Queen の1stアルバムのATMOS版が出た。 
 
昨年(Y2024)に、Queenの初期のアルバムがリマスターされた。ハイレゾ化、5.1ch化されて、既にAppleが配信しているし、パッケージメディアでも出ている。
 
これは、そのappleの音源とは別物だ。appleの音源は一層の5.1chで音が出るだけ、というものであった。この時は、音に対してメンバーは携わっていなかったと思う。おそらく、その音がいまいちだったので、作り直したかったのではないだろうか。
 
このATMOS版は、ルイス・ジョーンズとシャーリー=スミスが、あのATMOS設備が完璧なアビーロードスタジオでマスタリングしている。ブライアンメイとロジャーテイラーも、かかわって、音楽全体を再解釈、再構築しているという。 
ATMOS化である以上、15.1ch=9.1.6chのATMOSフルフォーマットですべての音が鳴っていてほしい、と期待して買った。
そして、期待通りに、ちゃんと15.1chすべてが使われていた  。 
すばらしい。
 
さて、このオリジナルLPは、1973年に出ている。日本では、初期の3アルバムすべてが1974年に出た。1年に3枚も(日本で)アルバムが出したのは、たぶん、シアーハートアタックからキラークィーンが日本でブレイクして、慌てて1st 2ndを出したのだ。 
 
 この当時購読していたロック雑誌『ミュージックライフ』では、Queenというバンドは毎月大きく取り上げられたし、渋谷陽一がMCをしていたFM番組『若いこだま』でもよくかけられていた。 
 
Queen初期の作品を,queen売出し時期として最初の3枚までとすると、シアーハートアタックは傑出していたけれど、音作り、曲調はいずれも同じようなものだった。 
 
さぁ、再解釈、再構築したこの音源は、オリジナルとどう変わったのか? 
 
どの曲も、曲からコーラスとギターを分離し、イマーシブな感じを出すように工夫されている。Queenから、コーラスを分離するということは、重要な部分はすべてマルチchのためにリマスタリングされているということだ。つまり、これが、再解釈、再構築ということになるのだと思った。 
 オリジナルの良さを打ち消すことはなく、どちらかというと、クィーンの重要な音粒である、ボーカル、コーラス、ギターを空間に漂わせるつくりである。音楽的には同じであって、再解釈、再構築というおおげさなものではない。もとのマスターテープは一緒だから当然だ。 
 
でも、オーディオ的にはえらく異なる。バンドの良さを生かしたイマーシブ化なのだ。解像度が劇的に上がっている。今まで聞こえなかった音が聞こえる。これを聴いた後、オリジナル版で同じ部分を再生してみると、確かに、その音は入っている。気が付かなかっただけだ。 
 
ひとつひとつの音粒が、オリジナル版では団子状粒としていっしょになっていたものが、ここでは分離して気持ちよく聞けるというものだ。プリンスのような横のSPだけから声がピンポンするような違和感のある気持ち悪さはない。 
さすが、バンドのオリジナルメンバーが関与しているだけある。 
 
15.1chのスペクトラムを付しておこう。 
5曲目、My Fairy Kingの冒頭からボーカルが入ったところまでの数秒のピークホールドである(赤線)。緑線は、瞬間のスペクトラムだがポーズを押してスナップショットをとっているので、残留ノイズと考えてほしい。 
 
15chもあるので、ペアがあるchはL側だけを示した。 
どのchにも音が出ているのがわかるし、それぞれの帯域特性と音圧もわかると思う。 
 
FWだけは特別扱いしていて、使い方が違うので、このchを再生できる人だけは、再構築の解釈を完全に聞き取ることができると思う。ここまでFwを特別扱いするということは、オブジェクトベースではなく、チャネルベースでマスタリングしていると思う。 
 
以前書いたプリンスといい、Queenといい、ATMOS音源は面白くなってきた。
ATMOS 15.1chの再生装置をそろえてでも、聞く価値は十分にあると思う。1st 2nd がATMOS化され出ているが、2ndよりも1stの方が満足度がより高いと思う。おそらく、シアーハートアタックもいずれ出ると思う。楽しみだ。 
 
ATMOS 15chのスペクトラム
 
Fr  さすがにフロントchは音量、帯域ともに最大である。 
 
 
C  このchを含め、フロント以外は低域は絞られている。
 
 
Fw 
このchだけは、ほかのchを異なるので、注記する。 
ピークホールドをみるだけではわからないが、時間軸でみると、ほかのchを異なり、多くの時間では鳴っていない。でも、ここぞというとき(強く意図して再構築された局面だろう)、特にギターとボイスが鳴る。 
 
 
Sr 
 
 
Sb このchは、Fwと並んで無視されているchだが、かなり広い帯域を再生する必要がある。 
 
 
Tf
 
 
Tm
 
 
Tb
 
イマーシブ度 ★★★★★
聴く価値         ★★★★★
おすすめ         ★★★★★