- 鬼葬/Dir en grey
- ¥3,150
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1. 鬼眼-kigan-
2. ZOMBOID
3. 24個シリンダー
4. FILTH
5. Bottom of the death valley
6. embryo
7. 「深葬」
8. 逆上堪能ケロイドミルク
9. The Domestic Fucker Family
1. undecided
11. 蟲-mushi-
12. 「芯葬」
13. JESSICA
14. 鴉-karasu-
15. ピンクキラー
16. 「神葬」
数多く発表されている彼らの作品の中でも、現時点で一番好きなアルバムは、この「鬼葬」である。
どことなく漂う和風ホラーの雰囲気に、ラウド色が強まったサウンド。
Dir en grey から DIR EN GREY に進化するための方向性を指し示した作品とも言えるのだろう。
初期の彼らは、良くも悪くも黒夢からインスパイアされた部分が強く出ていて、所謂コテコテバンドの王道ど真ん中。
しかし、徐々にラウドやメタルコアの要素を取り入れ出し、昨今のシーンでは当たり前になっているデスヴォイスを多用したラウド系バンドの原形を作り出していきます。
このアルバムと、次の「VULGAR」ぐらいを境に、V系バンドのシャウトが、発狂的な"ギャーギャー"から、デスヴォイスでの"ヴォイヴォイ"に変わったと言っても過言ではないと思っています(この表現は伝わるだろうか)。
本作において注目したいのは、SEで場面の切り替えを調整しながら、激しい曲あり、静かな曲あり、ポップな曲ありと非常にバラエティに富んだ構成。
しかも、それだけの楽曲を揃えながら、背景にあるおどろおどろしさ、不気味さが途切れないことでしょう。
たとえポップな曲であっても、狂気と隣り合わせになっているような、ヒリヒリする感覚があるのですよ。
ヴィジュアル系特有の世界観、そして、ジャンルに縛られないロックへの追及。
その両方を共存させたという点も、ジャンルの存続を決定づけた重要なファクター。
もちろん、今の彼らを知ってしまえば、技術的に物足りない面はあるのかもしれないのだけれど、雰囲気、世界観で惹き込んでしまえば、作り手の勝ちですよね。
どんよりと霧がかかったような、猟奇的な空気。
現代のようでもあり、昔話のようでもある。
インパクトの強い楽曲が多い中でも、特におススメなのは、ミディアムテンポながらも内面的な激しさに圧倒される「Bottom of the death valley」。
また、シングルverでは難解すぎて受け入れられなかった「embryo」が、びっくりするくらいアルバムに溶け込んでいて、改めてその魅力に気付かされました。
猫も杓子もメタルコア、という時代を作っただけに、激しいナンバーは消費されてしまった感もありますが、そこに和のテイストを落とし込み、攻撃的なものではなく、不気味でおぞましいものと認識させる等、アルバム全体のトータルコーディネイトが絶妙。
アルバムの中で通して聴けば、新鮮味が蘇ってくるから不思議なものです。
ちなみに、歌詞カードのギミックも面白い。
英詞での歌詞カードで読みづらいなと思われておいて、CDカバーを外すと日本語の歌詞カードが出てくるという仕組み。
仕掛けに気付くまでに時間がかかって、なんとか読み解いて考察しようとしたリスナーも、僕だけではなかったのでは。