※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#676  母の湖

 

 

(本放送)・・・1974年10月16日

(再放送)・・・2019年6月6日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・天野利彦

協力)・・・無し

(協賛)・・・青森県三沢市・古牧温泉、国立公園・十和田湖畔・博物館ホテル

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(西郷昭二)、鑑識員(田川恒夫)、

事務員(田中正吾)、関根部長刑事(伊沢一郎)、水木刑事(水木襄)、

石原刑事(吉田豊明)、松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

生田くみ子、高野ひろみ、市東昭秀、真山京子、山崎純資、長谷川美雪、

松本敏男、谷本小夜子、木村修、奥山正勝、打越正八、会津はるこ、

中里このえ、山本廉、夏木章、宮浩之、橋本菊子、花上晃

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

洋装店のお針子と、マネキン会社の社員の前に、

突然降って湧いた恐怖の事件。

恋人を盾にする空巣犯に、若い男は夢中で襲いかかった。

翌朝、ドブ川で、

空巣に入った男が無残な死体となって発見された!

家出した母を探し、子供と老婆は各地を転々としていた。

東京、青森県と、やっと巡り会えた母と子・・・。

だが、恐るべき事件に巻きこまれた!

次回、「母の湖」に御期待ください。

 

 

(備考)・・・

#669 転落の詩 、#676 母の湖 は、脚本、監督、キャスティング、ロケ地から、青森ロケ2本撮りと思われる。なお比較のため、以下では、上記作品を順に、前作、当作と区分けする。

・予告篇のフィルム劣化・色あせが激しいが、本篇はさほどではなかった。この現象は【第3回再放送】の作品にも見られるところで、予告篇・本篇のフィルムは別々に保管しているとも推測される。となると、過去作品で本篇が失われていても、予告篇のみ現存している可能性もあり、何らかの形での公開が期待される。

・実見したところ、田中係長の出演場面は無い。

 

 

 

(視聴録)

・・・開始約15分後半まで

 

ときわ台駅北口の噴水広場では、北九州から上京した老婆・村上久子(橋本菊子)が、家を出て行った娘・千津子(生田くみ子)を探しに、孫娘・佳子(ヨシコ、長谷川美雪)と千津子の写真付きプラカードを掲げている。が、成果も無く、宿泊先の旅荘・美月へと帰る2人を、雀荘チヨダから出てきた遊び人風のいたみ俊次(松本敏男)が見つけ、なぜか後をつける。

そして、宿泊先までの途中にあるツクバ洋装店を通りかかると、ショーウインドウのマネキンから右腕が落ちるのを見て、佳子は目を背ける。慌てて、女店員・みはら順子(真山京子)が拾ってお詫びをする。そこに、取引先の宮川マネキン製作所社員であり、順子の恋人でもあるにしな隆志(市東昭秀)が営業車で来訪、不具合のマネキンを差替える。にしなは、今晩一緒に踊りに行く約束もあり直帰することで訪れたが、順子は店のマダムが急に出かけ留守番で行けなくなっていた。それでも、にしなの熱心な誘いに乗り、このまま踊りに行くことにする順子の笑顔に、久子、佳子も笑って去っていくが、いたみはその様子を黙って見つめていた。

 

その晩宿泊先では、久子はプラカードを見た労働者(未詳)から、千津子を駅裏のバーで見かけた話を聞き、寝ている佳子の面倒を頼みバーへと向かう。その途中で通り過ぎたツクバ洋装店では、にしな、順子がちょうど戻ったところだったが、店内にはいたみが強盗で侵入、順子にハサミを突きつけ人質にとって逃げようとする。が、足を取られよろめいたいたみを、にしなは手にしたマネキン右腕で乱打する。気がつくと、いたみは頭から流血、意識が無い。。。

 

翌朝、線路脇の路上で、いたみの撲殺死体が発見され、三船班は捜査にあたる。死因は、顔面から後頭部を鈍器で叩かれたもので、死後10時間。着衣下半身が湿っていること、左靴が不明、付近に血痕が無いことから、三船主任は犯行現場は別に有り、関根も傍の用水路周辺が怪しいと指摘する。そして、第一発見者である自転車乗り(未詳)は、老婆、幼児とぶつかって横転したが、2人はそのまま行ってしまい(註、この回想場面で2人=久子、佳子とわかる)、来た方向をみると死体があったという。さらに、死体の男を駅前の雀荘チヨダで見かけたという証言も得て、松木、石原は聞きこみに回る。

 

チヨダには雀荘女将(谷本小夜子?)、従業員・澄子(高野ひろみ)、客・いたくら(山崎純資)、ピンクシャツ男(未詳)がいた。聞きこみでは、死体の男がいたみ俊次であり、いたみは千津子とアパートで同棲していること、千津子は駅裏のバーで働いていること、昨晩10時ごろ千津子に会うためチヨダから出て行ったこと、が明らかになる。

 

そして、いたくらの案内で、いたみのアパートに向かう三船主任、石原は、その途中で用水路捜査に立ち会う。そこでは血痕(血液型はいたみと同一)が付着してあるマネキン本体、凶器らしいマネキンの右腕も発見された。さらには、宮川マネキン製作所の名前、川の中からプラカードも発見され、いたくらはプラカード写真の女が千津子と指摘する。そこで、松木、石原を駅裏のバーへ聞きこみに、三船主任、水木、いたくらでアパートへ行くことになった。

 

アパートでは、女住人(会津はるこ?)から、昨晩10時半ごろ2階住人・さえき(花上晃)と千津子が帰宅、旅行の支度をしてすぐに出て行ったという。そして、いたくらによると、さえきは千津子とデキているといたみがこぼしていたともいう。そこに、松木、石原が到着、聞きこみの結果、千津子といたみは北九州から駆け落ちしてきたこと、いたみには強盗(タタキ)の前科があること、千津子は客のさえきと昨晩10時に店を出たこと、そのあと久子が来店したのでこのアパートを教えたこと、などが明らかになる。さらに女住人からは、千津子、さえきが出たあとに久子が来たので、さえきは青森の十和田方面に行ったかもしれないと話した証言も得る。そこで、三船主任は、松木、石原に十和田湖への出張捜査を指示する。

 

その後、関根、畑野の宮川マネキン製作所・社員(木村修?)への聞きこみから、該当マネキンはツクバ洋装店のもので、担当のにしなは本日はまだ出社していないことが明らかになる。その報を受けた三船主任は、水木とツクバ洋装店を捜査。裏手に用水路があること、裏口、店内に血痕があること、店内はレジが転がっているなど荒らされており、鑑識、周辺聞きこみへと範囲を拡大。すると、女店員・順子の存在、血痕=いたみの血液型、用水路沿いでいたみの左靴の発見、その足跡は歩いた様子で法面にも有ることが判明。そこに関根、畑野が合流、追加報告で、にしなは若い女と今朝出かけたこと、にしなの実家は青森県・小川原湖周辺であること、さらに水木から若い女は順子かもしれないと意見具申。ここに三船主任は、関係者が青森に集結していることも鑑み、畑野とともに青森へ向かうのだった・・・。

 

 

この後、舞台は青森県へ移り、三沢駅、古牧温泉、博物館ホテル、小川原湖(あるいは十和田湖)と場面は動き、東京から来た

・久子、佳子

・千津子、さえき、さえきの連れ子・ゆういち(未詳)

・にしな、順子

の3つのグループ、そして三船班がどう絡んでくるかが見どころになります。

青森県では、新たな主要キャストとして、所轄刑事・てらだ(宮浩之)、所轄刑事(夏木章)、医師(山本廉)、地元の演歌歌手(中里このえ)などが登場、これもまたどういうふうに関連していくのかも興味ある点になります。前作の#669 転落の詩 で、キーマンとなったマスター役の桐原史雄は当作では未出演のようですが。。。

そして事件は、三船主任、畑野が、開始約31分過ぎ、古牧温泉の階段で見かけたある出来事を布石に、大きくストーリーは展開、小川原湖でのラスト大団円となって幕を閉じます。

 

 

前作に引き続き、当作でもやはり「粗」の部分が見受けられます。強盗部分と窃盗部分の犯行時刻のバランスで、もしすべての証言通りにみれば

・いつ、ツクバ洋装店で強盗事件があったのか

・いつ、「ある人物」が金を掏摸取ったのか

がわからなくなります。まあ、前者については、最終的に真相解明となれば「虚偽」で済みましょう。後者についても、「いつ」という点では三船主任ですらも追及していないので、「目に見えない場面のどこか」で済むのかもしれません。が、視聴者からみれば、「フェイク」「説明不足」と言われても仕方が無いでしょう。

(雀荘チヨダから用水路までの、人物描写の繋ぎに?もありますが、ストーリーの展開に影響は無いので、これには目を瞑ってもいいかもしれません・・・)

 

ところが、その部分を除けば、「小川原湖でのラスト大団円」まで至る展開が、監督は違えど傑作・#562 真夏の逃亡者 を思い出すような勢いある展開、そして古臭いと言われようとも題名にふさわしいテーマを、ラストで印象深く昇華させた傑作・#623 ある夜の 出来ごと を思い出すようなパワフルな演出。前作で詰めの甘さが目立った天野利彦監督とは思えない、素晴らしい出来栄えです。

この違いは、東京での出来事を約15分半(全体の1/3)で終わらせ、青森での主要な展開を残り2/3(残り30分弱)に凝縮したことにあると思います。前作は東京での出来事を28分半で終わらせ、その後青森篇になるのですが、この時点で残りが20分を大きく切り、さらに東京での回想場面が過多でありました。

つまり、前作では、ロケ特有の「分散破綻」が短時間・回想場面過多によって発生、さらには「ポイントとなるべき場面の描写」が欠落していたのが評価を下げる原因でした。それと比べると、当作の流れは非常に心地よく、場面転換も上記の「粗」を除けばスムーズであることに加え、様々な伏線を張っていることも評価できます。「ある人物」が、なぜ「あの場所」に現われるるのかという点も、開始約11分の場面を思い起こせば膝を叩けるようなつくりも一例です。

 

そして、アニメではないほうの、映画「君の名は」(1953年、主演・岸恵子、監督・大庭秀雄)、NHKドラマ「君の名は」(1991年、主演・鈴木京香)思い出すような、「すれちがい」を上手く活用した描写も見逃せないところ。「母」に会えそうで会えない、そしてそれは1人の「娘」からではなく、もう1人の「娘」からの視点となり、場面を変えて「母」からの視点ともなります。ここいらは、上記作品を意識した横山保朗の脚色もあるのでしょう。あるいは、1933年生まれの天野利彦監督が、若さ溢れる20代に観た「君の名は」を思い起こした演出なのかもしれません。

ただ、惜しむらくは、前作同様「情の男」の三船主任を描いていながら、「ある人物」だけにはそれを見せない描写にしているところです。石原の「まだ・・・気がついておりません」、松木の「知らせないんですか・・・?」の言葉を受けても、表情を変えず言葉を返さない。そして、ラストに至っても、三船主任は「情」の部分を出さずに、「第三者」の発言、雰囲気でわからせるようにしているのです。これは好みの問題でしょうが、個人的には、最後の最後で「情の男」というか「仏の顔」を見せても良かったとは思いました。

 

まとめてみると、当作は傑作には至らないものの、佳作以上のデキにあるといえるでしょう。【第3回再放送】のころの調子に戻れない天野利彦監督が、前作をステップに本領発揮した作品とみて良いのではと感じました。心配なのが、ロケ2本撮りという公式が成り立つなら、まとめきれない作品と酷評した#673 ある 追跡の記録 は愛知県(名古屋)ロケが気になるところ。もう1本のロケ作品が有るならば、デキはどうなんだろう・・・ふと不安になります。特捜隊四天王監督として、まだまだ頑張ってほしいのですが。。。

それでも、2019年6月6日は、#675 疑惑の夜 と続けて良作の再放送に恵まれた日でありました。これが、来週、再来週・・・と続けてくれることを祈るばかりです。

 

あと、当作は御贔屓女優・高野ひろみが出演。前作に続いて、出演場面は多くなく、主演から脇役へのイメージですが、この人が出演する作品は本当に良作が多いですね。偶然にも、当作を観て思い起こした上記の2作品は、いずれも高野ひろみ出演作品です。出演作品のほとんどが観賞に堪えうる作品であるというのも不思議なところです(だからといって、良作ばかりかというと、出演場面は少ないですが#584 新鮮な女 のような、収拾しきれないストーリーとなった作品にも巡り会います)。

テレビドラマデータベースで、高野ひろみ、あるいは高野ひろ美で検索すると、自分が録画保管しているのは、特捜隊のほかは時代劇ばかりですね。時代劇顔とはさほど思えないのですが、もう少し現代劇にも軸を置いていたら・・・とも思います。そのテレビドラマデータベースによると、#659 俺が愛した女だ!! が特捜隊最終出演作品とあったのですが、前作、当作出演と嬉しくもそれは「誤り」でありました。「高野ひろみの特捜隊出演作品に外れ無し」というイメージからも、このまま「誤り」が続いてほしいと期待します。

 

(追加)

「提示版特捜隊 8」に、当作は特別機動捜査隊(第374回)戦車に乗ったサンタクロース の改作とありました。【第2回再放送】でも欠番とならず放送されており、検証本202頁の(あらすじ)に酷似しているので、当方未見ながらも間違いはないと思われます。生田三津子(のちの生田くみ子)、橋本菊子が引き続いて当作出演しているのが興味深いところ。