ブレーマー / Kra | 安眠妨害水族館

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ブレーマー/Kra

 

1. GUSTAV

2. It is What It is

3. フクロウ

4. 犬も歩けば

5. 夢駆け行く

6. ダイス

7. 幻想的な音楽隊

8. メッセージ

9. 黒猫と愚者

10. ブレーマー

 

結成17周年を迎えたKraにとって、3年ぶりのリリースとなったフルアルバム。

すべて新曲で構成した全10曲を収録しています。

 

和風に寄せた楽曲であったシングル「通りゃんせ」を踏まえて、アルバム制作を開始したようですが、同じタイミングで、Gt.タイゾさんと、Dr.靖乃さんが卒業を発表。

現在の編成としては最後の作品となることから、フラットにKraらしいアルバムにするべく再構築したのだとか。

 

とはいえ、なかなかどうして実験的な要素も詰め込んであって、必要以上に感傷的ではないのが好印象。

1曲目の「GUSTAV」からサイケデリックなサウンドで意表をついたスタートを切ったと思えば、続く「It is What It is」にはレゲエテイストも織り込んで。

「ダイス」に至っては、大人びたファンクチューンにも挑戦していて、必ずしも王道的な楽曲だけでまとめにいってはいないのですよね。

結果的に、おもちゃ箱のようなジャンルレスな作品に仕上がったので、Kraらしい、という感想に帰結していくのですが、それが決して保守的な意味ではないのです。

 

本作のキーワードとなるのが、"ブレーメンの音楽隊"。

得意とするメルヘンロックのフィールドに落とし込んで、過去の作品とリンクする歌詞を散りばめるアプローチは、長年のキャリアがあるからこそ伏線として効いてくる。

「GUSTAV」にしても、「黒猫と愚者」にしても、「ナロとトルテ」の世界観と地続きだったのか、と。

 

一方で、メンバー4人を音楽隊に見立てたナンバーもあって、主観と客観が巧みに入れ替わるのも興味深い。

率直に言えば、メンバーの脱退に伴ってのメッセージソングとなるのだけれど、"ブレーメンの音楽隊"というテーマに結びつけることで、押しつけがましくなく、グッとくる演出になっているのですよ。

「幻想的な音楽隊」、「メッセージ」のストレートすぎるぐらいにド直球な流れも、メルヘンな世界の中に上手く溶け込んでいました。

 

そして、それらが合わさって押し寄せる「ブレーマー」のインパクト。

集大成と呼ぶには、アヴァンギャルドすぎるかもしれない。

でも、最後の最後までチャレンジを続けた4人が出した結論として、とてもしっくりきた。

脱退が決まった状態でのアルバム制作。

モチベーションの置きどころなどで難しい局面もあったと推測しますが、これを作り上げたのであれば、その壁をきちんと乗り越えたのだな、と勝手に感慨深くなってしまいます。

 

Kraが継続される以上は、次回作にも期待したいですし、そこに向かう力強さは示してくれたのでは。

これまでに提示し続けてきたメルヘンロックを、高いレベルで更新したと言える1枚。

 

<過去のKraに関するレビュー>

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