※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#675  疑惑の夜

 

 

 

(本放送)・・・1974年10月9日

(再放送)・・・2019年6月6日

(脚本)・・・村田武雄

(監督)・・・龍伸之介

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・矢崎班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(西郷昭二)、鑑識員(田川恒夫)、

事務員(田中正吾)、谷山部長刑事(和崎俊哉)、岩下刑事(岩下健)、

保田刑事(船水進)、桂刑事(佐竹一男)、田坂刑事(倉石功)、

矢崎主任(亀石征一郎)

 

(出演者)・・・

藤本三重子、藤田安男、照井湧子、島田潤子、九重ひろ子、仙波和之、

直木みつ男、紅理子、畑有利子、岡崎夏子、山岡葉子、宮田羊容、如月寛多、

平凡太郎

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

殺されたのは、繁盛していた料亭の老主人。

物取りの仕業か?

500万円の現金が無くなったこの事件は、

料亭従業員の慰安旅行の夜に起こった出来事であった。

東京に残った老主人を殺(ヤ)ったのは誰か?

犯行の手口は、

料亭の事情に明るい者の仕業・内部犯行説が有力であったが、

確証がどうしても得られなかった!

犯行に使われた凶器は、板前見習いの少年のものであったが、

少年を追ううちに、事件の真相は意外な方向へと進んでいく・・・。

時価数億円という、遺産目当ての犯行か!?

そして、500万円の行方は・・・!?

次回、特捜隊、矢崎班の活躍、「疑惑の夜」に御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・劇中に木製電柱が登場するが、自分自身でも、昭和の終わるころまで東京23区内(世田谷区、杉並区)で見かけたと記憶する。

・この当時(1974年)の遺産相続の割合は、現行民法(2019年現在)とかなり異なるため、以下本文では割合について敢えて表示しない。詳細は、#455 金髪と口紅 、#486 明日は来らず を参照のこと。

・終盤で「ある人物」が電話をかけている駅前は王子駅であるが、都電荒川線が映らないところから、現在の「北とぴあ」周辺と推察。

・再見時視聴=#675 疑惑の夜【スペシャルセレクション】

 

 

 

(視聴録)

・・・開始約18分前半まで

 

村山銀八(如月寛多)が腕一本で築き上げたと誇る、割烹料亭・銀八。その娘・ひさ子(藤本三重子)は母の亡きあと女将として奮闘、薄水色割烹着の仲居(島田潤子)、桃色割烹着の仲居(照井湧子?)、年配の仲居(九重ひろ子?)もフォロー、板場の板長・亀山(宮田羊容)、次板・浪岡(平凡太郎)、見習板前・寺島(藤田安男)、パート老婆(岡崎夏子?)も同様だった。

 

そして、ある雷雨の夜、常連の栗林(直木みつ男)、川端(須永康夫)がくつろぐ中、ひさ子から本日は早仕舞いしたいと申し出る。実は、今晩、慰安旅行のため車で箱根湯本へと出かけるからだが、板場では寺島が浮かれ気分もあるのか、小型ナイフで彫物をしている。

ようやくひと段落がつき、出発の手はずとなるが、寺島は体調不良の様子で、ひさ子・亀山が熱を測ったところ、高熱のため取り止めて2階で休むことになる。亀山も妻(未詳)が風邪をひき、自宅看護のため辞退する。そして、銀八自身もなぜか行くことを辞退したため、浪岡の運転のもと、ひさ子、薄水色仲居、桃色仲居、年配仲居の5人で行くことになった。

しかし、深夜の午前3時、料亭・銀八では軍手をした侵入者が、板場に彫物と一緒に置いてある小型ナイフを手にして、居間の金庫を開けようとしていた。そこに現われた銀八が、「誰だ」と叫ぶ間もなく、侵入者は胸を刺し、銀八は絶命する。

 

夜が明けて、通報を受けた矢崎班は現場に到着、捜査に入る。今朝8時30分、トイレに降りてきた寺島が、銀八の姿が見えないので居間に入ると銀八の死体を発見。そして、亀山の自宅へ9時前に知らせに行き、駆けつけた亀山が110番、箱根湯本の宿泊先へと連絡、ひさ子たち5人も急遽帰京、現場で捜査を見守っていた。

侵入経路は勝手口のガラスを割ってのものだが指紋は採れず、金庫は開けられ、ひさ子によると現金500万円、売上金30万円強が無くなっているとのことだった。さらに、銀八は競馬に入れあげており、500万円は競走馬の購入資金であったという。また、ひさ子には弟・隆史(志賀圭二郎)、妹(戸板順子?)がいるが、ずっと前に家を出ており、ひさ子自身は2年前に夫(未詳)と離婚、銀八自身も還暦過ぎのため女性関係は有り得ないと証言する。

 

その後、料亭裏の木製電柱に血のついた小型ナイフが刺さっているのを桂が発見、引き抜いた矢崎主任は関係者の前で見せたところ、寺島が自分のものだと申し出る。ひさ子は、不用意に板場に置いたことで寺島を責めるが、寺島は高熱だったからだと弁明する。が、谷山は、板場には他に凶器になりそうな包丁があるのにと、矢崎主任に素朴な疑問を投げかける。

 

料亭の外では野次馬(榎本英一、松下昌治、佐川二郎)が、一等地にあることから料亭の価値を2億1千万円と値踏み、相続云々の噂話が絶えない。店内では、かかってきた電話を切ったひさ子は、浪岡から、昨晩11時ごろ表に隆史がうろついていたという近所の目撃談を聞く。たまらず、ひさ子は隆史の住むアパートへと向かうが、桂、岩下はそれを尾行する。着いたひさ子は、隆史の行方を妻・千枝(山岡葉子)に聞くが、昨日から帰らず、赤ん坊がいながら自称作家の隆史は酒浸りの生活をしているという。そんな中、酒に酔った隆史が帰宅、昨晩は金の融通のため実家へ出かけたところ「休業」の札が出ているので帰ったと言うが、銀八が殺害された話をひさ子から聞き夫婦共々驚く。

 

その後、料亭・銀八にひさ子、隆史が揃うところに、妹、妹の夫(平井一幸?)がやって来る。ひさ子は、妹が家を出た経緯から銀八の死を連絡せず、妹はテレビのニュースで知ってのものだった。妹夫婦は、ひさ子への非難もそこそこに遺産相続の話を始めようとしたところ、幼い女の子(未詳)を担いだ中年女(伊藤慶子?)が、泣きながら入って来る。実は、銀八は家族に内緒で中年女を囲い、幼い女の子は実子だった。昨晩中年女のマンションに来た銀八は、自分の身に何かあったときの遺産相続の話をしていたということだが、このいきさつを矢崎主任は見て訝しがる。

 

その後、谷山は浪岡からの話で、豪放磊落な銀八、堅実派のひさ子の親子喧嘩は度々で、さらに料亭・銀八の土地は馬への投資で底をつき、建物も抵当に入れたことが明らかになり、銀八は高利の金にも手を出していたようだった。矢崎主任は、金銭問題の点からひさ子、事件当夜2階にいた寺島、旅行に行かなかった亀山を怪しいと睨む。そして、田坂からは、旅行の5人はその晩10時に箱根湯本に着き、犯行時刻は就寝中ということ。保田からも、亀山は一晩中妻の看病をしていたことが往診医の証言で判明した。そこで矢崎主任は、寺島に的を絞り捜査にあたろうとするが、谷山、田坂から異論が出る・・・。

 

 

かなり、長くなりましたが、ストーリーはこれからも幅広く展開します。【第3回再放送】での立石班時代を思い出すような、流れと勢いのある刑事ドラマです。登場人物も、その後、料亭・銀八の浮沈を握る高利貸(山田光一)が出てきたり、事件の影に女有りではないですが、やくざの情婦のホステス・歌子(紅理子)、そのやくざ・稲村(仙波和之)、トルコ嬢・なかだ頼子(畑有利子)、などが現われ、料亭・銀八の関係者とどのように繋がり、展開していくか非常に見どころがあります。そして、その話の展開には、新事実を映像で表現、回想も交えながら進展するなど、【第3回再放送】でもみられた、オーソドックスな演出であることも見逃せません。

これは正直、龍伸之介監督の久々のヒット作といっても良いでしょう。最初から最後まで面白く観ることができました。

 

 

確かに、辻褄が合わない、なんだかおかしい話だなと思えるところはあります。一番に考えるところは、犯人はお金を盗むために侵入したのか、銀八を殺すために侵入したのか、これが序盤の小型ナイフを採るところと整合性がとれないところであります。全員が旅行に行くということが前提での犯罪予定というのなら、なんとか繋がりそうですが、そこいらへんが真相解明の時、自白も含めた描写不足というのが物足りないところ。

ただ、これを除けば、(澱みはありながらも)ストーリーは勢いに任せて流れ続けます。遺産相続の話はどこへという点も、遺産相続の実態を知っていれば、開始約15分半ば、24分後半、での場面である程度納得できます。開始約29分からの血痕付きの軍手の発見も、開始約20分からの場面を思い起こせばニヤリとするなど、こういうところは整合性を持たせています。

 

さらに、終盤のアクションについても、近作では抑え気味だった矢崎班の追跡が展開、荒々しい取調べも「武闘派」らしさを思い出す場面です。そして、三船班を意識したような「情」の部分を描写した約3分間のラスト展開、決して「力」で押し通す捜査班ではないことを示す演出も目を見張るところ。この点は人によっては、大げさとか思われる場面でしょうが、近作で不調がうかがえる龍伸之介監督の新境地として見ることもできるでしょう。

【第4回再放送】となり、完璧とはいえないまでも#655 ある特捜記者 で復調がうかがえた龍伸之介監督ですが、同じ佐々木武観脚本での#667 失われた週末 ではストーリーの広がりに収拾がつかなくなり、危惧していました。ですので、オープニングで監督名を見たとき「大丈夫か?」と思ったところがあります。ところが、観終わってみれば面白かったと感じたのですから、実見した自分自身も驚いています(笑)

 

自分自身は、龍伸之介監督の特別機動捜査隊(第139回)密航 は未見ですが(【第1回再放送】では欠番とならず放送歴有り)、それが村田武雄脚本でありました。

>韓国映画「玄界灘は知っている」でヒロインを演じた孔美都里が

>龍伸之介監督の紹介で出演。

とあるのですから、(組む回数は少ないとはいえ)気心が知れた同志ではなかったか。脚本が監督のヒロイン抜擢の意向を汲んで、脚色した可能性は考えられます。

そういう仲ならば、リラックスした演出となり、それが作品に反映された・・・、あくまでも想像というか妄想でありますが、10ならずとも5は当たっていると思います。そうでないと、不調からここまで飛躍する理由が思いつかないのです。。。次作にも期待したいところです。

 

さて、主演ゲストの藤本三重子ですが、本業は歌手ながら硬軟上手く演じられるように感じます。高野ひろみも硬軟演じられる女優さんですが、藤本三重子の本業(歌手)を考えると二刀流の凄さに驚きます。歌手でありながらの特捜隊出演では、ほかに小林幸子(小林さち子)がいますが、そちらは「陰」の部分のみが強調されるような作品ばかりが目立ちます。ですので、藤本三重子のような、「対比」できるような役柄を演じるのは貴重でありましょう。

ただ、ネット検索しても、歌手としての実績ばかりというのが残念、wikiも項目が設けられていません。女優としての藤本三重子が、もう少し注目されれば・・・と考えます。