※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#669  転落の詩

 

 

 

(本放送)・・・1974年8月28日

(再放送)・・・2019年5月16日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・天野利彦

協力)・・・無し

(協賛)・・・青森県三沢市・古牧温泉、国立公園・十和田湖畔・博物館ホテル

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(西郷昭二)、鑑識員(田川恒夫)、

事務員(田中正吾)、関根部長刑事(伊沢一郎)、水木刑事(水木襄)、

石原刑事(吉田豊明)、松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

生田くみ子、高野ひろみ、真山京子、市東昭秀、桐原史雄、小浅初江、

桔梗恵二郎、中里このえ、直木みつ男、夏木章、山崎純資、山本廉、花上晃、

橋本菊子、宮浩之

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

肺がんで明日をも知れぬ名トランぺッターの、

最後の賭けは、脆くも崩れた。

子供は流産であった・・・。

妻の退院の日、焼却炉に赤ん坊が捨てられていた。

義理の弟と、その婚約者の子供か!?

そして、偽装殺人事件・・・!

特捜隊・三船班は、

青森県三沢、十和田湖へと犯人を追った。

事件のカギを握る、重要参考人が殺害された!!

次回、特捜隊、「転落の詩」に御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・古牧温泉での専属歌手・さがらユカを演じる中里このえは、昭和50年代に「浪花節だよ人生は」を歌いヒット曲を飛ばした、木村友衛である。

・検証本378頁の「トランペット吹きとともに」という記述は、実見するとニュアンスが異なる。

・周旋屋とは、仕事のあっせんを行なう人のこと。差別用語と指摘されることもあるが、当作のエンディング表記にしたがい、以下本文ではそのまま表記する。

#669 転落の詩 、#676 母の湖 は、脚本、監督、キャスティング、ロケ地から、青森ロケ2本撮りと思われる。

 

 

(視聴録)

・・・開始約19分後半まで

 

上野駅で、地方への音楽演奏者を募集している周旋屋(直木みつ男)のもとに、トランペット吹きの、こいずみ鈴男(宮浩之)が訪れるが断られる。こいずみは、肺がんを患っているからでもあり、それを妻・節子(生田くみ子)、知人のケーキ屋・マスター(桐原史雄)は見守っていた。歩きながら、マスターは病に苦しむこいずみと別れるよう勧めるが、節子にはそんな気は無かった。と、いきなり節子が腹を押えて苦しみ出し、駆けつけたこいずみとマスターは、節子を病院に緊急搬送させるが、診断結果は流産であった。気持ちが滅入るこいずみ、節子は、病院を出て歩き始めると、近くの焼却炉から赤ちゃん(上村綾子)の鳴き声を聞く。。。

 

同じくらいの時、三船班は縊死体発見の報にアパートに急行、捜査を開始する。しかし、鑑識は背後から首を絞められロープで吊るした偽装自殺の可能性を指摘、三船主任も同意、死亡時刻は午前3-5時と推定された。管理人・吉村夫妻(田中力、妻役は未詳)によると、被害者は西条道子(真山京子)、3日前に越してきたこと、道子の夫には会っていないこと、生後3か月の男の赤ちゃんがいたはずなのに見当らないこと、毎朝配達の牛乳を7時になっても取りに来ないので、訪れたところ惨状を発見したこと、が判明した。その後、焼却炉で赤ちゃん発見の報もあり、三船班はそちらへ向かうことになる。

 

赤ちゃんを保護した病院には、吉村の妻も行き道子の子であることを証言、青森県三沢の○○神社(註・聞きとれず)のお守りから、名前は「かずお」、6月2日生まれであることがわかる。さらに、焼却炉で待機中のこいずみ、節子に聞きこみをするが、2人の境遇を聞くにつけ、関根、畑野、水木は辛い顔つきになる。が、こいずみが、アパートでの事件と道子の顔写真の提示に顔色を曇らせたことに、知ってか知らずか三船主任は無言のままであった。

 

聞きとりが終わり帰る途中、こいずみは節子に、昨晩節子の入院先病院の外で、節子の弟・みずもり礼二(市東昭秀)と道子が一緒に歩いていたことを告白する(註・この場面で、礼二はこいずみを肺がんの理由で、一方的に嫌っていることが明らかになる)。節子は、2人がつき合っていたことに驚き、急遽礼二の勤務先のケーキ屋に向かうことになる。

 

一方、三船班の依頼で、三沢の所轄署刑事2人(夏木章、花上晃)は○○神社を訪れ、神主(山本廉)に聞きこむ。お守りは、1ヵ月前に、訪れた赤ちゃん連れの女性(註・映像で道子だとわかる)に渡したもので、同席した従姉の27,8歳の女性は市内居住であることが判明する。

 

ケーキ屋では、マスターが女店員(小浅初江)、男店員(未詳)にケーキづくりを指導しているところへ、マダム(高野ひろみ)がこいずみ、節子を案内する。内容が内容なだけに、席を変え、喫茶店でマスター、こいずみ、節子の3人は話すことにする。

このケーキ屋では、礼二だけでなく、道子も勤務していたこともあり、マスターは2人のつきあいを知っていた。というのは、5月のGWに店内の全員で、十和田湖から古牧温泉にいったとき、礼二、道子がマスター、マダムの前で結婚宣言、また仲人を依頼されたからであった。そして、マスターは早期の結論を避け、帰京して相談することを提案するが、道子は急に吐き気を催し離席、さらに翌朝から姿をくらましたことを話し、こいずみ、節子は唖然とする。

 

この話の途中、姉が来たことで顔を出した礼二は、道子の死、というキーワードに反応。急に駆け出し、車に乗って走り去ろうとするが、こいずみが追いかけ助手席に同乗、そのまま車は走り出してしまった・・・。

 

 

当作は、全体的に見れば、刑事ドラマ、人間ドラマ、いずれの点でも興味津々に描くことに成功しています。

前者は、キャステイングの妙もあり、主要出演者が、かつて特捜隊で犯人役、犯人でなくとも黒幕的な悪役を演じた人ばかりで、最後まで真相がわからないという点があります。生田くみ子、高野ひろみ、市東昭秀、桐原史雄、直木みつ男、夏木章、山本廉、花上晃、宮浩之・・・、よくぞここまで揃えたものです(笑)特に、高野ひろみ、宮浩之といえば、かつて「ジャッロ作品の影響がある」と評した傑作、#550 ある異常人間 以来、約2年以上ぶりの共演でもあり、期待は高まります。

後者は、赤ちゃんが出ていることもあるのか、【第3回再放送】での三船主任ほどではないですが、【第4回再放送】では久々に「情の男」をみせたのではと思います(ラストでの場面をみてみると、#666 剣と女 でのラスト場面の矢崎主任とうまく対比できましょう)。これは、焼却炉の前の三船主任が、何を考え無言であるのか、そういった点も上手く描いています。

 

ただ、どうしても「粗」の部分は出てきてしまうもので

(1) 最終的に、死亡推定時刻と犯人が目撃された時刻との不整合。

(2) 上記の点で、必要だと思われる、道子殺害時の回想場面が無いこと。

(3) 道子の出産時期につき、各人の証言が異なること。

(4) 発声が聞きづらいせいもあるのか、当初のアパートでの三船班の聞きこみで、真相へのヒントが有りながらも追及されていないこと(開始約9分半ば)。

(5) 礼二のある発言内容が、こいずみ、節子に向けてのものと、それぞれ異なること。

などが挙げられます。

 

特捜隊には、いろいろな「粗」があるものですが、それを勢いで覆ってしまうパワーがあれば、作品は観賞に堪えうるものであります。個人的には、刑事ドラマ、人間ドラマとも成り立つ余裕があり、贔屓目に見て、上記の4つまでは目を瞑れましょう。

ただ、(2)の点だけは、上手くまとめてというか、描写場面があれば良かったと思うことしきりです。横山保朗脚本は未見なのですが、構成力に長けた天野利彦監督なら、付け加えでもいいので、ほんの数分演出してくれれば・・・と考えます。これが無いことで、真相が文章的であり、とってつけたような形になっているのです。以前触れた、もしかして天野利彦監督は地方ロケが苦手ではないのか?、という考えもふと浮かびます。

 

御贔屓女優でもある、高野ひろみが開始約14分過ぎに画面登場、登場場面は少ないながらもストーリーは上手く流れ、「特捜隊での高野ひろみ出演作品に外れ無し」に確信を持ちました。が、上記のこともあり、結果的に見れば、#659 俺が愛した女だ!! で評した、「宝の持ち腐れ」に似たようなものになりました。

なお、情報の少ない女優・高野ひろみですが、テレビドラマデータベースでは、最後の出演作品が、、#659 俺が愛した女だ!! であります。が、それ以降リアルタイムで2カ月後の当作に出演していました。これからすると、高野ひろみが特捜隊に出演するのが当作で打ち止めとなるのか? まだ継続的に出演するのか? 御贔屓のひとりとしては興味がありますね。

 

敢闘賞があるとすれば、中里このえ、こと木村友衛でしょうか。特捜隊での歌手ゲスト出演ですと、あまり台詞も無く歌だけで終わってしまうのですが、かなり出演場面や台詞が多いですね。テレビドラマデータベースで調べると、ドラマ出演は当作のみということですが(追加2を参照)、翌年に名跡である木村友衛を襲名したので、歌・浪曲一本に絞ったのかもしれません。

 

(追加)

今思えば、明彦(大崎豊)の病院屋上場面を縮小して時間を確保、前述の「道子殺害時の回想場面」をラスト5分前くらいに挿入できなかったかなとも考えます。なお、この病院屋上場面は、周辺風景から、改築前の都立駒込病院の屋上で撮影したかもしれません(当時の写真が無く、記憶だけなので未確認)。

 

(追加2)

当作が2本撮りだったことは後日判明、中里このえは、#676 母の湖 にも出演しています。