※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#620  ある恐怖の記録 やさしい女】

 

(本放送)1973年9月19日

(再放送)2016年11月3日

(脚本)佐々木武観

(監督)中村経美

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

田中係長(山田禅二)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(西郷昭二)、

鑑識課員(田川恒夫)、松木部長刑事(早川雄三)、森田刑事(北原隆)、

片桐刑事(笠達也)、鷲見刑事(柴田昌宏)、笠原刑事(伊達正三郎)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

成川哲夫、根岸一正、杉山元、川瀬ミキ、小浅初江、松尾悦子、里木左甫良、

近松俊夫、福田公子

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

さて、次回、特捜隊は、

同窓会に出席中の鷲見刑事が強盗殺人事件に遭遇し、

しかも犯人を追ううち親友まで射殺されてしまう・・・、

というところから始まる、若い熱血刑事の物語である。

ある金融業者の悪辣な非道な行為に復讐した3人の青年は、

小さな洋装店(ヨウソウテン、備考参照)に逃げこんでしまった。

そして、包囲する警官隊に向かい、狂ったように発砲し、

町は大混乱に陥ってしまう。

目の前で親友を殺された鷲見刑事の心は逸(ハヤ)り、

女と子供を人質にした犯人は、ますます荒れ狂っていく。

人質の安否を気遣う三船主任、

そして、いら立つ若い刑事のとった行動は!?

次回、特捜隊、「ある恐怖の記録 やさしい女」に御期待ください。

 

 

(備考)

・劇中では洋裁店(ヨウサイテン)とあるので、以下本文ではそれにしたがう。

・前者(マエモノ)とは前科者のこと。

・ローゼ洋裁店(実在したかは不明)は、中野区江古田のお経塚付近の設定だが、現在の地図では建物の跡形も無く、道路も一方通行となっており、当時の雰囲気は見出しにくい。

・実見すると、検証本の1500万強奪は誤り、1800万強奪が正しい。

・劇中の沼南高等学校は、現在実在している千葉県立沼南高等学校(1979年設立)とは全く関係ないものである。

・孤児院は、1948年に養護施設、1998年に児童養護施設と呼ばれるようになり、現在では存在せず、慣用的用語でしか用いられない。似たような用語に感化院があり、詳しくは「#577 十八才の女」の(備考)を参照。

 

 

(視聴録)

 

鷲見刑事は、高校の同窓会で、同じく警察に勤務する岡部刑事(山下哲男)と談笑のところ、隣接する伊崎質店から銃声を聞く。駆けつけてみると、主人・伊崎(友野多介)が胸を撃たれ「3人組がライフルを・・・」と言って絶命した。そして、逃げる3人組を追跡した岡部刑事も撃たれ重体に陥り、3人組は逃走する。

その後、三船班の捜査で、ライフル銃と実弾50発、現金1800万が盗まれていたことが判明、現金は昨日午後に銀行から引き出されていた。聞きとりについては、縛り上げられていたお手伝い・たまみ(川瀬ミキ)は恐怖のためか口数が少なく、番頭(未詳)は神奈川まで取引先回りをしていたといい、主人の妻・娘は海外旅行中で来月帰国ということであった。

岡部刑事は入院、医師(近松俊夫)、看護婦(渡辺澄子)、妻(宮崎あすか)の看病も虚しく息を引き取る。現場に居合わせた鷲見刑事は3人組の逮捕を心に誓う。

 

3人組の逃走が近所で噂になる中、若葉幼稚園に3人組が侵入、保母(恩田恵美子)を殴り、またもや逃走する事件が発生する。空腹のため、園児の弁当を食べるための侵入だった。その園児・おさむ(川島哲也)は父を亡くした母子家庭で、家であるローゼ洋裁店では母・幸枝(福田公子)が、女店員の智代(小浅初江)、満子(ミツコ、松尾悦子)、えつ子(瀬里なつる)と切り回しながら、おさむを育てていた。このことから、若葉幼稚園は、おさむの安全を考え、帰宅の際に警察の協力を依頼する。

 

特捜隊本部では、1800万は群馬に土地を購入した伊崎が、業者への手付金として引き出したものから、松木部長刑事は内部事情に詳しい者の犯行である見方を持っていた。また笠原刑事は、たまみが使いから帰らないことから再聞きこみ。たまみは施設あがりの孤児であり、18歳になった1年前に伊崎に引き取られ養女となったが、過酷な労働を強いられていたことがわかった。鷲見刑事は、心ここにあらずで拳銃に装填していたが、三船主任はそれを制し、全数弾を預かり、捜査に専念するよう諭す。

 

三船班は、若葉幼稚園事件の目撃老人(里木左甫良)その他への聞きこみで、3人組の強盗を田沢覚(根岸一正)、小倉新治(成川哲夫)、水戸孫一(杉山元)と割り出す。さらに、新治の姉・綾子(森みつる)の営む焼き鳥屋を家宅捜索、事件解明に決定的な写真を手に入れる。

しかし、3人組の逃走は続き、ローゼ洋裁店を急襲、女性4人を人質に立てこもる。そこに、事情も知らず、警官2人に護衛されたおさむが帰って来る・・・。

 

 

上記は、開始21分過ぎまでの流れをまとめたもので、事件解決までの残り24分弱は、これまた面白い展開です。三船班はいつローゼ洋裁店に行くのだろう、じれったいような流れの中でのラスト10分はなかなかのみどころがあります。(あらすじ・予告篇から)にあるような、鷲見刑事完全主役のドラマではなく、各人に焦点を当てた展開で、それもうまく分散させており、正直今までの脚本・佐々木武観、監督・中村経美とは思えない優良な作品です。

初見時は、「鷲見刑事の出番少なっ」と思いましたが、再見するとなかなかどうしてという感じで、これは予告篇からストーリーは始まっていたのかと(つまり、上手くミスリードされたのかと)思えるくらいです。

 

ただ、難をいえば、幸枝と新治との心の交流がわかりづらいことで、いくらなんでもいきなりやってきた強盗犯を信用できるほど、世の中甘くは無いと思いますが。それを、洋裁店にやって来た近所のおばさんの風評「3人のうちの2人は、強盗・強姦をやって脱走」、あるいは勘定書きの一件から、新治の人となりを表していたとも解せますが、わかりづらいことには変わりはありません。

そして、洋裁店内の出来事を知らないとはいえ、三船主任が

>(今の若者は)方向を見失っただけ

>一緒になって考えてやるのが、大人の責任じゃないか?

と言うのも納得はしづらいですね。特に、反省のため、未成年の特権を使って、田沢は少年鑑別所に入所したのに脱走しているわけで、殺人は偶発とはいっても、もはや話し合いの余地はないでしょう。制裁を施してやるのも、大人の責任でもあると思います。

 

今回のメンバーを見ると、やはり高倉班寄りであり、高倉主任演じる里見浩太朗のスケジュール問題があったのではと感じます。高倉主任第1回目は1971年8月放送、水戸黄門の助さん第1回目は1971年11月放送で、その他の番組でもゲスト出演があったのでしょうし、それが三船主任演じる青木義朗に回ってきたような気がします。前述したセリフは、高倉主任のキャラにこそマッチしているとも思います。

ただ、当作が高倉主任主役だとここまで面白くなったかというと、これまた難しい。流れる展開は三船主任だから絵になるというのもあり、ここいらが特捜隊の特徴でもあるのですが。

 

さて、高倉班といえば、最終話は「#646  嘆きの天使」となります。現在の再々放送ではまだ先ですが、現代劇を演じる里見浩太朗というのも希少なので、是非とも見てほしい作品群だと思います。

   

(追加)

松木部長刑事の捜査方針というか、読みは良いのですが、ある人物についてはヤケに甘く「いくらなんでも、贔屓の贔屓倒しでは?」という場面がいくつかあります。三船班ではありえないキャラであり、この点も脚本は高倉班主体でつくられたのではと思うところです。

また、田中係長の、やや強気のキャラも三船班では珍しく、それも捜査主任と衝突するところは高倉班にふさわしいような気もしました。