※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#689  復讐の構図

 

 

 

(本放送)・・・1975年1月22日

(再放送)・・・2019年7月25日

(脚本)・・・佐々木武観

(監督)・・・鈴木敏郎

協力)・・・無し

(協賛)・・・北海道テレビ放送、近海郵船株式会社、阿寒バス株式会社、

       釧路・東映ホテル、釧路・空港エメラルド カントリークラブ

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、田中係長(山田禅二)、石原刑事(吉田豊明)、

水木刑事(水木襄)、松木部長刑事(早川雄三)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)・・・

剣持伴紀、谺のぶ子、大林隆介、木村豊幸、山下勝也、千歩憲生、大阪憲、

本多洋子、菊地正孝、津田耕次、瀬良明、進藤幸、夏海千佳子、大堀早苗、

明石潮

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

卑劣な大資本の力によって会社を潰され、

自殺に追い込まれた、ある経営者夫妻。

その両親の無念を晴らすべく、憎い事業家に復讐を迫る息子は、

新婚の令嬢を誘拐して、釧路へ連れ去った。

娘の身を案じて苦悩する老人○○(註・聞きとれず○○表記)。

だが、当の令嬢は、父親の冷酷な一面を初めて知り、

男への同情と理解を深めていく・・・。

ふたりの行方を追う三船たちの前に、現われたひとりの女・・・。

事件のカギは、彼女が握っていた!

北海道の川湯温泉付近の山野に展開する、愛と憎しみの対決!

次回、特捜隊、「復讐の構図」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・東京フェリー埠頭は、現在の東京港フェリー埠頭。近海郵船により、1972年7月から「東京港⇔釧路港」の旅客航路が開設された(当作放送時はこの航路が存在)。その後、1997年4月には「東京港⇔釧路港⇔十勝港」(変則的な三角航路、東京→十勝は無し)に拡大も、1999年11月をもって全航路廃止となった。

・劇中の釧路東映ホテルは現在閉館しており、同住所には、釧路ロイヤルインが建っている。

・劇中のキャバレー・銀の目は、1958年開店の老舗店舗だったが、1993年には営業停止となり、2008年には親会社が経営破綻のため破産手続き開始とある(北杜の窓、2008年12月16日記事参照)。

・釧網線(センモウセン)は釧網本線のことで、本来は「東釧路駅⇔網走駅」の路線。しかし、釧路管内の「釧路駅⇔川湯温泉駅(註・当時は川湯駅か? 後述)」の区間もあるので、劇中釧路駅前での水木の「釧網線の始発」発言は、これを指しているものと思われる。なお、釧網本線自体が「維持困難な路線」とJR北海道から発表、正式な撤回発表が無く(wiki参照)、依然廃線の可能性は残されたままと感じられる。

・また、劇中では「川湯駅」とあるが、1988年に「川湯温泉駅」に改称、1995年には無人駅となっている。よって放送当時、釧路管内の釧網線は「釧路駅⇔川湯駅」だったと推察される。

・劇中の「硫黄山」とは、現在では「アトサヌプリ」と称されることが多い。阿寒バスのバス停、「川湯駅」は現存するが「硫黄山入口」は現存せず、硫黄山(硫黄山駐車場)に近いバス停は「川湯駅通」「66線」を残すのみである。

・川湯グランドホテルは、2006年にグランドホテルアレックス川湯としてリニューアルオープンされたが(るう美の気まぐれ日記、2013年10月12日記事参照)、東日本大震災の影響で休業(同上記事、あるいは北杜の窓・2011年6月6日の記事参照)。現在も休業らしき記事があるが、5年以上前の2014年11月11日の捨てアカ書きこみであり、ホテルのHPが存在・更新していることから真偽不明。

#689 復讐の構図 、#694 ある絶望の女 、ロケ地・脚本・監督・キャスティングから2本撮りと推察される。

・谺のぶ子の「谺」は、「こだま」と読むと推測される。当作以前には、#659 俺が愛した女だ!! にて、主人公の恋人役を演じていた。

 

 

(視聴録)

・・・開始約10分過ぎまで

 

ある式場では、新郎・川村喬司(大林隆介)、新婦・木下久美子(谺のぶ子)の結婚式が恙なく終わり、新婦の父で木下産業の会長・木下りゅうたろう(明石潮)、妻・嘉代(進藤幸)、木下の秘書・津山(大堀早苗)の喝采の中、木下の部下・武村(菊地正孝)の万歳三唱とともに、2人を乗せたハイヤーは走り出した。しかし、ハイヤーの運転手のはずの星川(大阪憲)は、頭から血を流し運転手控室へとたどり着き、同僚の桑本(木村豊幸)、吉沢(山下勝也)から介抱を受けていた。星川は「車を盗られた」「新婚の夫婦が危ない」と呟くのが精一杯であった。その言葉通り、運転手は別の男(剣持伴紀)に入れ替わっており、高架線下で車を止め川村を一撃。久美子を別の車に乗せ、何処かへ連れ去っていった。

 

星川は山東外科胃腸科へ緊急搬送の甲斐も無く亡くなり、駆けつけた三船主任・松木は同席していた家族・桑本・吉沢に、お悔やみとともに犯人逮捕の決意を表す。しかし、桑本・吉沢はそれらの言葉は耳に入らず、星川を撲殺した犯人への憤りを隠さなかった。

 

木下家の応接間では、誘拐の新聞発表を止められなかった武村を、久美子を無抵抗同然に奪われた川村を、それぞれ木下が厳しく叱責。そこに、三船主任・松木が捜査状況の説明に訪れ、犯人は久美子を連れ船で釧路へ向かった形跡を話しているところ、廊下にいた津山が久美子からの電話を告げる。廊下ではすでに嘉代が電話に出ていたが応答が無く、木下が代わると相手は話し始める。しかし、相手は金の要求をせず、「娘のことは自分の胸に聞け!」と突き放し、木下は「立松の小倅か?」と言い返すのがやっとだった。

 

電話は一方的に切れ、三船主任は応接間に戻り、木下に電話相手の心当たりを聞くが沈黙したままであった。そこに、暗黙の裡に電話を逆探知していた松木が応接間に戻り、電話は釧路市内若松町の公衆電話からかけられたものと報告する。これを聞いた木下は津山に釧路行きの手配を命じ、川村は目の色を変える。

 

特捜隊本部では、立松とは木下の親友の立松商事社長のことであり、1年前に倒産して、その責任をとって妻と心中したことが判明する。「立松の小倅」とは、その息子・立松重雄(註・以下は立松と記述)のことであり、5年前から欧州出張、2カ月前にオランダ支店から帰国しており、今回の殺人・誘拐は立松の仕業であると断定、石原も立松の顔写真を入手する。そこで、田中係長は立松の指名手配・逮捕状請求、松木・石原・水木は先行して飛行機で釧路へ、三船主任・関根は立松・久美子の足どりの確認も兼ね、船で釧路へと向かうこととなった・・・。

 

 

ストーリーは、その後舞台を釧路に移し、久美子を連れて逃げる立松を主軸に、追う三船班、木下・津山・川村、桑本・吉沢の3グループが描かれ、主要人物として

○釧路署所轄刑事・樋口(千歩憲生)

○キャバレー銀の目マダム・明子(夏海千佳子)

○炭焼き小屋老人・多吉(瀬良明)

が登場します。そして、木下の回想で、なぜ立松がこういった犯行に出たのかの原因がわかり、立松は木下の一番弱いところ(久美子のこと)を突いた復讐劇であることが明らかになります。その一端として、キャバレー銀の目に木下・津山・川村を呼び出し、メッセージを明子を通じて渡します。その内容は、自分と久美子は今夜夫婦となるという脅し(註・肉体関係を結ぶということを匂わす)で、精神的に木下を追い詰めるというものでした。

そして翌朝、川湯に向かったと思われる立松・久美子を、三船班と、合流した木下・津山・川村・桑本・吉沢の5人のグループとが、追う展開となります。

・・・以上開始約25分半ばまで・・・

 

 

当作は最初から犯人の見込みはついており、逃げる犯人、追う警察・家族関係者を描写したストーリーです。そして、北海道は釧路を舞台に、様々なロケ地を映し出し(自分自身も北海道のことは疎いところもあり)、興味ある風景を描き出すのに成功しています。これが佐々木武観がロケハンして脚色したのか、それともリメイク作なのかはわかりませんが、狙いとしては良いところを突いています。それは自分が(備考)で、ロケ地のことをいつも以上に記しているところからもわかると思います。

 

それでは、逃走劇として成功しているかというと、#562 真夏の逃亡者 のようなスピーディーさは無く、#565 誘拐 のようなサスペンスにも欠け、#462 幸せになりたい のような捜査の積み重ねによる犯人追跡劇まで至りません。これは、以前にも触れた佐々木武観脚本の特徴でもあるのですが、前半は上手く進行しているものの、後半になると息が切れたように鈍くなる流れも影響しているようです。つまり競馬でいえば、東京篇は上手くハナを切った逃げ馬が、釧路篇になると終いがバタバタになっている印象です。細かいですが、ラストの硫黄山での出来事が、「嵐を呼ぶプロファイター」のイブリン・スチュワートかとツッコミも入れたくなります。

あと、同じ佐々木武観脚本の#673 ある 追跡の記録 ほどではありませんが、それでも疑問のある場面が目立つのもあります。

・説明されていない明子のクラブ・エンパイア訪問の場面

・三船主任が航路を選んだ理由が薄弱な乗船名簿の場面

・立松を川湯温泉に追いつめても、道路検問だけにとどめる場面

ここいらへんは何とかできなかったか。。。とも思います。

 

また、当作は1973年8月に起こった、海外のストックホルム症候群 に影響を受けて脚色されたようにも見受けられます。ただ、それであるなら、その該当する2人の過去のいきさつを「回想形式」で描いて膨らみを持たせれば効果的なのですが、そこいらへんは省かれています。#620 ある恐怖の記録 やさしい女 では、短時間で犯人と繋がりが出来たことを考えてのものかもしれませんが、立てこもりと逃走は違うので「回想形式」は欲しかったところ。

そして脚色次第では、別の人物を真犯人にできなかったか、こう考えるところもあります。たとえば、星川撲殺事件では、確かに立松が殴ったのですが、後で別の人物が撲殺した。久美子誘拐事件も、立松を裏で「虚偽」で焚きつけて、誘拐を誘発して木下を苦しませた。このように改変することもできたのではとも考えます。

 

今回はいつも以上に、「こうしたほうが良かった」と思いが多いのは、実は自分自身このストーリーの流れは嫌いではないことがあります。いわゆる逃走劇による、犯人側への感情移入というところでしょうか。つまり骨格は出来上がっているのに、その肉付けが「甘い」「少ない」ためにのめり込めず、上手く改変できたらと無いものねだりをしているところがあります。

鈴木敏郎監督も脚本をそのまま演出する印象ですが、文章よりも映像的表現を優先させるところは「鈴木敏郎>中村経美>伊賀山正光」と評価しても良いでしょう。実際、時間不足ながらも、当作と同じ佐々木武観脚本の#633 サソリ座の女 でキラリと光る演出を見せています。こういった点も、当作を鈴木敏郎監督の挽回作品と思い込み、必要以上に期待して視聴した結果といえるかもしれません。そういう意味では、先入観を持ちすぎた視聴も考えものと言えるかもしれません。。。