この記事は、強迫症の傾向をもつ不登校の高校生向けに書いています。

 シリーズのスタート投稿:強迫症を治すポイント

 

 

前の記事で、"きょうはく坊や" は旧哺乳類脳というコンピュータにできてしまった不必要なプログラムだという話をしました。

 

プログラムですから書き換えることができます。

認知行動療法の行動的技法では、暴露療法(エクスポージャー法)とか暴露反応妨害法(ERP)と言います。

 

今日はその仕組みを説明しながら、"きょうはく坊や" がどのようなプログラムかも説明したいと思います。

 

 
 
心の中のプログラム

 

私たちは、歩く時に「右足や左足をどう動かそうか?」などと考えなくても歩けますよね?

これは、脳の意識とは別のところで、行動を覚える仕組みがあるからです。旧哺乳類脳(大脳辺縁系)にある仕組みです。

 

これは、感じ方や考え方のパターンも覚えます。

「あれを感じたら、これも感じさせる」「あれを感じたら、この考えを出す」というパターンを覚えたりします。

 

こういう行動パターンを組み合わせて大きな行動パータンとして覚えることができます。

つまり、プログラムと同じです。

 

自分の感情や考えが、どのようなプログラム(行動パターン)からきたものか?

不適切なプログラムを、どうやって書き換えるか?と、心の中にあるプログラムとイメージして考えると分かりやすいと思います。

 

参考記事:

行動療法のすすめ(1/2):生物共通の学習の仕組み

行動療法のすすめ(2/2):思考の影響

 

 

暴露療法(エクスポージャー法)の仕組み
レスポンデット条件つけ

 

旧哺乳類脳の仕組みなので、犬にもプログラムすることができます。

 

犬に餌を与える時に、いつもベルを鳴らすようにすると、ベルが鳴っただけでよだれを流すようになります。

「(A) ベルを聞く」という刺激と

「(B)よだれがでる」という身体反応

が紐づけられたわけです。

これをレスポンデット条件つけと言います。

 

次に、ベルを鳴らしても餌を出さないことを何回か行うと、よだれを出さなくなります。

レスポンデット条件付けが消えたことになります。

 


この仕組みは人にもあります。

瑛人の「香水」という曲に、以下のような歌詞が出てきます。

別に君を求めてないけど横にいられると思い出す
君のドルチェ&ガッパーナのその香水のせいだよ

 

これもレスポンデット条件づけです。

「(A) ドルチェ&ガッパーナの香水をかぐ」と「(B)君への愛おしいさ」がレスポンデット条件付けされています。

 

 

強迫症では、人によって少し違いますが、例えば

「(A) 他人のハンカチを触る」と「(B)嫌悪感・恐怖」がレスポンデット条件付けされています。

そして、このように感じると、「他人のハンカチは危険」と解釈して、「だって、知らないウィルスがいるかもしれないじゃないか!」と無茶な理由を作り出します。

これが強迫観念の正体です。

 

つまり、これが "きょうはく坊や" のプログラムの一部です。

強迫症状がある人は、このようなに(B)恐怖がいろいろなものとレスボンデット条件付けされています。

 

 

さて、犬の話でレスポンデット条件付けが消えましたよね?「(B)よだれが出る」を「(B)何もない状態」に変えています。

 

これと同様に、強迫特有の「(B)嫌悪感・恐怖」を「(B)中庸("どちらでも大丈夫"という感覚)」に変えることができます。

 

前の記事『「イヤだ~!!」を無くす方法(恐れを無くす方法)』がそれで、嫌悪や不安をRAINで得られる穏やかな中庸の気持ちに置き換えているのです。

 

この記事での方法は、(A)の刺激は頭の中だけでやっていますから、「想像エクスポージャー法」と言います。

 

大切な場面で上手くできるようになる練習』で紹介した方法も、想像エクスポージャーの応用です。

 

私がウツ抜けに使った方法でもあるし、PTSDや不安症、パニック障害などにも効果があります。

 

 
暴露反応妨害法(ERP)の仕組み
オペラント条件つけ

 

旧哺乳類脳の仕組みなので、マウスにもプログラムすることができます。

 

マウスを、レバーを押すと餌がでる仕組みのある檻に入れます。すると、しばらくするとレバーを押すという行動を覚えます。

レバーの位置を変えても、ちゃんとレバーを見つけると押します。

 

「(A)レバーを見つける」という刺激

「(B) レバーをたたく」という行動

「(C)餌を得る」という褒美

が紐づけされました。

これをオペラント条件付けと言います。

 

こうなると、マウスはお腹いっぱいになるまで、レバーを押しまくります。

 

オペラント条件付けは、(C)褒美が得られる(B)行動を増やすように働きます。動物が環境に合った行動を覚えるための仕組みです。

 

 

つぎに、レバーを押しても餌を出さないようにします。そうすると、レバーをたたかなくなります。

 

つまり、オペラント条件付けが消えます

 

 

では、強迫症では、どんなオペラント条件付けがあるか考えてみましょう。

以下のようになります。

 

「(A) 嫌悪感・恐怖を感じる」

「(B) 強迫行為(手洗い、確認、回避、巻き込みなど)」

「(C) 安心(つまり、"ほっとする" ということ)」

 

これが、"きょうはく坊や" のメインのプログラムです。

 

「巻き込み」というのは、周囲の人に確認を手伝わせたり、誰かに「大丈夫」と言わせたりすることを言います。誰かが確認してくれたり、「大丈夫」と言ってくれると、それが「安心」というご褒美になって強迫行為が強化されます。

 

マウスの実験は餌が出ないようにすると、レバーを押さなくなりましたね。

強迫症の場合も、褒美である"安心" が得られないようにすると、強迫行為が無くなります

 

暴露反応妨害法の「妨害」というのは、「安心を得られないよう妨害する」という意味です。

が・・・、これは結構難しくて、ちょっと工夫が必要なので、詳しくは別の記事にします。

 

暴露反応妨害法をするときに、知っておいたほうが良いことがいくつかあるので、それを説明しましょう

 

"きょうはく坊や"が、強迫魔王に変わる仕組み

 

さて、この強迫症のオペラント条件つけでできたプログラムには、困った性質があります。

褒美に着目してください。

 

マウスの例の場合、餌を沢山食べてお腹がいっぱいになると、満足して褒美としての魅力がなくなり、行動を辞めます。

逆に、お腹が空いていると、「もっと!もっと!」と激しくレバーを押します。

 

強迫症の褒美である安心はどうでしょうか?

困ったことに、強迫症の安心は満足することがありません

なぜなら、コンピュータウイルスのようなプログラムが作り出した恐怖で、普通ではありえない、考えても仕方がないことを恐れているからです。

99.99%安全なのに、0.01%の危険を恐れているもので、それでは絶対的安心感は得られません。

 

お腹の空いたマウスが激しくレバーを押すように、強迫症の人は、「もっと、もっと安心か欲しい!」と強迫行為がエスカレートしやすいんです。

 

これが、"きょうはく坊や" が強迫魔王に変わっていく仕組みです。これを何度も経験すると強迫魔王に変わりやすくなっていきます。

 

暴露反応妨害法は、"きょうはく坊や" のプログラムが動き出す状況に身を置きながら、褒美である "安心" を得ない(つまり我慢する)方法ですが、強迫魔王に変わってしまうと手に負えないので、作戦が必要になります。

 

 

また、一度強迫症状がでると、しばらく気分がすぐれないのは、いつまでも満足する安心が得られないからです。

 

 

もう一つ困った性質

 

"きょうはく坊や" は、君の思考や心をの取ってしまうことがあります。今日は長くなってしまったので、詳しくは次にしましょう。

 

強迫症のプログラムができてしまったのは不幸でしたが、レスポンデット条件付けの書き換えや、オペラント条件付けの書き換えのスキルは、これからの人生に強力なスキルになると思いますよ。

 

社会に出ると悩んだり、苦しい思いをすることが、どうしても出てきますが、その多くは心を整えることで乗り越えやすくなるからです。