※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#484  春の坂道】

 

(本放送)1971年2月10日

(再放送)2015年7月23日

(脚本)小川記正

(監督)龍伸之介

(協力)警視庁、山口県警察本部、山口市役所、秋吉町、美東町役場、

    山口市観光協会、湯田温泉旅館協同組合

(協賛)無し

(捜査担当)立石班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

鑑識課員(新田五郎)、桃井刑事(轟謙二)、岩井田刑事(滝川潤)、

森田刑事(北原隆)、橘部長刑事(南川直)、荒牧刑事(岩上瑛)、

立石主任(波島進)

 

(出演者)

中田博久、夏川圭、新宅正剛、美波節子、山本剛一、美弥たか子、岩城力也、

星美智子、山岡徹也

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※ナレーションをそのまま聞き写しています

 

痴漢の1人が殺された。

捜査に当たった立石班は、

男の身元を割り出し、男の叔父に遺体の確認を求めたところ、

その叔父は自分の甥ではないと意外な証言を述べ、

立石主任らは唖然とするのだった。

再捜査に乗り出した立石班は、

叔父の田所甚平が偽証しているものと考え、

甚平の住む山口県湯田温泉に急行。

田所家を内偵した結果、そこには遺産問題を巡って醜い争いが!?

捜査は景勝・秋吉台を背景に、

意外な方向へと広げられていくのだった・・・。

次回の特別機動捜査隊、「春の坂道」に御期待ください。

 

 

(備考)

・「#481  追憶の街」「#484  春の坂道」は舞台は違うが、監督、出演者から2本撮りと推察。

・今回は、完全ネタバレに近いので、未見の方は注意してください。

・なお、関東以外の地方ロケは「#509  呪いの館」まで、当面ありません。

 (訂正~次作の「#485  蒸気機関車と女」は岩手ロケでした、失礼しました)

 

 

(視聴録)

ある夜、OLの佐伯和子(美波節子)がマスクをした2人組に強姦されそうになるが、同じ格好のマスクの男が救出、2人組のうち1人を刺殺する。立石班は、遺留品のマッチを手がかりに死体の男(飛世賛治)を身元調査。鳳月堂の常連・自称エデーイ(六人部健市)、死体の男の恋人・自称ミッキー(沖倉邦子)、死体の男のアパート管理人(未詳)は、田所幸彦だと主張する。しかし、身元確認のため上京した田所幸彦の叔父・田所甚平(山岡徹也)は「甥ではない」と否定する。また、遺留品のコンタクトレンズから北光男(新宅正剛)の存在が浮かぶ。

立石班は甚平の証言の不自然さから山口県に急行、山口県警・樋口刑事(岩城力也)の協力を受けながら、甚平のほかにも、宅内のよしの(星美智子)、女中・ふみ(藤井多重子)の周辺を捜査する。そして、山口県には姉(美弥たか子)への思いを抱いた北光男のほかにも、自称・内田こと吉田(中田博久)が来県。さらに、幸彦の許嫁・秋子(夏川圭)も交え、混沌な事件になっていくというもの。

 

一言で言えば、非常に惜しい作品。なぜなら、スピード、謎解きのエッセンスを十分に備えながらも、時間不足のため、前半・後半で出来不出来が明らかなためです。2時間番組、あるいは2週に分けての放送ができていれば、前=東京篇、後=山口篇と等分にできていれば、傑作とまでいかな記憶に残る作品と評価されていたと思います。

 

前半は、遺留品からたどる死体の身元、また別の遺留品からの重要参考人など、特捜隊ならではの伝統的捜査。死体の身元が田所幸彦であることに、肯定派・否定派と分かれますが、肯定派を支えるものとしてアパート管理人を登場させる(特に、管理人=大家だったら、賃貸借契約があるので当然本人確認は必須)。さらに、管理人への尋問中に郵便配達員を登場させ否定派の脆弱さを強調、身元問題を決着させる展開はまさに流れるような感じでした。

 

ところが、後半になると、風景を多々入れなくてはならないロケによる弊害が目立ち、早い流れが一転鈍くなります。継ぎ目のロケ風景挿入も、それが自然にではなく、宣伝ぽい意図で強調され、結果ストーリーに意味が無かったりします(たとえば喜良久、大正洞)。また、風景とは関係なく尻切れトンボになる場面も目立ちます。

また、甚平とよしのとの縁側で話す場面ですが、これはセットで撮られたようです。山口県旧家を借りてのロケなのに、この箇所だけなぜ? という疑問が残ります。

 

ここで脚本実見はしてないので推測ですが、小川記正脚本あるいはその原案なるものは結構膨大なもので、それこそ2時間ドラマくらいの内容ではなかったかということです。さらに、龍伸之介監督は、その膨大なものをそのまま演出、撮影に挑み、編集のときにこのままでは時間オーバーで不味いとかでカット、辻褄を合わせるため再撮影したような節があります。

 

おかしいなというところは、以下の通り。

・日本造園彫刻研究所の不自然すぎるほどの強調(東京篇)

・自称・内田こと吉田の左手の怪我に説明無し(山口篇)

・橘部長刑事が女中・ふみと2回接触したときの自己紹介(山口篇)

・女中・ふみがよしののことを話すときの、意味深な笑み(山口篇)

・よしのは甚平とどういう関係なのか説明無し(山口篇)

・許嫁・秋子は立石主任から事情を聞いたのに、秋芳洞に出向いた心境描写無し(山口篇)

 

こういったところがあるのは、実際は撮影していたが時間内に押し込むために、泣く泣くカットしたと個人的には考えています。幸彦について、伝聞と現実とが違いすぎる部分が目立つのも、もしかしてカットした部分があったのかも・・・。

 

これらを「手抜き」と一蹴せず、「カットせざるを得なかった」と擁護するのは、一重に前半部分のスピード、謎解きが合理的だった点、後半にしても秋芳洞での撮影は短時間ながらも、それをうまく利用して秋吉台にクライマックスを運んだ点など、捨てがたいところがあるからです。これが、冒頭に話した、放送時間がもっとあればという思いになるわけですが。。。。

まあこれ以上は、贔屓の引き倒しになりますので、ここいらへんでとめておきます。

 

また、特別出演ということで、特捜隊の常連女優の1人、美弥たか子が登場しました。本当に特別出演の扱いで、番組の上層部と何かあるのか?とも思いましたが、山口ロケ同伴ではないので不適切ではなさそうです。

まあ、戦前のサイレント映画「京子と倭文子」(1926)で、出演の倭文子役・伊藤みはるが、この映画の監督・伊藤大輔の妻であるのはいいとしても、京子役・香西梨枝がこの映画をプロデュースした直木三十五の愛人、美智子役・直木木ノ実が直木三十五の実娘であったことを思い出したので、変な想像をした次第です。

 

(2017年11月25日、全面追加)