私が通った高校の校舎は当時木造だった。市内でも木造は我が母校だけではなかったか?恐らく旧制・高等女学校だったため、比較的丁寧に使用され校舎の破損が少なかったからだろう。ピカピカにワックスが掛けられた木造の飴色の廊下が今でも何となく目に浮かぶ。
我々の卒業後何年か経って校舎は改築され、普通の鉄筋コンクリートの校舎になったが、私は以後も何度か母校を訪ねている。確かに校舎に入っても懐かしさを感じることはないが、校庭や中庭のあちこちに当時の面影を偲ばせる情景が転がっているように思う。
昨今ユニークな問題で知られる東大・英作文だが、以前は日本文指定の従来型の問題も多く出題されている。以下は、上記の木造の校舎に関するものである。
(問題)
次の日本文の下線部を英語に訳せ。
数年前のことになるが、私の母校の小学校が改築された。それまでの木造校舎が取り壊され、どこにでもあるような鉄筋コンクリートの新校舎になった。私は新校舎に入ってみる気になれなかった。一つには、これはもう私の出た学校ではないというさびしさがあったためである。
(東京大学・1989年)
(拙・和文英訳)
Several years ago, my alma mater elementary school was renovated. The previous wooden school building was demolished, and replaced with such a new reinforced concrete school building that could be seen everywhere. I didn't feel like entering the new school building. One of the reasons was that I felt a feeling of loneliness that this school was no longer the school I had graduated from.