※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#573  老刑事と その娘】

 

(本放送)1972年10月25日

(再放送)2016年5月26日

(脚本)柳節也、柄沢嘉平太

(監督)鈴木敏郎

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)高倉班

田中係長(山田禅二)、鑑察医(仲原新二)、鑑識員(田川恒夫)、

鑑識員(西郷昭二)、松木部長刑事(早川雄三)、岩井田刑事(滝川潤)、

鷲見刑事(柴田昌宏)、森田刑事(北原隆)、高倉主任(里見浩太朗)

 

(出演者)

瀬川菊之丞、原良子、三夏伸、田所陽子、鈴木志郎、柳田豊、西朱実、金子勝美、

大谷兼臣、小沢悦子、高城淳一、丘寵児、城所英夫、清川新吾、明智十三郎、

武藤英司

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

ある日突然、1人のタクシー運転手が殺人容疑で連行された。

残された身重の妻に注がれる、世間の冷たい目・・・。

無実を信じ、娘婿の証(アカシ)を立てんと、

事件を追い続ける元鬼刑事。

そして、高倉班も現場(ゲンジョウ)再検証に乗り出した。

奇しくもその現場(ゲンジョウ)で、

容疑者の義父(チチ)は1個の翡翠(ヒスイ)のネクタイピン、

高倉班は黒のカバンを探し当て、

いよいよ事件は大きく意外な方向へ発展していく!

娘への愛、生まれてくる孫への愛、

これらの愛を温かく見守る高倉班は、

事件を執拗に追い求め、

姑息な愛と欲がからむ事件の真相に迫っていく!

1つの事件を通して、人間社会の愛の強さとあり方を描く、

次回、「老刑事と その娘」、

人間味溢れる高倉班の活躍を御期待ください。

 

 

(備考)

・特捜隊・西本係長を演じた鈴木志郎が、ゲスト出演。

・本来、肇国は「ちょうこく」と読むが、当作では「ショウコク」と読ませている。

・被害者の死因は、特捜隊の黒板に「絞殺」と書かれているが、鑑識からの報告、テレビアナウンサー(大谷兼臣)の報道では「扼殺」とされていることもあり、本文では「扼殺」と表記。

 

 

(視聴録)

 

警視庁で部長刑事として鳴らし、「捜査の神様」と謳われた潮(ウシオ、瀬川菊之丞)は悩んでいた。妊娠中の次女・美佐(原良子)の夫・佐田惣一(清川新吾)はタクシー運転手をしているが、乗車客の興信所所員・井村鉄三(城所英夫)が板橋区・不二見ヶ丘で扼殺死体で発見され、容疑者として逮捕されたのである。潮は、特捜隊本部に旧知の田中係長、松木部長刑事を訪ねてみるものの、退職して5年、新旧世代交代は歴然としたものであった。

 

幸いにして佐田との面会が実現、松木部長刑事同席のもと、潮は

・佐田が車内から、井村のカバンを放り投げた

・佐田が帰る途中で、外車が駐車しているのを見かけた

・外車駐車位置から50m先で男女が草叢から現われ、自分を目撃してくれた

・男は、香港で買った翡翠(ヒスイ)のネクタイピンを落としたと叫んだ

ことを聞き出し、特捜隊・高倉班が現場再検証を行なうきっかけになる。

そして、再検証の立入禁止ロープの外で、潮はネクタイピンを発見、事件当夜の目撃者とみられる男女、部長(明智十三郎)、幸子(田所陽子)を見出すことも出来た。

 

高倉班もタイヤ痕のほか、カバンを発見、カバンの中からは井村の父・りゅうじと、大和田(武藤英司)が社長を務める肇国電気との間で交わした覚書が出てきた。そして、高倉主任、岩井田刑事が肇国電気を訪ね、その覚書に触れてみると、経理部長・やまだ(鈴木志郎)、社員(柳田豊?)、専務・重盛(高城淳一)、運転手・丸山(三夏伸)の態度がよそよそしい。そのため、同業者の白越電気・専務(丘寵児)を訪ねてみると、その覚書の持つ真の意味を知る。

 

さらに、駐車していた外車は都内修理工場にあり、トランク内からレインコートを発見、工員・大下(平井一幸)の友人のものであることが明らかになる・・・。

 

 

当作は、現役から去った老兵が再び戦場に足を運んだらどうなるか、ということを現代の事件捜査にあてはめ描いたものであります。老兵、つまり潮・元部長刑事と高倉班とがそれぞれに違う線から事件を追及、高倉班は事件解決のカギを掴み、潮は容疑者についてのカギを掴むとともに間接的に高倉班の援護射撃をするというものです。

高倉主任も潮の事件介入に「関係者以外は触れないでください」というものの、それは先輩である潮の立場を慮っていることで、旧知の松木部長刑事を納得させます。

そして、事件も単なる殺人事件ではなく、捜査3課(窃盗事件捜査)まで動かすところまで広がりを見せるなど、昭和40年代の企業犯罪を考えた作りにはなっています。

 

しかし、作品の仕上がりはと聞かれると、どうも良いとはいえません。これは、失礼ながら潮を演じた瀬川菊之丞にもあり、時代劇で悪役を演じることが多く「老兵」とはイメージがかけ離れていること、動きに元警察らしさが見られないこと、台詞回しが時代劇調なことなどが挙げられます。これらが、ストーリーの流れを止める一因にも見え、むしろ大和田社長を演じた方が上手くいったのではとも感じました。

また、主任と部長刑事との対立というか軋轢は、「#515 私は許せない」が顕著たるものですが、青木義朗と伊沢一郎、里見浩太朗と早川雄三、両者の息の合う合わないが微妙に影を落としているのか、中途半端に見えるのは否めません。

また、井村の「ある所持品」追跡がないのも、疑問に思うところであります。

 

特捜隊の#450以前の古い作品は実見していないのですが、脚本が2人、1人は初期に登場していた柳節也、「掲示板特捜隊 6」での撮影所事情から、旧作品にもう1人の脚本家・柄沢嘉平太に手を加えてもらったリメイク作とも考えられます。ゆえに、ねらいはよく考えたものの、ぎくしゃくした作りに見えたのはそこにあったのかとも(あくまで推測です)・・・。

あと、ストーリーの流れからは捜査3課よりも捜査2課が関連してくると思うのですが、1972年当時は管轄が違っていたのかもしれません。

 

(2018年1月12日 全面追加)