誰かの妄想 -23ページ目

今の政情は日中戦争直前に似ているような・・・

日中戦争がよくわかる本
¥629
株式会社 ビーケーワン


太平洋戦争に比べ、日中戦争の流れがわかるような本は少ない上、文庫で平易に記述されているので、これから学ぼうとする人には良さそうな本。

この本では、日中開戦に至った原因の一つの傍証として、当時の日本の雰囲気が挙げられている。例えば盧溝橋事件当時の首相、近衛文麿が1937年1月1日に朝日新聞に寄稿した論文。

「・・・自ら開発の力が及ばざるに天賦の資源を放置して顧みないというのは、天に対する冒瀆とも言い得るが、日本は友諠の発露として開発をなさんとするものである。」「もしこの際支那の朝野にしていたずらに我が日本を仇敵視し、欧米依存に終始するものならば、軈て東亜の禍乱を自ら招来するものとして永く白人種の侮蔑を免れないであろう」(p99)

要するに、”中国は資源を持ってるけど、どうせ開発する能力はないだろうから、寛大な日本が開発してやろう。わざわざそう言ってやってるのに、何勝手に欧米に頼んでるんだよ。ふざけんなよ。お前と俺の話だろ。勝手に他人を呼ぶんじゃねえよ。”

と言うわけだ。

内容的にはほとんどやくざかチンピラのような、いかにも勝手な言い分だが、こんな発言をした人間が半年後に首相になったときは、日本国民の多くが支持したわけだ。つまり、そういう雰囲気だったのだ。

そう言えば、安倍って、ある意味近衛と似てるような・・・。両方とも坊ちゃんだし、若造だし、言葉の表面は丁寧だが言っていることはトンデモだし・・・。

その他、南京事件についてはこんな風に記述してある。

「・・・南京占領後の掃討作戦で多くの中国軍捕虜が虐殺された。軍人でない一般市民も相当はいっていたことと思われる。

その数についてはさまざまな推計値があるが、今日では、ごく一部を除いて、南京虐殺の事実そのものを否定する者はいない。・・・」(p170)

確かに、事実を否定しているのは、産経新聞とその一派、あとは自慰史観に乗せられたネトウヨくらいだからなあ。ごく一部だけだよなあ。

(産経新聞にしたって、本紙で明確に否定してはいないはず。”疑問がある”という表現でごまかしていたような・・・。さすがに堂々とトンデモを披瀝するのはためらわれるのだろう。それだけに裏で小ずるい手回しをしてそうだが・・・)

あと、よく言われる「中国軍は弱い」という先入観だけど、この本を読む限りは、小林よしのりが描くように、すぐ逃げ散っていくような感じは受けない。

無論、一般的に中国軍の装備・組織・練度などは日本軍に劣っていたわけだから、同人数規模で比較すれば中国軍が弱いと言うのは正しいと言える。ただ、北京や上海での戦闘では、師団長クラスが戦死するような戦闘もあって、決して逃げ散っていると言うイメージはわかない。

盧溝橋事件により、対日全面戦争を決意した後の中国軍の戦意は、それまでとは明らかに変わったと言えるだろう。日本はその中国の決意を見誤ったのである。そうして、泥沼に陥った日本軍は苦戦し、そのつけは国民に回ってくる。しかし、戦争に対する不満は言えない。なぜなら「聖戦」だったからである。日中戦争では、こういう批判のしにくい美名を日本政府は使ったのである。

最近の例で言うなら、「構造改革」「郵政民営化」「美しい国」「対話と圧力」といったところか。

字面だけなら、誰も否定はできない。問題は中身なのだが、中身の議論などを封じ込めてしまうのが美名を用いる者のやり方だ。

例えば、こんな感じ。

「一度戦争が起これば、問題はもはや正邪、曲直、是非、善悪の争いではなく、徹頭徹尾力の争い、強弱の争いであって、八紘一宇とか、東洋永遠の平和だとか、聖戦だとかいってみてもそれはことごとく空虚な偽善である」(p226:衆議院議員、斎藤隆夫の発言)

まあ、正論である。これに対して、政府は韜晦する。

「今事変は肇国の精神にもとづき八紘一宇の顕現を図るもので、弱肉強食を本質とするいわゆる侵略戦争ではない。領土の併合も賠償金の要求もしていない。聖戦だからである」(p226:陸軍大臣、畑俊六の発言)

最終的には、議会により、斎藤隆夫は議員除名されてしまう。正論はこうして封じ込められた。

ところで、上記の畑俊六の発言内容だが、実際には、南京陥落後(1937年12月)に日本は中国との和平条件を吊り上げている。

・満州国の承認

・賠償金の要求

・日本軍占領地の中国軍非武装化

・北支5省の親日政権による特別行政区化

(p188)

・・・よくも白々と言えたものだと思う。

そう言えば、小泉政権も沖縄返還に関して似たような韜晦をやっていたような・・・

あだになったのは、融和外交ではなく、圧力外交の方でしょ

米世論にらんだ北の瀬戸際作戦 中韓の“甘さ”あだに (産経2006/10/10)


まあ、こういう論調が出てくるとは思ったけど、産経らしいといえばらしいわな。


でも、圧力をかける前は、拉致を認めたり、拉致被害者の一時帰国を認めたりしていたんだから、因果関係を冷静に考えれば、圧力をかけつづけたことこそが、北朝鮮を瀬戸際外交に追い込んだんでしょ。


失敗したのは、圧力外交なのは明白だとおもうけどね。


「太平洋戦争はアメリカなどに追い詰められてやむにやまれず開戦した」なんて妄言はいてるネトウヨなんか真っ先にそう考えるべきだと思うんだが


所詮、単なる自己正当化に過ぎないからそうは考えないんだろうなあ。やれやれ。



誰が統一協会・安倍に投票したか


安倍氏、戦後生まれ初の自民党総裁に (産経)


しばらく、仕事が忙しかったのだが、ああ、出来レースが終わったのね。

自民党総裁選で、同僚に賭けを持ちかけたら、拒否られた・・・、当然だけど。


気になったのは、ここ


 総裁選は党所属議員の403票と、約106万人の党員・党友の投票を300票に換算した計703票で争われた。議員票は安倍氏267票、麻生氏69票、谷垣氏66票(無効1票)、党員・党友票は安倍氏197票、麻生氏67票、谷垣氏36票。党員・党友の投票率は61.45%だった。


えーと、議員は、267/403=66%、党員は、197/300=66%。

まあ、狙ったみたい。

実際に安倍に投票したのは、106万人×61.45%×197÷300=43万人。ふーん。

これが民主主義ねぇ。


ともかく、

統一協会に祝電をうち、生まれたときから貧乏暮らしとは無縁の苦労知らずの世襲政治屋に投票するような酔狂な自民党員が43万人いるってことか。


世襲が好きなら、北朝鮮にでも行けばいいのに。



愉快な証明


gegengaさんのエントリー「数学者って「論理的思考」が得意だと思っていた 」でコメントされていた内容。
面白いので勝手に引用させてもらいました。
ネトウヨの1例としてみると、作成者の幼児性が現れていて、けだるい午後などに鼻で笑いながら読むのに適した文章です。


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10. Posted by 理論的嫌韓 2006年09月08日 11:35
朝鮮人が劣等民族であることを数学的に証明して見せましょう。

定理『反日妄言、歴史捏造を繰り返す民族は劣等である。』

朝鮮人は反日妄言、歴史捏造を盛んに行っている。

よって朝鮮人は劣等民族である。(証明終了)


次に朝鮮を植民地化すべきだということの数学的証明です。

公理 人間は善を行うべきである。

定理一 劣等民族を救済してあげるのは善である。
定理ニ 優秀な民族により劣等民族の植民地化は、劣等民族に対する救済である。

定理一より、劣等民族である朝鮮人を救済してあげるのは善です。
そして定理ニから優秀な大和民族が朝鮮民族を植民地化するのは救済に当たります。
よって朝鮮の植民地化は善であり、公理より日本は朝鮮を植民地化すべきとなります。(証明終了)

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ま、言うまでもないんですが、こんな証明書いたらまず数学的に×です。

第一に、
定理『反日妄言、歴史捏造を繰り返す民族は劣等である。』
数学的に証明されてません。なので、以下全部無効です。


56億7千万歩ほどゆずって、定理として証明されうる余地があるかと考えてみても、明らかに無理です。
理由は単純、”反日妄言”にしろ、”歴史捏造”にしろ、それを行う主体は個人であって、民族という概念ではありません。
もしこれを同一視すると、以下のような証明が可能になってしまいます。


(詭弁論理1)
1.文鮮明は男である。(文鮮明=男)
2.安倍晋三は男である。(安倍晋三=男)
よって、文鮮明は安倍晋三である。(文鮮明=安倍晋三)


ほとんどの人はわかっているとは思いますが、結論がおかしくなっているのは、”文鮮明”や”安倍晋三”という個人と”男”という概念を同列に扱っていることによるものです。
これは、(個人A)=(集団C)と(個人B)=(集団C)から(個人A)=(個人B)としている誤りです。
本来なら、(個人A)∈(集団C)と(個人B)∈(集団C)なので、(個人A)と(個人B)の関係は同一の(集団C)に属しているという以外は不明です。


(詭弁論理2・上記はこのタイプ)
1.○△氏は日本人である。(○△氏=日本人)
2.○△氏は連続殺人犯である。(○△氏=連続殺人犯)
よって、日本人は連続殺人犯である。(日本人=連続殺人犯)


はい、これも同じです。”○△氏”という個人と”日本人”や”連続殺人犯”という概念を同列に扱ってます。
○△氏は、日本人というカテゴリにも含まれているし、連続殺人犯というカテゴリにも含まれています。
つまり、(個人A)∈(集団B)と(個人A)∈(集団C)ですが、(集団B)と(集団C)の関係は不明であって等しいとは限りません。


(詭弁論理2の置き換え)
1.○△氏は○○民族である。(○△氏=○○民族)
2.○△氏は反日妄言、歴史捏造を繰り返している。(○△氏=反日妄言、歴史捏造の実行者)
よって、○○民族は反日妄言、歴史捏造を繰り返している。(○○民族=反日妄言、歴史捏造の実行者)


単に中身を置き換えただけなので、詭弁論理であることは変わりません。つまり、結論は正しいとはいえません。
したがって、定理『反日妄言、歴史捏造を繰り返す民族は劣等である。』はそもそも主語の部分から成り立ちません。


同じ理由で、
「朝鮮人は反日妄言、歴史捏造を盛んに行っている。」
も成り立ちません。「朝鮮人」というのは個人ではなく概念です。


「よって朝鮮人は劣等民族である。(証明終了)」
個人と集団の概念を混同している点、既知でない定理を用いている点を考えると、部分点もあげられないですね。


(正しい例)
定理『妄言、歴史捏造を繰り返す人は劣等である。』
ネトウヨのA君は妄言、歴史捏造を盛んに行っている。
よってネトウヨのA君は劣等である。(証明終了)
(対象がネトウヨのA君という個人なので、この証明の方法は正しい)


(悪い例・これは誰かがコメントで返してましたね。ちょっと変えました)
定理『妄言、歴史捏造を繰り返す集団は劣等である。』
ネトウヨは妄言、歴史捏造を盛んに行っている。
よってネトウヨは劣等である。(証明終了)
(対象がネトウヨという集団なので、この証明の方法は正しくない)
(補足:ネトウヨが劣等、という結論は賛同したいところだが、ここでは証明の方法として正しくない、ということで)


まあ細かいことを言うと、集団が意思決定の手順を踏んで行った言動の場合は集団を言動の主体としてとらえることも可能だが、「民族」というくくりではこれに当てはまらないので、今回は無視する。


「次に朝鮮を植民地化すべきだということの数学的証明です。」
えと、これも特に「定理二」なんかは、既知でないのでこれ自体証明が必要ですが、記載していないので減点です。
さらに「優秀な大和民族」も、証明されていないので減点です。

あと、「民族」は「植民地化」できません。「植民地化」できるのは、領土や国家です。
最後に上記と同様の指摘ですが、「朝鮮人」「日本人」という民族と「朝鮮」「日本」という領土あるいは国家とを混同しているので減点です。


(理論的嫌韓さんに対する総評)
・証明されていない内容を定理として持ってくるのはやめましょう。
・個人と集団の概念の違いを理解しましょう。
・民族と国家を混同しないよう気をつけましょう。
全体として理論的考察が不足しています。名前に負けないようにがんばりましょう。


評価:「もっとがんばろう」


(その他感想)
なんか、証明問題を覚えたての学生さんか?と思うような内容です。下手に「定理」とかを持ってくるんじゃなくて、「定義」にしちゃえばよかったのに、とか思ったり・・・。
例えば、こんなん。


(無敵の証明(笑)・俺さま定義を使ってみる)

公理 人間は善を行うべきである。
定義! 日本が朝鮮を植民地化するのは善である。


よって敗戦により朝鮮から逃げ出した日本は善ではない...、じゃなくて
朝鮮の植民地化は善であり、公理より日本は朝鮮を植民地化すべきとなります。(証明終了)


これなら、証明の方法としては正しいですよ。披露したら失笑を買うこと請け合いですけどね。


それ以前に、この人「定義」と「定理」の違いをちゃんと理解しているんでしょうか?
ある意味、自分の立ち位置を明確にする「定義」ではなく、どこかの誰かが用意してくれた「定理」を使うという心性が、自分の意見を持たず、借り物の意見を使って他者を嘲笑しようとする空疎さを示している、と言えそうですが。
あとどうも、「結論先にありき」で論理構築をしたために詭弁論理に陥ったという観がぬぐえませんね。個人と集団の混同というのは、かなり典型的な詭弁の一つなので、サンプルとしては興味深いけど。


ま、証明できたのは、理論的嫌韓さんの数学的能力の不足だけかな。


小泉、それは人間としてどうかと思うぞ

<国旗国歌>小泉首相が違憲判決に疑問  

 小泉首相は21日、入学式や卒業式で日の丸に向かっての起立や君が代斉唱を強制したことを違憲とした判決について「法律以前の問題じゃないでしょうかね。人間として、国旗や国歌に敬意を表すというのは」と述べ、疑問を投げかけた。思想・良心の自由については「裁判でよく判断していただきたい」と述べるにとどめた。
(毎日新聞) - 9月21日21時13分更新


自身の靖国参拝については、信教の自由を主張して、同じ口でこんなことを言うのか、こいつ。

小泉が総理であろうとなかろうと、これは人間としてどうよ。

ネトウヨ大好きのダブルスタンダードそのもの。自分の都合のいい裁判しか信じないわけだ。


「法律以前の問題~」

どう見たって、自分に都合のいい理屈を権力を傘にきて押し付けているようにしか見えん。


精神年齢の低い幼稚な人間だとは思っていたが、これほどの駄々っ子とはね。

こんなのを選んだ選挙民のレベルが知れる。




産経症・「異常」→「正常化」?or 「異常」→「より異常」?

■【正論】杏林大学客員教授・田久保忠衛 新政権に望む「普通の国」の外交

やっぱり、産経はこうでなくちゃ。

トンでもさんのトンでも意見。


「日米両国は45年まで死闘を演じた末、相互に争う愚を悟った。」
うわあ・・・、まるで米英みたいに日米が対等に戦ったと思ってるんだ・・・
絶対に勝てないのにアメリカに戦争を仕掛けた日本の愚、と、これ以上戦争が長引くと東アジアでのソ連勢力圏が拡大する可能性を考慮してさっさと片付けようと原爆を落としたアメリカ(うーんと、どの辺が愚なのかな?)、悟ったのは日本だけじゃない?


「日本は国軍もなければ、軍にふさわしい法体系も持たぬ異常な国だ。」
世界第2位の軍事費を使っている20万人以上の自衛隊員は無視ですか?なんて自虐的な・・・
軍にふさわしい法体系って何?(戒厳令でも敷きたいのか?報道管制でもしたいのか?)


「日本国憲法も教育基本法もまともではない。」
自分の感覚がまともではない可能性も考慮したほうがいいと思います。


「声が大きいのは結構だが、ナショナリズムとは何かの定義は全くなされていない。」
多分、フジサンケイグループを通して発言できる産経のトンでも意見のほうが声が大きいと思うぞ。


「「危険なナショナリズム」とは、どうやら戦後日本の「異常」を「正常化」しようとの動きを指すらしい。」
いや、「異常」から「より異常化」しているから危険なのでは。

「異常」でなければ「正常」、という1ビットのデジタル信号並みの低レベル思考はどうかと思う。


「この人たちの目には、今の防衛政策の異常を少しでも改正しようとすると「軍事力の強化」に見えるのだろう。」
この人たちの目には、イラク戦争への賛同や中国脅威論といった実態とかけ離れた危機を煽って、外交的に孤立化していく状況が「正常化」に見えるのだろう。


なんというか、こういう意見が公式メディアで垂れ流されていることが非難されないこと自体、「異常」だよ。

統一協会・安倍が勝つと決まっている出来レース

<自民総裁選>小泉首相、安倍氏支持を明言


はいはい、出来レース出来レース。


小泉くんは、統一協会に祝電を送った安倍くんが自民党総裁にふさわしいと思っている、と。

もしかしたら、勝ち馬投票と勘違いしているのかもしれない。いや、ある意味勝ち馬投票と同じか、見返りあるだろうし。

結局、競馬と同レベル。見返りのない人まで同じように考えているとしたら、喜劇だけど・・・。


「一方で、支持明言は後継指名に当たらないとの考えを強調。」

ま、何かの冗談でなければ、小泉君は「後継指名」という日本語の意味を知らないんじゃないですかね。


強いて言えば、後継指名であれば、総裁選はその是非を問う選挙になって否認票の数によっては指名に無効になることもあるだろうが、3者による選挙形式になっていることで、反安倍票が割れることになり安倍君は有利になる、と言う点で違うかな。


どちらにしても、安倍くんが勝つのは確定で、レースというより儀式という方がふさわしい。

満州軍機密文書


満州軍機密文書:現金強奪計画も 謀略工作の実態浮き彫り

記事に出てくるのは、日本軍の諜報戦の話ばかりなような・・・


列車強盗の計画?「露清銀行ハ香港弗(ドル)ヲ買ヒ入レ奉天ニ送ルトノ事ナリ新民屯マテハ多分汽車ナラン新民屯奉天間ニ於(おい)テ之ヲ奪略スルノ工夫ナキヤ橋口ヨリノ報告ハ僅(わずか)ニ一回達セシノミ」(1904/11/1)

鉄道破壊「鉄道破壊ノコトハ兎(と)ニ角ヤラセテ見ルモ可ナラン」(1904/8/19)

検閲指示「記事ガ如何(いか)ニ敵ヲ利スルコトノ大ナルカ(中略)此際(このさい)従軍内地記者ニ対シ(中略)懇切ニ其(その)利害ヲ説得シテ充分ニ彼等ヲ警醒スルノミナラズ此ノ如キ通信記事ハ検閲ノ際容赦ナク之ヲ削除スル」(1905/4)

強制連行の計画?「在満洲ノ朝鮮人ハ露探タルノ疑アル者少ナカラサルニ付此際彼等ヲ駆リ集メテ韓国ニ護送スヘシ」(1904/10/24)

宣伝工作?「明石ヨリ補助金ノ請求アラハ此際断行セラレタレ」「露国内乱ノ気煙益々盛ナラントス、クロパトキンハ軍隊ノ動揺ヲ恐レ之ヲ機密ニ附サントスルニ苦心シツツアル(中略)種々ノ手段ヲ以テ(中略)満州蒙古ノ各地ニ発布スル様尽力セラレタシ」


日露両国の諜報戦っていうのはどうなんだろ。ロシアについては他の部分にあるのかな?

ま、それはそれとして、記事で紹介されている内容だけでも結構興味深い。


どうも、日露戦争については「坂の上の雲」の印象が強く、児玉源太郎などは記者の扱いがうまく、世界の世論を日本の味方に持っていくのに貢献した、というイメージをもってた。それに矛盾すると言うわけではないが「此ノ如キ通信記事ハ検閲ノ際容赦ナク之ヲ削除スル」というのは、あくまでイメージとしてマイナスの感があって新鮮(私の中では児玉源太郎=丹波哲郎)。同じことは大山巌にも言えて「坂の上の雲」での大山像と「在満洲ノ朝鮮人ハ露探タルノ疑アル者少ナカラサルニ付此際彼等ヲ駆リ集メテ韓国ニ護送スヘシ」とのギャップもまた面白い。


「坂の上の雲」にしろ「二百三高地」にしろ、所詮は物語、と言うことを改めて実感した。


ところで、日露戦争関連の物語で無視されがちなのが、現地にいた朝鮮人・中国人の話であろう。中国人については、輜重輸送の人夫として雇っていた件があったと思うが、朝鮮人については記憶にない。なるほど、1904年10月24日時点で「露探」扱いだったわけだ。


これは、この時期既に日本軍は朝鮮人は信用できないと考えていた傍証と言えるだろう。


(以下引用)
満州軍機密文書:現金強奪計画も 謀略工作の実態浮き彫り
 発見された満州軍の機密文書「発信原稿」からは、日露両国が虚々実々の諜報(ちょうほう)戦を繰り
広げ、謀略工作に深く手を染めていた実態が浮き彫りになった。【栗原俊雄】

 「露清銀行ハ香港弗(ドル)ヲ買ヒ入レ奉天ニ送ルトノ事ナリ新民屯マテハ多分汽車ナラン新民屯奉天間ニ於(おい)テ之ヲ奪略スルノ工夫ナキヤ橋口ヨリノ報告ハ僅(わずか)ニ一回達セシノミ」

 満州軍の諜報参謀だった福島安正少将が1904年11月1日付で発信した電文。露清銀行は満州の植民地開発を目的にロシアが設立した銀行で、日本が現金強奪を計画したことを示す内容だが、実際に行われたかどうかは明確な記述がない。

 児玉源太郎総参謀長からロシアの旅順要塞を攻めていた乃木希典司令官率いる第三軍にあてた指令(同年8月19日付)には、「鉄道破壊ノコトハ兎(と)ニ角ヤラセテ見ルモ可ナラン」とある。同日は第1回総攻撃を開始日。総司令部が、なりふり構わず攻略を目指したことがうかがえる。

 翌年4月、児玉総参謀長が各軍参謀長にあてた指令では、日本国内の新聞が満州に展開する部隊の編成、配置などを報道していることを挙げ、「記事ガ如何(いか)ニ敵ヲ利スルコトノ大ナルカ(中略)此際(このさい)従軍内地記者ニ対シ(中略)懇切ニ其(その)利害ヲ説得シテ充分ニ彼等ヲ警醒スルノミナラズ此ノ如キ通信記事ハ検閲ノ際容赦ナク之ヲ削除スル」よう指示した。

 また、スパイの暗躍に悩んだ大山巌総司令官は、「在満洲ノ朝鮮人ハ露探タルノ疑アル者少ナカラサルニ付此際彼等ヲ駆リ集メテ韓国ニ護送スヘシ」との命令(同10月24日付)を各軍に伝えている。露探とはロシアのスパイという意味。実行されたかどうかは分からないが、朝鮮人の護送手段にまで言及している。

 欧州で反ロシア勢力の結集を図っていた明石元二郎大佐に関する記述も。05年1月26日付の電報原文には「明石ヨリ補助金ノ請求アラハ此際断行セラレタレ」と記され、同日付の別の電報原文には「露国内乱ノ気煙益々盛ナラントス、クロパトキンハ軍隊ノ動揺ヲ恐レ之ヲ機密ニ附サントスルニ苦心シツツアル(中略)種々ノ手段ヲ以テ(中略)満州蒙古ノ各地ニ発布スル様尽力セラレタシ」とあった。

毎日新聞 2006年9月1日 3時00分

産経抄・ただし、これだけは見るなよ。

■【正論】上智大学名誉教授 渡部昇一 富田メモの真相を国会も調査せよ/産経2006/9/6


まあ、歴史資料においてその真贋を検証することは重要である、というのは同意できる。

しかしそれならば、渡部氏がするべきは、現在までに富田メモに対して行われた検証内容を確認し、他にどういった検証をするべきか語ることであろう。

ところが、
「今までの報道から私の知る限り、右のような文書鑑定の手続きを一切無視して発表が大々的に行われた"ようである。"
「鑑定を頼まれた人たちも、そんな重要な検定をするのに十分な時間や手段が与えられていた"のだろうか。"」

という憶測・推測しか語ってはいない。真贋の検証が重要であると考えるのなら、なぜその程度のことを調べていないのか?


もし、鑑定の手法に重大な瑕疵があったのなら、徹底した調査が必要であろうことは全く賛成できるのだが、どこがどう問題なのか、については上記の憶測以外一言も述べていない。

結局のところ、富田メモが偽物であってほしいという願望が先にあって、いちゃもんを付けているとしか思えない内容である。

であればこそ、最初に「≪権威者ですら真贋を誤る≫」と書いているのだろう。
「権威者ですら真贋を誤る」と言うのは一般論としては正しいのだが、見方を変えればこの言い方は、どれだけ鑑定をしても「偽物の可能性がある」と主張できる根拠ともなる。仮に何千人ものスタッフを動員し、何年もかけて真作という鑑定結果を出しても、この一言で真贋をいつまでも保留出来る魔法の言葉である。要するに”言いがかり”だ。


その後は、印象操作と思しき、偽物の例を列挙して、まるで富田メモも偽物であるかのような展開が続く。


そして最後に、予防線として
「天皇陛下や皇族方のプライベートなつぶやきみたいなものまで、本人の同意なく発表され、政治的に利用されては陛下も国民もたまらない。」
と付け加えている。これでは、真作と断定しても、文句を付けられることになる。歴史学者にとって、富田メモは引用できない聖域とされるに等しい。


そういえば、こんな話があった。「人間は神の下に平等である。ただし黒人は除く。」


さしづめ、渡部氏と産経にとってはこういうことか。
「日本は自由と民主の国だから、歴史研究にあたってどんな資料を参照してもいい。ただし、これだけは見るなよ。

なんか懐かしいコントだなあ。


産経症・小林秀雄の言を利用する

産経は、相変わらず日本の戦後60年の歴史を自虐的にとらえるのに余念がない様子。

そんなに日本が嫌いなのか?


産経・正論:■真の保守主義に必要なものは何か 精神の崩壊を招く「崇高」の喪失


この中で、都留文科大学の新保祐司教授のは、小林秀雄の1946年1月の発言


 「僕は政治的には無智な一国民として事変に処した。黙つて処した。それについて今は何の後悔もしてゐない。大事変が終わつた時には、必ず若(も)しかくかくだつたら事変は起らなかつたらう。事変はこんな風にはならなかつたらうといふ議論が起る。必然といふものに対する人間の復讐(ふくしゅう)だ。はかない復讐だ。この大戦争は一部の人達の無智と野心とから起つたか、それさえなければ起らなかつたか。どうも僕にはそんなお目出度(めでた)い歴史観は持てないよ。僕は歴史の必然性といふものをもつと恐ろしいものと考へてゐる。僕は無智だから反省なぞしない。悧巧(りこう)な奴はたんと反省してみるがいゝぢやないか。」

を引用してこう述べる。

 これは、当時「放言」ととられたものだが、戦後61年目の今日読み直してみれば、実にまともな発言である。

 「悧巧な奴」は、現在でもまだ「たんと反省して」いる。厚かましくも歴史をいじくりまわしている。


簡単にいえば、200万人以上の国民を死なせ、近隣諸国に多大な被害を与え外交的にも致命的な状況に陥ったにもかかわらず、その失敗から学ぶことが出来ない、と言っているに等しい。

戦後半年しかたっていない占領下の混乱した状況下で、述べるのはまだ理解できる。

どうも新保教授は、戦後60年経ってもなお、混乱しているらしい。なんというか、気の毒な人だ。


ところで、小林秀雄の言う「戦争が避けられなかった」という見方も理解できないではない(筆者はそう思わないが)。

おかしいのは、新保氏は、「戦争は必然であった」ことは肯定しながら、「戦後の歴史は必然」ではなく「いじくりまわ」されたもので日本を「美しい国へ」修正するのは当然必要」と考えるダブルスタンダードである。


最後に小林秀雄のせりふをちょっと変えてみよう。


 「僕は政治的には無智な一国民として”戦後”に処した。黙つて処した。それについて今は何の後悔もしてゐない。”戦後60年”が終わつた時には、必ず若(も)しかくかくだつたら”教育基本法、靖国問題、皇室問題”は起らなかつたらう。”戦後”はこんな風にはならなかつたらうといふ議論が起る。必然といふものに対する人間の復讐(ふくしゅう)だ。はかない復讐だ。この”戦後60年”は一部の人達の無智と野心とから起つたか、それさえなければ起らなかつたか。どうも僕にはそんなお目出度(めでた)い歴史観は持てないよ。僕は歴史の必然性といふものをもつと恐ろしいものと考へてゐる。僕は無智だから”「美しい国へ」修正”なぞしない。悧巧(りこう)な奴はたんと”「美しい国へ」修正”してみるがいゝぢやないか。」


してみると、新保氏と産経はさぞ”悧巧”なのだろうか。