※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#586  ある 死刑囚の詩】

 

(本放送)1973年1月24日

(再放送)2016年7月7日

(脚本)横山保朗

(監督)松島稔

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(西郷昭二)、鑑識課員(田川恒夫)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、白石刑事(白石鈴雄)、村井刑事(北村晃一)、

石原刑事(吉田豊明)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

ベラ・シムス、水野マリア、メイ・ジュン、岩垂克、練木二郎、渡辺啓二、加藤三和、

大阪憲、矢の目ガン、三由茂、亀井三郎、赤木信、貫恒実、堀勝之祐

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

坪田あきら・死刑囚・25歳・・・。

ポルノ映画館主・竹内広子殺人、

不良学生・大庭さぶろう殺人、

老婆・小塚信子殺人、

殺人犯の中でも最も残忍で凶悪な男であった。

この男、意外にも上審(ジョウシン、註・上告審か?)を拒否、

自ら死を選ぶのであった。

そこに、いかなる心境の変化があったのか・・・?

物心ついたときから、犯罪と復讐に明け暮れた男、

この男にも味方はいた。

基地の落とし子、黒人2世・ノブ・・・、

坪田の心の友であった。

精薄(セイハク)だった妹・ゆみこ、そしてノブと3人で遊んだ、

遠く幼いころの思い出・・・、

坪田にとって、自由な解放された夢の世界であった。

この死刑囚は、その世界への旅立ちを夢見たのであろうか・・・?

次回、特捜隊、「ある 死刑囚の詩」に御期待ください。

 

 

(備考)

・特捜隊本部の板書表記は以下の通り(電車は京王線)。

上り電車

〈7時07分〉千歳ヶ丘

↓3分

〈7時10分〉つつじヶ丘・・・・(釣り客降車)

↓3分

〈7時13分〉美好ヶ丘・・・・・・(死体発見)

・外国人ゲスト3人は日本人による吹替と推察できるが、エンディング表記にその気配は無し。

 

 

(視聴録)

 

死刑判決をそのまま受け入れようとする死刑囚・坪田あきら(堀勝之祐)、想いを寄せ控訴を勧める黒人少女・ノブ(ベラ・シムス)、新たな再出発を諭す関根部長刑事、そして無言で見つめる三船主任・・・、事件は1年前に遡る。

 

青森県三沢で、坪田は精神薄弱者の妹・ゆみこ、黒人少女ノブと楽しく過ごしていた。母は、三沢基地労務者・小塚と再婚も、酒癖が悪く殴る蹴るの暴力を受けたこともあり病死してしまう。憤った坪田は小塚を絞殺、未成年でありながら不定期刑を受け、6年後刑務所から出所した。しかし、服役中にゆみこを引き取った小塚の姉・信子は生活保護受給者であり、ゆみこへの補助金は酒代に消え、あろうことかゆみこは信子の暴力で亡くなったと聞き及び、上京した坪田は信子を刺殺して逃亡する。

 

ノブは、上京後喫茶スナックで、外人のママ(水野マリア)、ホステス・マキ(メイ・ジュン)と働いており、その日は3人と客の学生・大庭(岩垂克)と話しこんでいたが、看板片付けの際、坪田と偶然すれ違う。3人が店をあがり閑散な電車に乗ると、ノブは坪田を見かけるが、坪田の隣の中年女(未詳)が倒れこみ胸から血を流していた。逃げる坪田と追うノブ、ママとマキは駅員を通じて通報した。三船班の検証、聞きこみで、死亡した中年女は映画館主・竹内広子、胸部を拳銃で2発受け射殺されており、持っているはずの現金が不明であった。三船主任は現場に違和感を感じながらも坪田とノブの足どりを追う。その2人が歩いている途中、坪田はノブを見かけた大庭の車に上がり込み、揉み合いのなか大庭を刺殺、車を奪って逃走する。

 

大庭の自宅を訪ねた三船班は、大庭の同級生、待寺(マチアイ、練木二郎)、浦川(渡辺啓二)と顔を合わせると、関根部長刑事と大学病院へ死体確認に向かわせる。そして、白石刑事やつつじヶ丘駅の駅員からの釣り客の情報に、三船主任は釣り堀一帯の捜索を命じる・・・。

 

 

当作は、検証本では題名・放送日・担当班・出演者のみの表記しかなく、リスト特捜隊でも同様、「掲示板特捜隊 6」でもあまり触れられていません。あまり面白くないからかと、先入観を抱いていたらとんでもない。謎解き、サスペンス、アクション、メッセージ性の強い題材など興味津々で見れる作品です。多分に同情的な要素を含ませ、「死刑に恐ろしさに怯えながら、残り少ない日を生きていくことが、残されたただ一つの償い」と言わしめるところは、初放送当時まだ公判中であった、永山則夫連続射殺事件を意識して作られたような気がします。

なお、同上事件は、第一審で1979年7月10日に死刑判決、高裁で一転して無期懲役判決も最高裁で1983年7月8日に破棄差戻いわゆる永山基準が設けられ、最終的に1990年4月17日に上告棄却・死刑確定となり、1997年8月1日に死刑執行となっています。そのときの経緯が、永山則夫連続射殺事件である程度記述されていますが、当作の坪田と比較するのも脚本横山保朗の視点とあわせ、なかなか興味深いところです。

 

そして、三船主任が殺害方法から捜査方針を一転させるタイミング、つつじヶ丘駅のプラットホームならではのトリック、それをさりげなく見せる伏線、さらに「#582 消えゆく灯」よりも実は外国人問題に食い込んでいる構成など、脚本だけでなく特捜隊の古くからの監督・松島稔との組み合わせも奏功したのだと思います。

松島稔は、#451以降の作品では、ここぞというメモリアル作品のときには招聘されて撮りあげているようで、「#500 勇気ある女 (500回記念作品)」、「#518 わが道を行く (満十周年記念番組)」に続く3作目で、個人的には当作が一番面白かったと思います。当作のどこがメモリアルかなと考えたのですが、本放送前年12月26日(本放送は1973年1月24日)にアメリカ元大統領トルーマンが死去したことで、ようやく戦後となったと解釈できなくはありません。

 

また、当作の意外な味付けになったのが3人の外国人女性ゲストで、ムサい(?)男性陣の中に外国人女性のシチュエーションは新鮮で、吹替処理をしたことで画面に見入る効果を与え、集中力を削がれることはありませんでした。調べてみると、ベラ・シムスだけが不良番長シリーズでヒットして、後の2人は見当たりません。ベラ・シムズと堀勝之祐の真情を吐露しながら語り合う場面も捨てがたく、彼女たちが今何をやっているのか、ふと考えてしまいました。

 

(2018年1月12日 全面追加)