野良犬の足跡 -3ページ目

新緑

新緑のニオイが僕を洗い流してくれる

新緑のニオイがこの僕を洗い流してくれる


雲の流れが速い昼下がり 僕は車に乗って港まで

一つの峠を越える頃 窓を開けたその場から心地よい風と共に緑らしきニオイ

外を覗くと一面が緑に覆われた世界 もう春なんだなぁ

そう聞くと、お鼻がムズムズする方もいるのでは?


そんな木の妖精が春のそよ風と共に 僕の車に忍び込む

僕の意識とは関係なく 僕の車に降りてくる降ってくる舞い降りる

妖精はクルクルと回転しながら 車内を所狭しと駆け巡る駆け巡る駆け巡る


何がしたいというのだろう?

僕の瞳を混乱させるためなのか? 


まともに正面を向けやしない

妖精は僕の瞳をさえぎり 鼻先をさえぎり 耳たぶに触れていった

その瞬間には髪もなびかせただろうし 唇も奪われただろう


妖精は僕の心をもてあそぶだけもてあそんで 忍び込んだ窓から帰っていった

元ある場所へ戻っていった

ホントに人騒がせなヤツだ


新緑のニオイはいいもんだ 新緑のニオイはいいよね

冬が終われば春がまたやってくるように 木たちにも小さな新葉が出てくるだろう


新緑の季節の中で車を走らせている ドアに肘なんかかけちゃってさ

新緑の季節に車を廻らせている 少しは肩なんか揺すっちゃってさ


ニオイをという不確かな物体にそっと囁かれた そんな気がしたサニーアフタヌーンだった







ベースボール

ブラウン管の中から人々の熱い声がこだまし、僕の心を揺さぶった

あらゆる場所から同じ空気、感情が通じ合い青い空へと舞い上がる

まるで白い鳩がやたら眩しい太陽にめがけて飛び立つように・・・・・・・・・・・・・


「ねえ、ねえ、お父さん!!どうして、僕のグローブは僕の手に合わないの?」


少年は涙を拭くのも忘れて、訴える

父の大きな胸を少年の小さな手で揺さぶるのだが、

当然小さいために大きな父の存在全体を揺らす事はないない無い


その家は貧乏だったのか?その子の手が大きかったのか?グローブが父のお古だったから?

いや違う違うんだ!!どれもこれもどいつもこいつも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


地方で暮らす左利きの少年にすぐにはグローブというモノが手に入るはずが無かった

父と街まで出かけ、スポーツ店で予約注文をすることから始まるんだ


自分が特殊な人間なのか? 他とは違う生き物なのか?

小さいながらも頭の中でグルグルグルと格闘していた


しばらくして少年の手元にグローブが届く

白い袋を開いた時には、指の大きさの配列が違う感じがしたのを覚えている

ブラウン色したグローブが少年の目には黄金に光ってたのを憶えている


あれからどれくらい経ったろう?

当時あんなに喜んでいたあのグローブの消息さえわからない

それもこれもベースボールそのものに興味も湧かない時代が続いたからだろう


そんな少年の瞳にはWBC優勝の瞬間はどう映っていたのだろうか?

答えはグラウンドの砂の中にあるだろう

ひっそりと ひっそりと


血と汗と涙が入り混じったあのマウンドに

アラシ

嵐の中で何を待つ?

嵐の中に何がある?


吹きずさむ生暖かい風が僕の部屋の窓に当たっては訴えかけている

風の音も聞こえてる感じてる

まるで僕の憂鬱な頭を金槌でカンカンカンと叩くように・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「トントントン、こんにちは」


誰かの呼ぶ声が聞こえる

たまに家にいるといつも以上に誰かに会えるってことあるよね?

普通なら外に出歩いてる方が色々交わえるのに

一日中家にいて 四六時中内に籠もっているのに

部屋の片隅で 日が差さない ちょうど角っこで 膝を抱えてさ


風の便りなのか? コウノトリの再来か?


お客さんは時には、新鮮な魚や今、畑で採ってきた野菜を持ってきたり

時には請求書のオンパレード


よくもまぁこんなに人はいるもんだ!!


僕を笑わせたり困らせたりしてくれる そんな訪問者


ヒューヒュー 昨夜から風は止まらない止められない

風と共に舞い降りる 姿かたちのない感情とふとした想い


嵐のど真ん中って無風だったりするんだよね?

その中でじっとするのも悪くない

その中で猫のように寝転んでても悪くはない


もう一度膝なんか抱えてさ

セピア色の中で

セピア色の僕の中で

セピア色に落ちていく自分


最近、免許取り立てのためか、歩いて行けるのに海までドライブ

十字路を右折した瞬間、前方のガラス越しに画面一杯、海が見えた見えた観えた


「大丈夫だよ、大丈夫 ほら、入ってみ?!」


砂浜に座りながら、父は僕に笑いながら、吐き捨てた言葉

お盆を過ぎてるとは言え、まだ暑い夏

僕はそーっとそーっと、イケナイ体験をするかのように海に足を滑らせていった


冷たくない!!いいかも?!


足の親指がそう感じ、僕を海の奥底へと引きずり込んでいった

足首、ふくらはぎ、膝、もも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

海の温かさを身に染みて体感し、深く深く落ちていく

肩まで浸かって一息つこうとしたその時


「イタッ!!痛ーい!!」


突然背中に注射をされたような痛みを感じ、飛び上がった

今にも海から一瞬抜け出せたようだった

いつの間にか僕の瞳には涙が溢れ、砂浜へとかけていた

海からの脱出、逃避行のようだった


「クラゲにやられたか?今時期多くなる頃だもんな」

父は笑いながら、僕にそう言い聞かせた


「だから、入るのイヤだったんだ!!」


想いは既にセピア色

想いはとうにセピア色


灯台にも明かりが点滅からしだいに速度を速め、そして点灯

と同時に辺りは暗くなっていく


本当の暗闇になる前に帰ろうか

本当の暗闇になる前に戻ろうか


未だ慣れない車に乗り、エンジンをかけて一呼吸

先ほど着た道を当たり前のように・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


達磨さんが転んだ

達磨さんが転んだ

達磨さんが転んだ


今の少年達はやっているのだろうか?

監視役の人間の目を盗みながら進んでく進んでく

時には不自然に 時には誇らしげに

スライドしていく自分


サイボーグ009のように瞬間移動出来ればいいのに

ドラえもんのようにどこでもドアがあればいいのに


すぐゴールなんて楽しいのか?

あっさり勝利っておかしいのか?

ラクなのに越したことは無いよね?

タダほどいいものは無いよね?


達磨さんが転んだ

達磨さんが転んだ


不確かだが着実に監視役の懐に近づいてく擦り寄ってく

静かだが確実に

のっそりと確実に

確実に確実に


監視役の肩をぽーんと叩いた時、青空が白夜と化すだろう

その日まで その時まで

潮風

潮風

潮風

潮風になびく、あの子の髪の毛をミラー越しに見ながら、ロードを当ても無く走る走る


「ねえねえ!!どこ行くの?」

「さぁーね。」

「寒くなってきたんだけど・・・・・・」


バイクは行く先なんか教えてくれやしない

岸壁にぶつかる波しぶきが余韻となり、僕の心の中にまで潮の匂いを運んでくる

運んでくる届けてくる

波が僕に送った置き土産だろう


途中の自販機でホットなカフェラテを買い、最初は手、頬と温めていく

生き返った気分さ


2006年もすでに1週間以上過ぎている

僕はいったい何やってるんだろう?

こんなところで休憩してる場合なのか?

ラテの封を開け、ホットが口から食道へと身体全体に行き渡ってきた


さぁ、出かけよう

さぁ、旅立とう

もういいだろう もういいだろう


夕日が沈む前に帰らないと置いていかれそうで

真っ暗になると何も見えなくなりそうで


潮風潮風が僕の心に染み渡る

潮風が僕の心を突き動かす


口の中まで砂だらけで、潮の味が妙に印象的な一時だった



ブリッジ

僕のタングと君のタングで大きな大きなブリッジを作ろう

何も怖がることはない 何も恐れることはない


何もない荒野に虹のようなブリッジを架けよう

台風でもハリケーンでも壊れないブリッジを

少しずつ少しずつ伸ばしていこう


「愛って素敵かも?」

「好きでい続けようね。」


さらりと言葉を交わし、炎天下の二人は水蒸気と共に消えていく消えていく


君の気持ちがわかるように 君の気持ちが伝わるように

すぐに壊れはしないさ そんな安易なモノだったのかい?


僕のタングと君のタングで大きな大きなブリッジを作ろう

何も怖がることはない 何も恐れることはない

ドミノ

ドミノって知っているだろうか?


絵柄があって、同じ形をしてるやつ

昔はよくギネスに挑戦!って特番があり、大きな体育館を貸しきって大記録が生まれる瞬間を

ブラウン管に噛り付いて見てましたね?

そう、そのドミノ


ドミノが音を立てて倒れていく

ドミノが音を立てて倒れていく


カタカタカタカタ

軽快なリズムに乗せて 

何かが始まるとそこから止めることも出来ない

止まらない止まらない止めれないのさ


出来事とは不思議なもので始まると崖から落ちていくように

崩れていく崩れていく

僕の予期していないところまで行くのだろうか?


カタカタカタカタ

ただなんかの拍子にプッツリと止まってしまうことも

僕の予期していないトコで止まるのだろうか?


僕の脳の中にも緻密な計算の上でドミノが

組み立てられている組み立てられている

いつになれば倒れ始めるのだろうか?


今日もドミノは止まらない

今日もドミノは止まらない


カタカタカタカタ

軽快なリズムで倒れていく

時には、その音が耳障りだ


僕も止まらない止められないのさ


あああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

雪化粧

雪化粧は美しい

雪化粧は美しい


自然のなせる技だ

その日は13年ぶりの大雪となり、僕の身体、そして心を覆い被せていった


降り積もる雪の中をミシミシと滑らないように歩く歩く歩く

歩いた足跡が形となり残るのだが、

雪がふぶいてるため、いつの間にか跡形もなく、消えていく消えていく

鑑賞に浸る暇も無く・・・・・・・・・・・


グランドファーザーが息を引き取る瞬間、銀幕が街を包み、雨が悲しみの雪となり積もらせたのだろう


火葬になる前、僕の心に刻むため、もう一度素顔を拝んだ

一仕事終えた安堵に満ちた寝顔だった

それは生きているわけではなく、白くまさに雪が乗り移った姿だった


安らかに安らかにお休みなさい いつかまた会おう

安らかに安らかにお休みなさい いつかまた会いたいね

歓声

歓声がこの青空にこだまする

歓声がこの青空にこだまする


僕が期待してたのはこのことなのか?


はぁーはぁーはぁー

呼吸が安定しない 顎も上がっている

もう疲れたのか?


42.195キロ 過酷なレースだ

人生を模した孤独なゲーム

今僕は誰と戦っているのだろう?


「頑張って、頑張って!!」

「負けるなよ!!おい!!」

「ファイト!!」


みんな他人行儀だよ

ゴールのないゴールを目指してるようなもの

ゴールのないゴールを目指してるようなもの


一つテープを切ったら、その先にまた白いテープが用意されてる


繰り返し 繰り返せよ!!


もう既に無意識に足が動くこともなく、脳が意識的に足にそう言い聞かせていた


歓声を目指して 歓声を目指して


あのコの胸に飛び込めれば

あのコに強く抱き締めてもらえれば


それで十分 それで満足さ


ゆっくり休めるだろうよ

ゆっくり眠れるだろうさ