my loving daughter をChat GPTに和訳させると、次のように回答しました。
「愛する娘」または「私の愛する娘」と訳せます。――ChatGPT
辞書には次のように載っています。
loving (形) (人を)愛する, 愛 情に満ちた: my loving daughter (親を思ってくれる)かわいい娘 / Your loving friend, あなたを愛している友より(あなたの親友より)《手紙の結び》/ She looked at him with loving eyes. 彼女は愛情のこもった目で彼を見た
――カレッジライトハウス英和辞典1997
loving (形) 〚通例(名詞)の前で〛愛情のある、優しい、好意的な<人>(affectionate);《…に》愛情を示す《to》▶my loving husband 私の優しい夫 (!「私の愛する夫」の意味ではないことに注意)/The childen were loving to me 子どもたちは私に優しかった〚(名詞)の前で〛愛情のこもった<世話など>▶tender loving care 優しく愛情を込めた世話
――ウィズダム英和辞典2003
loving (adj) [only before noun] behaving in a way that shows you love someone : in memory of my loving wife / What that child needs is plenty of loving care and attention.
――Longman DCE
[loving+人]の型では「(誰かを)愛している人」を意味する人の性質を示す形容詞adjectiveと位置付けています。文法的には、形容詞kind(親切な)が kind personのように人の性質を示すのと同じだというとらえ方です。
[be loving to人]の型で「人に優しくする」という使い方をするのも[be kind to 人]の型で「人に親切にする」とするのと同じです。また、loving care(想いのこもった世話)のように人以外の名詞を修飾する点も、kind act(親切な行い)などと同じです。
現代英語の語尾-ingの単語は、一般的には動詞から派生したものと考えられています。辞書では、-ing形を分詞participle、形容詞adjective、名詞noun、などに分類します。しかし、現状ではその分類基準には決まったものが無く、英語の品詞の定義は人によって異なります。
「an interseting bookのように,分詞が完全に形容詞化してしまっていれば,意味をとる場合も,英語で表現する場合も事は容易である。しかしながら,多くの分詞は形容詞として用いられながらも完全に形容詞化しているわけではない。
Poutsmaは次のように述べている。
The present participle of practically all verbs can be freely used
attributively.
1) a charming girl
2) playing children
(l)ではcharmingは真の形容詞とかわらないが、2)のplayingは動作主や時の意味があらわれていて動詞的性格がつよい。多くの分詞はこの両方の性質を帯びていて,形容詞とみるか現在分詞とみるか判断のつかぬことが多い。
どの程度まで辞書において分詞は形容詞として記述されているであろうか。本論においては,具体的にsampleをとり,六種の辞典の記述が形容詞となっているかどうかを調べるものである。」
小谷 晋一郎『分詞形容詞の一考察―分詞+名詞』1971
この論文には「interestingは完全に形容詞化」とありますが、中には「interestingは分詞の形容詞用法」と主張する人もいます。それぞれの分類基準を見ていく前に、動詞派生-ing形の辞書の扱いについて小谷1971から一部を抜粋して紹介します。
「調査した辞典は,米(2),英(2),日(2)の下記6種である。
1. Webster's Third New lnternational Dictionary.
2. The Random House Dictionary of the English Language.
3. Oxford English Dictionary.
4. The Universal English Dictionary.
5.研究社:New English-Japanese Dictionary.
6.岩波:Comprehensive English-Japanese Dictionary.
辞典が分詞を一項目として形容詞としてあげていても,又派生語としてあげていても,その辞典の番号に○印,あげていなければ×印をつけてある
standing 1.〇 2.〇 3.○ 4.〇 5.○ 6.〇
shining 1.〇 2.〇 3.○ 4.× 5.○ 6.〇
visiting 1.× 2.× 3.〇 4.〇 5.〇 6.〇
suffering 1.〇 2.× 3.○ 4.× 5.× 6.〇
demanding 1.× 2.〇 3.〇 4.× 5.× 6.×
motoring 1.〇 2.× 3.× 4.× 5.× 6.×
admitting 1.× 2.× 3.× 4.× 5.× 6.×
Faucet&Makiの統計により重要度一千語以内の動詞の分詞の六辞書に形容詞として記載されているものを調べると次のようになる。
78語は次の動詞である。
ask, be, begin, believe, bring, buy, call, carry, change, close, come, cover, cut, do, eat, fall, feel, fill, find, follow, form, go, get, give, have, hear, help, hold, hope, keep, know, learn, leave, let, live, look, love, make, mean, meet, need, pass, pay, play, plan, please, point, present, put, reach, read, receive, remain, remember, run, say, see, seem, send, set, show, sit, stand, start, stay, stop, take, talk, tell, thank, think, try, turn, use, want, wish, work, write.
六辞書とも形容詞として記載しているものは,
cutting, eating, feeling, following, knowing, living, loving, meaning, passing, pleasing, reading, running, seeming, standing, telling, trying, wanting, working,の18語,全体の23%
六辞書とも形容詞として記載していないものは,
bringing, buying, finding, learning, leaving, letting, saying, sending, showing, thanking, using,の11語,14%。
小谷 晋一郎『分詞形容詞の一考察』1971より
基本語78語中、六辞書とも形容詞として記載した語は18語、形容詞として記載していない語は11語とあります。そうすると、後の49語は形容詞とするかしないかは辞書により見解が分かれていることにあります。引用したstanding~admittingは論文から抜粋したものですが、その内訳をみても分かるように、形容詞と認定する語は辞書によりバラついています。
品詞という概念は、屈折言語の文法的仕組み基づいたものです。ラテン語では、名詞に準じて格変化する語を形容詞とするので、屈折語尾という形態から品詞が分かります。
屈折に乏しい現代英語の単語は形態上で品詞が分からず、その定義も一致した見解はありません。分詞の形容詞用法(participleのAttribute use)と形容詞(adjective)の判別が辞書によりバラつくのは、定義が確定していないことを反映しています。。
小谷1971では、基本語の-ing形の中で、各辞書が形容詞として掲載する計60語中、最も多いのはOEDの57語、最も少ないのはUniv.の29語と報告しています。OEDが他の辞書に比べて、-ing形を形容詞化している語として認定する割合が極めて高いのは、学術的辞書として記述的立場から使用実態に即して慣用を認める傾向からだと考えられます。一般向けの辞書は規範的立場から慣用よりも理念を優先する傾向があります。
また、この論文の調査は1971年なので、現代とは情報環境が全く異なります。そのことは「nativespeakerにしか判断できない形容詞と分詞の区別を,日本の辞典に求めることは無理なことであるから,二つの英和辞典は参考程度にしか役立たない」との記述から分かります。現代では実証的な言語事実の検証には言語データベースを利用できます。その元となる実使用される表現データの収集・調査が開始されたのは1960年頃で、その成果が表れ始めるのは1970年代ごろからです。現代の辞書は言語データベースを利用していますが、1970年ごろに日本ではほとんど利用できなかったでしょう。
nativespeakerが編集した辞書の間で文法的位置づけがバラついていることから明らかなように、形容詞と分詞の区別はnativespeakerでも判断が分かれます。英語の品詞分類基準、語感は人によって異なるので分類が一致し、1つの正しい答えが出ることは期待しな方がいいでしょう。
発想を変えて考えてみましょう。動詞派生の-ing形には、動的なものから静的なものまでだ段階性があるという事実をまず受け入れます。各語の語感は人によって異なり慣用も変化します。その変化の過程や段階から、各語の語法やコロケーションが現状ではどの位置に分布しているかは探ることは可能です。実際に使う時に必要な情報は個々の語法で、文法という包括的で抽象的な法則は各語の語法を一貫した原理で体系の中に位置づけるものでいいでしょう。
動詞派生の-ing語尾の語の中には形容詞adjectiveだけではなく名詞nounと判別されるものもあります。[~ing+名詞]の型を体系的に見るには、分詞系だけではなく動名詞系の語も考慮しておく必要もあります。
手元にある最近の辞書で小谷1971にりすとされていた語の扱いをいくつか調べてみました。
六辞書とも形容詞として記載してある語の例をいくつか挙げておきます。
a cutting remark(辛らつな言葉)
a knowing look (知っているかのような表情)
a telling argument (効果的で説得力のある議論)
a standing joke (いつもの冗談)
a seeming friendship (うわべだけの友情)
六辞書が形容詞としているものの中には名詞とされている語もあります。
eating disorder (摂食障害)
standing army (常備軍)
六辞書とも形容詞として記載していないもの中には名詞としての用例はあります
learning curve (学習曲線)
六辞書とも形容詞として記載していないもの中にはそれ自体が名詞とされるものもありあます
letting(賃貸)、showing(展示、公開など)
小谷1971にある-ing形の分詞形容詞についての記述を見ていきます。
「分詞形容詞と限定される名詞との関係
大部分は名詞が分詞の主語の関係にある。いくらかの例をあげる。
(1) a floating log ← a log which is floating (自動詞)
(2) a hanging oil lamp ← an oil lamp which is hanging(自動詞)
(3) the commanding general ← the general who commands [ ](他動詞)
(4) moving passages ← passages which moves [ ] (他動詞)
他動詞の場合は目的語は漠然と不鮮明になって分詞に含まれてしまっているのである。
時には次例のように名詞が分詞の目的語になっている場合がある。
(5) developing area of law ← the area which [ ] are developing
小谷 晋一郎『分詞形容詞の一考察』1971
この説明法から読み取ると、元の動詞から-ing形の分詞へ派生するとき、(1)、(2)自動詞では[名詞+be+~ing形]の型(叙述用法)を元型にして、そこから次の段階として[~ing形+名詞]の型(限定用法)へ移行することを想定していると解せます。
用例(1)a floating logは「浮いている丸太」は進行形のときの動的一時的な様子を表します。また(2)のa hanging oil lampも「吊り下げられたランプ」という進行形のときの動的一時的な状態を表します。これら動的な-ing形は分詞由来の語であると考えていいでしょう。
ところが他動詞の場合、事情が違います。
用例(3)では、[~ing形+名詞]の型(限定用法)へ移行する前の文の述語動詞がcommandsという単純現在時制になっています。分詞から移行した根拠とするなら、[名詞+be+~ing形]の型のwho is commandingにすべきですが、あえて説得力に欠ける単純形を選んでいます。それはthe commanding generalが「指揮官」を意味し、commandingが「指揮」という静的で恒常的な意味だからでしょう。静的で恒常的なのは現在進行形より単純現在形が相応しいですから。
さらにこのcommandingを分詞由来とすることから生じる執筆者自身の違和感は「他動詞の場合は目的語は漠然と不鮮明になって分詞に含まれてしまっている」との記述の表れています。「~してしまっている」というのはこの現象に心から納得していないことを示しています。
語順が重要な文法書手段の英語において、前置詞などの機能語なしにその直後に目的語を直置きできるのは、動詞類の不定詞、分詞、動名詞に許された機能です。それをあっさり放棄していることに違和感を覚えるのは文法の専門家なら当然のことです。
この他動詞から派生した-ing形が分詞あるいは分詞由来であることにこだわる必要はありません。-ing形の位置づけが辞書によってバラつくことからもわかるように、(3)のcommandingが分詞であるということに明確な根拠はないのです。
英語の歴史からいって、-ingはかつては純粋な名詞語尾でした。分詞の屈折語尾が摩耗する過程で同じ-ing語尾が現れ、名詞と分詞が混交したことはよく知られています。名詞が静的で恒常的であり、動詞由来の分詞が動的で一時的であることは、言語感覚としてはあり得るでしょう。同じく動詞派生とされる-ing語尾の動名詞は名詞語尾を受け継ぐので、分詞と比べて静的な方に分布すると考えられます。
もしもcommandingが分詞由来なら次のように説明できるはずです。
(3)b. the commanding general ← The general who is commanding [ ]
この(3b)では(1)、(2)と同じくcommandingは進行形の持つ動的な意味を持って移行することから「指揮を執っている将校」の意味に解せることになります。実際の(3)は静的な「指揮官」を意味する、2語の名詞を並べて1つの意味を成す型です。静的な-ingは分詞よりもむしろ動名詞の方がしっくりきます。
(4)も元の文をmovesという他動詞の現在時制にしています。限定用法のmoving を分詞由来とすることに違和感があることを示しています。他動詞の場合[名詞+be+~ing形]の型(叙述用法)⇒[~ing形+名詞]の型(限定用法)の移行は論理的に問題があるということです。
このmoveは「感動する」という人の感情を動かす動詞interestと同系とみなせます。
今は、interestingは分詞ではなく形容詞であるとするのが通例です。その位置づけは事実とも符合し十分な根拠もあります。interest系統の人の感情を動かす動詞は、強い他動性を特徴とします。そのことは辞書の用例にも明確に表れています。
4) a. Sports doesn't interest me. ――WED
b. Akio has interested himself in working with the homeless. ――WED
(4a)では動詞interestは人を目的語にとり、影響を与える他動詞です。この代名詞meはふつうはストレスを受けない意味内容が無い形式的な語です。つまりinterestの他動詞性を維持するために置かれていると解せます。
また(4b)では人が主語になっていますが、その場合にはhimselfという意味上は不要な再帰代名詞を使ってinterestを形式上他動詞としています。interestという語を能動文の述語として使う時には、意味内容としては不要でも形式的な目的語を置くのです。
ところがinterestが[is+interesting]の型で使われると不思議な現象が起きます。
4)c. The story is interesting to me. ――WED
この(4c)は見かけ上は進行形です。しかしこれがthe story interests meの相を変換したと言えるでしょうか?述語動詞の時に強い他動性は感じられません。それはto meという前置詞句を後置する表現が象徴しています。
前置詞句の後置は他動詞派生の動詞類である分詞の特徴、直後に目的語を直置きするという機能を完全に放棄しています。この型はThe children is kind to me.と同じです。形容詞kindは直後に目的語を直置きできないのでto meという前置詞句を後置します。欧米の辞書ではinterestingをもはや動詞由来の分詞とは言えず、性質が変わった形容詞としているのです。
派生語であったとしても元の性質を離れるという現象は言語にはよく見られるものです。動詞類一般にみられる現象は現代英語の根本的原理であり、それに反する現象を無視してまでintersetingは分詞だと主張することに学習上のメリットは無いでしょう。
The movie is moving to me.という表現があります。さて、(4) moving passagesのmovingは分詞という解釈でいいでしょうか?
moving pictureは「動く絵」の意味なら動的な分詞、「動画」の意味なら静的な名詞もしくは動名詞とするのが自然な解釈だと考えます。
人の感情を動かすような(4)のタイプの他動詞よりも、(3)のタイプの他動詞を分詞由来とするのはさらに問題があります。小谷1971では六辞書とも形容詞として記載しているreadingについて、(3)のような動的な意味の限定用法へ移行できないということを認めています。
(6) * the reading children ← the children (who) are reading books
用例(6)に対するnativespeakerの判断は“curious”だったとし、その理由を「readingは他動詞であって目的語をとる故、reading[Vt]+children[O]のような非文法的文を連想させるような動詞性がつよすぎるためであろう」(小谷1971)と推測しています。しかしcommandでは「目的語は漠然と不鮮明になって分詞に含まれてしまっている」として許容されることとの整合性がありません。
この論文は1971年のものなので、今の解釈とは異なるところがあります。手元の辞書では[reading+名詞]の型のreadingは、形容詞adjectiveではなく名詞nounとして扱われています。
COBUILD英英にはreading glasses(老眼鏡)、reading lamp(読書用ランプ)、reading room(読書室)が載っています。このように2語でまとまって1つの名詞nounの意味を表します。このreadingは「本を読むための」という静的恒常的な意味であり「読んでいる」という動的一時的な意味ではありません。
当時の辞書とは異なり、現代ではreadingは名詞とするのがふつうでしょう。静的な恒常的な用途を示すような意味の-ing形は名詞あるいは動名詞系ととらえるのが自然だからです。
見かけは同じ-ing語尾の語でもその性質が異なるという見方は歴史的経緯や言語事実と符合します。~ing語尾をもつ語は語尾の屈折が摩耗していく過程で静的な純粋名詞と動的な分詞が混交していったこと、動的で一時的な意味と静的で恒常的な意味があること、他動詞由来の~ing形が目的語を不要あるいは不可になっていること、などです。この他にも英語話者が質的に異なると感じていることを示唆する事実があります。
「a dancing girl
これだけ見ても,dancing が現在分詞なのか動名詞なのか分からない。しかし,この表現は 2 通りの発音が可能で,dancing に強勢を置いて発音した場合は「プロのダンサー」の意味で,このdancing は動名詞になり,dancing と girl の両方に強勢を置いて発音した場合は「今踊っている少女」の意味で,この dancing は現在分詞になる。
次のように言い換えると違いが明確になる。
[1] a dáncing girl (a girl whose profession is dancing)
[2] a dáncing gírl (a girl who is dancing right now)
[1] の下線部 dancing が動名詞であり,[2] の下線部 dancing が現在分詞であることは明らかである。
さらに,次の例を見てみよう。
a dáncing school (a school which teaches dancing)
a sléeping líon (a lion that is sleeping right now)
これらの例から,動名詞は修飾する名詞の目的や用途(ダンスを教えるための学校)を表し,現在分詞は修飾する名詞の動作や状態(今眠っているライオン)を表すと言える。そして次のようにまとめることができる。
[動名詞]+[名詞](名詞は無生物が多い)
a dining room, a sewing machine, a sleeping bag
[現在分詞]+[名詞](名詞は生物が多い)
a dancing girl, a sleeping lion, a crying baby
[現在分詞]+[名詞] でありながら [名詞] が無生物なものとして,例えば,an approaching train, a falling leaf, a setting sun などがある。さらに,人の集まりを組織(無生物)と見るか,集団(生物)と見るかで解釈が分かれるものもある」
長谷川 剛『英語の動名詞・現在分詞・形容詞の区別について』2022
[~ing+名詞]の型には、動的で一時的な傾向の分詞由来のものと、静的で恒常的な動名詞ゆらいのものがあるという視点は合理的で一貫性があり、言語事実にもあうと思います。
同論文では、TOEICの対策問題の解説をもとに、現在分詞と形容詞の区別について述べています。よくまとまった内容なので長くなりますがほぼそのまま引用します。
「TOEIC 定期試験 既出問題集 2Test 7, No. 114 には次のような問題がある。
At the panel discussion, Ms. Yang made a [ ] argument for environmentally responsible
business practices.
この空欄に対して(A)convince, (B)convincing, (C)convinced, (D)convincingly の選択肢がある。
この問題を次のように解説している。
空欄は不定冠詞aと名詞argumentの間でargumentを修飾する形容詞の位置になる。
したがって形容詞のような役割をする現在分詞(B)convincing(説得力のある)と過去分詞(C)convinced(確信した,納得した)のいずれかを選択しなければならない。主張(argument)は確
信をあたえる主体であるから,能動の意味を内包した現在分詞(B)convincing(説得力のある)が正解である。
(解説者述べているように、)語形を見ると convincing は現在分詞で convinced は過去分詞である。しかし,英語の辞書を見るとingやedの語尾をしていながら,形容詞として別の見出しに掲載されているものもある。それでは「形容詞的に用いる分詞」と「完全に形容詞になったもの」の違いは何なのか。
[1] A lion was sleeping.
[2] I saw a sleeping lion.
[3] His speech was convincing.
[4] He made a convincing speech.
[1] は進行形の文なので,sleeping は現在分詞である。[2] は名詞 lion の前で現在分詞が形容詞的に用いられている。しかし,[3] と [4] の convincingは現在分詞ではなく「完全な形容詞」であると判断できる。なぜそう判断できるのか。まず,「形容詞的に用いる分詞」と「完全に形容詞になったもの」の違いの一つとして,分詞はveryで修飾できないが,形容詞はvery で修飾できることがある。
*[1] A lion was very sleeping.
*[2] I saw a very sleeping lion.
[3] His speech was very convincing.
[4] He made a very convincing speech
また,現在分詞を使った進行形の文は was をseemed に代えることはできないが,形容詞の場合は,wasを seemed に代えることができる。(ただし,[1] は A lion seemed to be sleeping. と言うことはできる。)
*[1] A lion seemed sleeping.
[3] His speech seemed convincing.
さらに,[1] が現在分詞を使った進行形の文であるのにたいして、[3]が形容詞であることは、動詞convinceは他動詞用法しかなく、convincingが形容詞であることは,動詞 convinceは他動詞用法しかなく,進行形にすると目的語が必要になることで分かる。
[1] A lion was sleeping.
[3] His speech was convincing.
cf. His speech was convincing the audience.
このように他動詞用法しかない動詞が目的語なしで使われている場合は,その ing 形は現在分詞ではなく形容詞であると判断できる。また,形容詞的に用いる現在分詞が一時的な動作の意味を持つのに対して,これらの完全に形容詞になったものは永続的な性質の意味を持っている。下は,他動詞用法しかない動詞が ing 形になり,形容詞になった例である。
The lesson was really interesting. [PEU]
The instructions are very confusing.
That 72% figure is pretty surprising!
The game was extremely exciting」
長谷川 剛『英語の動名詞・現在分詞・形容詞の区別について』2022
英語の品詞特定は容易ではないことが分かると思います。ここにある品詞判定のテストは、専門家であればふつうは知っているものです。interestingが分詞であると主張するには、これらのテストの反例を示すなどの十分な根拠と、分詞とすることで得られるメリットが必要でしょう。
小谷1971は、50年以上前のもので、言語学の知見の集積が十分ではなく、事実に基づいた言語データへのアクセスが困難だった時代のものです。見解としてはともかく、その資料は十分利用価値があります。
六辞書とも形容詞として記載しているもの中に、knowing、seeming、wantingなどが入っていることは、-ing形の形容詞用法がすべて分詞から派生したとみることが無理筋であることを示唆します。これらはそもそも[is+knowing]という型の進行形で使うということ自体に抵抗がある語です。「状態動詞は進行形にならない」というのは規範が実使用を無視して作った禁則ですが、そこを割り引いてもこれらの語を-ing形にして動的一時的に使うのはそう多くはないと考えられます。
事実としてwantingは「不足」「欠け」という意味で使われます。wantの歴史的な意味変化は、概略、(足りない)⇒(足りないものを欲しがっている)⇒(欲しがっている)⇒(~したい)です。wantingの形容詞化は今からずいぶん昔であることが伺えます。
現代英語の[be+~ing]型の進行形が発達し始めたのは17世紀以降なので、wantingの使用はそれよりも早いことになります。もっとも~ing語尾の語が名詞や形容詞として使われていたのは、進行形が発達する以前なので、動詞派生の分詞形容詞を経ないで形容詞化した語があっても不思議ではありません。
しかし、-ing形は分詞であるとする説明は、受験英語でいまだに再生産されています。その1つが冒頭で紹介したlovingの説明です。SNSにあった例を紹介します。
lovingやintersetingの説明に「意味上の目的語」という独特の表現を使っています。これは形容詞と判定する基準「他動詞用法しかない動詞が目的語なしで使われている場合は,その ing 形は現在分詞ではなく形容詞であると判断できる」(長谷川2022)に反していることを示しています。
動詞派生の分詞、動名詞、不定詞といった動詞類は元の動詞が強い他動性を持った動詞なら目的語を従えるものです。元の動詞loveやinterestは他動詞が強く目的語を従える語です。目的語なしで使うing形を形容詞と認めずに、分詞だというためには「意味上の目的語」なる用語を創作せざるを得ないのです。これは「他動詞の場合は目的語は漠然と不鮮明になって分詞に含まれてしまっている」という50年前の説明を言い換えたものにすぎません。
新たな用語を作り出すこと自体は問題ではありません。その用語がこれまでにない新たな視点から英語という言葉の原理を描き出し、学習者にとって有用なものなら評価できます。しかし、限られた現象を説明するだけの用途しかないのなら慎重にすべきだと思います。
一般的ではない説明を思い付くと、何か新たな視点を得た気になることはよくあることです。先達の研究や近年の言語学の成果を超えるのは、思い付きレベルでできるものではありません。
lovingを分詞ではなく形容詞と判定するのは十分な根拠と有用性があります。冒頭で紹介した辞書とは別の用例を示します。
The children there were very loving to me.――COBUILD E.D.
(そこにいる子供たちは私にとても親切だった)
lovingにはveryで修飾されています。wereをseemedに変えても文として成り立ちます。形容詞としての要件を満たします。目的語が無いのは「愛している」という動的な状態を表す意味を離れて、形容詞affectionate「愛情あふれる(人)」と似たような人の性質を表す意味に変質したからです。
元の動詞のloveは進行形にすると I'm lovin itと代名詞itを目的語に置きます。このitはふつうは強勢を置かない機能語で、loveが高い他動性をもった動詞であることを示しす。目的語をともなわいlovingは分詞とは性質の異なる語ととらえるのは自然なことです。派生語lovelyが形容詞として使われるのと大差ありません。
loving childrenは「愛情あふれる子供たち」の意味になります。文脈によってはその愛情を向ける相手が発信者meであれば、「私を愛してくれた子供たち」になります。これはkind childrenが「親切な子供たち」、文脈によっては「私に親切にしてくれた子供たち」にもなるのと同じです。親切にする相手を明示したいなら[kind to人]とすればいいのと同じく[loving to 人]と表現できます。
見かけの-ingにとらわれずcharmingやkindと同じく、人の性質を表す形容詞ととらえれば済みます。[to 人]を使ったり、very lovingのように使ったりすることもか分かり用法が無理なく広がり実践的です。むしろ分詞と考えると不要な説明が増えてしまいます。何も知らない学習者は実は分詞なんだと言われて「こんな説明があったなんて」と思うかもしれません。kindという形容詞の意味を説明するのに「意味上の目的語」を想定しますか?
lovingを「愛する」という動的な意味に誤訳するのは、分詞と思うからです。見かけにとらわれず人の性質を示す形容詞と静的に捉えて、いくつか生きた用例にあたればkindなどと同様にふつうに使えるようになります。
下のSNSにある子は、町中水浸しという非常時に犬を助けてあげるような愛に満ちた子なのです。She is a loving girl. 愛情あふれる女の子。
英語の品詞分類は明確な定義でできるものではないので、その境界が明瞭ではありません。静的で恒常的な名詞から動的で一時的な動詞は分布するように広がっています。
[~ing+名詞]の型で使う語尾-ing形の品詞は静的な名詞から動的な分詞へ分布していると考えられます。
名詞の目的や用途を表すものは、名詞(動名詞)
名詞の性質や分別的な状態を表すものは、形容詞
名詞の動作や一時的な状態を表すものは、現在分詞
※ただし分類基準ではなく分布なのでどちらに解釈してもいい場合有
例えば、swimmingは次のように分布していると考えます。
swimming pool(水泳用のプール)は用途を表し2語で一体の名詞になっているので名詞とみなせます。swimming boy(泳いでいる少年)は動作あるいは動的な状態なので分詞とみなせます。swimming sensation(ふらふらする感覚)は、その他形容詞に置き換えた感覚、[burning / pleasant /strange / …]sensation (焼けるような/心地よい/奇妙な/… 感覚)と分別されているととらえられます。よって形容詞とみなせます。
品詞の判定に1つの正しい答えを求めるのは現実的ではありませんが、個々の語がどのあたりに位置しているかは使用実態から分かります。辞書の品詞の位置づけは、分布の目安と柔軟にとらえて実践に活用すればいいと思います。
今回検証した分詞と形容の判定は、結果としては今の辞書の位置づけには概ね妥当性が認められるという結論でした。現行の文法事項を検証し、数百、数千の文法書や論文にあたってきて思うのは、目から鱗が落ちるような説明はそう簡単にできるものではないということです。
落ちたと思った鱗の後には新たな鱗が付いているだけだと感じることがよくあります。もっとも目から鱗を落とすのは聖書に出てくる神の所業ですから。私にできることは、事実を集めてさんざん頭を巡らして、ようやく前よりも少しだけ歪みのない透明度の高いうろこに変えるくらいでしょうか。
新たな鱗探しの旅はまだ続きそうです。