新色の涙 / Kra

新色の涙/Kra

1. 世界征服を企む少女

2. 英才教育

3. 色のない絵画

4. 日常は非日常の中に

5. Tiny town

6. ハザマノマモノ

7. 三竦み

8. 故に今

オリジナルとしては９枚目となるKraのフルアルバム。

22周年を迎え、３年ぶりのアルバムをリリース。

バンドを継続する中で体制の変化はありましたが、コンスタントにリリース活動を行ってきた彼ら。

ユニット編成になった影響もあって間隔はあいたものの、待ちに待った現体制で初のフルレンスとなります。

Kraの音楽に触れるたびに感心するのは、メルヘンロックを軸とした世界観の不変性と、その時代の流行を踏まえたサウンドアプローチの可変性のバランスが絶妙であること。

音楽性を陳腐化させずにお洒落ポップ感が維持されていて、Kraのブランディングを守り続けているのですよね。

もちろん技術的な成長もあるのでしょうが、いつ聴いても最新作が心地良い。

リアルタイムで聴く意味があるバンドだな、と思い知らされますよ。

実際のところ、ミニアルバム以上、フルアルバム未満といったボリューム感。

前作が４曲入りのミニアルバムだったことを踏まえれば、待たされた割りにはコンパクトすぎると言えなくもないのですが、フラットに作品として見れば、ちょうど良いサイズではないかと。

極端に緩急をつけることはせず、楽曲の美味しい部分をしっかり出せるように演出。

これ以上の曲数があると、バラード等でメリハリをつけなくては中だるみも出てしまうと思われ、リード曲である「世界征服を企む少女」で提示した最先端のメルヘンロックのテンションを、そのまま最後まで引き連れていくにはおそらく、いや間違いなく最適解でした。

ダークメルヘンに特化して、尖った部分を見せた「ハザマノマモノ」をはじめ、癖の強い楽曲を織り交ぜることで、飽きさせない工夫もばっちり。

クロージングとなる「故に今」も、シアトリカルな構成になっていて、素直に終わらせないところも気が効いています。

唐突なラストシーンは、次の展開への伏線か。

安定感という言葉で括るだけでは語り切れない、磨きに磨いた2023年のKraサウンドが堪能できる１枚。

＜過去のKraに関するレビュー＞

安眠妨害水族館