ベースボール | 野良犬の足跡

ベースボール

ブラウン管の中から人々の熱い声がこだまし、僕の心を揺さぶった

あらゆる場所から同じ空気、感情が通じ合い青い空へと舞い上がる

まるで白い鳩がやたら眩しい太陽にめがけて飛び立つように・・・・・・・・・・・・・


「ねえ、ねえ、お父さん!!どうして、僕のグローブは僕の手に合わないの?」


少年は涙を拭くのも忘れて、訴える

父の大きな胸を少年の小さな手で揺さぶるのだが、

当然小さいために大きな父の存在全体を揺らす事はないない無い


その家は貧乏だったのか?その子の手が大きかったのか?グローブが父のお古だったから?

いや違う違うんだ!!どれもこれもどいつもこいつも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


地方で暮らす左利きの少年にすぐにはグローブというモノが手に入るはずが無かった

父と街まで出かけ、スポーツ店で予約注文をすることから始まるんだ


自分が特殊な人間なのか? 他とは違う生き物なのか?

小さいながらも頭の中でグルグルグルと格闘していた


しばらくして少年の手元にグローブが届く

白い袋を開いた時には、指の大きさの配列が違う感じがしたのを覚えている

ブラウン色したグローブが少年の目には黄金に光ってたのを憶えている


あれからどれくらい経ったろう?

当時あんなに喜んでいたあのグローブの消息さえわからない

それもこれもベースボールそのものに興味も湧かない時代が続いたからだろう


そんな少年の瞳にはWBC優勝の瞬間はどう映っていたのだろうか?

答えはグラウンドの砂の中にあるだろう

ひっそりと ひっそりと


血と汗と涙が入り混じったあのマウンドに