※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#666  剣と女

 

 

(本放送)・・・1974年8月7日

(再放送)・・・2019年5月2日

(脚本)・・・元持栄美

(監督)・・・伊賀山正光

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・矢崎班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川恒夫)、谷山部長刑事(和崎俊哉)、

岩下刑事(岩下健)、保田刑事(船水進)、桂刑事(佐竹一男)、

田坂刑事(倉石功)、矢崎主任(亀石征一郎)

 

(出演者)・・・

水木梨恵、渡辺康子、杉野公子、片山滉、紅林清子、田沢裕子、中西正、降旗慶一、

木村修、武内正治、佐東誠、木挽輝香、松村彦二郎、加藤土代子、高木二朗、

花上晃、六本木真、浅香光代

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

元女剣劇の座員だった男が殺された。

捜査の結果、殺された男は、

貿易会社の部長の子供を誘拐し、

2千万円を脅迫していたことがわかった。

だが、誘拐された子供は、

男が殺される前に何者かによって救い出されていた。

子供が犯人を目撃したとみた矢崎班は、

その線から追及したところ、容疑者として

女剣劇のスター、浅沼光江と香島弘子が浮かんだ!

そして、子供の父親と香島弘子には、隠された秘密が・・・。

次回、特捜隊、「剣と女」に御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・紅林清子は、下川清子からの改名。

・水木梨恵は、#615 下町の灯 以来、リアルタイムでは約1年ぶりの出演だが、前作でも同様に女剣劇を演じていた。

・当作は、男女とも苗字よりも名前で呼ばれる場面ばかりのため、初出以降は名前で以下本文を作成。

・再見時視聴=#666 剣と女【スペシャルセレクション】

 

 

 

(視聴録)

・・・開始19分初めまで

 

ある会社の一室、営業部長・芦川英彦(六本木真)はある男からの電話にかかりきりで、秘書(田沢裕子)に部屋に入らぬよう指示をする。電話内容から、英彦の娘・朋子(杉野公子)が誘拐されたことは明らかで、午後4時、廃工場へ2千万円を持ってくるよう脅迫されていた。

 

時が経ち、廃工場で男(花上晃)の死体が発見され、矢崎班は現場に到着(註・ここで、視聴者は死体の男が誘拐犯とわかる)。死因は前頭部を一撃で即死、死亡時刻は午後4時30分と推定され、所持品に居酒屋・やまとのマッチ箱、遺留品に子供のブローチ、盗んだと思われる車の中にスヌーピー人形が発見された。

 

盗難車の線から、田坂、保田は、所有者であり、女剣劇の大御所・浅沼光江(浅香光代)の住むマンション・361号室を訪ねるが不在。留守番の運転手・かのう(木村修)によると、光江は稽古中とのことで、共に稽古場に向かう。そして、光江を尋問すると、当日の午後12時以降に盗まれたのかもしれないと語る。しかし、男の写真を見せると顔をしかめ、知らないと言い張るが、それを保田は怪訝に見つめていた。

 

居酒屋・やまとでは、新進の女剣劇役者・香島弘子(カシマヒロコ、水木梨恵)が一献傾けているのを、女剣劇ファンの店主(松村彦二郎?)、その妻(加藤土代子)が見つめていた。そこに谷山、桂が訪れ、店主夫妻に男の写真を見せると、古谷金一だと証言する。金一は、2,3年前までは真面目だったが、無銭飲食、女へのタカリなどで身を持ち崩していた。そして、金一は光江の一座にいたことがわかるが、時を置かず、弘子は席を立ち店を出る。

弘子が向かった先は、英彦の家の前であった。ちょうど、医者(片山滉)が朋子に鎮静剤を注射して、母・美佐子(渡辺康子)が送り出すところだった。朋子は、午後5時過ぎに、右腕を怪我して声をあげ帰宅、極度の恐怖感に襲われていたからで、寝室では英彦が看病していた。しかし、何があったのか、朋子が語ることはなかった。

 

特捜隊本部では、鑑識から、現場の壁の血と金一の血とは型が不一致、盗難車の指紋のひとつは金一のものであることが報告される。また、岩下からは、金一は5年前に光江一座に入団、2年前に退団したこと、退団理由は不明で光江も一言も語らないことが報告される。

矢崎班は光江の行動を監視、光江が現場の廃工場に花を添え拝んだことから、矢崎主任、田坂、桂は問い詰める。光江は情けゆえと答えるも、ならば金一が身を持ち崩したとき、なぜ助けなかったかの問いには、無言で去っていく。その光景を見つめていたのが英彦であったのだが、矢崎主任は見逃さず、田坂に英彦の尾行を指示する。

光江が向かった先は、金一の愛人(紅林清子)の家で、保田、岩下が監視。愛人は妊娠しているようだが、なぜか光江を避ける。そして、光江が葬儀の足しにと渡した袋も拒絶する有様で、保田、岩下も目を合わせるばかりであった。

 

一方、英彦を尾行中の田坂は、英彦と弘子が会っているのを目撃する。2人は剣道を通じて知り合い、英彦は弘子の舞台を観に行くほどで、男女の仲でもあった。ただ、かつて英彦はロンドンへ赴任したこともあり、それがきっかけで、以来2人の関係は離れていたようにも見えた。

その夜、愛人は、夜遅く産婦人科・墨田医院の前で、入るかどうか躊躇していたが、結局入るのをやめた。それを監視していた、矢崎主任、保田、岩下は訊問する。そこで出てきた言葉は、金一は光江を忘れられず、光江が原因で身を持ち崩し、自分は光江を忘れるための場繋ぎに過ぎなかったというものだった。しかし、それでも金一が好きだという真情の吐露に、矢崎主任は黙って頷くだけであった・・・。

 

 

その後、英彦が東丸証券を通じ、株売却で2150万円を工面したこと、英彦が専務(高木二朗)から妙な感謝をされたこと、朋子は金一殺しの犯人を見たかもしれない、という流れがストーリーに加わります。そして、弘子と座員(降旗慶一、武内正治、佐東誠)との稽古中に光江も加わり、2人の腕前に谷山は双方とも「面」が得意(金一の死因)という共通項を見出します。

さらに、桂から英彦が剣道五段で「面」が得意という報告もあり、矢崎主任は、身代金の行方と、英彦と弘子の関係に的を絞り、捜査は進行していきます。

・・・・以上開始33分半ばまで

 

 

矢崎班は容疑者を上記の3人まで絞り切るのですが、鍵となる朋子の目撃はどうなったのか、朋子を取り囲む関係は何なのか、これがどんどん展開していきます。

刑事ドラマの枠組みでは、なぜ朋子の誘拐に至ったのかという描写が欠けており、役所の場面で登場人物の人間関係・真相などわかるだろうというツッコミがあるなど、真相追及という点からはやや物足りない感じがします。

しかし、人間ドラマという枠組みでは古臭い展開・演出かもしれないですが、これが意外にもツボに入り、自分はラストまで面白く観れました。

 

龍伸之介監督と組むのが多い脚本・元持栄美ですが、本来のストーリーの締めは英彦と弘子の関係の部分で、盛り上がりを開始35分前半-36分前半をピークに設定したと考えられます。そして、龍伸之介監督ならここの部分にチカラを注ぎ、たぶん5分は尺をとって描写したのではないか、そう思われる題材です。

ところが、当作は伊賀山正光監督で、中村経美監督のようにあっさり普通に描写するタイプと自分は評価しています。当作は、これが吉か凶、どちらになったのか。。。

 

実は、当作で良いところは、逆に抑揚が少なく(というのが、女剣劇の部分だけで、かなりの抑揚を醸し出しているため)、盛り上がりをあっさり描くことで全体のバランスがとれているということです。この点、もし上記の龍伸之介監督風の描写だと、盛り上がり過ぎで「息継ぎ」の無い作品となりかねず、逆に平々凡々の伊賀山正光監督風の描写だから、ラストまでバランスよく観れたのだと感じました。当作が最後まで興味津々に観れたのは、この脚本ゆえ、この監督というわけではないでしょうが、制作の中井義プロデューサーにあるともいえそう。

 

ただ、刑事ドラマとしては上記の欠如部分のほか、田坂の独断専行的なツッコミが鼻につきます。捜査班は違えど、#661 ある女刑事の逆襲 で三船主任が発言した

>探偵の真似事より特捜のひとつの歯車として、言われたことを忠実に

>やればいい

というのを、ふと思い出します。

これが、同じ刑事ドラマでも「特捜最前線」の船村刑事(大滝秀治)のストーリーなら、「信念」を前面に出して描写できるのですが、ひとりの主人公刑事のパターンが稀有な特捜隊では難しいのかもしれません。まあ矢崎班が登場して、間もありませんから、慣れなのでしょうが。。。

 

さて、当作は、ゲストとして、「浅香光代を喰った水木梨恵」というのが妥当な見方だと思います。剣戟しかり、ストーリーしかり、たぶん【第3回再放送】から観たなかでは、1番の存在感を示したのではないかと思います。

調べてみると(備考)のとおり、ブランクがあったのですが、この1年の間に何があったのかと思えるほどです。恵まれた役といえばそうなのですが、ここまで演じられたのは女優としての鍛錬の場をこの1年間、どこかで与えられたからとも想像してしまいます。しかし、テレビドラマデータベースによると、当作以降は、特捜隊出演3回、大映テレビ制作・坂上二郎主演の「夜明けの刑事」1回に限られており、特別機動捜査隊(最終回(第801回))浮気の報酬 を最後に女優業からフェードアウトしていったようです。

→(追加訂正)R2.8.13

水木梨恵の最終出演作は特別機動捜査隊(第800回)あゝ夫婦 と判明したので訂正。