※ 特別機動捜査隊 まえがき
捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。
また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。
1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。
【#589 浅間山慕情】
(本放送)1973年2月14日
(再放送)2016年7月14日
(脚本)横山保朗
(監督)鈴木敏郎
(協力)小諸市、ホテル千曲温泉、小諸警察署
(協賛)無し
(捜査担当)高倉班
松木部長刑事(早川雄三)、片桐刑事(笠達也)、鷲見刑事(柴田昌宏)、
森田刑事(北原隆)、荒牧刑事(岩上瑛)、高倉主任(里見浩太朗)
(出演者)
三田村元、隅田和世、児玉裕一、佐々木一哲、野崎じゅん子、佐竹一男、照内敏晴、
美笹ゆき子、竜村直樹、堀北幸夫、石黒正男、佐藤明美、北川巧、岩城力也、
小園容子、藤里まゆみ、梶健司、浜田ゆう子
(あらすじ・予告篇から)
※当時のナレーションをそのまま聞き写しています
松木部長刑事の妻・文子は、信州小諸に久々の里帰りをしていたが、
千曲川のほとりで全国指名手配の殺人犯、佐々木一郎を発見する。
佐々木は、自分を裏切った妻を怒りのあまり絞め殺し、
子供とともに東京を逃れ、小諸市内に潜伏していたのであった。
文子の通報で、特捜隊・高倉班は小諸に飛んだ。
文子を刑事の妻と知った佐々木は、
彼女を人質に、残雪の浅間山中を逃げ惑う。
刑事としての職務の一方、
妻の安否を気遣う松木刑事の心中(シンチュウ)は複雑であった・・・。
次回、特別機動捜査隊、「浅間山慕情」に御期待ください。
(備考)
・藤里まゆみ演じる松木部長刑事(早川雄三)の妻の名が、「#567 女を棄てた女たち」ではエンディング表記・房枝となっていたのが、当作では文子(フミコ)となっている。しかし前作の劇中で、松木部長刑事の妻の名は語られていなかった。
・荒牧刑事が久々の登場で、リスト特捜隊では「#484 春の坂道」以来とあるものの、当ブログで特捜隊を再見してきて、新生となっても三船班に登場していた記憶有り。調べ直してみたいと思います。
↑(追加)記憶通りで、三船班主役の「#499 白い殺人者」以来が正しいようです。
(視聴録)
松木部長刑事の妻・文子は故郷・小諸に里帰り、友人・澄子(小園容子)と川のほとりを歩いていた。川岸で遊ぶ、小諸駅前の小料理屋「なおちゃん」の女中・みながわ早苗(隅田和世)、子供・明(児玉裕一)のそばを通るが、すぐに駆け寄ってきた父親(三田村元)に文子は怪訝な顔をする。文子は宿泊先の千曲温泉ホテルに戻り、番頭(北川巧)、仲居(美笹ゆき子)からの手配書・聞きこみから、妻・百合子(佐藤明美)を殺害して指名手配の佐々木一郎と見破り、小諸署に通報、三宅刑事(照内敏晴)、野村刑事(岩城力也)の捜査に協力するが、佐々木を取り逃してしまう。
通報を受けた高倉班は、松木部長刑事、片桐刑事が小諸署に出張捜査。小諸駅に到着すると、早苗の勤める「なおちゃん」の女将(野崎じゅん子)が刺されて昏睡状態だと知らされる。
佐々木は、その後、勤務先の松井りんご園の同僚・磯村(佐々木一哲)を脅し、その運転する車に同乗して逃走していたが、佐久市塩名田あたりで磯村は脱出。車は乗り捨てられており、佐々木の行方は不明だった。
そして、意識の回復した女将を小諸病院に見舞った松木部長刑事、野村刑事は、刺したのは暴力団員・塚田やすお(梶健司)、東京から早苗を訪ねてきたと聞き出す。また、早苗が姉(浜田ゆう子)の営む小料理屋「ゆき」で勤めていたときから、塚田はつきまとい、傷害罪で出所後、早苗は女将のところへ逃げてきたという。そして、佐々木も「ゆき」の常連で、塚田は早苗、明の2人を連れて逃走中ということも判明。
東京では高倉班の、荒牧刑事、鷲見刑事、森田刑事が早苗の姉に接触。姉として塚田の暴力から妹を救ってくれた佐々木に恩を感じながらも、特捜隊に協力しようとするのだが・・・。
当作は「#573 老刑事と その娘」に続く、鈴木敏郎監督の2作目。前作は狙いは良かったのですが、ギクシャクしたつくりが目立ちました。対して当作は、脚本もあるのでしょうが、ちょっとした疑問が発生してもすぐに応えることはなく、ワンクッション置いて応えるというスタイルをとっています。佐々木と早苗との関係、姉がどうして2人が東京にいると答えたのか、佐々木と運転手・おかの(佐竹一男)との関係など、これが奏功したかは疑問がありますが、(好き嫌いは分かれるでしょうが)新しい試みであることは確かです。
これは、横山保朗自身も、ここ数作の脚本に必ずしも満足していないことの表れでもあると、個人的には考えています。事件の単純化を図ったのも、それを裏づけるものでしょう。
また、特捜隊刑事の身内を出演させて、事件の渦中に置くスタイルは、たぶん#451以降のなかでは初めての試みだと思います。これは、「#567 女を棄てた女たち」で女ワトソン的なスタイルを松木部長刑事の妻に任せたのを、当作で大きく発展させようとする意図があったのかもしれません。後年の土曜ワイドや火曜サスペンスで用いられる女探偵の走りだと、見ることも可能です。ただ、当時としては、まだ女性が男性の職場に口を出す(?)イメージが受け入れにくく、それが松木部長刑事が妻への苦言をしたところにつながったとも考えられます。
それでは当作が面白かったかというと、上記の狙いはわかりつつ、欠点もある程度是正されていながらも、すべてが無難すぎて抑揚が無いと感じてしまいます。これは、あくまで個人的な感想で、欠点が無いことがベストという見方ももちろん可能です。ただ、特捜隊を見慣れた側からは、どうしてもそれ以上のもの、破天荒まで行かなくとも荒々しさみたいなものが欲しいというわがままが出てしまいます。たとえば、松木部長刑事に、妻が人質に取られていることへの人間的な叫びとか・・・。
初見の方は、むしろくつろいで見るという点では、評価が高いと思われます。
さて、ホテルの仲居を演じたのが美笹ゆき子。この女優さんは、#451以降の特捜隊放送再開直後に歌手役での出演が多い印象です。歌手と女優、どちらが本業かと思っていましたら、当作では女優にシフトしたようです。ただ、かつては「特別出演枠」だったのが、その他大勢の枠になったのがうかがえ、ふと寂しいものを感じました。
(2018年1月12日 全面追加)