※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#684  十津川絶唱

 

 

 

(本放送)・・・1974年12月11日

(再放送)・・・2009年7月4日

(脚本)・・・樋口静生

(監督)・・・天野利彦

協力)・・・無し

(協賛)・・・日本高速フェリー株式会社、十津川峡温泉・吉乃屋、奈良交通、

       上野地・望橋、奈良県十津川村観光協会

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、水木刑事(水木襄)、

松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

一の瀬玲奈、平野康、桐原史雄、伴藤武、建部道子、小高まさる、堀辺隆一、

菊地正孝、牧野英樹、塚田未人、松下昌司、外野村晋、万里昌代、鶴見丈二

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

奈良県吉野郡十津川村、

その96%が深い山林に覆われた、本州最大の村。

その山中に、東京で殺人を犯した3人の男が逃げ込む。

2人は倒産した町工場(マチコウバ)の若い工員、

そして1人は新宿に巣食うやくざ者・・・。

この、一見、結びつかない3人の関係は何か!?

そして、彼らは山中で何を待っているのか!?

村に現われる、謎の女2人の目的は!?

事件の裏に、何かからくりが・・・。

十津川の山中に、捜査網を拡げる特捜隊・三船班!

怒りの山を、絶望の谷間を、野良犬のごとく逃げ回る男と女!

もはや彼らにとって、明日という日は無いのか!?

次回、特捜隊、「十津川絶唱」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・撮影当時のフェリー航路は、wikiによると

航路=東京港(有明埠頭) ⇔ 那智勝浦港(宇久井港) ⇔ 高知港

会社=日本高速フェリー(後にブルーハイウェイライン)

期間=1973年3月 - 2001年9月

とあるので、東京からの撮影隊出張は容易だったと推察。

・「掲示板特捜隊 8」で#684 十津川絶唱#693 情熱の海、とがキャスティング、ロケ地から、和歌山県ロケ2本撮りとの指摘有り。なお、後者は2019年8月8日に再放送予定。

 

 

(視聴録)

・・・開始約19分後半まで

 

奈良県吉野郡十津川村、山中の小屋では、白川純二(平野康)、三堀修(桐原史雄)が、買出しに行った仲間の浅井武夫(伴藤武)の帰りを待っている。しかし、彼らの願いは虚しく、浅井は吊り橋の上で、出張捜査の三船班に逮捕されていた。東京の室田工業が倒産の際、社長・室田(外野村晋)が自宅で絞殺され、現金3000万が強奪された事件で、その場に居合わせたのが従業員・白川、浅井、室田が雇った暴力団幹部・三堀であった。3人は逃亡したが、三船班は追跡、戸津川村まで追い詰め、浅井の逮捕となったのである。

 

三船主任は、残り2人の逮捕のため、十津川署・署長(鶴見丈二)に山狩りで動員を依頼するが断られる。山林だらけのため場所を特定しなければならず、兵糧攻めで下山を待つ方が効果的と諭されたのである。そこで三船主任は、白川・浅井と三堀とは相反する関係で、なぜ3人で逃げたのか、事件の裏に何があるのかを考え、浅井の取調べに全力を注ぐことにした。

 

一方、那智勝浦港に向かうさんふらわあ号では、白川の女友達・しむら節子(一の瀬玲奈)を関根、畑野が尾行。節子は上流階級の娘であり、畑野は一従業員の白川と節子とがどう結びつくのか首をかしげる。関根は、白川から何らかの連絡があったから節子が動き出したと見ており、仲間のひとり・浅井が逮捕されたから十津川村に向かっているものと確信していた。その節子は、派手服女(万里昌代)に声をかけられるも、心ここにあらずという雰囲気だった。

 

山中の小屋では、浅井が捕まった可能性を考え、三堀から地理に詳しい白川に、場所を移動するよう提案する。白川は了承するものの、長引く逃走に肉体的、精神的にも疲れ切っていた。そこで移動の最中、白川は三堀に必ず戻ってくるからと申し出て、単独行動をとることになるが三堀の表情は半信半疑だった。

 

十津川署では三船主任が浅井を訊問。しかし、浅井は、計画倒産を行なった室田は殺されて当然だが、誰が室田を殺したかは覚えておらず、現金も盗んではいない供述に終始する。

 

一方、節子は関根、畑野の尾行に気づかず、那智勝浦港で下船後、バスで十津川村へと移動。ここで、関根、畑野は尾行を、釣り人に扮装した松木、石原と交代、三船主任に報告に向かう。節子は、旅館・吉乃屋に入り、女中(建部道子)の案内で宿泊することになり、部屋から見る川の流れに何かを考えているようであった。しかし、その頃、単独行動の白川は、老人(小高まさる)の小屋に侵入、猟銃と銃弾を盗み出していた・・・。

 

 

当作は、直前作#683 拝啓沖田総司さま と同様に

>事件としては単純なものであり、真相追及・犯人探しという点でも、

>目新しいものはありません。

という評価に落ち着きます。ただ、三船主任が1年前の事件で十津川村に来て、上記本文の出来事の回想というのは、#586 ある 死刑囚の詩 の手法を取り入れ、現在・過去・大過去と遡る効果を生み出しており、注目されるところではあります。

ストーリーは強盗殺人事件が発生、しかし逃亡する犯人のひとりは(ここでは浅井を指します)、そんな覚えが無いという供述、となると

・浅井本人が偽証

・残りの2人の犯行

・はたまた第3者の犯行

に帰結するわけで、そこをどうやって刑事ドラマらしく盛り上げていくかがポイントになります。

 

ですので、事件の真相からいえば、現場検証を(視聴者に観せるのを)いかに先送りさせて視聴者をじらすところが、ストーリーの肝にもなるわけです。たとえば、三船班各人による身振り手振りなどでの、現場再現の話し合いとかいろいろやり方はあると思います、ところが、浅井の回想(これも現場検証との比較で重要な部分です)が早い段階で描写され、それが視聴者へのフェイクに見えるうえ、室田の状態に3人とも気づかないのはいかにも不自然です。

そして、事件の真相追及は、三船主任のズバリとした指摘で筋は通ってるものの、いかにも文章的で短時間での決着というところに、「尺足らず」の印象は避けれません。浅井の供述通りならば、事件から5日近く経過しているので「ある証拠」の出処はわかっていてもおかしくありません。関連して、「ある人物」のことも開始約32分後半、38分後半に松木、関根から詳細が触れられているので、十津川村出張捜査の前に判明していたというのが自然です。それが、真相究明の指摘の際に至っても、「該当者不明」というのは首をかしげます。

 

なぜ、このようになってしまったか。それは、青春群像ともいうべき、白川と節子との関係が描き切れていない、悪くいえば節子が白川に傾倒する理由がいまいち不明瞭であることに尽き、それに時間をとられすぎたからだと考えます。白川については、金に固執するのか、女に固執するのか、なぜ猟銃を盗み出したのか、観ていて「どこかおかしいのでは」と思うほど支離滅裂感が強く、共感しきれないのです。こんな男に(回想でそれらしい理由づけはされるものの)なぜ節子が魅かれるのか・・・、どうにもこの点が観ていてわかりづらい。

また、節子にしても、ハンカチ1枚で白川と巡りあう設定も説明不足で、「これであなたと一緒」という「行動」も、自分のことを言う前になぜ相手を気遣わないのか、なぜもう少し早くその「行動」をとれなかったか、という点も疑問を抱くところです。

 

これは、平野康、一の瀬玲奈という俳優陣の問題というより、ストーリー自体に歪みのある脚本・樋口静生の問題であり、構成をつくり損ねた(あるいは、ロケ苦手の印象のある)監督・天野利彦の問題であるといえましょう。冒頭に触れた、同じような事件内容である、直前作#683 拝啓沖田総司さま と比較しても落ちる点は、ここいらへんにあるのではと考えます。

特に、天野利彦監督は【第4回再放送】となって、本調子とは思えない作品が続きます。しかし、#669 転落の詩 での収拾のつかない出来を、一気に#676 母の湖 で挽回したという実績があります(いずれも青森ロケ作品)。ですので、「掲示板特捜隊 8」で指摘された、2本撮りで、「#693  情熱の海」が控えているのなら(テレビドラマデータベースだと、脚本・元持栄美、監督・天野利彦とあります)、こちらに期待したいところであります。

→(追加)やはりロケ2本撮りでしたので、#693 情熱の海 を参照のこと。

 

さて、ゲストの一の瀬玲奈(後に、一ノ瀬玲奈、一の瀬レナ、一ノ瀬レナ、柳沢紀子)は、後に特捜隊準レギュラーとして登場するらしいですが、ゲストとして当作が初登場となります。後年の作品ではありますが、特捜最前線・#209 三千万を 拾った刑事! で自分自身は初めて一の瀬玲奈を拝見しました(註・柳沢紀子の名で登場、コメントをよくいただく東映バカさんから一の瀬玲奈との指摘を受けました)。そこでは、悪女の匂いを振りまいた存在で、彫の深さの顔と相まって、共演の工藤明子とは対照的でインパクトがありました。それが当作では、しんなりと一途な女性を演じているのですから驚きました。

最近まで、東映chでピンキーバイオレンスものを放送していたのですが、それらにも出演していました。年代的には当作に出演する前の作品ですので、劇場で彼女の容貌を観た方なら、やはり驚かれると思います。調べてみると、1988年まで女優を続けていたようで、東映ピンキーバイオレンス女優の中では、比較的息の長い活動をされたのではと感じた次第です。