The Insulated World / DIR EN GREY | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

The Insulated World/DIR EN GREY

 

DISC 1

 

1. 軽蔑と始まり

2. Devote My Life

3. 人間を被る

4. Celebrate Empty Howls

5. 詩踏み

6. Rubbish Heap

7. 赫

8. Values of Madness

9. Downfall

10. Followers

11. 谿壑の欲

12. 絶縁体

13. Ranunculus

 

DISC 2

 

1. 鬼眼

2. 腐海 [LIVE]

3. Beautiful Dirt [LIVE]

 

DIR EN GREYの10枚目となるオリジナルアルバム。

映像作品を含む3枚組仕様の完全生産限定盤、特典CDが付属する初回生産限定盤、メインディスクのみの通常盤でのリリースとなります。

 

ここにきて、激しさを前面に押し出してきたような。

アーティスティックで複雑な展開を好むのは相変わらずなのですが、その枠組みの中でも極力シンプルなフレーズを多く使っているように伺えます。

前作「ARCHE」でも贅肉を落としたという印象はあったものの、メロディへの意識が高まった前作に対し、本作はハードコアな方向にスリム化したというイメージ。

楽曲ごとに押し出すものが明確で、10枚目とは思えないほどにインパクト重視な作品に仕上がったのではないかと。

 

象徴するのは、頭の3曲。

ここまで激しいスタートはなかったのでは、と驚かされる「軽蔑と始まり」から、その勢いを決定づける「Devote My Life」、本作の期待値を高めた先行シングル「人間を被る」と、わずか10分の間に強烈な楽曲を次々に展開。

ともすればダサく聴こえてしまいかねない衝動的なリフも数多く見られ、DIR EN GREYを壊すことで、DIR EN GREYを表現するというパラドクスを見事に表現していますね。

その後も、基本的にはシンプルに歯切れよく。

従来の、1曲の中で次々と展開して世界観を表現しきろうとするスタイルではなく、アルバムトータルでひとつの世界観を構築する俯瞰的な視野をもって制作されたということなのかもしれません。

 

もうひとつの象徴は、ずばりラストの「Ranunculus」。

キャッチーさすら感じられる叙情的な歌モノで、今の彼らがこんなにも美しく切なさを帯びた楽曲を歌い上げると、ここまで大きなパワーを放つことができるのか、と感嘆の声が漏れてしまう。

前作までの色を残す長尺の「絶縁体」を挟むので、シンプルに突き進んできた勢いは幾分抑えられているのだけれど、それでもこの突き抜けた白さは、多くのリスナーの心を掴んだのではないでしょうか。

 

付け加えれば、歌詞にも注目したい。

激しい怒りにも似た感情が比較的ストレートに吐露され、「Ranunculus」で幕を閉じるまで、何度も"生きる"ということについて自問自答を繰り返しているのですよ。

彼らの音楽性であれば、歌詞は記号であり、演奏の一部であり、という解釈だってできようものなのに、伴う痛みとともに何度も何度も吐き出される明確なメッセージ。

これがあることによって、「The Insulated World」というアルバムが、サウンド面だけに引き摺られた"シンプル"というワーディングだけでは総括できない、深みのある作品になっていることは間違いありません。

ガツンと頭を殴るようなインパクトと、噛めば噛むほど味わいを増す深み。

これが両立されているのだから、本作をDIR EN GREYの最高傑作として挙げる人も、今後増えてきそうです。

 

なお、初回生産限定盤の特典CDには、「鬼眼」の再録バージョンと、ライブ音源2曲が収録。

もっとぐちゃぐちゃな再構築を想像していましたが、案外、原曲の雰囲気は残っているのかな。

完全生産限定盤の特典CDは、更に「THE DEEPER VILENESS」、「理由」も再録されているうえ、「Ash」のライブ音源も追加されているようで、本編も含めて内容が良かっただけに、少し後悔しています。

 

<過去のDIR EN GREY(Dir en grey)に関するレビュー>

詩踏み

ARCHE
THE UNRAVELING
UROBOROS
鬼葬
ain’t afraid to die
GAUZE
-I’ll-
MISSA