ケラビアンナイト / Kra | 安眠妨害水族館

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ケラビアンナイト/Kra
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1. ケラビアンナイト

2. 月の砂漠

3. エキストラキングダム

4. Cab.D

5. 井の中の…アリ?

6. 日曜日


Kraとしては初となるコンセプトアルバム。

「星空列車の汽笛を聞きながら」と2枚同時に発売されました。


ライブコンセプトに合わせて作られたということで、タイトルの通り、アラビアンを意識したようなインストからスタート。

正直なところ、音楽的にアラビアを感じさせるのは、このインストだけだったりするのですが、「月の砂漠」、「エキストラキングダム」など、テーマ・モチーフとしては、確かにアラビアンを意識しているよう。

この2曲で、本作の印象を決めてしまうほどのクオリティがありますね。


疾走感に溢れ、声を張り上げるように力を込める景夕さんの歌い方が印象的な「月の砂漠」は、RPGの世界に迷い込んだと錯覚するほどの異国感、冒険に出たようなワクワク感がある。

「エキストラキングダム」は、一転して、メルヘン色の強いポップチューン。

ジャケットに見られる砂の宮殿が、現実のものとなって、太陽の光が降り注ぐ中、キラキラ輝いているようなイメージです。

デジタル加工でフワフワしたメロディと、ファルセットも交えて浮遊感のあるサビ。

Kraらしさがある中で、意外性もあり、インパクトとしては十分な曲が続きます。


ジャジーで夜のギラギラしたネオンを想起させる「Cab.D」は、さながらセレブが集まる夜のパーティといったところでしょうか。

荒々しく歌うボーカルと、焦燥感を煽る、ホーン系の同期の音が面白い。


「井の中の…アリ?」、「日曜日」は、あまりアラビア風のモチーフは使われておらず、いつもどおりのKra節を聴くことができます。

こういう構成は、求めていたものがしっかりと用意されているという意味では、安定感として評価できるのですが、コンセプトアルバムとしては、どうでしょう。

少なくとも、こういうコンセプトに合わない曲が多くなってくるのであれば、ミニアルバム2枚に分ける必要はなく、Kra渾身のフルアルバムとしてリリースしても違和感はなかった気がします。

前半3曲だって、本質の音楽性とかけ離れているわけでもないし、バラエティとして許容できる範囲。

商業的な理由、という大人の事情が見え隠れして、興味を持っている人がかえって手を出しにくくなっているのはもったいないですね。


とはいえ、この後半2曲も、メルヘンロックというKraが表現したい世界観を、しっかり体現している。

どの作品にも、無難に良さを感じることができるブレなさはさすが。

メジャーに出てからは、やや癖が薄れて、なんてことない大衆音楽になってしまっている曲も増えてきたのは否めませんが、受け入れやすい作品を量産する中で、しっかりとKraらしさを詰め込んでくるあたりは、素直に褒めていい部分かと思います。

「日曜日」は、その集大成として、今でもライブで演奏されている曲。

演奏面からほとばしる激しさこそ、減ってはきたものの、メロディ、キャッチーさに重点を置いて聴く人には、とても聴きやすい作品に仕上がっているのは間違いありません。


<過去のKraに関するレビュー>

Brise