19990120/DIR EN GREY
1. ゆらめき
2. 残
3. アクロの丘
メジャーデビュー25周年を記念した、33rdシングル。
1999年1月20日に同時発売された3枚のメジャーデビューシングルを再構築。
完全生産限定盤・初回生産限定盤には、1999年のツアー“PSYCHONNECT -mode of “GAUZE”?-”から、尼崎ライブスクエアでの公演から数曲を収録したBlu-ray/DVDが付属。
完全生産限定盤はSEを含む7曲と、初回生産限定盤よりも曲数が多い仕様となっていて、内容ボリュームで選ぶか、価格で選ぶか、はたまたアートワークで選ぶかは悩ましいところです。
メジャーデビューを鮮烈にしたメロディアスナンバーの「ゆらめき」、ズタズタに切り刻むツタツタ発狂系をメジャーシーンにぶち込んだ「残-ZAN-」、実質2つのメロディパターンのみで8分超の大作として成立させたバラード「アクロの丘」。
いずれもが高い話題性を放っており、その後、25年走り続けるためのスタートダッシュを成功させたことは、今更語る必要もないでしょう。
本作において特に語るべき部分は、これまでに見られた歌詞やメロディも含めて凶悪なメタルコア色強めにリビルドする手法とは異なり、オリジナルの要素を意図的に残していること。
インタビュー冊子を読む限り、本人のやりたいサウンドよりもファンに向けて喜ばれるものを、という点に重きを置いていたようで、どうせだったらDir en grey名義でリリースしてほしいと思えるほど、ヴィジュアル系バンドとしての彼らを印象づける内容に仕上がっていました。
「ゆらめき」は、"僕"が"俺"に変わっているなど、25年経った中での変化が見られる一方で、このミドルキーで展開されるメロディを、今の彼らの音で聴くことが出来るとは。
序盤は、sukekiyoのGt.匠さんによるピアノとVo.京さんの歌唱のみでしっとりとスタート。
この段階では大幅なアレンジも覚悟していたのですが、Aメロ終わりから、カタルシスを感じさせるバンドサウンドに突入。
懐かしい疾走感を再現していきます。
オリジナルと比較してどちらが良いか、というのは想い出補正も否定できず、好みの問題にはなってくると思われるものの、純粋なブラッシュアップだったのが嬉しかったですね。
「残」は、既に一度再構築されていることもあり、もっとも現在のDIR EN GREYに近い音色になっているのでは。
映像に収録された「残-ZAN-」とは表記が書き分けられていて、唯一別物になったと捉えられるのかもしれません。
それは、この曲の代名詞でもあったシャウトにも表れていて、技術の向上を浮き彫りにするかの如く、原曲とは雲泥の差の迫力を示しています。
台詞や笑い声など、コテコテバンド特有のギミックは排除傾向。
当時の発狂シャウトを2024年の京さんで聴きたかった、という本音もあるのですが、だからこそ、ひたすらツタツタと刻むドラムと、要所要所でのリフが、そのまま残っているのがたまらない。
ラストのフレーズが、あの形のまま再現されたのには、鳥肌が立ちました。
最後に持って来たのは「アクロの丘」。
これまた正統派の再構築と言え、オーケストラサウンドで壮大さを増強しています。
シンプルにスキルアップが聴きやすさに繋がっているのですが、圧巻だったのが間奏に加えられたCメロ部分。
台詞は排除されるかなとは予想していたとはいえ、追加メロディの冒頭から"想い出よ ようこそ"ですよ。
世界観を崩さないよう配慮したうえ、リスナーの心を見透かしたとばかりに挿入されたこのフレーズ。
メタ的なギミックとなって25年に渡る伏線を回収したかのようなセンチメンタリズムを刺激し、走馬灯のように様々な情景が流れ込んでくる。
他の2曲に比べると地味な存在となっていた「アクロの丘」に花を持たせたというのも、熱いなと。
総合的には「アクロの丘」に尽きるのですが、この演出が効くのは、他の2曲を経たうえに辿り着いていたからこそ。
一般的なシングルデビューであれば、ここまでの深みを噛み締めることはなかったと思われ、すべては3枚同時という規格外のメジャーデビューに尽きるのかな。
たった1枚のシングルでシーンが湧きたつという感覚も久しぶり。
DIR EN GREYは、いや、ヴィジュアル系は、やっぱり格好良いなと再認識させられた1枚です。
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