こんばんは、しろくまです。
本日は職場の盗人⑪に続いて、本日は⑫になります。
※前編はこちら↓
職場の盗人⑪
※多方面にご迷惑がかからないよう少し脚色しております![]()
※今回、後半に汚い言葉使いが出てまいりますので、ご注意ください。
私がお母様をその場で待ったのは、お母様が私が駆け寄る素振りを見て、
頭を下げながら、手でそれを制止する仕草をされたからだった。
母「はじめまして、Bの母です。職場にご迷惑おかけしてしまい、
大変申し訳ございません。」
私「お電話でお話させていただいたしろくまです。こちらこそいつもお世話になっております。いえいえ、お気になさらないでください。今B君を呼んでまいりますので。」
自己紹介もそこそこに、休憩時間が限られているので急いでBを
呼びに行くことにした。
Bはすぐに状況を察知し、その場から動かない。
私からBに話しかける
私「お母さんが来られた理由はわかるよね?まずはお母さんと一緒に
車のことを解決してきなさい。今日で車検切れるんでしょ?」
Bは力なく頷く。
私は続けた。
私「車の件が解決したら、お母さんB君と話したいと思うから、
話をし終わったらお母さんと二人で私のところに来てください。
お母様、何かありましたら、こちらにすぐお電話ください」
私の連絡先を渡し、二人を外に行かせた。
…お母さん、元々足悪いのか、それとも何かあったのかな。
全てがBに繋がるわけではないと思うが、Bの素行を知った上でお母様の
状態を見ると、酷く胸が苦しくなった。
Bは3人兄弟の末っ子、長男とお父様が他界されていることは聞いていた。
どれくらいの期間なのか定かではないが、お母様が女手一つで子どもたちを
養ってきたのだろう。
元々のお母様の顔はわからない。
ただ、同年の方より確実に頬は痩けている。
私は心のなかで母の顔を思い浮かべていた。
私も母には多大な迷惑をかけてきた。人様に誇れるような人生ではないし、
親孝行もろくに出来た息子じゃない。親のことに関しては、
Bにあれこれ言える立場の人間でもない。
きっとうちの母とBの母は同じくらいの歳なのだと思う。
ただ、Bのお母様の顔には、悲しみが枯れて重なったような深いシワが、
いくつもあるのだ。
Bとお母様が帰ってきた。車は懇意にしている業者さんが引き取りに
来てくださったとのこと。
一通り話も済んだとは言うものの、お母様の顔は晴れない様子だった。
その後、お母様と私二人で少し話すことに。
足は先日階段を踏み外して骨折してしまったという事、
息子が家に帰ってこないとBの奥様から電話があり、
そこに帰れないのであれば実家に帰ってくればいいと話した事、
会社に迷惑をかけてしまい申し訳ありません、そんなような事を話した。
母「先程息子と話をしたのですが、
『クソババぁ!会社になんてくるんじゃねぇ!』と怒られてしまいました…
電話が繋がらず、他に手段が無かったものですから…ねぇ」
力のない笑顔を私に見せてくれるお母様。
母「それでも昔は優しかったんですよ。成績も良くて、部活でも部長をやっていたり。なんであんな風になってしまったのか…」
遠くを見つめながら、続けた。
母「仕事も正社員になれて頑張っていると思ったんですが、
お金の無心に来たりして…子供の事もあるからお金も必要だと思って渡していたのですが、他の兄弟や嫁から『あいつはその金でパチンコやっているのだから、もうお金をわたすな!』って怒られましてね…でも、息子が困っていたら、貸さない訳にはいかないでしょう…?」
私はただただ、そうですね、と話を聞くことしか出来なかった。
私の知っているBは、本当はそういう人間だったのだろう。
でも今は違う。Bをそうさせたのは一体なんなのだろう。
父親、育児、仕事、パチンコ…
人なんて本当に脆い。
でもこればかりは、いくら人が手を差し伸べても、
自分がゼロなら這い出すことはきっとできない。
話が途切れないので、営業時間が終わってしまう事を理由におかえりいただくことにした。
「何かあったらまた電話してください」とお母様にお伝えし、
入り口まで見送った。
お母様は、松葉杖で足を引きずりながら人混みの中に消えて行く_
職場に戻り、業務を終えてBと二人になった。
大きく息を吐き出しても、私の心は落ち着かない。
私は幼いのだろうな、きっと今から汚い言葉を吐く。
言葉でBをぶん殴ってやろうと思っている。
私「あのさ、お母さんに酷い暴言吐いたんだってね?
…そもそもさ、こんな状況にしたのは誰だよ?」
Bは下を向いてまた黙る、そのいつものパターンに、
私は声を荒らげてしまう。
私「人が話をしている時は目見て話を聞け、顔上げろや」
Bがおずおずと顔を上げる。
私「お前のかーちゃん、杖ついてるのに何で肩くらい貸してやらねーんだよ!あんな状態で車運転してきて…しかもお前の為に来てくれたのに、
暴言吐くなんて頭おかしいんじゃねーの?!」
これはもうパワハラだろうな。
でも、そんなことどうでも良かった。
私「俺の目見て聞け!とーちゃんが亡くなってから、
女手一つで育ててくれたんだろ?お前のこと、昔は優しかったのにって、
泣いてたぞ?そんなかーちゃんを、今度はお前が養ってやるんじゃねーの?!嫁もいて、子供もいてそりゃ大変だろうよ。だからこそ稼がなくちゃいけないんだろ?パチンコなんか行ってる時間も金もお前にはねーんだよっ!」
Bが小刻みに震えている。私は殴られるだろうか。
それでも良い、かかってこい。
私「俺だって良い給料貰ってるわけじゃないよ、でもそこを超えてくように
今お前は頑張るしかねーじゃん?!今お前は何を頑張ってるの?
自分の為にも、誰かの為にもならないことならするんじゃねーよ!」
Bは自分の腕に爪を立てて、涙を流している。
Bの涙は、一体何の為の涙なんだろうか。
何を思って泣く涙なのだろうか。
私には、本当にわからなかった_
⑬に続く。