自分が見た夢を記録したり、それを基にお話を作ったりするブログです。何も見ない日もあるので、マ~タリとしたペースになります。
夢分析は出来ませんので、夢語りのみとなります。
時には、断片的な夢と夢を繋げたり、見た夢を膨らませて書く場合もあります。
その場合のテーマは、「物語」となります。
長編の物語も書いております。題名をクリックするとご覧頂けます。
【あるお家騒動】、【バインド-縛るもの- 】、【ニンジャの子供】。お読み頂けましたら幸いです。
前回、目次、登場人物、あらすじ検査服に着替えたコリンは、看護師に案内されてMRI検査室へと向かった。「緊張しているのね。大丈夫よ。じっとしている間に、直ぐに終わるわ」「俺、消毒薬の臭いが嫌いなんだ」「私も慣れるまで時間が掛かったわ。私の空手の先生が教えてくれた、取って置きの方法を教えてあげるわね。深ーく呼吸して、思いっきり病院の空気を吸うの。身体全体を使ってね。そうしたら、この臭いが平気になったのよ」看護師に促されて、コリンは身体全体を使って深呼吸をした。「本当だ。落ち着いて来たね」「そうでしょ」看護師は大きく微笑んで、MRI検査室のドアを開けた。中では、検査技師が、コリンを温かく迎えた。コリンは、検査台の上に仰向けになった。「きつかったら言って下さい」検査技師は、固定ベルトをコリンの頭や体にまわした。看護師は引き継ぎが終わると、検査室を出た。検査技師は、奥のコントロール室へ入った。「あー、また緊張しちゃう。深呼吸しなきゃ」MRI検査が始まった。ドンッ突然、小さな爆発音が後ろからした。慌てた検査技師が後ろを振り向いた。壁に穴が空いて、微かな煙の中から、壁の奥に隠れていた配線やガス管や水道管が丸見えになっていた。「えっ!!事故?!」検査技師が驚くと同時に、SIG SG553を手に持っている4人の男達が、穴の空いた操作室の後ろの壁から侵入してきた。検査技師は恐怖で固まった。男達は、外科手術をする格好で現れたのだ。薄手の手袋をはめ、帽子を被り、顔全体をマスクで隠し、目にはゴーグルをしていた。靴にも手術用のカバーが付けられていた。男達は、検査技師をしゃがませると、後ろ手に手錠を掛けた。そのうちの一人が手術用の手袋をはめたまま、MRIを動かしているコンピューターのボタンを押した。機械が突然止まった。検査室とコントロール室の間の厚い扉のため、コリンは爆発音が聞こえなかった。しかし、コリンは邪悪な気配を瞬時に感じた。急いで、固定ベルトを外し、検査台から飛び降りようとした。4人は管理室のドアを開け、検査室へ押し入った。先頭の男がSIG SG553の銃口をコリンに向けた。コリンは手を上げざるを得なかった。うつ伏せにさせられたコリンは検査台で、男達が持参してきたベルトで縛られた上、男達に押さえつけられて、身動きが取れなかった。目かしくや、猿轡をされて声も出せず、外で待っている警官達に助けを求めることも出来なかった。1人の男が、検査室のドアノブの周囲と鍵穴に液体を投入した。戻ってくると、コリンの前に立った。ゴーグルの奥から、山本の目が光った。反対側には、外科用手術着に覆われているエドワードがコリンの上半身を抑えつけており、配下の殺し屋達2人がコリンの足を抑えていた。「始めるか」エドワードのかけ声がかかった。MRI検査室のドアは厚く閉ざされ、外の様子が聞こえなかった。「ドンッて、物が壊れる音がしませんでしたか?」イサオは側に立っていた警備の警官に尋ねた。「いいえ、何も聞こえませんでしたよ。なあ?」「私もです。静かですよ」二人の警官がイサオの問いを否定した。「何かあったのか?」病院へやって来た猛が、皆に尋ねた。「親父、検査室の奥からドンッて音が聞こえたような気がしたんだ。警官達は聞こえなかったと言うんだ。音が小さかったから、無理もないか」「検査の器械の音じゃないのか?コリンも大変だ」病院嫌いなのに、糖尿病を悪化させて入院した経験のある猛は、コリンを思いやった。MRI検査室では、コリンは体をばたつかせたが、抵抗空しく、山本によってコリンは検査着を剥がされてしまった。丸裸にされ、汗ばんだ背中が見えた。『成人した今も、美しい背中だ』エドワードは思った。心臓がバクバクしてきた。「拷問は苦痛だけじゃないぜ」山本はポケットから清涼飲料水を取り出すと、コリンの後ろの首筋に、それを横に置いた。「ううっ!」清涼飲料水の缶は、ジョーが病院の売店から盗んだもので、まだ冷えていた。コリンは急所を責められ、冷たさの余り、うめき声を上げた。山本は缶を転がして、ゆっくりと背中に滑らせた。コリンは必死に抵抗したが、体を固定された状態ではどうにもならなかった。急所をじっくりと責められてしまい、体がゾクゾクして、やがてコリンは体の力が抜けてしまった。『何で、こいつらは俺の弱点を知っているんだ?!』コリンは、首の後ろが弱い。特に、冷たいもので触れられると全身がふにゃふにゃになり、恋人や友人達によくからかわれていた。デイビットも例外ではなかった。山本は空いてる手で、ポケットからロッカールームから盗んできたコリンのiPhoneを片手で取り出すと、ブライアンにかけた。ブライアンは直ぐに出た。「コリンか。どうした?私はFBIフロリダ支所の地下駐車場にいる。時間は無いぞ」山本は、コリンの口元にiPhoneを寄せた。コリンは猿轡をきつく噛んだ。山本は、缶を再び転がしたので、コリンは「ぐうっ・・・」と唸ってしまった。ブライアンの耳に、コリンの苦痛に満ちた声が届いた。「コリン!どうした?大丈夫か?誰かいるのか?!お前ら、コリンに何をしている!やめろ!やめるんだ!!」「ちょっと可愛がっているだけさ。ブライアン、俺達と依頼人を散々苦しめた罰だ。お前も苦痛を味わえ。お前達がいくら逃げても、俺達は必ず見付け出す!」山本は緊張していたのか、甲高い声で一気に捲くし立てた。「体が冷えてきたな。これから温めてやるか」山本の残酷な言葉に、コリンの両足を押さえていた若い殺し屋二人はにやついた。「おい、コリンに何をする!止めろ!!」ブライアンの叫びを無視した山本は、コリンの左手を押さえていたエドワードの右手首を掴むと、彼の手をコリンの尻の上に置いた。とっさのことで、エドワードはドキッとしてしまい、咄嗟に手を放そうとしたが、山本が手首を強く押さえた。コリンの冷えた体温がエドワードの手に伝わってきて、コリンに欲情を抱いていた彼の手が震え、鼓動が鳴った。『うっぐっ!止めろ!俺に触るな!』猿轡をされてコリンの言葉は聞き取りにくく、必死に抵抗してもがいても4人の男達に抑えつけられているので、バタバタと体を揺する位しか出来なかった。「一人目の男が触れたぞ。気持ちよさそうにしているぞ」冷静を装っていたエドワードは、山本に心の内を見透かされているようで、余計にドキドキした。コリンの抵抗に意に介さない山本は、コリンの尻を左手で勢いよく叩いた。「これで二人目だ」『うっ!止めろ!』コリンは必死に抵抗した。「心は拒否しても、体は反応するのだな」コリンは山本の言葉を聞いて、17年前の忌まわしい過去を思い出し、ゾッとした。コリンを傷つけた金持ちが吐いた言葉だったからである。「いい加減に止めろーっ!!この根性無しめ!俺に手を出せないから、コリンに悪戯をしているのかーっ!!このゲス野郎!」ブライアンの罵声に意にも平然としている山本は、更に甲高い声を上げて、ブライアンに携帯越しに吐いた。「流石、100人斬りだ。いいケツをしているな。締まりが良い。お前も味わったんだろ?」「この野郎!!必ず復讐してやる!!生まれた事を後悔させてやるーっ!!」ブライアンの五臓六腑が煮えくり返った。彼は、予備用のiPhoneを駆使し、FBIに通報した。検査室内の様子が聞き取れない警官達は、ブライアンの通報でようやくコリンが危険な状態に陥っていることを、本部からの無線で知った。「中に、秘密結社の野郎達がいるそうだ!」「ドアが開かないぞ!職員は何処だ!」警官達の怒声の中、イサオは瞬時に検査室の前に駆け寄り、ドアを強く叩いた。「コリン!無事なのか!」警官と病院職員は、必死に検査室のドアを開けようとしていた。「ドアが開かない!!」「猛さんは?!」猛の姿が消えたのを、一人の警官が気付いた。イサオはその警官の言葉は聞こえず、ドアを叩き、ひたすらコリンの名を叫んだ。「コリン!コリンーッ!」ドアを叩く音や、ドアを開けようとする音が激しくなってきた。コリンはイサオの声を聞くと、必死にもがき、抵抗していた。エドワードは左手首に巻いてある腕時計を見た。それを合図に、山本が動いた。「よし、時間だ行くぞ!コリン、大人しくしろ!!」山本は、右の掌でコリンの頭を検査台の上に強く打ち付けた。数ヶ月前に秘密結社によって、頭蓋骨にヒビが入る怪我を負わされたコリンは、再びの激痛に意識を失った。『拳法の手技を使ってまで、手荒なまねをしなくても』流石に、エドワードはコリンに同情した。山本は、コリンの背中を盗んだiPhoneで数枚撮ると、ズボンの尻ポケットにしまった。4人の男はコリンを縛り上げると、毛布にくるんで担ぎ上げ、操作室に戻った。山本が、左手をコリンを担ぎ上げたまま、右手でコンピューターを操作すると、4人は壁の穴から出て行った。その時、ようやくドアが開いたが、イサオや警官が入る直前で、職員は急いでドアを閉めた。「危ない!入っては行けない!!MRIが作動してる!銃と手錠などの金属類が機械に張り付いてしまう!」機械が作動している中では、検査室に入ることは出来なかった。「検査室の中にコリンがいるんだぞ!急いでスイッチを切れ!!」警官が怒鳴った。「コントロール室に技師がいた!奴等、コリンを人質に取って、壁の穴から出て行ったぞ!」管理室から、別の警官が出てきた。皆、外へ全速力で駆けた。
仕事に追われていたらば、もう弥生ですかΣ(゚д゚;)かなり遅くなりましたが、平成30年の初夢を記します。電車にのっていました。自分が乗っていた車両は混んでいたので、隣の車両に移ったら、空いていました。そこの車両は、真ん中にキッチンみたいなものが設置してあり、自分はそこで飲み物を取り出し、飲みました。のんびりしていました。しかし、次の瞬間、どこかの体育館に移動し、剣術の師匠が鬼の形相で立っておりました(゚_゚i)稽古着を着ていた自分は、黙々と木刀を振っておりました・・・(^o^;)
健康で活動的な生活が高齢になっても続きますように、そして経済的に余裕が持てますようにお祈り申し上げます。現実的な性格のせいか、七夕の神話の様な神秘的な夢はあまり見たことはないですねぇ~(;^_^A七夕のお願いは何?▼本日限定!ブログスタンプあなたもスタンプをゲットしよう
どんな和菓子が好き?▼本日限定!ブログスタンプあなたもスタンプをGETしよう桜餅、お団子、練り菓子、お饅頭など、和菓子は好物です残念ながら、和菓子が夢に出てきたことは無いですね~
前回、目次、登場人物、あらすじFBIによって逮捕された仲間の一匹狼の刑事を奪還すべく、シェイン達は計画を立案した。先ずは、潜伏先の移動である。今の潜伏先は、ダウンタウンの中にあるのと、借家2件に殺し屋達を分けて住まわせていたので、そこに一匹狼の刑事を匿うのは不可能である。シェインは彼が逮捕される前に、今の手狭な潜伏先から引っ越すべく、スワンスン夫人から紹介された不動産屋から、街外れの一軒家を夏の間借りる契約を結んでいた。新しい潜伏先は、白亜の豪邸であった。以前隠れ住んでいたスワンスン夫人の邸宅より面積は狭いものの、18名の殺し屋達を住まわせる十分な広さのある上に、隣家からかなり距離があるので、一匹狼の刑事を匿うには、格好の場所であった。スワンス夫人の邸宅から、ごく普通の一軒家に住まわされていた殺し屋達には、とても広く、魅力的に感じた。シェインは、FBIと警察の目を眩ますため、直ぐさま引っ越しを開始した。荷物の移動は少しずつに分けて、一台のバンで何度も運ぶことにした。途中、警察のパトロールも幾度も見かけたが、署内にいる秘密結社の同志から情報を得てたので、シェイン達は警官の目をくぐり抜けることが出来た。だが思わぬ所で、一人の警官にバンを止められ、シェインは肝を冷やした。何と彼は、秘密結社のシンパで、シェインに挨拶するために止めただけだった。ハプニングがあったものの、大きなトラブルも無く、秘密結社は新しい隠れ家への引っ越しを完了させた。「地下室もあるんだ」山本は広い台所脇にある扉を見付けると、その扉を開け、急勾配の階段を降りた。薄暗くて広い地下には、ずらりと空のワインセラーが並んでいた。「そこは、ワインセラーだ。最初の主が、1000本以上のワインをコレクションしていたが、自殺した後、財産管理人が持っていたそうだ。次の住人は、殆ど使っていなかったらしい。と言っても、数週間しかいなかったそうだが」シェインが、山本の後に続けて地下へ降りた。「幽霊がでたからか?」「見えなかったそうだが、人気の無いところから音が聞こえたんだ。その後に入居した住人は、気配を感じたけで怖くなり、数日で去った。それ以来、買い手が付かなかった。俺は、見えないものは恐れない。例え、物音がしてもだ」山本の問いに、シェインが力強く答えた。「そりゃ、そうだ。確か、ここの最初の住人が拳銃自殺したのは、数年前に起きた金融危機で全財産無くしたのが原因だと小耳に挟んだよ。死因が秘密結社とは関わりがないから、幽霊に襲われる心配はないし、怖がることはないね。もし俺が彼だったら、こっそりと新しい住人から金を取るけどね」「お前らしいな」シェインは鼻で笑った。それから、シェインは数日かけて、一匹狼の刑事の奪還計画を実行に移し始めた。シェインは、殺し屋達の訓練をミーシャとエドワードに任せ、一日の殆どをノートパソコンに向かい、時折スマートフォンで誰かと綿密な打ち合わせをしていた。エドワードは広い地下室を利用して、ワインセラーを移動させ、殺し屋達と共に実践に近いリハーサルを繰り返した。その中に山本もいた。数日後の早朝、シェインは極秘に外出し、夕方に帰宅した。そして、皆をリビングに集め、こう宣言した。「罠は仕掛けた。これから、奴等が動く。俺達も明日実行に移す」======次の日の午前に、コリンは頭部の傷の治り具合の経過を調べるために、MRIを受けることになっていた。消毒薬の臭いが嫌いなコリンの気分は、朝から少し落ち込んでいた。デイビットは、コリンの身の回りの世話をしながら支えていた。突然、玄関のドアをノックする音が聞こえた。「誰?こんな朝早くに?」コリンはムスッとした。「俺が出る」デイビットは不審に思った。ブライアンやジュリアンなら、事前に連絡を入れる筈である。ドアスコープを覗いた。目の前に長身の背広姿の男二名が立っていた。「FBI捜査官だ。見たことがない奴等だが、きっとフォルストの奴が俺達の警備でも寄越したのだ」デイビットは、瞬時に男達の身元を見破り、ドアを開けた。「私達は、FBIの者だ」二人の捜査官が、身分証を提示すると機械的な口調で自己紹介をした。「フォルスト捜査官から派遣されたんだろ。そんなにかしこまらなくて良いぞ」「彼は、イサオ・アオト氏殺人未遂事件の担当者だ。我々の部署とは違う。これから話す件とは無関係だ。」デイビットの問いに、FBI捜査官は冷たく答えた。「これから話す件?」コリンは訝しんだ。「コリン君が、生まれた頃の話だ。君には関係無い話だが、デイビットに大きく関わることだ。」FBI捜査官の一言に、コリンはキッと捜査官を睨んだ。二人の捜査官は鼓動が急激に高まった。コリンが、睨んだ大きな瞳から怪しげな色気を発していたからである。捜査官の一名が動悸を抑えながら、上着の胸ポケットから、一枚の写真を取り出した。一人の上品な中年男性の顔が写っていた。「彼を知っているだろ?」「誰?」コリンが尋ねた。デイビットは知らないと言わんばかりに、首を横に振った。コリンは、デイビットがその男について知っている事は百も承知であるが、あえて彼の態度を信じる振りをした。「30年前のホワイトハウスのスタッフだ。当時の大統領の息子の世話係だ」捜査官が写真の男の顔を指で軽く叩いた。「何の話だ?」「誤魔化しても無駄だ。君が、冷戦時代にCIAに依頼されて、ホワイトハウスで行った仕事で、彼を消しただろ」「俺はそんな大物とは仕事をしていない」「ほう。しらばくれるのか。我々は、情報を得ているのだ」タブレットを二人に見せた。その中には、古いFBIの記録が載っていた。中身は、品の良い中年男性が、ソ連の当時の情報局KGBのスパイであることと、世話を担当していた息子を利用して、ホワイトハウスの情報を盗もうとしたことが明記されていた。「息子をそそのかして、違法薬物を摂取させ、その証拠写真を撮った男は、それを有効な切り札として使おうとした。それを、FBIは掴んでいた」FBI捜査官は、記録の概要を話した。「クリーンを売りにしていた当時の大統領には、痛手だな」デイビットの言葉に、FBI捜査官は頷いた。「そうだ。我々FBIはシークレットサービスと協力し、男を逮捕して、KGBの情報を引き出そうとした。それをCIAが横やりをいれた。奴等は、手っ取り早く男を消そうと、君に依頼した」「だから、何の話だ。この紙には俺の名前は一切書かれていないぞ」「記録に残っていなくも、情報は得ている。話を聞かせて貰うぞ。拒否したら、裁判所の許可を貰うまでだ」FBI捜査官は、デイビットに支局へ一緒に来るように促した。「一日待ってくれ。俺はコリンの検査の付き添いがある」「安心したまえ。彼は下で待っている他の捜査官が、病院まで送る」「嫌だ!」コリンはきっぱりと拒否した。「なら、少し時間を与える。デイビットが君を病院まで送ることまでなら良いだろ。もし、何かおかしい動きをすれば、コリン君、君もFBIの取り調べを受けて貰うぞ」FBI捜査官は、コリンに冷たい口調で言うと、スマートフォンで、階下の捜査官に連絡を取った。「仕方ない。その前に、俺にもスマホを使わせろ」デイビットは、ポケットからスマートフォンを取り出すと、ブライアンにかけた。しかし、応答は無かった。「ブライアン・トンプソンにかけたのか。向こうもFBIの取り調べを受けている最中だ。出られないぞ」FBI捜査官が冷たく言い放った。「どうしてだ?」「おや、とぼける気か?奴は、当時、シークレット・エージェントだった。大統領を守る男だったのに、ホワイトハウスで起きた殺人を見逃したのだ。当時は知らなくても、真実を知った時点で元の職場に報告するべきだった。それを怠ったのだ。つまり、お前と共犯と同じだ」「ブライアンのところにも、FBIが来ているのか?!」「奴にも、我々の聴取に応じて貰う事になっている」デイビットは、スマートフォンを上着の胸ポケットにしまうと、コリンと共にアパートを出ると、駐車場へ向かった。FBI捜査官達は、アパートの玄関前に止まっていた黒いバンへ乗り込んだ。「運転をしようか。又、ブライアンに電話するだろう?」コリンが手を差し伸べ、デイビットにフォレスターの運転をすると言った。「いや、平気だ。どうせ、FBIの連中は衛星を使って、俺とブライアンとの会話を傍受する筈だ。何時もの様に、ハンズフリーを使って連絡するさ」デイビットはコリンの手を一瞬握ると、運転席に乗り込んで、キーを回した。病院へ向かう途中で、ようやくブライアンと連絡がついた。「何で、冷戦時のあの事件がFBIの耳に入ったんだ?」「私も知りたい。さっき、FBIの連中が私の部屋に来た。事情聴取する捜査官は別にいて、フロリダ支所に待機している。分かるだろう」「私は、こっそりとFBIにいる友人に電話した」「前の主任か?」「その通りだ。彼によれば、現在のFBI長官が、あの事件の担当者だったと教えてくれた。皮肉なものだ。彼の根回しのお陰で、私はこれからフォレスト捜査官に面会することになった。奴は、FBI長官から期待されている捜査官だそうだ。奴から何か情報が引き出せるかと思う」iPhoneを切ったブライアンは、急遽捜査本部へ駆け寄り、フォルスト捜査官と会った。「貴様の件では、私は何も教えて貰っていない。長官直々に、イサオ・アオト氏の事件に専念するようにと、今朝の電話で言われただけだ。君も元は公務員だったから、私の立場が分かる筈だ。上司の命令は絶対だ。今回の件に関しては、FBI長官直々の指名された捜査官による特別な捜査だ。いい加減、観念した方が得策だ」フォルスト捜査官は、醒めた言葉を吐いた。ブライアンは心の中で舌打ちした。『こいつ、何が期待のホープだ。ただの長官のイエスマンじゃないか』デイビットとブライアンは、急遽FBIの聴取を受けることになった。サラとイサオは、デイビットがこれからFBIの取り調べを受けることに、大きなショックを受けた。サラは、デイビットがスパイナーとは知らなかった。「本当なの?!」「そうだが、傭兵時代にいた頃の話だ。FBIの連中は誤解している。俺は、アメリカでは何もしちゃいない。誤解を解くために、聴取を受ける」デイビットは、二人に北欧生まれで、自国の軍隊生活を経て、フランスの外人部隊や傭兵として世界中を転々とした後、引退し、アメリカに移住したという嘘の経歴を、会った時に伝えていた。今回も、その嘘を話した。イサオは、ブライアンからデイビットのことを知らされていたが、嘘を信じる振りをした。サラはその嘘を信じた。「弁護士は?」「さっき、連絡を入れた。当たり前だが、直ぐにはこれないそうだ。何かやばい事になりそうだったら、その場で打ち切って、弁護士と相談する」「それが良いわ。でも、一体全体どうなっているのよ。ブライアンも今日はFBIと話し合ってくるってイサオに連絡があったばかりだし」「ブライアンは、FBIにコネがあるんだ。あちこちに根回しをしている最中だって言っていたじゃないか。心配は無用だよ」「二人がいなくなったら、秘密結社の連中は喜んでいるわよ」「警察とFBIが警備についているから大丈夫だよ。君のところにもFBIが張り付いているしね。親父も君と入れ替わりに見舞いに来るからね。それに、今日は大事な仕事があるんだから、そっちに集中しなきゃ駄目だよ」「それもそうだけど・・・」「大事な仕事?」「コリン、今日は、サラの事務所の新人がモデルデビューするそうだよ。それも一流の雑誌にね。サラは、エージェントとして立ち会うことになっているんだ。そろそろ、時間だよ」「あら、そうだわ。でも、二人がいないと」サラは腕時計を見ながら、心配した。「よく廻りを見てご覧よ。警備の警官が何人もいるじゃないか。それに、二人は事情聴取されるんであって、拘束される訳じゃ無い。今日中に戻ってくるさ。サラ、気にせずに行っておいで」「じゃあ、コリン、良い結果が出ると良いわね」サラが去ったと引き替えに、朝コリンの部屋を訪問したFBI捜査官がやって来た。「時間だ」コリンは一人でMRI検査を受ける羽目になり、寂しくなった。「日にちを、延期して貰えませんか?」コリンは医師にお願いした。イサオがコリンを制した。「駄目だ。コリン、検査はきちんと受けるべきだ。頭の怪我の治り具合を診るためには必要なんだよ。検査結果によって、今後の治療方針も決まるんだ。もしかして、通院しなくて良いと診断されるかも知れないんだよ。一人で検査を受けるのは、不安なのはよく分かる。デイビットはいないけど、僕がいるだろう。それとも、怪我人だから不満かな?」「そんなことはないよ・・・」イサオは、コリンを励ますように、笑顔を見せた。「親父もそろそろ来る時間だし、警備員もこの病院には多く在中しているから、何があっても大丈夫だよ。病室で待っているからね」イサオは、コリンに検査を受けるように促した。コリンは渋々応じる事にした。「腕の良い検査技師だから安心して下さい。後は、看護師が検査室まで案内します」医師は、側にいる看護師に後を託した。「さあ、ロッカーへ行って、中に入っている検査服に着替えてね。私は外で待っているから、終わった頃に声を掛けて。MRI検査室へ案内するわ」待っていたかのように、看護師がコリンをロッカールームへと案内した。ふと、イサオの胸がざわついてきた。『何だか胸騒ぎがしてきた。大丈夫。警備員の他に、警察官も僕たちを警護してくれているから。過剰な恐れは禁物だぞ』イサオは自分を励ますように心の中で呟いた。一旦は、病室へ戻ったが、どうしても胸騒ぎが収まらず、MRIの検査室へ足を向けた。『過保護だな。僕は』イサオは苦笑いをした。
わ~い嬉しいですね相手を思いやる温かな心を持てるように心掛けまーす▼わたしの2017年の恋愛運は・・・ 恋愛おみくじをひく
わーい数年ぶりにおみくじを引いたら、吉が出ましたとても嬉しいですね~。とは言っても、油断せずに日々精進に努めます======わたしの2017年のおみくじ結果は・・・ おみくじをひきにいく
寒中お見舞い申し上げます。今年の初夢は、大型の観光バスに一人乗って、街を走らせるものでしたのんびりと観光した気分となりましたね。多忙のため、更新がゆっくりとしたペースになっておりますが、旧年同様に本年も宜しくお願いいたします
大好きで~す(^∇^)子供の頃はよく登っていました。富士山にも登り、高山病に罹ってしまいましたが、また登りたいですね(;´▽`A``======山登り、好き?▼本日限定!ブログスタンプ限定あなたもスタンプをGETしよう
知り合いの家に遊びに行きましたo(^▽^)oそこは、道場も兼ねている家で、1階は広い玄関があり、ステンレス製の大きな靴箱が何個も置いてあり、お弟子さん達の靴で溢れていました。そこで楽しい一時を過ごし、帰ろうとすると、自分の靴がないではあ~りませんかΣ(゚д゚;)知り合いも探してくれたのですが、とうとう見付ける事が出来ませんでした(ノ_・。)誰かが間違えて履いてしまったようです・・・。知り合いが、靴箱の脇に置いてあった長靴を貸してくれました。暑くて重いのですが、助かりました(°∀°)b それを履いて家に帰りましたとさ。
イミテーションなものは持っています。真珠といえば、自分はまっさきに2002年に話題となったテレビ番組の『真珠夫人』を思い出しますねぇ~。詳しくは、こちらをご覧下さいませ。当時、学生だった自分ははまり、周囲も夢中になっていましたね。懐かしい思い出です。その頃に見た夢は、暗闇の中から何かが追っかけてきて、自分は必死に逃げた記憶があります。その夢を何度も見て、中には左腕をガブリと噛まれてしまったことがありました(><;)今でもたまに見ますね。*****真珠のアクセサリー、持ってる?▼本日限定!ブログスタンプあなたもスタンプをGETしよう
どちらかというと、『怖い』ですね高いところが苦手なんですよジェットコースターに乗って、カタカタと上へ登っていく段階でもう・・・追記:ジェットコースターに乗って、怖い思いをした夢を見たことがありました。なかなか止まってくれず、とても恐ろしかった記憶があります。*****ジェットコースター、好き?嫌い?▼本日限定!ブログスタンプあなたもスタンプをGETしよう
前回、目次、登場人物、あらすじデイビットとコリンが乗ったフォレスターは、FBIの車列を追って、空港のへ到着した。FBIの車列が止まらずに滑走路の方向へ走っていったのを確認しすると、駐車場へ移動し、フォレスターを止めた。二人は降りて、周囲に気付かれないように、施設内へ入った。利用客はFBIがやって来たことを知らず、何事も無かったかのように行き来していた。二人は利用者をかき分けるように、滑走路へ小走りで向かった。「二人とも、もう知ったのか?情報が早いね」突然、ジュリアンが、二人に近付いてきた。「ジュリアン!どうしてここへ?!」コリンとデイビットは驚いた。「私の友人に、空港の職員をしている女性がいるんだ。彼女から、FBIの指名手配犯が逃亡先で逮捕されて、ここの空港でFBIが指名手配犯を引き取りに来るって情報を貰って、飛んできたんだ。彼女は、指名手配犯は元警察関係者だとしか知らないそうだ。私にとって、その情報だけで十分だよ。100パーセント、一匹狼の刑事だ。君達に知らせるには、きちんとこの目で奴を見ないとね。それで、ここへ来たという訳だ」「俺達は、帰宅途中で、空港へ向かうFBIの車列を見かけて、ここまで追っかけてきたんだ」コリンの話に、今度はジュリアンがビックリした。「偶然だったかのか?!」「ジュリアン、滑走路の中へ入れるのか?」「それは無理だ。でも、友達からよく見える場所を教えて貰ったばかりなんだよ。丁度良かった。君達も一緒に行こう」ジュリアンが二人を空港の職員専用の通路へと案内した。三人は通路を通り、最上階にある会議室に辿り着いた。「今日は誰も使わないと友達から聞いたし、警備員には話を通してあるから、私達がここを使っても、心配は無用だよ」ジュリアンは、友人から聞いた会議室の暗証番号を迷わず押し、ドアを開けた。広々とした会議室の中に三人は入ると、窓際へ向かった。「あれだね」一台のジャンボジェット機が、一番外れの滑走路に止まっていた。コリン達がその飛行機を見付けた時、他の乗客はタラップを降り、バスに乗っているところであった。タラップの側でFBIの車が数台止まっており、FBI捜査官達が車の側で待機していた。「乗客を乗せたバスが発車したな。いよいよ、奴のお出ましだ」コリンはジッと外を見詰めた。FBI捜査官達はタラップを登り始めた。突然、一番外れの滑走路の照明が殆ど落ちてしまい、僅かな光で飛行機を見るしかなくなった。「これじゃ見えないよ」コリンは不満を吐いた。「FBIはよほど、奴が逮捕されたことを隠したがっているのだな」デイビットは推測した。「奴の逮捕を知って、秘密結社が又、居場所を移動されては大変だからだろうね。でも、情報なんて、直ぐに漏れるよ。秘密結社に心寄せている警官は、多いからね。警官が知る前には、空港職員から私に瞬時に漏れたしね」ジュリアンは笑った。「奴の顔がよく見えないや。猛さんから教わった『明眼の法(めいがんのほう)』を、やれば良かったよ」「ニンジャが目を鍛えるものだね。夜に、蝋燭の火を灯し、それをジッと見る。次に、蝋燭を紙で覆って行灯を作り、その紙に針で穴を幾つか開けて、その穴から火を見て、穴の数えたり、行灯から距離を離して、目を慣らすという方法だと、本に書いてあったね」「他にも、暗い部屋から明るい部屋へ行き来して、どんな状況にも対応出来るように目を鍛える方法もあるとも、猛さんは言っていたよ」「我々はこれを使って、暗闇に対応するしかないね」ジュリアンは、双眼鏡を取り出すと、コリンに渡した。「これは天体観測用のものだから、よく外の様子が見えるよ」「有難う」と礼を言うと、双眼鏡を使って、飛行機のタラップを覗いた。飛行機の中に入っていたFBI捜査官達が出てきた。コリンは双眼鏡の倍率を上げた。背広姿のFBI捜査官達に混じって、一人の男が出てきた。濃茶色と白髪が入り混じったの天然パーマの髪を伸びるに任せていたせいかまとまりがなく、逮捕時に暴れたらしく、シャツも肩のところが破けており、汚れていた。肝心の顔は長身のFBI捜査官達に囲まれ、一瞬しか見えなかった。「一匹狼の刑事だ。も~、背の高い捜査官のせいで顔がはっきりと見えないよ」コリンはぼやいた。「奴の身長は170センチだ。屈強のFBI捜査官に囲まれると隠れるのだ。フォレストの野郎、あえて高身長の捜査官を配備したな。捜査官達が奴を囲めば、空港にいる人間の目に触れる事は無い」デイビットは分析した。「奴だと分かれば、それで良いよ。早速、ブライアンに連絡するね」ジュリアンは、スマートフォンを取り出すと、ブライアンに一匹狼の刑事がFBIに逮捕されたことを伝えた。ブライアンは、直ちに懇意にしているベンジャミン捜査官に連絡を入れた。友人である前に、FBI捜査官であるベンジャミンはブライアンの問いをはぐらかした。「私のところには、まだ情報は入ってきていないね」「ほう、今はホテルにいないんだろう。捜査本部だろ?」「何だ。調べてから、私に確認したのか。私からはこれ以上は言えなんだ。今回は、警察にも限られた人間しか知らされていない。奴の移送先も、警察署から離れた場所だ。警察内部には、まだ秘密結社の人間がいるかも知れないという、主任の判断だ」「賢明な判断だ。で、主任はそこにいるんだろ。私が直接聞く」ブライアンは直ちにホテルを出て、愛車ベンツS HYBRIDで捜査本部へと向かった。捜査本部に到着したブライアンは、フォルスト捜査官に会うと、直球で問うた。「一匹狼の刑事を逮捕したそうだな」「その通りだ。ベンジャミン捜査官から聞いたのか?」「彼は何も話してはくれなかった。この情報は、ジュリアンから貰った。で、奴の潜伏していた場所は?」「ハバナだ」「前妻の親戚が、ハバナで警官をしている。離婚後も、二人は共通の趣味である伝書鳩を通じて交流を続けていた。奴は親戚を頼り、彼も奴をハバナ郊外に匿っていた。だが、FBIとハバナの警察が協力して丹念な捜査の結果、匿われた場所を突き止め、逮捕に至った」「我が国とキューバが、国交回復したお陰だな」「全くだ。向こうも好意的に捜査協力をしてくれた。一匹狼の刑事は、無事に米国へ送還された。これから、事情聴取だ」「夜なのにか。流石、素早く行動する」「当たり前だ。一刻も早く、秘密結社の居所を吐かせないと、又君達が現場を荒らしかねないからな。FBIが情報を掴むまで、派手に動かないで貰いたい」フォレスト捜査官は、チクッとブライアンに釘を刺した。FBIは、警察署から車で30分離れた小さなオフィスビルに、特別の取調室を設置した。一匹狼の刑事の供述が、秘密結社のスパイに漏らさないためであり、彼の取り調べを担当するのはFBI捜査官であり、警察はごく数名しか参加出来なかった。このビルは、警察が麻薬捜査の時におとり捜査で時々使うもので、防音や防犯設備は万全であった。一匹狼の刑事は特別の取り調べ室へと連行後、FBIと警察による尋問が行われた。彼は、シェインが黙って潜伏先を変えて、その事で怒りを覚えていたのにも関わらず、FBIに対して黙秘を続けた。秘密結社への忠誠心を今でも持ち続けていた。彼は、秘密結社の同志になりたくて、ウェルバーに近付いた。しかし、常に一人で行動する為、協調性が無いとの理由で、秘密結社の創始者・ウェルバーには正式な同志として認められていなかった。同じくウェルバーに冷たくされていたシェインと、よしみを結んで、かれこれ10年以上にもなる。正式な同志にならなくても、秘密結社の為に必死に働いた。クーデターによって、ルドルフが秘密結社のリーダーに就任した時、シェインの口添えで、彼はようやく秘密結社の同志になることが出来たのだ。一匹狼の刑事は、シェインに怒りを感じているにせよ、恩人でもある彼を、警察に売る気はさらさら無かった。取り調べ室の彼の様子は、秘密結社と繋がりのある警官を通じて、シェインの耳に届いていた。「アイツ、黙秘を続けているのか。俺はアイツを見捨てて、潜伏先を変えたというのに。何て義理固い男だ。しまった。俺のしたことが」 シェインは、一匹狼の刑事に対する態度を悔いた。シェインの部屋に、ミーシャとエドワードが集まっていた。山本は、買い出しに街外れのスーパーへ出掛けていて留守だった。「どうする?」ミーシャが問うた。「決まっている。奪い返すだけだ。どんな手を使ってでも」シェインは答えた。「そうしよう。殺し屋達にとって、良い予行演習となる。早速、立案しよう」エドワードがラッキーストライクの火を灰皿の上で消した。続き
自分は、UFOを信じるタイプですね一度、それを口にして、周りにあきれられましたけどね数年前、三島由紀夫がUFOを扱った小説『美しい星(新潮文庫)』を書いていたと聞き、もの凄く驚いたのと同時に、親近感が湧きましたねAmazonにもありました。http://www.amazon.co.jp/dp/4101050139ネットで『美しい星』を検索したら、映画化が決定したことを知りました。それも驚きです。追記:UFOに乗った、もしくは宇宙人にUFOに連れ込まれたなど、UFOに関連した夢は見た記憶が、残念ながらないですね。==========UFO信じる?信じない?▼本日限定!ブログスタンプあなたもスタンプをGETしよう
麦茶、緑茶、ほうじ茶、烏龍茶…あなたの好きなお茶は?▼本日限定!ブログスタンプあなたもスタンプをGETしようの、飲みたい・・・(^▽^;)明日、スーパーに行って買ってきま~す(・ω・)/ペットボトルのは便利だけど、作ったものは美味しいですねo(^-^)o追記:麦茶がどうか覚えていないですが、どんぶりに入れられた飲み物をグビッと飲んだ夢を見たことを思い出しました。とても爽快な気分になったことは覚えています。
前回、目次、登場人物、あらすじ一匹狼の刑事の潜伏先が分かっても、フォルスト捜査官はその情報を最小限に留めた。身内のFBI捜査官で、この情報を知っているのは、担当者の2名だけであった。警察内でも、署長と殺人課課長しか知らなかった。フォルスト捜査官は、秘密結社に情報を漏れるのをとても恐れていた。一匹狼の刑事は殺人課に長年いたベテランであり、署内はいうに及ばず、裏社会にも通じている男であるので、一旦彼の逃走先をFBIが掴んだことが他に知られれば、瞬く間に彼の耳に届き、再び行方知れずになるからである。翌朝、捜査本部でミーティングが開かれる為、捜査官が集まり始めていた。その中に捜査協力者として、コリン、デイビット、そして、ブライアンがいた。前方の席で書類を見ていたフォルスト捜査官は、何時もの様に冷静な態度であった。しかし、隣にいる殺人課の課長は表面上は落ち着く振りをしていたが、椅子の下で下腿部を何度も組み替え、ソワソワしていた。席についていたデイビットは、左隣に座ったブライアンと打ち合わせを始めた。デイビットの右隣に座っていたコリンは、二人の話を聞いていたが、課長が椅子の下で落ち着き無く足を組み替えているのを見付けた。「ジッと下を見ているけど、一体どうしたんだ?」通りかがったベンジャミン捜査官が、声を掛けた。彼は、ブライアンと旧知の間柄のせいか、コリンに気に掛けていた。「課長が挙動不審なんだ。足下を見てよ」「本当だ。変だな」「きっと、夕べ私達が捜査本部を去った後に何か起きたのよ。その証拠に、捜査官が2名欠席しているわ。彼等が欠席した理由は、誰も知らされていないの」彼等の側に寄ったジョーンズ捜査官が、喋った。「主任が情報を一手に握っているからな。いくら、警察内の秘密結社が相手でも、部下の我々には話して欲しいね」ベンジャミン捜査官が溜め息交じりに愚痴を言った。「そうだよな。スパイは逃げたから、安心しても良いのにな」今度は、殺人課の若手刑事が参加した。「いや、ここは用心深くした方が良い。『敵を騙すにはまず味方』と言うだろう。もしかして、スパイが他にもいるかも知れないからね」マックス刑事が皆に声を掛けた。話を終え、デイビットが目をやると、コリンの周りに、FBI捜査官や刑事達が集まっていた。『俺がちょっと目を離した隙に、こんな大勢がコリンの周りに集まっている』デイビットが内心ムッとした。「まあ、良いじゃないか。コリンは色々と情報を貰っているんだからな」ブライアンが宥めつつ、内心こうも思った。『コリンは、子供の頃から常に周りに人がいる』コリンの視線に気付いたのは、課長では無く、フォルスト捜査官であった。「落ち着いて貰いたい。柴の子犬が、貴男の足下を見ている」『柴の子犬』とは、捜査関係者がこっそりと呼んでいるコリンの渾名である。フォルスト捜査官に注意され、課長はハッとして足の動きを止めた。「子犬が気付いていると言うことは、彼の側にいるデイビットとブライアンも察しているということだ。それに、彼の周りにいる捜査官達も、彼から貴男の様子を聞いて、変だと思うだろう。もしも、あの男の情報が漏れたら、我々の苦労は水の泡になってしまう。あと数日間はして頂きたい」「申し訳ない」冷や汗を掻いた課長は、ただ謝るほかはなかった。フォルスト捜査官の動きを知らされていないコリンとデイビットは、捜査会議の終了後、この日も秘密結社の居所を、裏社会のルートで探していた。デイビットとコリンが乗ったフォレスターが、スワンスン夫人の本宅の前を通った。「ちょっと停めて」コリンがデイビットに頼んだ。20代前半と思われる女性が、裏門から出てきたのを目にしたからである。コリンは、急いで女性の元へ駆け寄ると、声を掛けた。「帰るところ悪いけど、ちょっと良いかな」派手なアイメイクをした女性が、歩きながら即答した。「お生憎様。私、婚約者がいるの」コリンは、リッキーの足の速度に合わせて歩きながら、自己紹介をした。「そうじゃないんだ。俺、コリンと言って、警察の捜査協力者なんだ。聞きたい事があるんだ。名前は?」「リッキーよ。悪いけど、急いでいるの」リッキーは、駆け足でその場を去ろうとした。「奥様の具合はどう?俺も昨年の冬にインフルエンザに罹った事があったから、心配なんだ。体の節々が痛くって、あれはこたえたな。奥様も俺みたいに苦しまなければ良いけど」コリンの意外な言葉に、リッキーは思わず立ち止まってしまった。「優しいのね・・・。私、台所担当だから・・・。奥様にお目にかかったのは、えっと、この春に雇われた時だけなのよ」リッキーは額から大量の汗をかき始めた。「奥様の容態は知らないんだね。それじゃ、よくこの屋敷に出入りしている若いボーイフレンドは見かけたかな?ミーシャと言う名前で、君と同じ位の年で、髪の金色、瞳は青色で、ハンサムな人だ」メイドのリッキーは、コリンの質問に戸惑った。「私は何も知らないのよ。本当なのよ、信じて、お願い」戸惑うリッキーの様子に、コリンとデイビットは、彼女が夫人から口止めをされていることを察した。「勿論、信じるよ。所で、ウィルという使用人がいたよね。彼と会うことが出来るかな?」ジョーンズ捜査官から、ウィルが事情聴取の時にソワソワしていたと聞いていたからだ。「ウィル?駄目よ。彼は、ハワイの別荘へ行ったわ。奥様の一番上のお孫様が、ハワイでサーフィンの為に滞在するから、身の回りの世話をする事になったのよ。彼、ハワイ出身だから、向こうの事情をよく知っているからって」「随分急だね」「んー、どうなのかしら。私は細かい所までは知らないわよ。ご免なさい。もう行かなきゃ。アパートに、お転婆のニャンコが待っているから」リッキーは、そそくさとその場から離れた。「怪しいね。夫人の病気は嘘かもよ。ウィルがハワイに行ったのも、裏がありそうだね」デイビットは大きく頷いた。「恐らく、そうだ。夫人も秘密結社と繋がっているのだろう」突然、聞き覚えのある声が、コリンの耳に響いた。コリンとデイビットが振り向くと、買い物袋を持った猛が立っていた。「君達、ここで何をしているのだ?若い女性と真剣な顔をして話していたが、何かあったのか?」「猛さん!どうしてここへ?」コリンとデイビットは驚いた。「この2ブロック先に、日本食専門のスーパーがあるのだ。値段は張るが、美味しい豆腐や生卵が手に入るので、時々立ち寄っているのだ。店を出たら、君の声が聞こえたので、ここまで来てみたのだ」「2ブロック先まで声が届いたのですか?俺、普通に喋っていたのに?!」コリンは更に驚いた表情を見せた。「特別なした事では無いよ。警察官だった時代、犯人を追跡する為に、遠くまで声が聞こえるように訓練をしていたからだと思う」少し照れ気味に猛は言った。「もしかしてそれは、夜中に針を砥石の上に落として、聴力を鍛えるという訓練でしょうか?」コリンは尋ねた。「『小音聞き(さおときき)』だね。勲から聞いたのか。それもやったよ。他にも、耳を柔らかくする等、色々と方法があるのだ。ところで、あの若い女性は、重大な鍵を握っているのか?」「大した事ではありません。事件に関わりのある夫人の豪邸から、女性が出てきたのを見かけたので、話を聞いただけです。ミーシャを見たかと思ったのですが、残念ながら、彼女は何も堪えてくれませんでした」「残念だ。サラから、スーパーの近くに、秘密結社に家を貸した富豪の奥方が住んでいるから気を付けるようにと言われていたが、ここだったのか。やはり、捜査令状が無いと難しいだろう」猛は豪邸の方を見た。高い塀の上に監視カメラが設置されていた。『警備はしっかりとしている。見取り図さえあれば侵入出来て、家の中を調べる事が出来るのだが。ここでコリン達を巻き込む訳にはいかん。今は、じっと堪えるしか無い』======塀に設置している防犯カメラの映像は、ベッキー達を捉え、それは邸宅内にいるスワンスン夫人とミーシャの目にも留まっていた。「コリンの野郎、上手い事言って、メイドを喋らせたな。それに、ニンジャが出てきたな」応接間のソファに座り、タブレットで防犯カメラの映像を見ていたミーシャが、苦い顔付きをした。「これが噂のニンジャなのね。新聞で載っていた写真よりも、お爺さんだわ。このお爺さんは、近所のお店で日本食を買っていただけだから、大丈夫じゃないからしら。あそこ、とても美味しいものを売っているのよ。でも、コリンって子には、気を付けないとね。なかなか可愛い目をしているけど、私を心配する振りをするなんて、強かな坊やだから。リッキーの事は平気よ。彼女の婚約者は、うちの運転手なの。自分はともかく、将来の夫も職無しにはしたくはないでしょうから。勿論、これ以上話させないようにするわ」スワンスン夫人は、後ろに立っていた執事に目をやった。執事は頷いた。「貴男のお友達にも、早くこの事をお話しないとね」「そうしたいが、シェインは、この間紹介してくれた不動産会社の社長と会ってる所なんだ」ダウンタウンからかなり離れているものの、18名の殺し屋達を住まわせる広い間取りの家と庭があった。庭は海に面しており、周囲から孤立した場所にあり、格好の場所であった。問題なのは前の住民が破産してしまい、猟銃自殺をした場所でもあったため、長年買い手が付かなかった位だ。この物件を紹介した不動産会社の社長は、スワンスン夫人の会社で長年働いた後に、10年前に独立した。インターネットを駆使した戦略で、業績を順調に伸ばしている。夫人の紹介ということで、社長が直々に物件をシェインに紹介していた。『運転手兼ボディガードは元プロレスラーで、隣にいる秘書は元プロバスケの選手だ。昔、テレビで見たな。この女社長は見たところ50代前半だ。昔の上司に劣らず、なかなかの情熱家だな。昔の上司と違うのは、ガチムチがお好みか』シェインは冷笑した。「どうでしょうか?」低音量の声で説明を終えた社長が、シェインに問うた。「結構だ。ここにする。メールでやり取りした通り、キャッシュで一括払いだ」シェインはアタッシュケースを社長に見せた。長身の秘書は険しい表情を見せ、社長のほうを見ると、小声で忠告した。「現金で一括払い?もしかして、犯罪組織の人間では?」「大丈夫。信頼出来る方からの紹介だから。この方、カードが嫌いなだけなのよ」社長は、秘書の心配を払拭した。しかし、社長もスワンスン夫人に騙されていた。この場にいる者は、シェインが実業家だと信じ込み、FBIと警察から追われている秘密結社の人間だとは露ほども思わなかった。帰宅途中、コリンは車窓からFBIの車列が反対車線を走っているのを見た。「みんな、空港のほうへ向かっているね」デイビットも何かを察していた。「変だ。俺のiPhoneには、誰からも連絡が来ていないよ」「俺のスマートフォンにも着信は無い。きっと、FBIが極秘に動いてるのだろう。警察にも内緒にしているぞ。仮に、警察が知っていたなら、マックス刑事からの連絡が必ずあるからな」「何かが起きているんだ。俺達も空港へ行こうよ」「敷地内には入れないだろうが、近づける所まで行くか」フォレスターはUターンをして、車列の後を追った。続き
前回、目次、登場人物、あらすじ「イサオの兄貴が、日本の首相と会っていた」エドワードが、英国から呼び寄せた若い殺し屋がもたらした日本の情報は、隠れ家に潜伏している殺し屋達に動揺をもたらした。昨日、イサオの兄・隼が、勤務している大学の学長が主催するホームパーティにおいて総理大臣と一緒に撮った画像を、弟に送った。その画像は、サラのiPhoneに転送され、彼女が勤めているモデルエージェント会社へ出社した今日、同僚達に見せたのだ。その中には、エドワードが英国から呼び寄せた2人の若手の殺し屋達が含まれていた。若い殺し屋達の存在は、口入れ屋からFBIに伝えられていた。だが、口入れ屋はファーストネームしか知らず、FBIが米国に入国した英国人を調べたものの、別人のパスポートで入国した為、FBIは該当する人物を見付ける事が出来ないでいる。その為、彼等は他の殺し屋より自由に街を歩け、サラの働くモデル事務所に新人モデルとして潜入しても、会社の人間やサラを警護している警官達に怪しいと勘づかれる事は無かった。彼等は、その画像を見て愕然とし、急いでその情報を隠れ家に潜伏している他の殺し屋達に伝えた。イサオの兄・隼が大学に再就職した事、そこの大学・学長が日本の首相の従兄であり、先日学長主催のホームパーティが開かれ、隼が首相に会った事実は、殺し屋達に動揺が広がった。「サラが、俺達にニンジャの息子と総理が写っている画像を見せてくれたんだ。俺達、とても驚いて、慌てて戻ってきたんだ」「ホームパーティじゃ、かなり内輪の席だ。ニンジャの息子は、総理に弟の事で、何か頼んだんじゃねえか」「総理は保守派で、日本版CIAを作るとか発言したとか新聞に載っていたな。もしかして、それにニンジャの息子が絡んでいるんじゃないか」「その組織はまだ出来ていないから良いが、首相の圧力で、FBIの他に、CIAやNSAも、俺達の件に絡んでくるかもよ」「それじゃ、この人数じゃ足りねえぜ」「それよりも今貰っている金だけじゃ」エドワードは彼等の動揺を見て、急いで別の家で潜伏しているシェインに連絡を入れた。シェインは、ミーシャ、山本、そしてルドルフと供にやって来た。「まあまあ、落ち着け。画像だけじゃ、真相は分からないじゃ無いじゃないか」ルドルフは、殺し屋達を宥めようと試みた。しかし、動揺は収まらなかった。「恐れるんじゃねえ」シェインがピシャリと言った。『恐れるな』シェインのこの言葉を聞き、ルドルフは自分の伯父であり秘密結社の創立者・ウィルバーを思い出させた。『知らない事は、恐れを招く。恐れは自分の視野を歪め、あらゆる困難に立ち向かえなくさせる。恐れを乗り越える為に、先ず知る事が大切なのだ。知るのだ。ルドルフ』ルドルフの頭に、生前伯父が言った事がこだました。「総理は保守派だとか、日本版CIAを作るとかニュースで伝えているが、よく見ろ。財政改革法案を国会で通すか通さないかで、日本の政界は揉めている。つまり、自分が率いる与党を束ねられない、70過ぎのジジイじゃねえか。そんな奴が、立派なインテリジェンスの組織が作れるか。ニンジャだって、総理よりも年下だが、ジジイだ。考えて見ろ。俺達は若く、その上、銃器のプロだ。引退した警官とはいえ、一度も街中で銃をぶっ放した事がねえ年寄りのニンジャに、負ける訳がないだろ」「シェインの言う通りだ。ニンジャを見張っていた同志によれば、ニンジャはその息子と喧嘩した事があって、息子に負けているんだ」ルドルフが付け加えた。「ニンジャは、お前達、警察の秘密結社が病院等で襲撃した時、見事に撃退したというじゃねえか。息子は、そいつよりも強いと言うことだろ。そいつが、日本のトップと会ったんだぞ。何か起きるんじゃねえのか」シェインの言葉に、一旦は殺し屋達が静まりかえったが、ルドルフの言葉で、再び騒ぎが起きてしまった。ルドルフは後悔したが、後の祭りであった。『こいつ、リーダーには向いていない』その様子を、ミーシャは心の中で冷ややかに見詰めていた。「今回の仕事にあたって、俺はニンジャの関連本を何冊が読んだ。どの本にも共通して書かれているのが、ニンジャは私を抑え、公に尽くす事だ。仮に、ニンジャの息子が国家に関わるとするならば、弟の事は頼まないだろうな。だろ?」エドワードは殺し屋を諭すように言うと、山本に振り向いた。「まあ~、俺は日本人だけど、ニンジャについては本でしか読んだ事がないから、詳しい事は分からないよ。でも、ニンジャってサムライと似ていて、自我、つまり自分の感情を捨てて、大義の為に動くのが美徳とされているからね。それを証明するのが、忍”という漢字の意味だ。刃が心の上にあるのは、心が揺れないようにしている為だ。でもさ、そのニンジャの息子がここへ来た理由を思い出しなよ」「弟の見舞いだろ」「それもそうだけど、他にもあったよね。警視庁のエリート官僚だったけど、派閥争いに負けた上に、親父のニンジャの映像が世界に流出して、辞める羽目になるわ、奥さんが怒って実家に帰ちゃうわで、踏んだり蹴ったりになって、逃げるように米国へ来たことだよ」「それもあったな。で、何が言いたい」「ニンジャの息子とあろう者が、自分の職場の派閥争いに負けたんだよ。それに、奥さんに振り回されたりしてさ。こっちに来たら来たらで、親父と喧嘩しちゃうしね。弱くて、感情のコントロールが出来ない男に、一体何が出来るというんだと、言いたいんだよ」「山本の言う通りだ。俺、何を恐れていたんだ」ロンドンから来た殺し屋の一人が、山本の言葉にはたと気付かされた。『山本は、なかなか鋭いところを突いている。皆を説得させる力が、ルドルフよりありそうだ』ミーシャは思った。シェインが更に、殺し屋達を静める発言をした。「安心しろ。FBIと警察の内通者からは、ニンジャの息子の話は一切出てこない。第一、ニンジャの息子が総理と通じているのなら、一緒に写っている画像を堂々と弟に送ったりしねえだろ。忍者の基本は、文字の如く、忍んで動くのが信条だからな。この画像は、唯の記念だ。慌てるな」他の殺し屋達も、シェインと山本の言葉に、徐々に落ち着きを取り戻していた。『画像一枚で、こんなに殺し屋達が動揺するとは思いもしなかった。これ以上、この家に閉じ籠もっている訳にはいかねえ。一刻も早く、別の場所へ移動しなけいといけないぞ』シェインは、内心苛立った。その苛立ちを隠して、リーダーであるルドルフに、一応お伺いを立てた。「ルドルフ、急いでスワンスン夫人に良い物件を紹介して貰う様に、ミーシャを通じで頼んだ方が良いな」「殺し屋達の注意を逸らすには、引っ越しが一番だ。そうしよう」ルドルフは、そう答えたものの、殺し屋達の動揺を静めたシェインの姿を見て、ようやくルドルフは自分がリーダーの座を追われるのではないかと心配になってきた。その後、ミーシャは使命を帯びて、スワンスン夫人のもとへ向かった。======口入れ屋はブライアンとの面会の後、ベンジャミン捜査官にニックに関する情報を伝えた。「どうして、もっと早く言わなかったのか」ベンジャミン捜査官の口調が、きつくなった。「申し訳ない。いやあ、どうしても確証が持てなくてな。言いずらかったんだ」口入れ屋は、済まなそうな顔付きをした。夜であったが、その日の内に、ニックの情報はFBIと警察に広まり、捜査関係者に衝撃が走った。翌朝になってから、口入れ屋が匿われている施設で、改めてFBIは聞き取りを再開する為、彼の担当医師のアドバイスを求めた。「口入れ屋の体調は、薬物療法で血圧が安定しつつあり、明日の聴取には短時間なら応じられるでしょう。この間、血液検査で、かなり体脂肪があると判明したので、彼にダイエットを勧めて、彼もそれに応えてくれたのも良かったのでしょう」担当医師の忠告に従った口入れ屋は、毎日飲んでいた炭酸飲料を控えるようになり、徐々に体調も安定してきたのだ。口入れ屋は「少しずつ体重が落ちたお陰だ」と、思っていた。シェインによって密かに血圧を高くする薬が混入された炭酸飲料を、飲むのを控えたのが真相であったが、誰も知る由が無かった。翌日から、聴取が再び始まり、口入れ屋はシェインから聞いたというニックに関する話をした。「大人しく私達の捜査に協力してきたのに、何で今頃になって大事な話をするんでしょう。折角の信頼関係が台無しですよ」他の捜査官も不快感を露わにした。「妹の手術が終わるまで、切り札を取って置いたのだ。裏社会で生き抜いていた男だ。たやすく全部を自供しない。我々は、ニックの遺体が遺棄された場所を見付け出すだけだ。捜査員の半分をそっちに回す」主任のフォルスト捜査官は、冷静に事態を見ていた。「凄い。隼さん、総理とお目に掛かったんだ。ホッとしたよ。良い再就職先が見付かったね」イサオの病室を訪れていたコリンは、サラのiPhoneの画面を見ていた。画面には、隼と日本の首相が写っていた。「兄貴が大学の客員教授に再就職したと知って、僕も安心したよ。学長のホームパーティで、お義姉さんと姪の梅子ちゃんも総理と会って、上機嫌だったとメールで書いてあった。これをご覧よ」イサオは笑い、自分のスマートフォンを操作して、兄から送られてきた妻子が満面の笑みで総理と写っている画像も、コリンに見せた。「綺麗な母娘だね」久しぶりの明るい話題が、病室を包んだ。「僕の事があった上に、警視庁を辞職して、義姉さん達が家を出て行ってしまって、日本を発つ時の兄貴はとても虚無感があったそうだよ。でも、こっちへ来て、久しぶりの兄弟再会を楽しみ、コリン達とも会って、心穏やかな日々を過ごした。カナダ・モントリオールに移ってからは、疎遠だった桃子ちゃんと絆を取り戻し、更にそこで再就職先を見付け、義姉さんは戻ってくれた。とても実りのあった旅だとメールに書いてあったよ。『虚しく往き満ちて帰る』という日本の高僧の言葉を思い出すね」「イサオ、どうして、隼さんはモントリオールで再就職先を見付けたの?」コリンが疑問に思った。「桃子ちゃんのいる大学院は、兄貴が再就職した大学の姉妹校なんだ。兄貴が忍術を院の学生達に披露した時、偶然にも大学の学長が出張していて、兄貴の講演を見たそうだ。その場で、スカウトしたそうだよ」猛が難しい顔をしていた。「どうした親父?血糖値が悪くなったのか?」糖尿病を患っている父を、看護師であるイサオは心配した。「いや、そっちは良い。昨夜から、どうも胸騒ぎがするのだ」コリンは猛の言葉を聞いて、ドキンとした。『ニックの事かな』ニックの情報は、病室でイサオと面と向かって話したかったのだが、警備の警官に聞かれてしまう可能性が高く、FBIのフォルスト捜査官の耳にその事が入ったら、コリン達は再び捜査本部からはじき出されてしまうのは目に見えていた。そこで、コリンはニックの件で、昨夜イサオに日本語のメッセージをこっそりと送ったのだ。イサオがショックを受けるかと、コリンは心配した。しかし、意外な返事が返ってきた。『分かった。ニックの遺体が見付かるまでは、サラと親父には話さないでおこう。二人とも、事件が長引いて疲れが出ているからね』イサオは冷静に事態を受け入れ、家族を気遣う余裕まで見せていた。『イサオ、物凄い家族思いだな』コリンは胸が熱くなった。「胸騒ぎ?」イサオの言葉で、コリンは現実に戻された。「隼の件だ。再就職先の学長は、総理の従兄で、総理は、そこの大学の名誉理事長でもある。昨年だったか、週刊誌に総理のアドバイザーの一人とか書かれた過去もある位、あの二人は親密だ」「従兄弟同士だから、当然じゃないか。華麗なる一族だよね。総理が、日本版CIAを作るとか言って、日本で騒がれたんだろ。BSニュースで見たよ。いくら、そういった組織を作るにしても、我が家に伝わる忍術はもう役に立たないよ。スパイの世界って、昔の様にエージェントが世界を飛び回る時代じゃなく、今はコンピューターを駆使して、情報を集める世の中だよ。いくら兄貴が、我が家の忍術に長けているとは言え、サイバー空間に対応出来ないよ」「コンピューターを使うのは人だ。人を教える事は出来る。例えば、人としての心得とか」「幾つかの忍術書は初めに、天の理や哲学的な事を書いてあるけどね。人を育てるには良いけど、それで、サイバーテロとかを退治出来ないよ。現実的に、コンピューターの世界に通じる人材を育てるのが先だよ」「言われてみれば、尤もだ。もっと現実を見ないといけないな」「親父、そんなに深く考えなくても大丈夫だよ。ご先祖様の教えがあるだろ」「そうなのだが、今も胸騒ぎが収まらないのだ」「ご先祖様の教えって?」コリンがイサオに尋ねた。「『恐れてはいけない』、『侮ってはいけない』、『考え過ぎてはいけない』という忍者の3つの心構えが、我が家でも代々伝えられているんだ。僕は、その中の『考え過ぎてはいけない』事を言っているんだ」「胸騒ぎの原因は隼の事かと思ったが、勲と話している内に、秘密結社の事だと感じるようになった」「大丈夫だよ。この前だって、胸騒ぎが起きたけど、何も起きなかっただろ」「そうだと良いのだが。これは私の推理だが、秘密結社はその日に私達を襲う予定だったが、何かハプニングがあって、中止したかもしれない」「そういわれると、否定は出来ないね」イサオは困惑した。「この前の時は、秘密結社が潜伏していた高級住宅地で、水道管が破裂して大騒ぎになった日と重なる。連中を捕まえないと、真相は分からない。だが、猛さんの予感が当たっているかも知れないな」デイビットが思い返した。サラも続けて言った。「地元ニュースで、大きく取り上げていたわね。パトカーや消防車が、沢山現場に来ていた映像を見たわ。あれだけ大騒ぎになれば、近くで暮らしていた秘密結社の連中は動けなかった筈よ」======「ジジイといっても、流石はニンジャだ。遠く離れている俺達の気配を、感じるのか」シェインは、病院を見張っていた警察官から、イサオの病室での情報を得ていた。その時、外から車のブレーキ音が聞こえた。ミーシャが答えを携え、隠れ家に戻って来たのだ。「スワンスン夫人が、FBIに会社が極秘に捜査されているから、これ以上協力するのは難しいと言ってきた」「拒否されたか」「いや、逆だ。別の不動産会社を教えて貰ったよ。そこの社長は、若い時に夫人の会社で働いて、独立した女性だと。夫人が言うには、彼女は、とても野心的で情熱的な人だから、俺達が接触しても問題無いってさ」ミーシャは、会社のメールアドレスが書かれたメモを、シェインに渡した。「金と男に貪欲、という意味だな」シェインはニヤリと笑った。「おい、口入れ屋が何か言ってきたのか?」ミーシャがノートパソコンの画面を見た。「そうだ。ニックが自分で責任を取った事を、FBIにゲロしたんだ」「何だって?!死体を埋めた場所とか、知っていたのか?」「そこまでは知らん。俺がうっかり、奴にニックの事を言ってしまったんだ。迂闊だった。まあ、そのお陰で、FBIは捜査官の半数を、ニックの捜査に回す事になり、俺達への捜索は当面鈍る。俺達を裏切って死んだニックが、逆に俺達を助けるんだ。これぞ、“塞翁が馬”だな」フッと笑うシェインの顔に、一瞬影が差したのを、ミーシャは見逃さなかった。======その日の夕方である。警察署内で行われていた捜査会議が終わり、皆が帰った後でも、捜査本部で主任のフォルストFBI捜査官が、殺人課の課長と打ち合わせをしていた。「主任!彼の情報が手に入りました。海外に逃亡していました」若手のFBI捜査官が、飛び込んできた。その情報を聞いた課長は、興奮して立ち上がった。逆に、部下から詳細を聞いたフォルスト捜査官は、冷静に指示を出した。「良くやった。早速、地元警察に連絡を入れ、協力体制を整え、奴の身柄確保へ向かうのだ。課長、この件は一切他言無用でお願いします。何しろ、相手が相手です。迂闊に警察内でこの件が広まると、瞬時に奴の所にも伝わります」殺人課の課長に、口止めも忘れなかった。課長は唯肯くしかなかった。「君もだ。相方にもそう伝えるのだ。秘密結社は、至る所にスパイを忍ばせている。気を付けて、事に当たるのだ」部下も「はい」と言って大きく頷くと、駆けるように捜査本部を飛び出した。続き
前回、目次、登場人物、あらすじブライアンが部屋に入ると、口入れ屋がベットに寝ていた。彼がブライアンを見て、上半身を起こした。「無理するな」「平気さ。さっき、医者から注射を打って貰ったから、大分気分が良いんだ。それに今日、妹の手術が無事に成功した事もあるな。医療の進歩は早えよな。経過が良ければ、3日後には退院するそうだ」「明日にでも報告しようと思っていたのだが、耳が早い。流石、裏社会を生き抜く口入れ屋だ」「さっき、妹と電話で話した。声が明るかったよ。ブライアン、お前のお陰だ。心から感謝するぜ。所で、まだ秘密結社の潜伏先を探しているのか?」「ああ。お前から教えて貰った邸宅へ行ったが、奴等を見た目撃者はいたが、何処へ移ったのかは未だ掴めていないのだ。連中に武器を売った商人に会ったが、奴も分からなかった。スワンスン夫人にも会ってみたものの、彼女は奴等の正体すら知らなかった。それに、私達の行動を、FBIが尾行している気配がある」ブライアンは首を振った。「それは残念だ。別ルートで、家を借りているんだろう。裏社会の人間が絡んでいるな」「今、ジュリアンにも頼んで探して貰っている最中だ。一刻も早く見付けなければならない。時間がかかると、FBIが我々の動きを察してしまう」「お前さんに秘密結社の居場所について話たが、その時に言いそびれた事があってな。今、それを打ち明けたい。時間を稼ぐ為に、俺がFBIに爆弾を提供するよ」「爆弾とは何だ?」「ニックの件だ」「お前、奴の行方を知っているのか?」「シェインから聞いた話だ。お前さん達が、ニックがイサオを撃ったのを知る前に、シェイン達はかなり前に真相を既に知っていた。裏を取った訳じゃないから、真偽の程は分からねえけどな」「何と・・・」ブライアンは秘密結社の情報網に、驚きを隠せなかった。「俺はお前さんと同じ頃、ニックがイサオを撃った話を聞いた。それで、慌てて連絡を入れたら、シェインから『心配するな。済んだ話だ』と返ってきた」「済んだ?」「俺が突っ込んで聞くと、シェインは『奴は自分で始末をつけた』とだけ言った」ブライアンは衝撃が走った。「自分で始末・・・。それで、シェインは、その後ニックをどうしたか言っていなかったか?」「それも尋ねた。『バレないようにしたから、気にするな』と言って、別の話題に振られた。どうも、アイツはニックについて触れたくない様子だった。無理もない。警察にいた頃、一緒に組んで仕事をしていたからな」口入れ屋の目に、顔色を失っているブライアンが写った。「おい、大丈夫か?顔色が真っ青だぞ。お前さん、ニックとこの件以外にも関わりがあったのか?」「あった。大分昔だが、奴に借りがあった。それを、私はまだ返していなかったのだ・・・」ブライアンは大きく深呼吸をして、話を続けた。「ニックの話を、FBIに話してくれ。きっと、FBIは大騒ぎになって、捜査も広がり、私達の行動に目を光らせる事も無くなるだろう」「そうするよ」「私はこれで失礼する」ブライアンは椅子からスッと立ち上がったが、何時も見る精悍さが消えていた。顔色が青白いまま、ブライアンは部屋を出ようとした。すると、口入れ屋がブライアンの腕を掴んだ。「この際だから、打ち明ける。お前さん、今の話を聞いて、かなりショックを受けているが、決して女には話すな」「女?何の事だ」ブライアンは、口入れ屋が何の話をしているのか理解出来ないほど、精神的な痛手を被っていた。「実はな、シェインに頼まれて俺は女をお前の元へ送り込んだ。お前さんから捜査情報を聞き出す為だ。これまで3人送ったが、失敗した。この事は、どうしても話せなかった。もし、言ったら、妹への支援を打ち切られるんじゃないかと思って、ずっと迷っていたんだ」ブライアンは口入れ屋の話の内容がようやく分かった。「おい、スパイを送ったのか?!覚えがある。私がこの街へ来た当初、行きつけの高級クラブで、多くの若い女に声をかけられた。その当時は、イサオの意識が戻らなかったので、その気にはならなかった。それは、お前の仕業だったのか」「許してくれ。スパイを送り込めず、困った俺は、シェインに内緒で山本に頼った。奴は、色んな女達と繋がりがあったからだ。過去に、売春クラブを運営する女将のヒモをしていたと言っていた位だ。山本は俺から話を聞いて、昔の女の娘をお前の所に送った。すると、山本から、成功したと報告があった。女が仕掛けた盗聴器を使って、シェインはお前さんの情報を集めている。それに、お前のパソコンをハッキングしているとも、言っていたぞ。女がパソコンをいじくったそうだ。女に関して、シェインは俺のお陰だと勘違いしたままだ」口入れ屋は、既にシェインが女を送ったのは山本だと事実を掴んでいたことを知らなかった。今の話は、ブライアンにとって更なる衝撃の告白であったが、同時に疑問が湧いた。「昔の女の娘?山本は20代半ばと聞いている。もしかしすると、10代か?私には記憶に無い。歳や、容姿等について聞いていないか?」「山本が言うには、歳は同い年だ。名前は、マギー。お前さんがグラマーな女が好きだと、俺が山本に教えたので、きっとそのタイプだ」ブライアンには覚えがあった。ヴィクトリアと出会う数ヶ月前の出来事であった。イサオが意識を取り戻して、ブライアンの精神は高揚していた時に、高級クラブで出会った若い女から誘われ、一夜を共にした事があったのだ。メアリーと名乗っていたが、きっとその女に違いないとブライアンは思った。「迂闊だった。古典的な手に騙されるとは。恐らく、盗聴器はベットの下だ。直ぐに調べる。打ち明けてくれて感謝する」「そんな、礼を言われるなんて。お前さんの事を誤解していた。ここまで良くしてくれたのに、ずっと真実を言えなかった事を、改めて謝罪する。そして、コリンに、写真の件では申し訳ないことをしたと伝えて欲しい。今は後悔していると」「了解した。伝える」ブライアンは施設を出ると、外は雨足は強くなっていた。体を雨に濡らしたまま、ベンツS HYBRIDに乗り込んだ。ブライアンは定宿の高級ホテルの部屋に戻るなり、急いでベットの下を覗いた。何も見当たらなかった。『どこに盗聴器をつけた。これも、ジョンに頼まなければなるまい。悔しいが、秘密結社にしてやられた』ブライアンは、ジョンを呼び出し、ジョンも宿泊しているホテルから急いでブライアンの部屋へ向かった。ジョンは到着するなり、自作の器械を使い、盗聴器を探索したが、見付からなかった。ベットの下に限らず、部屋の隅々まで器械をあてて、怪しい電波が出ていないかを調査した。「念の為に、隠しカメラも調べたけど、出てこなかったよ。私の推理だと、山本という男の嘘を、口入れ屋が信じ込んでいるんじゃないか?」「口入れ屋は、シェインは俺の情報を集めていると言っていた。部屋に無いとすると、車の中だ」二人は地下へ降り、駐車場に停めてあったベンツS HYBRIDの中を調べたが、発見出来なかった。「一体どこだ?」再び部屋に戻った二人は、ノートパソコンを調べたが、ブライアンのいない隙に使われた形跡は見られなかった。「毎日パスワードを変えているので、勝手にいじられることはない。外部からハッキングされた可能性はあるから、調べてみよう」ブライアンは所属している警備会社のIT部門に連絡し、外部からノートパソコンが侵入されて、データを盗まれていないか調べて欲しいと頼んだ。担当者から折り返し連絡が入り、ブライアンのノートパソコンにハッキングされた形跡がないとの返事があった。「今、付き合っているというヴィクトリアについて調べないのか?」ジョンに指摘され、ブライアンは一瞬腹が立ったが、冷静に考えると、その通りだと思った。ヴィクトリアと出会ったのは、コリンが退院した日だったのを思い出した。『唯の偶然だ』ブライアンは、カードケースからヴィクトリアの名刺を取り出した。ノートパソコンで、彼女が勤務しているという大手化粧品会社のホームページを検索し、閲覧したが、怪しいところは見当たらなかった。「この会社は老舗だ。有名なデパートで販売されているし、販売員が顧客の所へ訪問して、商品の紹介をするシステムもあるのだ」ブライアンと一緒に、ホームページを見ているジョンが説明をした。「よく知ってるな。お前のカミさんが使っているのか?」「私の妻は、この高級なものは買えないよ。うちの警備会社の社長が使っている。彼女は多忙だから、販売員が朝早くに会社へ商品を届けに来ていた。私は、2回程遭遇した」「私達の社長が顧客だったのか。世間は広いようで狭い」念の為に、名刺に書かれている電話番号に掛けてみることにした。少し手が震えた。「こちらは、大手化粧品会社・案内係でございます」英国訛りの女性の声がブライアンの耳に入った。ブライアンは単刀直入に、ヴィクトリアが在籍しているかと尋ねた。「はい。おりますが、今は営業に出ております。彼女に何かご用件がおありでしょうか?」「男性用化粧品の件で、問い合わせをしたかっただけだ」「彼女に、貴男のメッセージをお伝え致しましょうか」「いや、いい。後で、また連絡する」ブライアンは名も名乗らずに、iPhoneを切った。安堵し、全身の力が抜け、椅子に座り込んだ。その様子を見たジョンが言った。「君のその姿を見るのは初めてだ。君も人並みの感情を持っているのだね」「なんだその言い草は」ブライアンは不愉快そうに、ジョンを見た。「私は君とは長い付き合いになるけど、君は何時も感情をコントロールしていた。私の知っている範囲だが、数多くの女性達が君にのぼせることがあっても、君はどこか醒めていたし、恋愛をゲームとして捉えていた。今度の彼女は特別なのだね。私としては今回の君の態度は歓迎だよ。人生の伴侶を得て、添い遂げる大切さをようやく知ったようだね。イサオさんやコリンの影響かね」「何を言っている。私は、そこまで考えない。恋愛に関しては、今だけを大事にする男だ」表面上は冷静さを装ったブライアンだが、両耳は照れで真っ赤になっていた。ジョンはその事を指摘したかったが、ブライアンは頑なに否定して怒るだろうと察し、黙ることにした。「何か言いたそうだな」ブライアンは、何か言いたげな表情をしているジョンを睨んだ。「ニックの事、コリンとデイビットに電話で伝えないのか?」ジョンは話を逸らした。「いや、ニックの件は直接二人に会って話す」ブライアンは、コリンにニックの事を伝える為にアパートへ向かった。ベンツS HYBRIDに乗り、外へ出ると、既に暗く、大雨は霧雨に変わっていた。ヘッドライトをハイライトにして、道路を走行した。それでも、先が思うように見えなかった。「まるで、私の気持ちを表しているようだな」ブライアンは、一人事を言った。とても気が重かった。「やあ、ブライアン。待っていたよ」事前に連絡を受けていたコリンが、ブライアンを微笑んで迎えた。「何だ。直接会って話したい事とは?先ずは、ここへ座れ。コーヒーで良いか?確か、ブラックだったよな?」デイビットは、ブライアンをリビングに座らせた。「ああ、そうだ。有難う」ブライアンは緊張した表情で、席に着き、デイビットがいれたコーヒーを口にした。デイビットが、ダウンタウンの珈琲専門店で仕入れたキリマンジャロは香ばしく、ブライアンの体を温めた。そして、ブライアンは口入れ屋から、『ニックは自分で始末をつけた』との話を得たことを打ち明けた。コリンは、一瞬頭が真っ白になった。「ロボは・・・?」絞り出すように、コリンがニックの愛犬・ロボについて尋ねた。「残念ながら、口入れ屋は、ロボの事は何も知らない」スパイナーだったデイビットは、冷静に受け止めていた。「それで、ニックの遺体は何処に?」「シェインは、そこまで話していないそうだ。アイツらは、ニックがイサオを撃った事実を、我々が知る前に、どうやら掴んだらしいのだ」「野郎は、独自に情報網があるな。もしかして、ニックが犯行現場にいた証拠の防犯カメラを、俺達よりも先に見ていたかも知れんな」「お前の予想が当たれば、何でも屋がシェインと通じているということになる。奴は、防犯カメラの記録を金庫に隠していた。それを、私達より前にシェインに見せていた可能性があるのか。しかし、奴は、ニックに浮気という弱みを握られ、ずっと真実に口を閉ざしていた。内通者ではない。そうすると、浮気を隠していたニックと旦那に腹を立てたジョーニーが、怒りに任せてシェインに防犯カメラの映像を見せたと言うことになるが、それの可能性は低い。何故なら、彼女は金庫の暗証番号を知らなかった事と、防犯カメラの映像には何か映っているのか分からなかった事だ」「何でも屋の店主に、直接聞いてみるか。ジュリアンによれば、離婚が成立して、銃器を扱う店に転職したとか」「その通りだ。ジョーニーは、離婚の傷を癒やす為、スペイン・フランスの聖地巡礼の旅に出ている。二人の聞き取りは、ジュリアンに任せよう。彼は、二人と長年の友人だ」「ジュリアンには、真実を話すんでしょ。小学校からの親友だもの。かなりショックを受けるよ」「これから話す。奴も裏社会で生きている情報屋の親玉だ。多少の覚悟は、心の何処かに秘めている筈だ。話を聞いて、ショックは受けるだろうが、捜査には支障をきたさない。これから、私は直接にジュリアンと会って、話してくる。その前に、コリンにもう一つ話さなければならない事がある」「何?」「口入れ屋が、コリンの写真の事について、謝っていた」「あいつには、特に怒りは無いよ。あの写真を持ってきたのは、山本だからね」話を終えて席を立つブライアンに、コリンは一つの頼み事をした。「ブライアン、ジュリアンにお願いして欲しい事があるんだ.」「ロボの行方か?分かった。それも頼んでおく」「俺達も秘密結社の居場所が分かったら、シェインを締め上げて吐かせる」『コリン、自分の忌まわしい過去を知っているシェインの口を、永久に閉ざす事が先なのに。ロボの事を心配しているのか。自分よりも』デイビットは胸が潰れた。======同じ時刻、秘密結社と殺し屋達が潜伏している家では、騒ぎが起きていた。「イサオの兄・隼が、日本の首相と通じている」と。続き
前回、目次、登場人物、あらすじ夜に入り、天候は激しい風雨になった。この時、コリンとデイビットは、フォレスターに乗って、アパートへ帰る途中であった。「日が暮れたと同時に、捜査を終えて良かったね」「雨が降ると今朝の天気予報では言っていたが、思ったより激しいな」運転しているデイビットは、ワイパーのパワーを強に変えた。「これから、お天気はどうなるんだろ」コリンがラジオのスイッチを入れた。ステレオから、地元FM局のDJの知的で渋い声が聞こえてきた。流行の音楽が流れた後、地元のニュースが報じられ、続いて天気予報になった。今日から一週間は、発達した低気圧が停滞する為、雨の日が続くとの予報であった。「まだ続くのかぁ。でも、この雨で、夏の暑さが少しでも和らぐと良いけどね。俺達は、雨にも負けず、秘密結社の居所を探し続けるぞ」今日の捜査で、数々な証拠や証言を掴んだコリンは、興奮が冷めやらなかった。======シェイン率いる秘密結社は、市郊外の高級住宅街にあるスワンスン夫人の邸宅を出た後、ダウンタウン近くの民家を2軒借り、殺し屋達を分けて住まわせていた。2軒の内1軒を、ベテランの殺し屋・エドワードに任せ、シェインとミーシャはもう一つの家に住み、次の行動について計画を練っていた。彼等の家に、ルドルフがやって来て、シェインと話し合いを持つことになった。「お前達が前に借りていた、スワンスン夫人の邸宅にFBIのガサ入れが入ったぞ。それに、スワンスン夫人が経営する会社へ捜査官が訪問して、聴取をした。ここがバレるのは時間の問題だぞ。急いで、移動しようぜ」焦りを見せるルドルフに、シェインは落ち着いて答えた。「その通りだが、生憎、殺し屋達18名を住まわせる位の広い家を見付けるのに、時間が掛かるんだ」「俺に内緒で、もう探しているのか?」秘密結社のリーダーだと自負しているルドルフは、勝手に動いているシェインに怒りを露わにした。大雨は激しい風に煽られ、窓ガラスをビシバシと音を立ててぶつけた。まるで、ルドルフの心の内を現しているかのようだった。「いや、まだ俺の頭の中で考えているだけだ。考えて見ろよ。以前より、狭い家に住んでいて、その上、ダウンタウンの近くにあるから、殺し屋達は息を潜めて暮らしているんだ。窮屈だと、不満を漏らしている者が出始めている。加えて、隣の家とは近いから、隣のガキ共が俺達の事に興味を持ち始めた。これらの困った状況を、お前に報告したかったが、口入れ屋の馬鹿が、お前がリーダーだと吐いただろ?あれから、FBIと警察によるお前への監視がきつくなり、簡単に連絡が出来なかったんだ」副リーダーのシェインは、ルドルフに弁明した。「口入れ屋は、お前が俺をないがしろにして、現場を仕切っているとも自供しているぞ」「それは、FBIの撹乱工作だ。口入れ屋は、秘密結社について殆ど知らないんだぞ。FBIは奴の自供をねじ曲げて、お前と俺を仲違いさせ、秘密結社の力を弱らせようとの魂胆だ。奴等の手に乗るな。俺は、お前をリーダーと思っている。今回の事は、本当にFBIの監視が厳しかったから、報告が遅れたんだ」シェインの心の内では、ルドルフの事をリーダーとはもう見なしていなかった。秘密結社の複数の口座を一手に握っているので、ブライアンを倒すまでは、一応リーダーとして立てるつもりでいた。殺し屋達の内、2名が抜けたので、腕っ節の強いルドルフを今、切り捨てるわけにはいかない裏事情もあった。残された殺し屋達には、抜けた2名は、『ニンジャに恐れをなして逃げた』と嘘を吹き込んでいるものの、家から出られない現状が続けば、新たに抜ける殺し屋が出てくる可能性もあり、シェインとしては人材の流出をこれ以上出す訳にはいかなかった。「お前の考えは尤もだ。俺も四六時中、FBI共の視線を感じていた。口入れ屋が逮捕されてから、余計に感じる。お陰で、俺はパトロール業務を外され、警察署内で、事務仕事ばかりさせられている。ここに来る時でも、FBI捜査官共の監視の裏を掻くようにして、住んでいるコンドミニアムの屋上から屋根伝いで外出する羽目になった。念には念を入れ、移動中は何度も後ろを確認し、わざわざ遠回りしなければならなくなったからな」ルドルフは苦虫を噛み潰したような表情を見せ、シェインの言い分を理解を示した。素直に仲間を信じてしまうのが、ルドルフの美点でもあり、欠点でもあった。「他にも心配事があるぞ。スワンスン夫人が、インフルエンザに罹ったと聞いた。なので、事情聴取を受けられず、代わりに顧問弁護士と夫人の秘書が対応したと。彼女、大丈夫か?高齢だから、重篤な状態にならなければ良いのだがな」「平気だ。今頃は、ミーシャと特別なストレッチをしているよ」シェインは腕時計で、時間を確認した。「えっ?!どういうことだ?」ルドルフは事情が飲み込めなかった。「仮病だ。スワンスン夫人は医師に金を渡して、偽りの診断を下させた。顧問弁護士と秘書は、それをそっくりそのままFBIに伝えただけだ。まあ、アイツらは、何も知らないがな。聴取しに来たFBI捜査官に対しても、夫人に言われた事を伝えただけだ。FBIは、まんまと騙されたって訳だ」ルドルフは目を剥いた。「おいっ!夫人に、俺達の事を話したのか?!部外者に話すなんて!もし、FBIに密告されたらどうするんだ!!」シェインは、山本から夫人の過去を聞いて、彼女の気持ちを利用しようと決め、邸宅を借りて間もなく、ミーシャを通じて、夫人に秘密結社の事を打ち明けていた。夫人はミーシャの胸に刻まれた神秘的なタトゥーを見た瞬間、裏社会の人間だと察していたが、警察内の秘密結社と組んでいる事実を聞かされ、驚いた。それでも、『FBIに恥をかかす』というミーシャの言葉に、夫人は秘密結社の力になろうと決めた。「誓って、そんな事態は起きない。お前も知っているだろ?夫人は、父親を苦しめたFBIを心底憎んでいる。だから、FBIと対立している俺達を支援してくれているんだ。今日も、危険を顧みず、食料と水の差し入れをしてくれた。夫人は言わば、協力者だ。お前のガールフレンドのマリアンヌと同じだよ。所で、彼女元気か?」「元気だ。よくやってくれる。ロボの世話もだ」ニックの遺体を処理してから、ロボをルドルフは市郊外に借りているアパートへ移した。FBIの監視が薄くなっているマリアンヌは、隠れて毎日そのアパートへ行き、ロボの面倒を見ていた。「ブライアンの件が片付いたら、秘密結社の規約から女人禁制を消し、マリアンヌを正式な同志として迎える。良いな」「勿論だ」シェインは同意した。ルドルフがシェインと打ち合わせを終え、家を出る時、玄関で濡れた体をタオルで拭いている山本が立っていた。「話し合いは終わったのか。俺は、もう一つの隠れ家に、差し入れの食料と水を届けに行っていたんだ」ルドルフの背後で、シェインがこっそりと顔を出し、山本と目を遭わせると、顎をクイッと上げた。山本はシェインの意図を理解した。「凄い風雨だから、送っていこうか?」「家の前には、FBIが見張っているから、途中まで頼む」シェインは、静かに部屋に戻ると、山本と一緒に家を出るルドルフを、窓を叩き付ける雨の隙間から見た。『女性を同志に加える事には、賛成だ。しかし、マリアンヌはこの件が済んだら、ルドルフと一緒に退場して貰う。可哀想だが、やむを得まい』======翌日になり、雨は一旦止んだが、空はまだ曇り空であった。朝の気温も、平均30度以上になる夏のマイアミにしてはかなり低く、20度を切っていた。再び、スワンスン夫人の邸宅で、FBIの捜査が始まったが、秘密結社の新しい居所を示す証拠を見付けることが出来なかった。高級住宅街の住民に尋問を開始した。この住宅街の住民の多くは、初めはFBIや警察に対して警戒心を抱いていた。その反面、隣の豪邸に住むバーガーと、住宅街のまとめ役ベンガーは、昨晩自分達を介抱してくれたコリンに対して好印象を持ち、そのお陰で、二人は積極的にFBIと警察の尋問に応じた。二人の行動を見た住民達は、次第にFBIと警察に協力的な姿勢を示すようになった。秘密結社の連中を目撃した住民が出てきたものの、交流をしていた者はいなかった。隣の豪邸の執事・ダリルにしても、山本と短い会話を交わす程度だった。フォルスト捜査官は、庭で部下の報告を受けた。「山本は、ダリルにシューティングゲームの愛好家達が集まっていると言っていたそうです。ダリルは、庭で連中が散歩したり、銃を構えているのを目撃しています。彼は疑問に思い、山本に問うたところ、『サバイバルゲームも嗜んでいる』と返答があったとの事です」「ダリルはそれをすっかり信じた訳か」「その通りです。彼は、連中が外で銃を撃ったところを目撃していませんでした。しかし、ヨットを航行していたある住民が、連中がプライベートビーチで、サバイバルゲーム興じていた所を見たと証言しています。住民もゲームだと思い込んでいた様で、特に驚かなかったそうです」捜査官が尋問で得たものを、主任のフォルスト捜査官に報告した。「銃を撃っている状況にも関わらずか?」「海からだと、実弾の発射音は、波の音に消されてしまいます。それに、ここはセレブの集まる街です。私が聞いたところでは、近所の住民達が本格的な装備をして、自宅の庭でサバイバルゲームに興じている事がたまにありますので、恐らくそれと同じに見えてしまったのでしょう」「成る程。他には?」「ゲートの監視台に詰めている警備員によれば、連中は週末になると外出し、日が暮れる前には戻っていたそうです。しかし、ここを退去する数週間前から、12時まで外出していたそうです」「飴と鞭で、殺し屋達を束ねていた訳か。連中の行き先は?」「歓楽街で遊んでいました。クラブやストリップパー等で、彼等の目撃証言がありました。ですが、シェインとミーシャの目撃証言は、得る事が出来ませんでした。」「あの二人は、殺し屋を遊ばしておく間も、自分達はずっと爪を研いでいるのか」フォルスト捜査官は振り向いて、邸宅を見た。一方、ブライアン達は、秘密結社に武器を撃った裏社会の人物の行方を追っていた。「足の付かないSIG SG553は、口入れ屋の供述通り、隣のジョージア州の武器商人から購入していた事が判明していますが、他にもあたってみましょう」数日前から、ジュリアンはフロリダ州を出て、近隣の州の裏社会を調べていた。昨日、ブライアンから情報を貰い、調査した所、シカゴに拠点を置く銃の密売人が、2週間前に大量のSIG SG553用の弾薬と改造されたSIG SAUER P226を、シェインに売った事実を掴んだ。そして、今日の午後に、その武器商人と面会することが出来た。「シェインの名前で、注文が入ったとの事です。しかし、引き渡しの現場には、仲間が行くと書いてあり、実際、山本とよく似た東洋人が現れたそうです」「シカゴは、秘密結社の支部があった所だ。きっと、シェインはそのルートで、密売人とよしみを通じたのであろう」「シカゴの武器商人は、他にも裏社会の人間の為に、多種の物品調達を行っています。彼が私に打ち明けてくれたのは、シェインの依頼で、迷彩服や、大手運送会社の制服、幾つかのカー用品も揃えたそうです」「幾つかのカー用品?すると、大手運送会社のロゴのシールや、偽造ナンバープレートも含まれるのか」「お察しの通りです。奴らは、周到な準備をしていたのです」コリンとデイビットは、市内で情報を集めていたものの、相変わらず秘密結社の行方を掴む事が出来なかった。ブライアンと合流したコリンとデイビットは、ジュリアンのダイナーの2階に集まり、打ち合わせをした。「そろそろ、俺達が持っている情報をFBIに出した方が良いな」デイビットが提案をした。「私もそう思っていた。私達の得た情報を提示して、FBIに動いて貰おう。それが誘い水となり、秘密結社の居所が分かるかも知れない。早速、行動に移そう」毎日、警察署内の捜査本部で、朝と夕に捜査会議が開かれる。その機会を利用して、ブライアンは事を起こすことにした。今日の夕方も、主任のフォルスト捜査官率いるFBI、マイアミ警察の殺人課の刑事達、そしてブライアン、デイビット、そしてコリンも捜査会議の為に集まって来た。マックスも参加し、コリン達の前に現れて、情報交換をした。彼は、ニックの愛犬ロボを探している。動物愛護団体等のコネクションをフルに使い、行方を追っているのだが、見付けることが出来ないでいた。「FBIはここマイアミにいると言っているけど、こっそりと近隣の州まで手を広げているんだ。でも、ロボを見たという情報が集まらなんだ」ブライアンは、FBI科学捜査班の女性捜査官に近寄ると、先程武器商人から手に入れた情報を渡した。「秘密結社は、シカゴから武器、迷彩服、運送会社の制服、そしてカー用品も購入していた。捜査官の推理が当たった。連中は運送会社のロゴのシールをバンに貼って、偽装して逃走し、途中でそれを剥がしてナンバープレートも付け替えて、FBIの捜査網から逃れた。今日の所は以上だ」「有難う。ブライアン。私の名前は、ジョーンズ。お見知り置きを」それを近くで見ていた主任のフォルスト捜査官は、眉をピクッと上げた。時間になり、捜査会議が始まった。最初に、FBI科学捜査班のジョーンズ捜査官が、主任に報告した。「高級住宅街に設置された監視カメラを詳しく分析した所、口入れ屋が東部で雇った2人の殺し屋が、3週間前に外出して以降、一度も邸宅に戻っていないことが分かりました。後の事は、ブライアンさんが報告します」「これは、情報屋の親玉・ジュリアンがもたらしてくれた情報だ。彼によれば、3週間前に殺し屋2人を探している探偵がいた。因みに、探偵は、ジュリアンの知り合いで、元刑事だ。探偵は、スコットランドからやって来たというビジネスマンに依頼されて探していた。彼は、対象者が裏社会の男達だと知り、その世界に通じているジュリアンに相談した。彼が、探偵の言葉から、秘密結社の匂いを嗅ぎ取り、依頼人を当たった所、やはり偽名だった。探偵に聞いた所、依頼人の外見は何とエドワードそっくりだった。加えて、彼の運転手は、山本に似ている男だったと証言している」「髪を切って、髭の形を変えただけで、別人に見える」パスポートの写真を加工し、現在の写真を見た捜査官達は、驚きの声をあげた。「そうなのだ。ジュリアンが見せたパスポートの写真とは別人に見える為、探偵は山本だと確証が持てないと証言しているが、私は彼本人と確信している。今、渡した資料に詳しく記されている」資料に目を通したフォルスト捜査官が、発言した。「つまり、2人の殺し屋が、秘密結社から逃げたと言うことか?」「その通りだ。そいつらを大っぴらに探せないので、エドワードがビジネスマンに扮装し、探偵を雇ったのだ。彼の調査によれば、2人がダウンタウンにあるストリップバーで楽しんでいた時、カウボーイハットの男が近付いた。その後、3人はタクシーで街外れに移動し、ニックのトレーラーハウスの近くのダイナーで食事をした後、この街を離れた所まで確認出来ている」「別の犯罪組織に、スカウトされた訳か」「現在、ニュージャージ州アトランティックシティではカジノの利権を巡って、3つの組織が争っている。カウボーイハットの男はいずれかの組織の一員の可能性が高い。、戦力になる男を捜していた。ジュリアンの情報によると、彼の友人の元従業員・トムにも声を掛けていた」フォルスト捜査官は、資料をめくった。「ほう、数十万人が集まる大手銃器メーカー主催の全米射撃大会において、クレー射撃の部で、3位になった実績があるのか」「人を撃った事が無いトムは怖くなって、断った。しかし、2人の殺し屋は、スカウトを受け入れ、アトランティックシティへ行ったのだろう。探偵は、そっちまで行って彼等の足どりを調べたかったが、エドワードは断った。手を広げたら、秘密結社といえども、私への攻撃はかなり延びる。それは、避けたい事態だ。あくまで推測だが、エドワードはシェイン達と協議して、2人の殺し屋の処遇は、後回しにすることに決めたのだ」「恐らく、犯罪組織の大金に釣られて、2人の殺し屋は鞍替えした。これで、秘密結社に雇われた殺し屋は、18名に減った」「探偵の報告を受けてから、そのビジネスマンと運転手の行方は不明だ。奴が探偵に教えた携帯番号は、海外旅行者が使うプリペイド式のものだった。ジュリアンが調べてくれたが、やはり偽造パスポートで契約されたものだった」「連中の行方はまだ掴めないが、何とか今の状況を把握出来そうだ。連中は、雇った殺し屋20名の内、2名が金で他州の犯罪組織に寝返った。今頃は、秘密結社は、残された殺し屋達の引き締めに、金を使う等して、必死な筈だ。ルドルフの様子はどうだ?」交通課の警官として働いているルドルフを監視しているFBI捜査官が立ち上がり、報告した。「特段、勤務態度に変化は見られませんし、金に困っている風にも見受けられません」「口入れ屋の証言では、ルドルフは複数の秘密口座を持っているとの事だが、実際の資金はミーシャが工面しているのだろう。彼は、兄の組織で経理を担当していて、欧州に跨がる複数の秘密口座を管理していた。ルドルフの様子に変化が見られないと言うことは、ミーシャは今もって、潤沢な資金を持っているという事だ。引き続き、ルドルフの監視を続けてくれ」フォルスト捜査官が、部下に指示を次々と出した。「アトランティックシティにも捜査官を派遣し、鞍替えした殺し屋達を追う。これから名を挙げる2名の捜査官が担当だ」その後、いくつかの捜査報告が行われ、ミーティングは終了した。ミーティングが終わり、ジョーンズ捜査官が、捜査本部を立ち去ろうとしたコリンに近づいた。デイビットの視線は険しくなった。それをお構いなしに、彼女はコリンに話しかけた。「貴男、来週あたり、私達に協力してくれない?」コリンは、不思議に思った。「君達があの邸宅を捜査しているのでしょう。どうして?」「スワンスン夫人の本宅に、捜査をしたいのよ。使用人達は否定しているけど、きっとミーシャが出入りしていた筈よ。その証拠を掴みたいの。高級住宅街の住民によれば、彼女、FBIを憎んでいる」「夫人は、今病気でFBIの聴取に応じる事は出来ないけど、弁護士と秘書が代わりに対応してくれているのでしょう。心情はどうあれ、今回の事態を理解してくれていると思うよ」「それは表面上よ。夫人は、私達の聴取には、会社に来てくれと言ったのよ。広大な本宅へ招く事はしなかったわ。私達を自宅へ入れられたくなかったのよ。スポーツウーマンな彼女なら、一週間位で回復するでしょう。FBIは、夫人の回復を待って、本宅への捜査を要請する予定だけど、必ず彼女はあらゆる手を尽くして拒否するわ。そこで、私達は貴男の力が必要になるの。貴男は、外部の人間に警戒している高級住宅街の住民達の心を解きほぐし、数多くの有力な証言を引き出してくれた。その力を借りたいのよ」「ジョーンズ捜査官。止めたまえ。既に、ブライアンがスワンスン夫人と直接会って、話を聞いているではないか」フォルスト捜査官がジョーンズ捜査官を制した。「私は、本宅へ出入りしていた山本とミーシャの痕跡を拾い出したいのです。そこから、秘密結社の逃亡先が分かるかも知れないのです。その為には、コリンの協力を仰ぎたいのです。主任、お願いします」「彼は必要ない。本宅への捜査は、裁判所から令状を取ってくれば良いだけだ」コリン達の捜査協力を快く思っていないフォルス捜査官は、ジョーンズ捜査官の申し出を却下した。「主任、夫人は、欧州で大手の不動産会社の共同経営者で、我が米国の政財界にコネがあります。彼女はそのコネを使い、司法に手を回して、我々の邪魔をする筈です。私は、捜査協力者であり、民間人でもあるコリンなら、彼女の警戒心を解くことが出来ると信じています」食い下がるジョーンズ捜査官に対して、フォルスト捜査官は冷たく言い放った。「スワンスン夫人が男好きだからと言って、兵法三十六計にある『美人計』を使うのは、FBIの信条に反する」「私はそんなつもりはありません!」ジョーンズ捜査官が猛抗議した。「そうだ!いやらしい方向へ考えるな!」コリンも加勢した。ブライアンは、二人を宥めた。「二人とも落ち着け。兵法以前に、スワンスン夫人は、唯の男好きだ。私にも粉をふっかけてきた。その時は、何とか彼女を酔わせて事なきを得た。いくらコリンがその気が無くとも、狙われる可能性が高い。それに、秘密結社は、元警察OBもしくは現役警察官が入っており、痕跡を消すのはお手の物だ。あの夫人の別邸を調べたから分かるだろ。きっと、本宅にしても、痕跡は消し去っている。仮に捜査をしても、別邸の捜査と同じ結果が出るだけだ。それよりも、他の線を当たるべきだ」「俺も同じ考えだ。あの女から探るよりは、武器やカー用品の流れを追った方が、潜伏先を見つけ出せると思うぞ」今度は、デイビットが発言した。「君まで、どうしてこいつの肩を持つの?」コリンは、デイビットの意見に不満な顔付きをした。「肩を持つ訳じゃない。現実的な事を言っているだけだ」コリンは分かっていた。デイビットの真意は、コリンを夫人の目に触れさせたくないという気持ちである事を。「珍しく、ブライアンとデイビットは私と同意見だ。ジョーンズ捜査官、もう一度街中の監視カメラをチェックするのだ。新たに手に入れた偽造ナンバープレートを付けたバンの行方を追う為だ。君達は、現場に出て、バンの行方を追ってくれ」皆にそう言い渡すと、フォルスト捜査官は捜査本部から退室した。納得がいかないジョーンズ捜査官が、彼の後を追った。「俺達は、部下じゃないのに」コリンはずっとむくれたままだった。「ほっとけ。俺達にはもっと大事な事がある。潜伏先を、奴等よりも早く見付ける事だ」ブライアンがコリンの肩を優しく叩き、落ち着かせた。「それにしても、ジョーンズ捜査官が気になる。コリンに気兼ねなく声を掛けている。事件を解決したい強い気持ちは分かるが」デイビットの嫉妬心が絡んだ疑惑を、コリンは直ぐに払拭した。「何言っているの。彼女、産休明けだよ。家に帰れば、同僚で優しい旦那様と、可愛い男の赤ちゃんが待っているんだから」この言葉に、デイビットとブライアンはびっくりした。ブライアンは、ジョーンズ捜査官とは昨日から言葉を交わしたしたばかりなので、彼女の私的な事は何も知らなかった。デイビットにしても、自分の知らない所で、コリンがFBIと接触していたのかと思い、焦った。「随分とジョーンズ捜査官の私生活を、知っているな。どうやって?」「どうって、捜査会議の後、FBI捜査官達とお茶していて、その時に聞いたんだ」「お茶?俺が捜査本部へ出入り禁止になっている間、隠れてそんなことをしていたのか?」デイビットはドキンとした。「も~、違うったら。捜査本部の奥にコーヒーメーカーがあるでしょ。そこで珈琲を飲みながら、世間話をしただけだってば」コリンは、部屋の隅に置かれている機械を指さした。「主任がいなくなると、FBI捜査官達は、皆フレンドリーだよ。会議が終わって、君が迎えに来てくれるまでの間、色々と話しかけてくれたんだ。結構、自分達の身の上話もしてくれるし。俺もだけど。」コリンの話を聞く内に、彼がFBI捜査官達の身元をサラリと聞き出している事を知り、デイビットとブライアンは、コリンの人を惹き付ける能力に舌を巻いた。それから三日間、捜査が続いたものの、何の進展を見せなかった。コリン達は、バンの行方を追いつつ、FBIよりも早く秘密結社の隠れ家を探し出そうと必死だったが、焦りが募るばかりであった。「口入れ屋は、あれから何か言ってない?」コリンの質問に、ブライアンは渋い顔をした。「残念だが、肝心の口入れ屋の症状は安定せず、まだあれから接触が出来ない状態だ。FBIの聴取も当分延期となっている位だ」動悸が続く口入れ屋を診察した医師は、往診した状況と彼の既往歴から、高血圧と高脂血症によるものだと診断した。薬物療法を受けても、口入れ屋の症状は一向に良くならなかった。真相は、シェインが、これ以上口入れ屋がFBIに情報を漏らさぬ為に、口入れ屋が毎日のむ炭酸飲料に血圧を上げる薬を混入させていたのだ。医師は未だその事に気付かず、精密な検査を行う事をせずに、処方する薬を変えるばかりであった。口入れ屋から会いたいと、ベンジャミン捜査官を通じて密かに連絡が入ったのは、その次の日のことであった。雨は再び降り始めていた。続き
定食屋でご飯を食べていた。自分が座っていたのは、カウンターの脇。おトイレのすぐ側。2個の個室があり、両方ドアが開いていた。気分が悪くなり、両方共閉めたそれから、別の場所のおトイレ(洋式の個室)で用を足していた。終わり、水を流したら、何故か手を拭くタオルも流してしまい、慌てて拾って、外へ出ると、待っている人がいて、しまったと思い、頭を下げてその場を後にした