僕は親から高校生の時にステレオセットを買ってもらったのだけど、最初に買ってもらったのはチュナーとカセットデッキで、しばらくはスピーカーは使わないで音楽を楽しんでいた。

その後、追加したコンポは、トリオのSP(たぶんLS707)、サンスイのアンプ(AU-D907)、マイクロのプレーヤー(DD-100)だった。

トリオのSPは、めっちゃ重いフロア型で33cmウーハ、12cmスコーカはアルニコ鋳造というかなり高級なユニット、ツィータはホーン型、バッフル面は傾斜してタイムアラインメント管理されたという、きわめて優れたものだった。

時代の最先端をゆく設計だったと思う。なぜか、これは不人気で売れ残っていた。トリオといえばチュナーとかアンプであって、トリオのSPなんて買う人はいなかったのだろう。その証拠に、展示品ではなく全くの新品が4割引きで投げ売りされていた。本当は、YahamaのNS1000を狙っていたのだけど、予算の都合でこれに抑えた。正解だった。

サンスイは、初代D907で初ロットを買った。当時のサンスイは不人気で、3割も引いてくれた。山水のアンプ、人気に火が付いたのはこのアンプが大ヒットしたからなのだけど、初ロットの段階では、まだヒットしていなかったので、安く出してくれたのだ。パワーアンプ部だけでも価値がある素晴らしい性能、プリはヘッドアンプ付きで、機能も音も、いう事がなかった。

プレーヤーはマイクロ。確か、DD-100 の特別仕様だったと思う。
 プラッターだけで5.2kgもあった。電源は独立型、アームはロングタイプML505LS、内部のケーブルは銀線のモデルであった。しかも、バネで針圧をかけるダイナミック型で、演奏中でも針圧を変えられる。
マニュアル操作だったが、触れる感触も、素晴らしいものだった。なんといっても、プラッター直径が40cmもあって、ダストカバーもぶ厚いアクリルで重量があり、圧倒的な存在感があった。

 しかーし、使ってわかったのだが致命的な欠点もあった。最も重要なシャフトが細くてチャチすぎる。ターンテーブルは、シャフトだけで支えられている、これが細くてチャチなので、僅かな力をかけても、ターンテーブルが簡単にフラフラ傾いでしまうのだ。たとえば、クリーナーを当てるとターンテーブルが下に傾く。強くあてると、しまいには偏心してくる。だんだんと、その偏心が大きくなり、ターンテーブルの外周では、上下にゆれて回転する。使用半年で、上下に1mm揺れるようになった。

クリーナーを軽く充てる程度にしておけばよかったわけだし、音は良かったのだけど、その後、シャフトが太いプレーヤーを選ぶようになったのは、この教訓からだ。

そして、この先、二度とマイクロの製品は買うことがなくなった。

まぁしかし、このシステムで聞く音は、なんとも雄大で、とにかく、気に入った。

この時のコンポの選定は、カタログやら、雑誌やら、で一応リストアップした候補はあったものの、店舗でみて、手に取ってからその場で決めた。重量感とか、操作時のSWなどの感触を重視して、音なんて聞かないで選んだものだった。雑誌の評価なんかも気にしなかった。

アンプなんて、まだ店頭に並ぶ前だったから、通販で安くい売っている店を選んで買った。確か、秋葉原のラジオ会館にあったF商会なる店だったとおもう。


 音というのは、その時の体調や気分で、かなり印象が変わる。でも、見栄えや感触の印象は不変だ。目に見えるものなのだから見栄えは重要だし、毎日つかうのだから操作感は重要だ。だから、コンポを買うときは、操作感やデザインを音なんかより優先した。いまでも、基本、音は聞かないで買っている。

しばらくはステレオで使っていたのだけど、あるとき、余っていた小型SPが2つあることに気が付いた。

当時、アンプは、スピーカー出力を切り替えできて、A, B, A+B という3通りの切り替えできた。
Aには2ch、Bにはマトリクス用の2つのスピーカーをつなぎ、マトリクスで聞きたいときだけ、A+Bで聞く。

この方法は、たしか月刊ステレオという雑誌で紹介されていた手法なのだが、たぶん、その記事は長岡鉄男ではない人だったと思う。大昔から知られていた方法のようだ。

マトリクス配線で4ch化した構成で、ピンクフロイトの狂気を聞いたのだが、もう、音がグルグル回って、すさまじいのだ。マトリクス4chの効果に、ひっくり返った。

最初にきいた、マトリクスサラウンドであった。