L20ET

この長く重いエンジンにはあまり良い思い出がない。

Skyline R30に乗っていた時に積まれていたエンジンだが、とにかく重く、回らなかった、

という印象しかない。

急にこのエンジンの事を考えたのはS30に搭載されたL20の3連ウェーバー搭載の車を見たから。

少し思い出してみたい。

Spec

OHC、1998cc、圧縮比 7.6 145PS/5600rpm、21.0kgm/3200rpm

ギャレット製ターボを装着。

カウンターフローを採用。

R30に積まれた時にはすでに16年前に発表されており、古いエンジンと言える。

勿論出力はグロス値であり、ネット値であれば120PSぐらいだろう。

 

このエンジンは圧縮比の低さからも分かるように、Turboの恩恵を得るまでは

とにかくかったるい。

過給によるノッキングを抑えるために神経を尖らせていることが良く分かる。

何故インタークラーを付けなかったのか不明だが、Turboをとりあえずつけるだけで

精一杯だったのかもしれない。

電子制御はEGIからECCSに改められており、カムシャフトは低速型を採用、タービンの

A/Rの改善により低回転からの過給を目指した。

その分高域はトルクが失速するが目を瞑った。

C210で非難されたTurboラグを何とか抑え込みたかったのだと思う。

カウンターフローだったのはMercedesのエンジンがお手本だったため、と言うが

真偽は分からない。

吸気と排気が同一方向故に掃気がスムーズにできない、プラグが適切な場所に置けない、

吸排気が隣同士であり、熱の影響が大きい等、現在の視点からすれば良いことはないのだが、

搭載のし易さや、技術的に容易であることから採用されたのかと思う。

但し、連桿比(クランクアームの長さにおけるコンロッドの長さを表す指標。

市販車は3~4程度。数値が大きいほどサイドスラストが減り、きれいに高回転まで

回りやすい。)は3.82と優秀。

きちっと組んだL型は良く回ると言うが、それを裏付けている。

ちなみにBMW Z4に積んでいたM54B30は僕の大好きなエンジンだったが、

3リッターだと3.08で見るも無残な数値。

しかし回り方はとてもしっとり滑らかでL20とは比較にならなかったことを考えると、

数値だけではエンジンの良し悪しは分からない。

事実、L20ETの回転フィールは褒められたものではなかった。

 

とにかく丈夫で車が事故ってもエンジンだけは無傷と言った都市伝説があったくらいだが、

R30に積まれたL20ETはブロックの無駄肉を削いだりしてC210のL20ETよりは

11㎏軽量化したようだ。

しかしながら190㎏を超えるような重さは設計年次の古さを感じさせる。

 

走りはどうだったか。

意外と7000回転ぐらいまで回った。もちろん6000回転も回せば苦しく、頭打ちなのだが、

当時燃料カットもないし、回るエンジンが最高と思っていた当時の馬鹿頭だった僕には

頼もしいエンジンだった。

出足は最低で、気を付けてクラッチミートして走りださないと原付バイクに

置いて行かれるのでは?と感じるほどだった。

夜中の信号グランプリ(死語)では3000回転ぐらいからクラッチミートして走ったが、

その結果、最初の車検でクラッチ交換と相成ったが、そうしないと遅くて話にならなかったから。

回転フィールが良いと思ったことはなかった。と言うか、分からなかった。

出足の遅さとターボラグの酷さには参ったが、初めての車だったし、それまで

運転免許取得のための教習車がローレルで、そのディーゼルに比べれば天と地の差があったため。

とにかく車に乗ることが楽しくてしょうがなかった時期だったので、

あまり気ならなかったのだろう。

問題は他にあって、2速へのミッションの入り難さ、Body剛性の低さからくるガタピシ音などが

気になっていたぐらいで、先述したがエンジンへの良い思い出もないが、不満も少なかった。

その後に乗ったRB20DET、DOHC、セラミックターボ エンジンが搭載されたSkyline R31に

乗るようになって初めてL20ETの”重さ”に気が付いたぐらいだ。

 

これまで12台の車を乗り継いできたが、エンジン単体で見るとランクは最下位であることは

間違いない。

ただ、この長いヘッドカバーを持つL20を見ると郷愁が襲ってくる。

正に青春時代を一緒に過ごしてくれたエンジンなのだ。

日産が排ガス規制で骨抜きになったエンジンに起死回生の一発を狙ってボルトオンした

国産初のターボエンジン。

夜中、車庫にあるR30のボンネットを開け、どこにタービンが取り付けられ、排気、吸気が

どのような経路で流れていくのか何度も見直した記憶がある。

現在の視点で否定、非難するのはエンジニアさんのやる事であり、僕らはその事実を

受け入れながらも、歴史的意義とその価値、当時の時代の匂いを振り返れば良いと思う。

 

あのL20ETの黒いヘッドカバーは、当時の思い出を奇麗に仕立て直して僕に与えてくれる

一つの存在になっているのでしょう。

 

L20ET。当時の日産の持ち駒はL20しかなく、TOYOTAのDOHCに対抗するにはこれにギャレット製のターボを

乗せるしかなかった。苦肉の策だが、これが世の中に受けた。

当時はTURBOかTWINCAMか?と言う不毛な論争もあったっけ。

 

R30に搭載された写真。10度ほど右傾いて搭載した理由は何故だろう。N/Aも同様なので、

TURBO故の熱対策などではないし、角度的にエンジン高を低く抑えたかったわけでもない。

インテークマニホールドを長くとりたい?

不明です。

FJ20Eは何故か左に傾いて搭載されていました。

圧縮比7.6という数字はノッキング対策のためには仕方なかったとは言え、あまりにも低い。

過給が上がるまでのトロさは当然か。。

 

R30 Skyline

この車からヘッドライトに後退角が付くようになった。ショルダーとCピラーが同一面で、この角度から見ると

Bodyが8角形なのが良く分かる。

サーフィンラインが消えたことで話題になったが、サイドのプロテクターモールがフロントからリアに向かって

太くなる処理でその代替としていた。

大変端正で、今見ても良いスタイリングだと思う。