(脚本)佐々木武観

(監督)鈴木敏郎

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)高倉班

松木部長刑事(早川雄三)、田中係長(山田禅二)、日高刑事(日高吾郎)、

片桐刑事(笠達也)、鷲見刑事(柴田昌宏)、笠原刑事(伊達正三郎)、

高倉主任(里見浩太朗)

 

(出演者)

藤本三重子、高野ひろみ、久野聖四郎、佐藤明美、遠藤孝子、晴海勇三、

北川陽一郎、市田亜矢、泉三枝子、内田嵐、清水俊男、松下昌司、清水武、

湊俊一、鮎川浩、手塚しげお、花上晃、日恵野滉、小林勝彦

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

サソリ座の女を愛した男は、必ず不幸に見舞われる。

西和(セイワ)貿易渉外課長・前島和彦が、

奥多摩の河原で転落死体となって発見される。

彼は、クラブ・エリーゼのマダム・柳子(リュウコ)の、

愛人のひとりであった。

次から次(へ)と、貪欲に男を喰って、

自らの欲望の城を広げていく、サソリ座の女・柳子・・・。

そして、吸い尽くされ、捨てられても、

なお柳子に追いすがる男たち・・・。

特捜隊・高倉班は、

二枚目・日高刑事を資産家の御曹司に仕立てあげ、囮捜査に乗り出す。

欲望に目の眩(クラ)んだ、赤いサソリの触手が、妖しく動き始める・・・。

次回、特別機動捜査隊、「サソリ座の女」に御期待ください。

 

 

(備考)

・藤本三重子の、次回予告篇場面を含め、微妙な(?)ヌードシーン有り。

 

 

(視聴録)

 

寺田柳子(藤本三重子)はクラブ・エリーゼのマダムで景気よく運営しているが、取引先接待で使う西和貿易の存在が大きく、渉外課長・前島和彦(小林勝彦)と「いい」関係であるからでもあった。それは、前島が柳子にプレゼントした翡翠の指輪からも明らかである。

ある夜も店に、前島が取引先社長(晴海勇三)らとともに訪れ、柳子やホステス・美樹(高野ひろみ)らと接待、順風満帆なようにみえた。しかし、アタッシュケースの男(手塚しげお)がマネージャー・沖口(久野聖四郎)、チーフ(白鳥勝)と揉めたり、店の外ではレインコートの男(花上晃)が、明夫と呼ばれる子供(長谷川誉)と徘徊するなど、騒がしい雰囲気を漂わせていた。

 

その翌日、前島が奥多摩・梅沢橋から突き落とされた死体で発見された。高倉班は死亡推定時刻を午前3時と割り出し、遺留品の社員証、エリーゼのライターを回収、まずは西和貿易に、高倉主任、松木部長刑事、笠原刑事、日高刑事が訪れる。社内では、楢山商会からの契約破棄を前島が未報告で、岩村専務(日恵野晃)、前島の同僚課長(未詳)が収拾に当たっていた。前島専用車の運転手(北川陽一郎)からは午後9時にエリーゼまで送った証言のほか、後部座席から電話番号らしい5ケタの数字が書かれたメモの切れ端を発見する。さらには、受付嬢(田沢祐子)から、昨日・午後にアタッシュケースの男が来訪、前島に面会を申し出たところ同僚課長が引き取りを願うと、それならば非常手段に出ると言い放った情報を得る。

 

エリーゼには片桐刑事、鷲見刑事が向かい、近隣住人から、夕べ空地で喧嘩があり、アタッシュケースの男が頭から流血、「前島のことをバラしてやる」と言いながら逃げていった情報を得る。また、松木部長刑事、笠原刑事は柳子宅を訪れるが、前島は昨夜11時ごろ、店から帰ったことくらいしか得るものが無かった。

 

その後、日高刑事の捜査で、メモの切れ端の電話番号は新宿の連れ込みホテル・城であることがわかる。フロント(内田嵐)から、前島は昨夜11時ごろ来て午前1時ごろ帰ったが、入れ違いにホステスが来訪したという。さらに、エリーゼの従業員・全体写真をフロントに見せたところ、エリーゼのホステス・美樹と判明。ボイラーマン(未詳)からは、ホテルの外でアタッシュケースの男、レインコートの男が前島を見張っていたことも判明する。

 

美樹への聞きこみでは、午前1時にホテルを訪れたこと、前島との仲も認めたが、詳しいことは柳子に聞くよう促される。そして、柳子は、前島の前はアタッシュケースを持った化粧品セールスマンと「いい」仲であり、その男が塚田ということがわかる。

高倉班は、再度、柳子にアプローチすることになったが、一筋縄でいかないところから面の割れていない高倉主任、日高刑事が客として潜入する。そして、日高刑事は札幌の果樹園経営者の息子であり、父の死後、東京で新事業開始のため上京という体にした。すると早速、柳子が興味を持ち、日高刑事に接近してきたが、それを見つめる沖口の目があった・・・。

 

 

上記本文は、開始22分ごろまでの流れで、柳子を追うレインコートの男が坂本という元夫で、熊本で旅館を経営、2人の子までもうけており、柳子は上昇志向の強い女性であることが明らかになります。その柳子を巡って、いろいろな男性が翻弄されることが核となるストーリーです。なんだか、前週の「#632 赤い魔女」(以降、前作と表現)と同じような雰囲気ですが、前作は受動的、白痴美的な金銭志向の女性、当作は能動的、官能美的な上昇志向の女性を描いているところが異なるところです。いずれも見ていて不快な思いを抱くところはあります。

ただ、哀れな男性陣というところと、勧善懲悪の結末というところは共通しており、見ていて不快な気分がある程度解消されるところは救いかなと思います。

 

前にも触れましたが、藤本三重子の「#630 声なき女 ある娼婦の詩」とは180度変わった水商売の女性の演技には驚きました。本業が歌手ですから、地方回りで様々な水商売の女性と接する機会が多いところが経験則となったのか、両作とも板についているようです。もし、前作でも時期をずらして、渡辺ゆかりではなく藤本三重子に演じてもらったらどうだったかなとも考えます。それだけ、近作の藤本三重子には、目を見張るところがあります。

 

さて、作品としては、ストーリーの進行で視聴者からは流れがわかるものの(たとえば、主要登場人物の名前・位置づけなど)、高倉班がなかなか流れをつかみきれないところにイラッとくるところはあります。しかし、意図的に引っ張っている気配も見受けられ、潜入捜査のところにきてようやく全容が明らかになります。そして、潜入捜査の後から新しい流れがまた始まり、それには前島の存在が微妙な形で影を落としており、なかなか面白く構成されています。

 

さらに、サラッと顔見世程度に出ている人物、会話、ショットなど、後々考えれば「ああ、なるほど!」となるところも、脚本・佐々木武観の組み立てが久々に奏功していると感じました。これは、高倉班だからこそ成立しているともいえ、硬派っぽい三船班だったら、こういうじれったい流れは合わなかったでしょう。また、田中係長の、高倉班、三船班で態度がガラリと変わるところは、当作ならではというところもあります。これは、再々放送での視聴で当作の良さがわかると思います、だだし、開始22分くらいまでですが・・・。

 

というのが、潜入捜査となってから新たな流れができるものの、メチャクチャな展開で、辻褄が合わなすぎというのが目立つのです。思いつくだけでも

・真相の回想シーンと死亡推定時刻

・日高刑事の奥多摩から都内までの大飛躍

・同じくある人物の奥多摩から都内、建物への大飛躍

・泥棒の場面の必然性

が、開始22分以降に集中します(それ以前も、1か所?がつくところがありますが、上記に比べれば些細とも考えられるので省きます)。

 

思うに、これこそ、特捜隊のジレンマでもある「時間不足」で、あと余計に時間が取れれば、上記の点も描き切っていたのでは。さらに、ラストについては、ある人物と高倉班の接点は、それまで一切無く、顔合わせも無いのに、笑顔でhappy endっぽくしたのにはどうにも合点がいきません。時間不足による切り貼りの影響だと思いますが、開始22分までが面白かっただけに、残念でなりません。せめて2週に分けて前篇・後篇にしていたらとも。

ですので、トータルで見ると、佳作に手が届くのにあと一歩のイメージがつきます。

 

さて、高倉班としては、以降

「#636  冷たい故郷の風」

「#638  ある夫婦の メロディー」

「#641  裸の街・東京」

と続き、高倉班最終話が

「#646  嘆きの天使」(本放送:1974年3月20日)

で、終焉を迎えることになります。

 

里見浩太朗自身が、TBSの「水戸黄門」レギュラー・助さん役に加え、東京12チャンネルの「大江戸捜査網」レギュラ-・伝法寺隼人役で多忙になったことが一因だと思われます。さらに、現代劇よりも時代劇の男優さんということもあり、致し方ないのでしょう。

時代劇が衰退した現在、推理ドラマ系に背広姿で出演されているのを見かけますが、それを見るたび、特捜隊・高倉主任の姿をつい思い出します。