PHALARIS/DIR EN GREY
DISC 1
1. Schadenfreude
2. 朧
3. The Perfume of Sins
4. 13
5. 現、忘我を喰らう
6. 落ちた事のある空
7. 盲愛に処す
8. 響
9. Eddie
10. 御伽
11. カムイ
DISC 2
1. mazohyst of decadence
2. ain't afraid to die
「The Insulated World」以来、実に3年9ヶ月ぶり。
通算11枚目となるDIR EN GREYのオリジナルアルバム。
古代ギリシアで設計された拷問器具"ファラリスの雄牛"から着想を得たタイトルやアートワーク。
呼応するように、禍々しさを放った重さ、暗さに包まれているのが、本作の特徴でしょう。
2021年に東京ガーデンシアターで開催された有観客ライブの映像を収録したBlu-rayとボーナスCDが付属する完全生産限定盤、CD2枚組の初回生産限定盤、メインCDのみの通常盤の3種類でのリリース。
「The Insulated World」を締めくくる位置づけで発表されていた「The World of Mercy」は含まず、先行シングルからは「朧」と「落ちた事のある空」が収録されています。
「ARCHE」、「The Insulated World」と、贅肉を削いで、シンプルな衝動性を重視した作品が続いていた彼ら。
本作は、純粋な創作意欲で作り上げた勢いや激しさは継承しつつ、「DUM SPIRO SPERO」以前に見られた構築美とも言えるアート性を上乗せした印象。
またしても最高傑作を更新したな、と感覚的に思わせる圧巻のオーラに包まれているのですよ。
そこはかとなく漂う、死と隣り合わせの世界観。
日本語詞への回帰や、和メロや、歌謡曲的なアプローチが増えたこともあって、例えるならば、「MACABRE」の表現を現在のDIR EN GREYで再解釈したような。
ほぼ10分という長尺曲「Schadenfreude」でスタート。
ライトリスナーを振るい落としかねない構成として受け止められてしまう懸念はありますが、案ずるよりも聴くべし、といったところ。
実際に耳にしてみれば、ドキドキハラハラしながら衝撃に身を委ねる感覚が10分も味わえる、贅沢さへと変わってしまうのです。
もっとも、俯瞰的に見れば、2分台、3分台の楽曲が大半。
歌モノ的な楽曲も含めて目まぐるしく入れ替わり、次々と斬新なサウンドが飛び込んでくる仕様になっていて、奥深くに沈めてから、浮かび上がる暇を与えないほどの耽美なヘヴィネスを叩き込む構成は、確かに暴力的でもあるのですよね。
そのうえで、ラストの「カムイ」が9分超え。
最初と最後に、こんな濃厚なナンバーを持ってこられたら、どっぷり浸って抜け出せなくなるに決まっているじゃないですか。
リード曲は「The Perfume of Sins」。
ここにきて送り込まれる、スピード感に吹っ切れたブラストビートがたまらない。
DIR EN GREYの鉄板となるハードチューンは数多くあれど、こうも邪悪な世界観と刹那的な快感が同居した楽曲はあっただろうか。
「盲愛に処す」や「Eddie」の潔さも効いていて、複雑性の高い「現、忘我を喰らう」やドロドロとした質感の「響」などとのバランスが絶妙で、本作はとにかく構成力が際立ったていたな。
どこを切り取っても格好良いけれど、やっぱりアルバムとして聴きたい、というのがこの「PHALARIS」なのでは。
なお、ボーナスディスクには「mazohyst of decadence」と「ain't afraid to die」を再録。
メジャー初期の代表的な長尺曲だった2曲ですが、耐性はできるもので、もはや6分弱、7分弱という長さでは驚かなくなっていました。
もちろん、だからといって魅力が損なわれるものではなく、特に「ain't afraid to die」のリアレンジが最高。
「MACABRE」的な雰囲気がある、という印象を抱いた中で聴く名バラードは、本作のもうひとつの完結を演出してくれるのです。
通して聴くと、その重厚さに体力を削られるため、相応の覚悟は必要。
それでも、聴き切ったら「Schadenfreude」からリピートしてしまう、そんな1枚。
<過去のDIR EN GREY(Dir en grey)に関するレビュー>