流離の翻訳者 日日是好日 -19ページ目

流離の翻訳者 日日是好日

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

今年も国公立大学の2次試験が終わった。早速あちこちの予備校などが問題や解答速報を公開している。便利な時代になったものである。

 

今年の京大の英作文は例年通りの指定された日本文の英訳だった。「自分の無知を悟ることこそが学びである」という歯ごたえのある趣旨の日本語である。

 

 

(問題)

Ⅲ.次の文章を英訳しなさい。

 

かつての自分の無知と愚かさを恥じることはよくあるが、それは同時に、未熟な自分に気づいた分だけ成長したことをも示しているのだろう。逆説的だが、自分の無知を悟ったときにこそ、今日の私は昨日の私より賢くなっていると言えるのだ。まだまだ知らない世界があることを知る、きっとこれが学ぶということであり、その営みには終わりがないのだろう。

(京都大学・2024年)

 

(拙・和文英訳)

We often feel ashamed of our ignorance and stupidity in the past, however, this also indicates, at the same time, that we have grown as much as we realize our own immaturity. Paradoxically speaking, it is only when we realize our ignorance that we can say that what we are today becomes wiser than what we were yesterday. Knowing that there is still a world we don't know is, surely, the very learning itself, and there is no end to the activity of learning.

数日続いた雨が上がり、今日は薄曇りから早春の陽射しが差している。

 

 

大学に入学してすぐの頃、「文学史」の教科書に載っているような明治以降の名作を読み漁った時期があった。受験生時代に読む時間がなかったこともあり、また周りの友人たちのレベルに無理して近づこうとしていたようである。

 

そのときどういうわけか辿り着いたのが昭和の「石坂洋次郎」という作家だった。「青い山脈」など戦後の青春を謳ったもので、少し古臭いの恋愛小説だった。

 

恋愛に対する憧れはあるものの、それを全く行動に移せない自分に不甲斐なさを感じながら「恋愛とはこうあるべきだ」のような観念的な恋愛の世界に自分の居場所を見つけようとしていた。

 

随分先のことになるが、この観念の世界から脱出できたのは、実際に行動して恥ずかしい思いをしたり、痛い目に遭ったりなどの実体験によるものであることを理解した。結局体験しなければ何も解決しないのである。

 

 

 

国公立大学の二次試験が明日から始まるらしい。努力は実る!自分を信じて頑張れ!受験生!

 

以下の問題は「社会に出て初めて知る理想と現実のギャップ」をテーマとした京大の英作文問題である。

 

(問題)

若くして多くの詩や小説になれ親しんでしまうと、社会体験皆無であってもなんとなく人生がわかってしまったような気になるものだし、いざ社会に出ると、体験することのすべてが必ずしも小説のように感動的ではないため、失望したり幻滅したりするものである。

(京都大学・1991年)

 

(拙・和文英訳)

If you become familiar with a lot of poetry and novels at a young age, you may feel as if you would have somehow understood life even though you have no social experience. However, when you go out into the real world, you will be disappointed or disillusioned because everything you experience is not necessarily as impressive as a novel.

 

気温が上がったせいかこちらは朝から濃い霧に包まれた。濃霧は先ほど雨に変わったが、まだ霧は晴れていないようである。この時期の霧というのも珍しいことだ。

 

 

他人の心というものも霧がかかったみたいになかなか読めないものである。ましてや女心であればなおさらのことだ。だからこそ恋は神秘的なのかも知れない。

 

「他人の心が読めたらいいのに!」と思ったことは今まで何度もある。それは恋愛でも、何かの競争(試合)でも、またビジネスにおいても

 

でも「もし他人の心が読めたらどうなるか?」そんな問題を出した大学があった。

 

 

(問題)

もし他人の心が読めたらどうなるか、考えられる結果について50~60語の英語で記せ。複数の文を用いてかまわない。

(東京大学・2012年)

 

 

(拙・解答例)

If I could read other people's minds, I would probably be able to run my own way in love, competition, and business. This is because I can understand other people’s thoughts, weaknesses, and true feelings. However, is it really fun? The joy of love, excitement of victory, and sense of accomplishment in business would be greatly diminished.

(57 words)

 

大学1~2年時は大学まで徒歩5分の吉田二本松町の下宿で暮らした。確かに大学は近かったがさほど勉強したわけではなかった。

 

大学3年時に大学までバスで20分ほどの一乗寺燈籠本町のアパートに引っ越した。確かにプライバシーなどは確保できたが大学の授業からも遠ざかってしまった。

 

ただし、一乗寺で新たな友人もできたし馴染みの居酒屋もできた。どういうわけか以前の友人たちも一乗寺まで私を訪ねてくるようになった。これが果たして良かったのか悪かったのか?

 

ともあれ、当時の友人たちとの親交は卒業から42年経った今も続いている。

 

 

以下は、「自宅から電車で片道2時間の大学」に通うことをテーマとしたの東大の自由英作文問題である。

 

(問題)

もし、あなたが自宅から電車で片道2時間の距離にある大学に通うことになったとしたら、あなたは自宅から通学しますか、それともアパートなどを借りて一人暮らしをしますか。いくつかの理由を挙げ、50語程度の英語で答えなさい。

(東京大学・2004年)

 

(拙・解答例)

I prefer living alone in an apartment near the university. This is because commuting to school for four hours a day is a waste of time and may interfere with studying. I also think that living alone serves as a precious experience for my future, and helps deepen my communication with my friends.

(53 words)

先日、旧友が東京から来訪してトラフグのコースを堪能した。二次会はカラオケへ。気がつけば42年ほどの付き合いになる。

 

気心の知れあった友人との語らいは楽しいものだ。お互いの良いところ、悪いところを知り尽くしているからか、昔話にも花が咲いた。

 

 

幼い頃「死の恐怖」というものにとりつかれた時期があった。「自分の存在そのものがなくなってしまう」ことに対する恐怖である。結局「死を恐れて生を楽しまず」とならないように精一杯生きることしかこの恐怖から逃れる道はないのであるが……。

 

最近、死の恐怖を感じることは殆ど無くなった。どちらかと言えば「動物的な死の恐怖」を感じることの方が多いかもしれない。以下はそんな「死の恐怖」をテーマとした東大の英作文問題である。

 

 

次の文章は、死に対して人間の抱く恐怖が動物の場合とどのように異なると論じているか。50~60語程度の英語で述べよ。

 

死の恐怖を知るのは人間だけであると考えられる。もちろん、動物も死を避けようとする。ライオンに追いかけられるシマウマは、殺されて食べられるのを恐れて必死で逃げる。しかし、これと人間の死の恐怖は異なる。動物は目の前に迫った死の危険を恐れるだけだが、人間は、遠い先のことであろうが、いつの日か自分が死ぬと考えただけで怖い。人間は、自分の持ち時間が永遠でないことを恐れるのである。

(東京大学・2001年)

 

(拙・解答例)

There is a fundamental difference between an animal's attempt to avoid death and a human fear of death. Animals try to avoid imminent death that they may be killed, but humans fear the vague danger of death that they may die someday in the future. In other words, human beings are afraid that their time is not eternal.

(58 words)

 

今朝冷え込んだのは放射冷却によるものらしい。確かに今日は雲一つない晴天に恵まれた。昼前から椎田の綱敷天満宮に参詣し梅を愛でてきた。

 

先日から「梅祭り」が開催中で神社は結構な人出だっだ。境内は甘酸っぱい梅の香りに満ち溢れていた。梅は今がちょうど見頃、寒くもなく風もなく最高の梅見日和だった。

 

やはり紅やピンクの梅が目立って美しい。白梅は少し寂しく感じられた。1月に受検したTQEの発表が近づいているが合格祈願の後に最後の神頼みで引いた御籤は第三十四番「大吉」。以下の歌が記されていた。

 

「かき曇る 雲さえ晴れて さしのぼる 日かげのどけき 我こころかな」

 

なんともめでたい歌である。その通りになれば良いが……。

 

願望:思い通りですが 油断するな

学問:安心して勉学せよ

相場:あせるな 利あり

 

 

 

 

 

朝方は少し冷え込んだが、先ほどから暖かくなった。早春の陽気である。「絶好の洗濯日和だ!」などと思ってしまう。家内が居ない生活も慣れてきたようだ。

 

「男は女房の尻に敷かれるくらいが幸せだ」と常日頃感じている。一見亭主関白のようだが実は女房の掌(たなごころ)の上で転がされているような旦那はたくさんいるだろう。

 

 

東大の以下の英作文問題を見ていてそんなことを考えた。この二人を夫婦と見るのか、親子と見るのか、あるいは教師と生徒と見るのか、受験生の発想はさまざまだろう。

 

私の解答は夫婦と見て考えたものだ。思い当たる節がないわけでもない。

 

 

(問題)

(東京大学・2005年)

 

 

(拙・解答例)

The wife is standing angrily in the room. Because she found her favorite flower vase broken on the floor. The trembling husband is watching the scene from the door. He wonders, "Did I drink too much last night?"

 (38 words)

一昨日から冬晴れが続いている。陽射しに少しだけ暖かさを感じられるようになった。

 

東大・英作文のシリーズが続いているが、今回は可愛らしいイラストを用いた問題である。青息吐息の東大の英語問題を解く中でこのイラストを見て受験生は何を感じたのか?あまり突飛な発想を思い浮かべる余裕は無かっただろう

 

自分の解答も穏当に情景を説明するにとどまったが、ほんの少しだけユーモアを加えてみた

 

 

(問題)

 

(東京大学・2007年)

 

 

(拙・解答例)

This is a scene from a school. The girl was surprised to find a UFO outside the window and said to the boy, "Wow! A UFO is flying over there!" Then, he calmly opened the UFO picture book without being surprised and said, "Well, this type of UFO is ......"

(49 words)

私が通った高校の校舎は当時木造だった。市内でも木造は我が母校だけではなかったか?恐らく旧制・高等女学校だったため、比較的丁寧に使用され校舎の破損が少なかったからだろう。ピカピカにワックスが掛けられた木造の飴色の廊下が今でも何となく目に浮かぶ。

 

我々の卒業後何年か経って校舎は改築され、普通の鉄筋コンクリートの校舎になったが、私は以後も何度か母校を訪ねている。確かに校舎に入っても懐かしさを感じることはないが、校庭や中庭のあちこちに当時の面影を偲ばせる情景が転がっているように思う。

 

 

昨今ユニークな問題で知られる東大・英作文だが、以前は日本文指定の従来型の問題も多く出題されている。以下は、上記の木造の校舎に関するものである。

 

 

(問題)

次の日本文の下線部を英語に訳せ。

 

数年前のことになるが、私の母校の小学校が改築された。それまでの木造校舎が取り壊され、どこにでもあるような鉄筋コンクリートの新校舎になった。私は新校舎に入ってみる気になれなかった。一つには、これはもう私の出た学校ではないというさびしさがあったためである。

(東京大学・1989年)

 

(拙・和文英訳)

Several years ago, my alma mater elementary school was renovated. The previous wooden school building was demolished, and replaced with such a new reinforced concrete school building that could be seen everywhere. I didn't feel like entering the new school building. One of the reasons was that I felt a feeling of loneliness that this school was no longer the school I had graduated from.

 

家内が長期間里帰りしている。最初は「これでのんびりできる!」と思ったがなかなかそうならない。結局時間を持て余してしまうのだ。酒量ばかりが増えている。困ったものだ。

 

松任谷由実の「きみなき世界」のような感じとまで言うと大袈裟になるが。

 

 

そんな暇な時間を埋めるために、またブログのネタ本として「東大英作の徹底研究」(山口紹著・駿台文庫)を購入した。まだパラパラめくっただけだがなかなか濃い内容のようである。それにしても東大の問題は頭を使うものが多い。

 

 

(問題)

現在、全世界で約3000から8000の言語が話されている。もしそうではなく、全世界の人々がみな同じ一つの言語を使用しているとしたら、我々の社会や生活はどのようになっていたと思うか。空所を50~60語の英語で埋める形で答えよ。答えが複数の文になってもかまわない。

 

If there were only one language in the world, …………………………………

(東京大学・2010年)

 

(拙・解答例)

If there were only one language in the world, communication between the people in the world would have been much better. This is because there would have been no misunderstandings or discrepancies due to difference in languages, and there may not have been any conflicts. On the other hand, our way of life, including in terms of art and culture, might have become more monotonous in a sense.

(59 words)