DUM SPIRO SPERO/DIR EN GREY
1. 狂骨の鳴り
2. THE BLOSSOMING BEELZEBUB
3. DIFFERENT SENSE
4. AMON
5 .「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨
6. 獣慾
7. 滴る朦朧
8. LOTUS
9. DIABOLOS
10. 暁
11. DECAYED CROW
12. 激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
13. VANITAS
14. 流転の塔
DIR EN GREYが2011年にリリースした8thアルバム。
タイトルは、ラテン語で"息の続く限り、わたしは希望を持つ"という意味があるようです。
制作期間中に東日本大震災を経験。
タイトルに込められたメッセージは、こういった背景を受けてなのかと思われますが、作風としては、むしろDIR EN GREY史上もっともカオティック。
プログレッシブな展開や、呪術的なメロディが多く用いられており、とても難解な作品と言えるでしょう。
不気味なSE、「狂骨の鳴り」でスタートすると、同じフレーズを用いて関連性を示す「THE BLOSSOMING BEELZEBUB」へ。
いきなり長尺の楽曲が届けられ、気が付けばすっかりディープな世界観の中に引きずり込まれていました。
本作の特徴として、1曲1曲の展開の複雑性が挙げられるのですが、この曲の終盤が、「DIFFERENT SENSE」ともシームレスで繋がっていくため、余計に組曲的な雰囲気を助長していますね。
良い意味で曲の区切りが曖昧で、物凄く濃厚な超大作を耳にしているような感覚。
キャッチー性は皆無ですが、その分、常にゾクゾクしたスリルを味わうことができるのです。
シングル「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」、「LOTUS」、「DIFFERENT SENSE」がバランス良く放り込まれたのもポイント。
様々なパターンのシャウトを駆使し、癖の強い実験的なフレーズをも操りこなすVo.京さんの成長速度には驚かされるばかりですが、その没入っぷりには、聴いているだけでも体力がガリガリ削られる。
聴き慣れた楽曲、相対的に耳にしやすいナンバーが要所要所で流れてくることは、リスナーにとって一息吐くタイミングになっていたのでは。
決してわかりやすくはないにせよ、収録された意義は確実にあったはずですよ。
「獣慾」、「滴る朦朧」、「VANITAS」と、タイプの異なる佳曲もあり、ボリュームは十分。
その中でも、やはりインパクトを残すのは「DIABOLOS」かと。
アルバム全体でドラマティックな風景を描く本作において、10分弱の長尺曲。
1曲の中で、もうひとつの世界を構築してしまった形で、二重、三重もの構造になっているのでは、とその奥行きの広さに感心してしまったほどです。
ここから明確にクロージングに向かっていくこともあり、スイッチを入れる役割もあったのかな。
なお、完全生産限定盤には、リミックス曲等が収録されたボーナスディスクやDVD、アナログ盤などが付属。
聴き込むのにも相応な時間を要する本作ですが、更に楽しみが上乗せされる贅沢さよ。
何度も聴いて、何度も発見して、ようやく理解できる達観した世界観は、10年の時を経ても、色褪せることがありません。
<過去のDIR EN GREY(Dir en grey)に関するレビュー>