※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#667  失われた週末

 

 

 

(本放送)・・・1974年8月14日

(再放送)・・・2019年5月9日

(脚本)・・・佐々木武観

(監督)・・・龍伸之介

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川恒夫)、関根部長刑事(伊沢一郎)、

水木刑事(水木襄)、石原刑事(吉田豊明)、松木部長刑事(早川雄三)、

畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

山本豊三、新草恵子、吉田未来、内海敏彦、山崎みき、古川義範、遠藤孝子、

大原百代、本田竜彦、谷本一、宮沢康、荒木将久、打越正八、深雪けい子、

奥野匡、綾川香、水村泰三、星美智子、外野村晋

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

一度は事故として葬られた、

会社社長の死因に疑問をいだいた三船班は、

秘かに捜査を開始した。

そして、石原刑事が何者かに襲われた。

生前の社長と秘書との秘め事・・・。

社長の椅子を巡る、専務と常務の確執・・・。

死体発見者であり、事件のカギを握る庶務係長の失踪は、

何を意味するのか・・・?

石原刑事は、大学の先輩の失踪に、単独捜査を願い出た!

次回、特捜隊、「失われた週末」に御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・有川千沙を演じた吉田未来は、奇しくも特捜隊番組終焉後、ザ・ハングマンⅡ・#12 ギャラは人妻! 売れっ子評論家を吊るせ にて、青木義朗、伊沢一郎と共演している。

・修一を演じた内海敏彦は声優としても著名で、外国人俳優ではマーク・レスターの吹替をやっていた。

 

 

(視聴録)

・・・開始14分前半まで

 

大東京産業住宅の社長・津山(奥野匡)が死去、夫人(星美智子)、娘・尚子(遠藤孝子)、尚子の夫で会社の総務課長・河本剛(古川義範)は、通夜の弔問客に対応している。弔問客には、専務・豊田三喜(外野村晋)、常務・高村明(綾川香)、軽井沢で静養中の会長が来れないため、代行弔問の会長秘書・有川千沙(吉田未来)がいたが、その中には三船主任もおり、さらに通夜を三船班総出で監視していた。というのは、津山の遺体は奥多摩の渓流で発見され、当初は橋から転落した事故と思われていたが、不審な点があり殺人と断定されたからであった。そして、発見者である庶務係長・西崎竜治(山本豊三)が直後から行方不明のため、張り込んでいたのである。

 

庭先で不穏な人影を目撃した石原、水木は、逃げた人影を追跡。石原は、追跡途中に電話ボックス脇で男を発見・訊問、すると、それは西崎であり、石原の大学時代の先輩でもあった。しかし、西崎は逃げ、石原は追いかける、すると石原は後ろから殴られ昏倒、見失う。

 

翌日、西崎の妻・康子(新草恵子)、息子・修一(内海敏彦)、娘・ゆみ子(山崎みき)の住む、団地の一室を松木、水木は監視。西崎がいまだ帰宅していないことにやきもきしているが、実はこの様子を陰から窺い、西崎が康子に電話していることは知る由もない。

松木、水木からの報告を受けた三船主任は、会社へ聞きこむ関根、畑野と合流して、津山の身辺を捜査するよう指示(その後、松木、水木の捜査は津山の人間関係に絞られる)。そして三船主任は、怪我を負った石原を叱咤しながらも、津山家に出向くことになるが、その途中、(西崎との先輩後輩の間柄もあり)石原からの単独捜査の申出に、私情が挟むため反対・却下する。

 

社内捜査の関根、畑野は、守衛(未詳)から、西崎は津山から人一倍信用されていたことを聞き出す。そして、社内では、次期社長就任を巡って、津山夫人・尚子・河本と昵懇の豊田、津山・西崎と関係の近い高村、の駆け引きがあり、会長に近い立場の秘書・千沙もその流れに巻きこまれようとしていた。

 

津山家捜査の三船主任、石原は家宅捜索、津山が奥多摩に土地・建物を1億円で購入した契約書を押収したが、夫人、尚子、河本は売買を知らないようであった。さらに引き上げる直前、お手伝い(大原百代)が夫人あての電話を伝え、夫人が出ると相手はサングラス男(水村泰三、註・この場面は映像表示)で、金の無心のようだが、それを石原は怪訝に見つめていた。

 

一方、松木は喫茶店で会社の女性社員2人(未詳)の噂話を耳にする。西崎が真相を握っていること、津山と千沙が特別な関係なこと、千沙には婚約者がいて福岡へ転勤、1年前に死去したことであったが、松木はさらに詳細を知るべく2人に聞きこみ、田中係長へと報告する。

特捜隊本部では、三船主任、田中係長、関根が、それまでの情報のほかに、会社は津山夫人の父親と静養中の会長との共同出資で創立されたこと、持ち株の大半は夫人・尚子で実権は津山親子が握っていること、千沙の婚約者については福岡県警に調査依頼中であること、津山生前中から次期社長を巡り豊田派・高村派が争い、西崎も噛んでいることがまとめられる。しかし、三船主任は石原から何も連絡が無いことに不満を募らせるのであった・・・。

 

 

ストーリーは、その合間あるいはその後、西崎と家族、西崎と忠誠を尽くす会社との関係が描かれています。前者については、石原が西崎の後輩であるという人間関係から、康子、修一、ゆみ子との会話、ふれあいにもスポットを当てています。

そして、料亭での高村、千沙の密談、豊田と河本との株の買い占めへの対応の場面から、三船主任自ら千沙への聞きこみとなり、千沙が事件当日、伊豆下田にいたという主張から、再度奥多摩の現場へと三船班総出(石原除き)の捜査となります。そこで、木こり(未詳)からの新証言をきっかけに様々な情報を得て、田中係長からも有力情報が入り帰京します。

石原も、西崎家とのつきあいから、徐々に真相に近づき、ついに三船班、石原、主なる関係者が奥多摩へ再度終結、真相究明の場面となります

・・・開始約35分ごろ・・・。

 

 

当作の狙いは、会社社長の死をきっかけに、後継者争い、社長・部下の家庭の状況を並行しながら描くねらいがあったのだと思われます。そして、主人公たる西崎の会社への忠誠心、争いに巻き込まれた千沙の心の動きなど、見どころを設定したものでしょう。そして、そのストーリーの意図は成功しています、ただし上記本文の開始14分前半までですが。

 

というのが、後継者争い、社長・部下の家庭の状況のテーマがそれぞれ興味をひく題材であり、内容が複雑で大きいものであります。なので、それを紹介するまで(開始14分前半まで)は上手くいっているのですが、展開・まとめの段になると整理整頓できていないのが目立ちます。例の奥多摩の物件は、一体どうなったものか・・・。

特に、石原の単独捜査は「予告篇」でも紹介されている通り、見どころのひとつなのですが、単独捜査に至る過程が先輩後輩だからだけというのも薄い理由づけで、その家族との信頼関係も、そこまで至る経過がわかりづらいというのがあります。これは、石原と康子の会話場面が少なく、子供2人も石原を信頼したように見えない場面も問題でありましょう。

 

何よりも、千沙の立ち位置がよくわかりません。津山の死後、権力争いに巻きこまれて可哀そうなのか、高村寄りなのか、西崎寄りなのか、どうもチグハグな描き方です。そして、津山に寄り添うという姿勢を突き通すなら、それこそ静養中の会長の存在が必要なのですが、ここはクローズアップされません。また、何よりも婚約者・桜庭の話が突拍子も無く出てきて、この事件に関わりが有るのか無いのか、伏線も見えにくいのが難点です。

ラスト5分での奥多摩の場面、果たして千沙はどうなったのか、この点も不明瞭で終わっています(付け加えれば、序盤で石原を昏倒させたのは誰かという問題も・・)。ラストの大岡裁きで、千沙の話題が出てこないのも不自然であります。

 

これらの点を考えると、題材があまりに広汎になったため、各論を深く掘り下げることが出来ずタイムアップ、表面的描写となってしまったことが原因だと思われます。

個人的には、西崎の家庭の問題についてはあまり取り上げず、後継者問題における会社の腐敗を深く取り上げた方が良かったと考えます。そして、その題材こそが、龍伸之介監督が得意とする分野であり、構成を取り違えた感が強い。

#655 ある特捜記者 で復調したと思われた龍伸之介監督ですが、また袋小路に入ってしまったのか・・・?

 

この点は三船班ストーリーも同様で、#655 ある特捜記者 より以降は、「らしくない作品」が続きます。こんないきり立つ三船主任は、【第3回再放送】でも続いたことはなく、【第4回再放送】は矢崎班とのバランスでこうなっているのでしょうが、それでも違和感があることには違いありません。「鉄の男」が、実は「情の男」だったのが、三船主任の特徴であるだけに、このスタイルにノスタルジーをつい感じてしまう、最近の作品です。。。