本日、WOWOWのスタジオで、ミスタービッグというロックのライブ映像の完成披露試写会があって、参加することができた。

こうした案内をいただいたWOWOW  Executive Creatorの入交さん、アレンジいただいたAuro-3Dさん、
ありがとうございます。

ところで、ミスタービッグというのは、実は2つのグループがある。

ひとつは、英国のミスタービッグ。
1970年代にプログレハードというジャンルが一時はやった。ロック評論家の渋谷陽一の造語みたいだが、ボストン、カンサス、TOTOなどが代表的だが、ミスタービッグも入っていたと記憶する。

僕は、こちらのミスタービッグが大好きなのだが、残念ながら、今回は、別のミスタービッグ。
米国のバンドだ。英国のミスタービッグとは無関係で、1989年にデビューしたハードロックバンドだ。
ドラマーのパットトーピーが、フリーの名盤 fire and water に収録された Mr.Bigからとったバンド名らしい。

なるほど、Voのエリックマーチンの歌い方は、ポールロジャースと似ている。

こちらのグループの方が、はるかに売れたのだが、ドラマーのパットトーピーがパーキンソン病を患っていて、2018年に死去した。

こうしたビッグネームは、お金を稼ぐために続けるというより、仲間がいなくなった段階で活動終了にすることが多いと思う。ピンクフロイドやムーディブルースもそうだ。

 さぁ今生の別れにツァーでもやって終わるか、と思ったのだろう。2023年7月に、The BIG Finish Tour という最後のツアーを行ったが、その日本公演の、武道館ライブの記録だという。

 ちなみに、この時に同行したドラマーは、ニック ディデバージオだが、彼はジェネシスのライブでもドラムスを担当した人だ。

96Kマスター音源で13.1chで再生してくれるという、なんともありがたい試写会だ。

最終的にはBDになるだろうが、wowowスタジオで再生してくれたのは、マスターであることが凄い。

いろいろな場所に設置したカメラの映像を効果的に編集してひとつの作品にまとめている。まだ字幕はなかった。

マスター映像は、たぶん4Kだろう。ビクターの民生用のプロジェクターに見えたがよくわからない。
スクリーンは180インチ (16:9だと思う)。ハメ殺しのスクリーンなので、平面性は完璧。

音は、96kのマスター音源で13ch分. おそらくリニアPCMで、DANTEと呼ばれる形式でイーサネットに流し、それをもの凄い数のSPが拾って再生する仕組みだと思う。

SPは、知らない会社のもの。DAC付パワードSPだろう。1層は方LCRの3つだけが大きくて、あとはちっこい。2層以上は、すべてちっこいSP。

今回は音重視ということで、なんとCのスピーカーはスクリーンの前に設置され、LRと高さをそろえていたものだから、映像がSPに投射される。
 
僕はスクリーン近くの真ん中あたりの席をとったので、顔はやや上に向く必要があった。
以前にblogに、絵を描いているが、まさにこんな感じで見ていたのだ。
https://ameblo.jp/siltech/entry-12857023128.html

全体の音は、大変にクリアで、それぞれのSPレイアウトを武道館での視聴位置関係にみたてている
など、手がかかっている。

驚いたのはシーンごとに、ミックスが変わっていること。たとえば、マイクでしゃべりのシーンも多かったのだが、こっそりしゃべるようなシーンでは、耳元でささやくように聞こえるよう、位相を細かくいじっている。

 自分の耳のスグ近くしゃべられているかのような感じがあって、背中がゾクッとした。こうした効果は視聴する席によって変わるようだが、僕の席では少なくとも2回、そのゾクゾクを感じだ。

内容的には、よほどのファンは別として、2H30Mの尺はさすがに長すぎてだるい。

最後の20分くらい、ファミリーの紹介になっておもしろくなり、アンコールは最高であった。

曲は、ピートタウンゼントの作品、Baba O'Riley(Who's next,Y1971の1曲目)で、そういえば、ピートタウンゼントの歌い方にも似ているな、と思いながら楽しめた。

Mr.Bigは嫌いではないので、BDは買ってみようと思うが、とっても残念なのは、13chで収録していながら、BDへは11chにダウンするようだ。Auro-3Dでの話と思うが、初の13.1ch 商用BDか、よしよし、と期待しただけにこれは残念だ。初回限定でよいので、なんとか、Auro-3D 13chで販売できないものかな。

マスターを利用した最高のサウンドを聞いたので、今後のリファレンスになる。
我が家でどう再生できるか、楽しみだ。


 最後にこれはぜひ書いておきたいが、2H30Mも聞いたので、しばらく耳鳴りがした。

僕自身、珍しく耐えたのだが、90dBは常時超えていたと思われる再生音量は、ロックコンサートだとしても大きすぎたように思う。


 

昨日、ブルーノート東京で上原ひろみのライブを見た。

アリーナシートのけっこう前、上原ひとみの真ん前で 4mも離れていない席だ。

過去、5回くらい、あちこちで見たことがあるが、こんな素晴らしい席は初めてだった。

スピーカーはすべて天吊り、巨大なSP、ライブ用のラインアレイの小型のもの、
18面体のサイコロのようなもの、いろいろなSPが吊ってあった。

おそらく、どの席でも音がクリアに聞こえるような配列、音響設定がなされているのあろう。

ステージは、グランドピアノの上に小型シンセ1台、ステージ側にもう1台のシンセ1台、
というシンプルなセット。

シンセ1台あればconfigをSWで切り替えるだけで、何台分かの役割を
持たせることができるので、曲ごとにこまめに設定を変えて演奏していた。

ライヴだとSWを押し間違えて全然違う音を出すリスクもあるのだけど、
さすがプロ、間違えはなかった。

むかしだと、リックウェイクマンやキースエマーソンみたく、四方八方を
シンセサイザーを囲まれたセッティングがかっこよかったが、上原ひろみ
もそうやってくれないかな、などと考えながら聞いていた。


アリーナの最高に良い席で聞いた音は、迫力十分、躍動感十分、素晴らしい
演奏で文句のつけられない音であり、音楽だった。


あの生きのよい音を、家庭で再生することは、たぶんできない。

そもそも、あのライブの、観客とアーティストの時空共有の感覚は、
ライブハウス独特のものであり、家で、ステレオ装置で、出すことなど
できない。

でも、ステレオ装置で音楽を聴くことはできるし、上原ひろみであれば、
マルチch SACDが出ているので、Auro-3D化して13.1chで再生することもできる。

ブルーレイによる映像は残念ながら出ていないようだが、DVDは二種類、
ライブを持っている。
(そのうちひとつはNYのブルーノートでのステージだがDDしかも2ch,なので音は悪い)


記憶のあるうちに比較して、何が劣っているのかを考えてみたい。
 

グラインドボーン音楽祭に行ってきた。

観たのは新しい演出の魔笛。

この音楽祭、2024年は5月16日から8月10日まで、3カ月にわたって開催されている。

あまり日本では有名とは言えないので、紹介しておきたい。

ここは、もともとは、マナーハウスだった。

マナーハウスというのはイギリス語だが、要するに、金持ちの別荘だ。

金持ちと言っても、貴族レベルではなく、上級市民の金持ち、という感じがある。

グラインドボーンのオーナーは、クリスティ家。

そう、サザビーと並び称されるクリスティーズを主宰する、あの家だ。

 ザルツブルグとかバイロイト音楽祭をみて、イギリスでもやろうと思いついたとハンドブックに紹介されている。

今使われている劇場は1980年代に新築した新しい建物で、1200席ある。

ザルツブルグは2179席、バイロイトは1925席だから、比較的小規模だ。

舞台までの距離も近く、オペラグラスは必要ない。

 

音は、少しこもる感じがあるが、オペラって、だいたい、そんな感じだろう。


ちなみに、ミラノスカラ座は3000席、ロンドンロイヤルオペラは2256席、バイエルン歌劇場は2100席。

席数が少ないので、チケット確保は、ザルツブルグより、はるかに難しい。

バイロイトがたぶん一番難しいと思う。

いずれにしても、前年から手を回せば、手には入るのだけれど。

僕は、一番初めに知ったのは、レーザーディスクでみたオペラだった。
どちらかというと、オペラよりも、庭でピクニックする映像が印象的だった。

今でも、ここの売りは90分もある幕間のピクニックだ。

レストランが3つもあるが、できれば、お弁当とシャンパンを持って行って、立派な庭を楽しみたい。

箱根の彫刻の森美術館のような、(僕には)意味のないように見える立体的なオブジェも多々あって、
とにかく広いので、花見のように密集することはない。

花見と違うのは、ゴザを広げる人もいなくはないけれど(実はゴザやブルーシートは見ない。高級そうな家柄のシートなのだ)、だいたいは、椅子やテーブルを使う。持参する人もいるけどレンタルできるので、必ず座れる。

ロングドレスでも着物でも問題ないのだ。

実際に行ってみると、食料を持ってくる人もたくさんいるが、なにしろワインやビールを飲むわけで、
クルマで来ることできても帰る事はできないことに気が付く。

宿泊施設は徒歩圏にはないので、車を使う人が多いが、電車とシャトルバスでくる人も多い感じだ。

宿泊するばあい、隣の町ブライトンというリゾート地の高級ホテルに泊まるのがしゃれていると思う。

あ、グラインドボーンは正装を求められるので、ロンドンからの専用列車は、ロングドレス、黒服、着物、など、まるで007のパーティに出るような、人々の集団になる。ビクトリア駅では、夏なのに暑苦しい恰好で異様だが、いったん列車に入っちゃえば、皆同じ感じなので、良い雰囲気である。

ちなみにビクトリア駅からルイス駅までの距離は80kmだから、あっという間に着く。

とはいえ、着物の人は、汽車でも劇場でも、暑くって大変だろうな。

 

今月前半、Euro2024の、セミファイナル、ファイナルをみるために、ドイツに渡っていた。

最初に訪れたアリアンツアリーナは、外から見るとドーム型に見えた。

夜は赤くライトアップされ、UFOみたいだ
(赤は、バイエルンミュンヘンのクラブカラーである。)

実は、中に入ると、観客席には屋根があるが、フィールドは露天である。

日本には全天候型のドーム場もあるので、それでもよいはずなのに。

 わざわざこんな構造にするのは、サッカーは屋外スポーツであり雨が降っても行うというルールを尊重しているのだろうか。

2022-23シーズン後に、小規模の改修工事があって、立見席を原則廃止し、
座席と車いすスペースに改編した。これは、地方行政からの要請だという。

このゴール裏の、最も遠い席にして、レギュラーシーズンでは50€の座席だから、ざっと9千円というところ。

日本だと、マリノススタジアムの安い席は3000円くらいだから、こうした点でも日本の物価は安い。

(バイエルミュンヘンとマリノスの違いでしょ、ということまで掘り下げるのはナシである)。

今回は、本当の目的は失礼ながらサッカーではなく、スタジアムの響きだ。

前方、サイド前方、サイド、後方。
どう響きが異なるのか。

要するに、マルチチャネルで再生するときに設置するSPから鳴らす音
と、実際のスタジアムでの音の相違を、しっかり把握しておきたいのだ。

まず、サッカー場は、それぞれの方向で、左右対称ではない。

サイド側で反射する壁は、サッカーフィールドの向こう側にある観客席であり100m先だ。

フィールドは(105mx68m)で、その周囲にベンチがあり、その周囲を観客席が取り囲む。

あらゆる方向で距離が大きく異なるので、仮にきちんとしたマルチチャネルで収録あるいは放送したところで、家での再生時にスピーカーをそろえる意味はない。

いままで、こんな観点でスポーツを観たことはない。

いろいろ聞いてみると、スタジアムにも、音響ホールと同じように、音響デザインというものがあるという。

スピーカーや大型スクリーンの設置でも、その音響を生かした設置設計をしているらしい。

よーくみると、サッカー場も、フィールド、1F席、2F席、3F席とレイヤーになっているのもあらためて認識できた。

これは、サントリーホールと同じ、Auro-3Dの考えとも同じなのだ。

ふうん。

昨日、Auro-3D屈指のハイエンダー、X1おやじ邸にお邪魔した。

以前から、いろいろな方々の訪問記で、写真では見知っていたので、
一度訪問してみたいと思っていたのだが、おもわぬ機会に恵まれた。

なんと、新居を構えて、AVルーム(マルチチャネルとスクリーン)と、
リスニングルーム(2chピュアオーディオ、スクリーンなしアナログ付き)
を、独立させているというのだ。

まだ、引っ越しして1カ月しかたっていないので、音だしの段階であるという。
そこに、AUro-3Dの面々に交じって(いや、僕も面々の1ひとりとして)訪問
させてもらった。

いってみると、これが凄い。

高い天井、広い部屋。
ものすごいエアボリウム。

その中に、堂々と鎮座しているウィルソンのALEXX.
X1は聞いたことが何度もあるが、その系統のSPである。
思ったよりコンパクトなSPに見えるのは、部屋の広さ故であろう。
実は200キロgを超える巨体である。

そのほか、Auro-3Dでいう1Fを構成するシステムは、ウィルソンのセンター
スピーカーや、昔でいうsystem5(5か6か7か 僕にはわからぬが、
いわゆるWATT/PUPPY式の組み合わせ式のSP)という、ウィルソン社製で
統一されている。

2F3Fは、KEF(たぶん同軸2wayの小型SPの同じモデル)で統一されている。

スクリーンは170インチという。

 

これほどのエアボリウム部屋を確保し、これほどの機材をそろえている人は、
なかなかお目にかかれない(少なくとも僕は初めてだ)。


米国に、戦車(しかも動く!)を趣味で集めている人を知っているが、そうした
エンスーでもオーディオに関しては案外控えめな機材であるのだ。

ここまでが前場。

昼食に、おいしい手作りの本格カレーをいただいて、
後場に隣にあるオーディオルームに案内してもらう。

こちらの方が部屋が広いことにおどろく。
天井も「ものすごく」高い

かつて訪問した、Cello Music and Film System 社や、JMlab(Focal社)の
開発のための視聴室 よりもエアボリウムがある、といえば凄さが伝わるだろうか。

スピーカーは、FocalのユートピアEM。

ウーハは電磁石でドライブする、フォーカルのハイエンドラインに位置する。

Wilson ALEXXと同様、それぞれのユニット箱の位置関係を、視聴位置との距離に
応じて変更するレバーもついている。
こんな感じ

 

SPは、なんと もう一組ある。
YGアコースティクスのソーニャの最大構成。
ウーハータワーが独立しているフルシステムで、たしかXV3という名称だったと思う。

駆動するアンプはボルダーの2150。アルミの塊、100kgもの巨大なモノアンプで、
これ4台を駆使する。

フロントエンドは、アナログプレーヤーが3台、これをフォノイコ、プリを経て2系統
のSPをそれぞれ駆動するパワーアンプに導かれる。

この部屋で、この機材で、悪い音になるはずがない、とは思うが、
なにしろ、機材を置いて部屋の整理が終わったばかりという状況だから、
この段階で音をあれこれ言うこともできない。

ただ、どうしても 2つあるSPの比較はすることになるけれど、
他のAuro-3D友の会の皆さんの意見では、YGに人気が集中した。

でも、僕自身はフォーカルの方がよかった。
YGの方がレンジが広いし、高域はクリアに伸びているのだが、低域の解像度は
Focalの方が上と感じた。設置場所で変わると思うけれど、音場もFocalの方が深い。

考えてみたら、25年前にFocalのG Utopiaを選択したのは、低域の解像度に惚れたからだ。
比較対象は、Wilson X1、そしてcello Strad Grande MaseterだったがFocalの魅力を
昨日改めて感じたことになる。

   *    *    *
感想を一言でいうと、どちらの部屋も、もの凄い。

 

でも、まだまだこれからでしょ、という感じもある。
今後、塗料やら基礎やら、建物自体が安定するのに1年くらいはかかるからし、
その間も、建材が乾燥して変化するので、機材を変えなくても音が変ってゆくと思う。

そうしたプロセスも楽しみながら、音の調整を進めてゆくんだろうなぁ。

なんとも、贅沢な時間。

夜は、皆で外でおいしいお酒と食事を楽しんだ.

X1おやじさん、いろいろなおもてなし、ありがとうございました。
(今日もつづいていると思うけれど)。

本日、サントリーホールのコンサートを観た。

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
フルシャ/都響、Vn 五明佳廉

という、素晴らしいプログラム。

この曲は、個人的に思い入れがあり、あちこちで良く聞いたが、

本日聞いた演奏は、突出して素晴らしかった。

指揮するフルシャは,出身地でもある地元のチェコフィルの
首席客演指揮者だが、来シーズンから英ロイヤルオペラの
音楽監督に就任するから、現代最高の指揮者の一人である。

そして、都響。日本ではN響と並ぶ最高のオケだろう。
コンマスは久しぶりの矢部くんで、いう事なし。

一糸乱れぬオケ、力の入った素晴らしい指揮。
五明佳廉の、愛用の1703年製のストッド「Ex Foulis」による圧巻の演奏。

日本で,こんなレベルの高い、素晴らしい演奏を聴けるとは。

感動して涙が出た。

でも、ここでの主題はそれではない。

サントリーホールだ。

このホールは、永穂先生が手掛けた最高傑作だ。

ワインヤード形式の名ホールであり、

これほど音響が良いホールは、世界でもそう多くはない。

そのホールをあらためて観察すると、音響が3階建てになっている。

おぅ、これは、Auro-3Dと同じではないか。

1Fは、人工大理石のような材質で、直線的な塀のように平面性が高い。

だから特に拡散や吸収することはないはずだ。

鏡のように音は反射する。


高さでいうと、演奏者の頭から下くらいの高さが1Fとなっている。

そこから上の2Fは、木材で構成されており、三角錐のヒダで拡散される。


この木材は、ウィスキーの樽につかわれるホワイトオーク。

さすがサントリー。


3Fは天井であり、白い色の材質。

内側に凸にわん曲していて、音を拡散させる。

材質はたぶん軽量発砲コンクリートだと思う。
吸音も期待で、音響的にも良いから。

0Fに相当するグランドフロアと椅子はオークが使われ、響きが
コントロールされている。

サントリーホールは、

0F 1F 2F 3Fの素材は、すべて異なるわけだ。

高さ方向(z軸)だけではなくy軸に相当する列 
正面のステージと、背面の入口の形態も素材も異なる。

唯一、ホールの座席行だけは、左右対象性があるから、

Sbとか、Fhとか、それぞれ対となるSP 2chが同じSPであればよい事になる。

これを見て、僕はAuro-3Dに用いるSPは、

「全ch同一である必要はない、1Fと2Fは似た音である必要もない」

のではないかと思った。

この世に、どの面も同じ材質で同じ響きで拡散させるホールなんてあるのか?

あるはずはない。

どのみち、録音するホールでさえ、面によって音が異なるのだ。

いや、武道館とか、国技館とか、プラネタリウムであれば、
どの面も同じ響きかもしれないが、例外的だろう。

ならば、再生するSPだって、それぞれに設置面によって、
SPが異なったところで、問題ないはずだ。

そう思った次第である。

ところで、全SPを同じものでそろえるのは、小型SPを
使えば簡単だ。

実際、NHKに行けば必ず体験できる22chのデモとか、
Auro-3Dであれば、Genelic Japanでも
小型SPの環境が構築しており、誰でも視聴できる。

僕も体験したが、小型SPでの再生は、リアリティがなく、
ダイナミクスにだいぶ劣る。

再生スケールが小さく,せいぜい、50インチTVまでが限界で、
スクリーンが大きいと画像に負ける。

はっきり言って音がしょぼいのだ。

sonyの360°リアリティを使ったヘッドホン再生の方が
「遥かに」優れているように思う。

僕が、部屋に設置する17chものSPを、同じSPで
そろえることができない言い訳でもある。

しかし、同じSPでそろえることがどれだけ意味があるか
に対する反論でもあるのだ。
 


スピーカーのマルチチャネル配置で必ず
出てくる言葉に、ITU-Rというものがある。

正確には、ITU勧告ITU-R BS.775-1 というようだ。

そもそも、勧告だって。 

おそらく英語を知らない人が誤訳したのだと思う。

翻訳がいかにもまずい。

勧告というと、忠告、警告という意味合いがある言葉である。

勧告とは、日本ではこんな時につかう。

離党勧告
停船勧告
違反勧告

つまり、上から目線の命令、と捉えるべき言葉である。

言語はRecommendationだから、推奨、と考える方が適切だろう。

このように、そもそも訳からしていいかげんなので、
中身もいい加減ではないかと思った。

内容は、めんどくさいので図はわざわざ掲載しないが、
これを、自社開発の都合の良い方式に合わせて、各社各様、
勝手に方言を出している。

ATMOS(dtsと同じ)
SACD
Auro-3D

日本人の英語は、日本語なまりの英語であり、
それでも立派に通じるのだ。

そこで、方言のおすすめ。

一般社団法人 日本オーディオ協会が発表している、スピーカー配列を
アレンジした調査がある。

https://www.jas-audio.or.jp/network-hometheater/itu-r-speaker

これはおもしろい。

こんなことが書いてある。

一言でまとめるとこうだ。

「あれこれ、スピーカー配列を変えてみて、82サンプルの調査結果
を得た。悪化するケース、変化がわからないケースがある」

 

結果だけ、僕のことばで意訳するとこうなる。

「リアスピーカーは、少し高い位置でも、どうせわからないので問題ない。
また、Frと10%程度距離がずれても問題はない。
ただし、真横に置くと臨場感が低下する。

センタースピーカーは、20°以内であれば、

どうせわからないので問題ない


これを参考に、自分でもやってみて、自分の耳を信じてアレンジすると、
設置自由度が上がるはずだ。

自分の装置なのだ。自由に使ってよいのである。

と、今まではそう思い込んでいた。

Aurp-3Dだけは、どうも違う。

正しい配置で一度試してみると、やっぱり、正しい配置が
良い結果をもたらしている。

完全に準拠するのは不可能なのだけれど。

最後は、英語はクィーンズを学べということか。

今回は、DVDaudio(trueHD96k 5.1ch)で出ている盤を聞く

アリスクーパーが1973年に出し作品だ。

この時代、glamorous Rock(グラムロック)というジャンルがあった。

 ハデなメイクをして衣装もキラキラ。聖飢魔Ⅱとかキッスを想像すると、
メイクや衣装はわかりやすいと思う。

代表的なミュージシャンは、Tレックス、シルバーヘッド、デビッドボウイだ。
米国ではアリスクーパーしか頭に浮かばない。

こうしたアーティストたちは、中身がないかというと大間違い。

どのバンドも、素晴らしい音楽性であった。

アリスクーパーの場合、さらに首に蛇をまいて登場していたというから、
とにかくすごいのだ。

さて、このアルバム、ロック アルバム番付というものが仮にあったら、

3役クラスには入っているはずの、ものすごい名盤だ。

LPレコードでは、変形ジャケではないが、アリスクーパーの写真や
お札のポスターなどが入っていた。



DVDでは、当然にポスターなんて付録しない。

プラスチックケースに入っているだけで、なんともつまらない。

 

さっそく3曲ほどピックして聞いてみる。

Billion dollar babiesは、ボーカル、ギターが時折サラウンドchに出現するが、
本来はもっとシンプルに聞くべき曲である。

fレンジは、スペアナで見るかぎり、十分に広い。

でも、LPで聞いても似たようなものである。

 

frontRch(DVD-A)

 

でも、実際に聞くと、ドラムスやベースの低音の重さが不足していて物足りない。

スーパーウーハーが目に見えてブルブル震えるほどにmixしてほしかった。
 

unfinished sweetは、このアルバムでは唯一、サラウンド感がある。
右側のサラウンドchで擬音が浮かんで、なんだか耳がかゆくなる感じがあって堪能できた。

 

DVD-A SR Rch

なんと50Hzまで伸びている。

 

no more Mr.nice guyでは、ほとんどサラウン感がないmixとなっている。
時々のハーモニー音声では、サラウンドchで出しているが、音量が控えめ

でもあるし、前方に定位しているボーカルを邪魔するしで、

特に意味を感じない。
 

全体を通して、5.1chストレートに聞くのが良く、もとの2chのものよりは

多少は良い程度。

 

オリジナルマスターテープを駆使して力を入れてマスタリングしたもの

ではない感じである。

 

なぜ、わざわざDVD-Aで出したんだろう。

もしかすると、ライブ映像付をエサに売りたかっただけではなかろうか。

 

unfinished sweetだけは、イマーシブ感があったが、特に傑作と言える曲でもない。

他の曲は5.1化の価値を見出せなかった。

 

Auromaticで13.1ch化しても、5.1chと大きな変化はない。
 

イマーシブ感 ★★★ (DVD-A dolby true HD 96k5.1ch)
イマーシブ感 ★★★☆(DVD-AをAuromaticにて13.1chに拡張)
オリジナルソースのステレオ感 ★★☆

 

KORGが、live extreamを行っている。

特に、6月にすでに収録したNHKホールのイベントを8月16日から有料配信される。
上原ひろみも登場する。Auro-3Dのフルch(13.1ch)でも配信されるという。

ここからが、問題。

Auro-3Dで受信するには、難題が待ち構えている。

配信シグナルは、PCM7.1chであり、その中にAuro-3Dの信号を入れ込んでいるのだが、なかなか、13.1chでの再生にたどり着かないのだ。

原因は5つある。

1つめ、配信側が指示するPC環境設定。
Korgのサイトには、設定方法が書いている。
https://www.live-extreme.net/auro3d-win

windows10での設定なので、windows11とは異なる。

この説明だけで、いっぱつで再生できる人は半数程度と思う。

あとの半数は、脱落するか、
迷路に入るか、
どちらかである。

脱落したら、この配信サービスとは無縁になるだけだ。
(このサービスが破綻すると残念なので、わざわざ解決方法を文字に起こしたのだ)

迷路に入ると、次々に問題が出てくる。

2つめ、アンプの操作
 Auro-3Dのシグナルは、dtsという殻の中に入っているものと思っていたのだが、
これはBDの場合であって、配信はdtsの殻は使えないらしく、PCMの殻に入れる。
今回初めて知った。

これは重要な情報で、したがって、それを理解してアンプを操作する必要がある。
でも、どこにも書いていない。

僕の場合は、DENONだが、メーカーのサポートセンターに聞いても、
PCM信号の中にAuro-3Dが入っていても再生できない、
と返事された。

3つめ、当事社からの無責任ある回答
 Korgに、(これこれをやってもdenonでは再生できないが)と報告をしても、
Korgではマランツで動作確認しているので、DENON固有の問題である、と
返事されて、一蹴されて終わった。 

 この配信が失敗して困るのは、DENONではなくKORGなんですけどー。


4つめ、個人のPCスキル
 パソコンを特殊な設定で使う以上、問題解決にはハイレベルな知識は必須である。
今回、あれこれ合計5台ものPCと3つのグラフィックスボードを試した。

こんなことをやらされるとはトホホ。めちゃくちゃな迷路である。

 

5つめ、Goalがどこにあるか

 Auro-3Dは、どのような音声であれ、Auro-3Dに変換して13.1chで再生するという

Auromaticと呼ばれる凄い技術がある。

 これもまた、Auro-3Dだ。ネイティブなAuro-3D信号を再生した時も同じAuro-3D

である。

 両者の区別を行えないと、正解にたどり着かない。PCMをAuromaticで13.1ch化したものを、

(真のAuro-3Dとまちがえて)そのまま聞いてしまう可能性があるのだ。

 

 本物のフランス料理の写真と、ロウ細工で作った写真の区別が難しいことと似ている。
AVアンプ側で何を表示させたらGoal(Auro-3Dのネイティブ13.1chデコード)か,これは重要だ。

 

 so what ?

 

結局、僕自身いろいろ試してAuro-3D友の会の(素晴らしいメンバーの)知恵も借りて

解決に至ったので、せっかくなので、ここに記録しておきたい。


1 PCの環境

正しいAuro-3Dでの受信は、KorgのPC環境に加えて、以下を注意すること。

(1) ディスプレイ解像度は2k以下にする
  安いnotePCが良い。
 4kが常識のdesktopではうまくいかなかった。
  ということは、この配信では4k動画はAuro-3Dで受けられないのではないか。

(2) 高級なグラボはだめ
 高級なグラボをDENONに直接HDMIでつなげると、アンプの出力解像度がVGA(640x480)に落ちる。
その瞬間、すべての操作が画面からできなくなる。
Nvideaでいうと、RTX40シリーズ、30シリーズはだめだった。

理由は不明。
(DENONなんて、しらねーぜ。怪しいからVGAにしておくぜ)
とグラボ側が思うのかもしれない。

2 HDMIケーブルの長さ
 ケーブルは、HDMI 2.1対応だけではダメ、1mのものは皆失敗した。80cm以下で成功

3 アンプ側のHDMI入力にも依存する(かも)
我が家では、HDMIportによって結果が異なった。
 DENON AVC-A1Hでは 背面向かって右(No7)から試して右から4番目(ちょうど真ん中のport)
 Game1で成功。アースから一番近いのかもしれない。


4 アンプの操作。最初はPCMで受ける
DENONのアンプでは仕様上portごとに前回のフォーマットを覚えている。
それはリモコンの赤ボタンで変更できるが、最初からAuro-3Dにしておくと

PCMの殻からAuro-3Dの信号を取り出せない。

 だから、まずは、stereo (あるいはPCM multi)で受けてPCMの入力で音が出る

ことを確認したうえで、あらためて赤ボタンでAuro-3Dに変更すると、

Auro3Dの信号を認識できた。
これを知らないと、永久にAuro-3D 13.1chに到達できない。

5 Goal 

 AuromaticとネイティブAuro-3Dの区別は、明確にできる。

input信号の情報をみるのだ。デノンマランツであれば、リモコンのinfo、本体のstatus

でわかる。

こんな具合に情報が出る。

 

 

Goalは、これ

input信号にAuro-3D/PCMと出ること (左上のピンク枠)

input信号のch数が13.1chであること(左下のピンク枠)

 

input信号にAuro-3Dの文字がないと、まだ道途中である。

でも、PCMとだけ出る場合でもGoalは間近だ。

4に戻ってトライすると解決する可能性が高い。

 

                      *    *    *
メーカーや配信会社も、このくらいまでブレイクダウンしてくれると、
客としてはありがたいのだが。
 

いま、Euro2024なる欧州選手権(国別対抗戦)が独で開催されている。
僕も先ほどまで、イタリアvsクロアチアの試合をみていた。

その内容もすばらしかったが、大画面で見た人も多いだろう。

音声をAuro-3Dで再生するとさらに良いのだ。
 

ブラウザでパソコンを使ってみる人も多いと思うが、僕はアマゾンスティックを
つかってプロジェクターで見ている。
やはり大きなスクリーンに映写してみると試合が手に取るようにわかり面白い。

この一連の試合はwowwowですべて生中継されていて、

その場の音だけが2chステレオで配信されている。

(解説は特につかないが、ダイジェストでは英語でついている)

これを、アトモスとか、AVアンプ各社が持つ適当なサラウンドモード

(スタジアム、とか、アトモスとか、なんでもよい)を使うと空間の

広がりが出て、臨場感に囲まれてさらに良い。

ところで、一部の、これぞ、という試合だけは日本のスタジオから特別に解説も入る。
選手ひとりひとりの紹介があったり、所属チームの情報とか、過去の記録などの説明
があって大変に助かる。
 

でも、この音声が入る時にサラウンドをかけると、せっかくの解説音声が聞き取れなくなる。

ステレオではセンターに位置した日本語が、サラウンド音声となって音声の音量が
相対的に下がるうえにお風呂の中でしゃべる感じで再生されるので、言葉が聞き
取れないのだ。

ドルビーアトモスとか、dtsのいくつかのモードにしてもこの欠点は解消されない。

ところが、Auro-3Dにすると一発で解決する。

Auromaticなる、疑似サラウンド化技術が、他社比で飛びぬけて素晴らしいのだ。

日本語音声はセンターにビシッと定位し、日本語の発音もクリアに浮かぶ。
誰から誰にパスがいって、、、とかいう説明も助かる。

臨場感あるスタジオの雰囲気は、サラウンドチャネルから響き、試合は盛り上がる。

僕がAuro-3Dを導入して最もよかったと思うのは、映画でも音楽でもなく、
スポーツ観戦である。

7月からオリンピックが始まる。

大相撲7月場所もある。

そのうち、欧州CLもまた始まるが、サラウンドで聞くアンセムは格別だ。
 

野球も大きなスクリーンで、イマーシブ化した音声でみると素晴らしい。

Auro-3Dは、スポーツを見るには最適な再生方法なのである。

サッカーファンは、いや、スポーツファンは、Auro-3Dを導入せよ。