昭和時代の中学生は、高校受験でうまいこと高校に合格し入学すると、親からご褒美として、ステレオセットをもらうという習わしがあった。
我が家も、兄がその習わしに従って、CD-4ステレオ一式を買ってもらった。
僕の場合、高校入学の年はリフォームや車の買い替えと一致したので、家計の問題があると踏んで、
親とディールを交わした。
1年間、僕がステレオ一式を買ってもらうのを待つ。
そのかわり、2回に分けて買う。かつ、1年待つ分、2回合計予算を増やすというものだった。
家だって、僕のためにリフォームしてくれたのだけど、そこにつけこんで僕のほしいステレオの予算をupする、という図々しい交渉だったが、成功した。
総合予算は、30万から50万に上げてもらった。
当時、定価から25%引きで購入できたので、実質、定価70万円でコンポを組めるという戦略だ。
最初、まず、チュナーとカセットデッキを買う。予算10万円.
これで、エアチェックはできるし、ヘッドホンで音楽は聴ける。
翌年、予算40万円でアンプ、スピーカー、プレーヤーを買う。
このディールはとても良いものだった。
しかも、リフォームで部屋が余分にできたので、そこをオーディオ専用の部屋として使えた。
戦略成功である。
ただ、戦術でミスがあった。
カセットデッキに、エルカセットを選んでしまったのだ。
エルカセットは、テープ幅は倍、サイズは倍(したがって体積8倍)。
テープスピードも倍。音は圧倒的に良い規格である。
比較するとわかるが凄い大きさだ。これを見よ。
当然、良い音だった。
コンパクトカセットは、決してケースからテープは出ないので、回転精度を上げるのに限界がある。
Lカセットは、カニの手のようにカセットケースが開いて、そこからテープが外に出てデッキの中にローディングされる.
当然 回転精度は良い。
これを買ったおかげで、テープレコーダーのメカに興味がわいた。
ビデオデッキの技術を応用したという売り文句だったが、別に回転ヘッドがついているわけではない。
テープ自体はオープンリールテープと同じ規格であり、流用が利く、ということであった。
しかし、だれも買わない。
だから投げ売りされたのだが、なぜ売れないかというと、なんといっても、テープが高い。
コンパクトカセットだと、C60は4本で1000円で売っている。1本だと250円。安い。
Lカセットは、同じ60分では1500円、値引きしてもらっても1400円する。
普及しないので、値引きも悪いのだった。
こんな高いテープでエアチェックするのだったら、輸入盤でLPを買った方がよい。
ランニングコストの問題は、買う前から頭の中では知っていた。
では、なんで選んだというと、SONYのEL-5という中級機が、あまりに売れなかったので、半額で投げ売りされていたのだ。
6万円だった。半額という触れ込みに合理的な判断がゆがんで、本能で買った(正確に言うと買ってもらった)わけ。
実際に製品を買った後、テープが余りに高くて、何本も買うなんて、とてもできない。
挽回のできない、決定的なミスをした。
まぁしかし、世の中、なんとかなるものである。
ちょうど、兄がカセットデッキ買い替えて、TEAC A-450がいらなくなったというので、ゆずりうけた。
これで、僕もカセットデッキがつかえるようになった。
自己録再するのであれば互換性不要と思っていた考えは全く間違いであった。
総合コストを考えねばならぬ。
教訓になった。