※ 特別機動捜査隊 まえがき
捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。
また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。
【#550 ある異常人間】
(本放送)1972年5月17日
(再放送)2016年3月10日
(脚本)小川記正
(監督)吉川一義
(協力)無し
(協賛)無し
(捜査担当)三船班
田中係長(山田禅二)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(田川恒夫)、
鑑識課員(西郷昭二)、関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、
白石刑事(白石鈴雄)、水木刑事(水木襄)、畑野刑事(宗方勝巳)、
三船主任(青木義朗)
(出演者)
宮浩之、高野ひろみ、宇南山宏、大坪日出代、加藤恒喜、藤井まゆみ、山村晋平、
秋月喜久枝、泉よし子、伊藤敏孝、榎本英一、松田真里、中林義明、小松聖子、
角友司郎、星野ルミ、橘ミル、里木左甫良、戸田春子、綾川香、小林裕子、
三田登喜子、西沢利明
(あらすじ・予告篇から)
※当時のナレーション(=青木義朗)をそのまま聞き写しています
金融会社女社長殺人事件を巡って、
1人の画家が容疑者として、捜査線上に浮かびあがる。
その男が第2第3の殺人を犯す危機を感じながらも、
物的証拠が無いために逮捕できぬ三船主任の悩みと焦り・・・。
捜査は凶器を求めて、第一歩から始まる!
考古学者の妻であり、ゴーゴークラブを経営する女の謎は!?
さらに起こった連続殺人事件.
容疑者を巡る3人の女を軸に、
事件の謎は一歩一歩明るみに出てくる・・・。
三船主任狙撃事件との関連は!?
次回、「異常人間」に御期待ください。
(備考)
・かつて香取刑事を演じていた綾川香が、関屋役でゲスト出演。
・予告篇での告知題名「異常人間」は誤り、「ある異常人間」が正しい。
・特捜隊と検察との関連ストーリーが「#622 刑事対検事」にあり、検事を同じく西沢利明が演じていますが、役名は村山検事から片桐検事に変更されています。
(視聴録)
金融会社の女社長・鈴木よし子(三田登喜子)が、いしまる公園にて鈍器のような凶器で撲殺死体となって発見された。三船班は、鈴木家のお手伝い・竹内とし江(戸田春子)が事件当日に、よし子と画家・川村武志(宮浩之)とが争っていた証言をもって川村の逮捕状を請求するものの、後日とし江が証言を撤回したこと、さらに物的証拠が無いことで、村山検事(西沢利明)は動こうとしない。そこで再度、孫の学生(伊藤敏孝?)をあやすとし江に聞きこむと、怪しい女を目撃したと証言、よし子の経営する鈴木画廊のマネージャー・関屋みさお(藤井まゆみ)を指摘した。この展開に、三船班は川村の個展開催中の鈴木画廊に出向くも、みさお、そして夫・関屋(綾川香)からは新情報を得ることはできなかった。
そんな中、三船主任はチンピラ(角友司郎)から狙撃される。犯人を逮捕するものの三船主任を庇った畑野刑事に弾丸が当たり入院の憂き目に・・・。意気消沈する三船班だが、関根部長刑事の「第一歩からやり直しましょう」という言葉に、再度の捜査を開始する。
再捜査で川村を尾行すると、よし子が亡くなっても妻・峰子(高野ひろみ)のところへ帰る素振りも無く、ゴーゴークラブ・花粉に出入りを繰り返していた。その間隙を縫って、第2の事件が発生、とし江が鈴木家で撲殺死体となって発見され、第1の事件と同様に凶器は見当たらない。そこでようやく、孫の学生が、とし江が証言を撤回した理由、とし江と孫とでよし子・川村の争いを目撃していたこと、川村が殴打した後に謎の女性が傍に駆け寄ったことを証言。石原刑事はすぐにでも川村逮捕に動こうと具申するが、三船主任は村山検事の対応を考えると、まだその時期ではなく、確証を掴むまではと自分に言い聞かせるのだった。
そして、孫の目撃した貸家に向かい、所轄刑事・竹本(宇南山宏)、家主・近藤(里木左甫良)立ち合いの元、数々の物証、証言を手に入れる。その中のひとつ、飾ってあった絵画の線から、額縁店主・笠原(加藤恒喜)より考古学の山本ためぞう教授宅へ届けたものと判明、三船主任、関根部長刑事は山本教授宅に訪れる。教授は海外出張中であるため夫人・山本文江(小林裕子)が応対、川村の写真を渡しても知らぬ存ぜぬのため埒が明かなかったが、三船主任は文江の容貌に見覚えがあった。
それなりに収穫のあった立て直し捜査であり、特捜隊本部では事件の進捗、情報分析などの打合せをしていたが、そこに第3の事件発生という衝撃の連絡が入った。
三船班は、またもや犯人に犯罪実行を許してしまったのである・・・。
小川記正脚本、吉川一義監督、といえば新生・特捜隊のゴールデンコンビと自分の中では認識されてきましたので、オープニングの表記をみたとたん期待度は100%になりました。
戦前のサイレント映画で、主演・大河内傳次郎、撮影・唐沢弘光、脚本・監督・伊藤大輔と画面に流れたとたん、観客の拍手喝采は鳴りやまず、監視の警官も耳を抑えるほどだったという伝説が思い起こされます。
それでは当作はどうだったかというと、「あとあと考えればあの場面はああだったのか」という演出を用いて、特捜隊の宿命でもある時間不足を補い、膨大な小川記正ワールドを枠内に目一杯表現させることに成功した作品だと思います。
(追加 : ちなみに上記のストーリーの流れはいつもより長い文章になっていますが、番組開始20分ほどの分を濃縮してまとめたものにすぎません。なので、この後の展開を考えれば、いかに膨大なストーリーであるか・・・小川記正恐るべし。)
当たり前のことゆえ、後は視聴者に判断させようという姿勢は、ややもすると描写不足のそしりを免れないのですが、吉川一義監督の絶妙な匙加減で上手く仕上げています。たとえば、赤いスリッパの女は誰?というのも、ある身体的特徴と三船班の持ち帰ったひとつの物証で、あとになって「なるほど」と解明されるよう考えたスタイルです。これは、当作を貫いているものとして「赤」を部分部分で印象づけたことと、関連しているようにも見えます。
また、窓の外・内からの状況を交互に撮影、映し出すことで、第3者的視点・当事者的視点によるスリル感を醸し出すことに成功しています。そしてそれは、硬軟演じ分けられる高野ひろみの好演により、クライマックスへと導かれるなど、演技・演出・技術が上手く合致したようであり、(鑑賞してないとはいえ)検証本の指摘とは違うところを自分は評価したいですね。
とにかく、当作は、再々放送での視聴を是非ともおすすめしたい作品です。
ある意味、「#542 男子禁制」で評したジャッロ映画を、さらにレベルアップさせたのが当作といえるでしょう。
ただ、三船主任狙撃場面は、畑野刑事の出演場面を確保するためか、浮いた感じがあるのは否めません。「#549 太陽が欲しい」でも指摘したのですが、スケジュール問題が影を落としていたのかもと、つい推察してしまいます。本来は、直前の鈴木画廊での関屋夫妻への尋問があったのを、三船主任のナレーションで補って、その分狙撃事件の時間を設けたのかもと考えます(特に、妻・みさおと比べ、夫・関屋の場面が少ないのが目立ちます)。
しかし、本来の形があったとしても(狙撃事件の状態でも)、大勢に影響は無く批判の対象にはなりえません。むしろ、アクション場面が狙撃事件のところだけなので、ワサビ的な場面として見れば欠点にはなりませんので、指摘だけにとどめておくべきでしょう。
なお、刑法39条がクローズアップされ、裁判所の見解でも、近代刑法の大原則とされていますが、そもそも計画性のある輩に適用されるべきではないと考えます。正常だから、犯罪を計画できるのでしょうから。もし、当作の真犯人にこの条文をもちうるならば、そういった裁判官にはふさわしい風土が別にあるものと考えます。
(2017年12月18日 全面追加)