Inferiority Complex & Narcissism/蘭図
1. Inferiority Complex
2. Phalaenopsis
3. Deep Inside
4. Lolita
5. Mother
6. 神経衰弱
7. 炎舞
8. Narcissism
ex-AvelCainのVo.業-karma-さんによる新バンド、蘭図。
本作は、始動とともにリリースされた1stミニアルバムです。
一言で表現するならば、古き良き名古屋系のサウンド。
メジャー1stの頃の黒夢だったり、インディーズ時代のLaputaだったり、ドーナツレコード勢が台頭する前の名古屋系バンドの系譜なのです。
古き良きを踏襲するスタイルという意味では、AvelCainでもその要素はあったわけですが、制作陣が見つけてきたモチーフに対して、表現者に徹していたのと比較して、蘭図ではバンドとしてコンセプトを打ち立てて、自然体でこちら側に寄ってきている印象。
もっと現代的なアプローチでくるかと思いきや、むしろ時代を逆行するようなサウンドだったので、かえって興味深く聴くことができました。
SEを除くと、全6曲。
作曲者の内訳としては、業さんが1曲、Gt.拓也さんが2曲、Ba.誠さんが3曲。
既にコンポーザーの得意分野が見えつつあるのだけれど、どれも90年代の名古屋系に帰結しているというのが面白いですね。
業さんが担当した「Phalaenopsis」は、マイナーコードで疾走するメロディアスナンバー。
キャッチーなサビ、インパクト重視のギターソロ、タイトにリズムを刻み楽曲を引っ張るリズム。
リード曲らしい、とにかく王道的な1曲に仕上がっています。
拓也さんによる「Deep Inside」、「炎舞」は、激しさを際立てて。
特に、「Phalaenopsis」から繋がる「Deep Inside」のイントロにおけるツタツタしたドラムには、テンションが上がらざるを得ないというもの。
「炎舞」は、構成にも凝って様々な表情を見せていきますが、サビではやはりツタツタツタツタ。
シャウトも旧時代型で、業さんの癖の強い歌声とも相まって、現代シーンにおいては個性を強めていました。
そして、誠さんは「Lolita」、「Mother」、「神経衰弱」という、退廃的なミディアムナンバーを作曲。
もしかすると、彼の楽曲が蘭図の肝となるのかもしれません。
というのも、90年代懐古系のバンドでも、好き好んで手をつけないラインなのではないかと思うのですよ。
この手の楽曲が代表曲となっているバンドは当時としてもあまりなく、誰が聞いても"懐かしいね"とはなりにくいから。
しかし、これが歌モノの半分を占めるという点で、"本物"感が出た。
キラーチューンや飛び道具は用意しつつ、しっかりと世界観を表現する土台を作るというバランス感覚が、話題作りや流行に乗っての源流への回帰ではないことを物語っているのです。
基本的にはバンドサウンドのみでのアレンジとなっているのも、こだわりがうかがえる。
黒で塗りつぶすのではなく、水墨画のように、黒だけで色彩をも表現するという意図が込められたバンド名も、まだまだ引き出しを増やしていこうとする意欲を象徴しているような。
本来であれば、1枚目の音源に注目が集まる音楽性ではないのかもしれないが、業さんの新バンドというネームバリューにより、耳に留まる可能性はグッと引きあがったはず。
スタートダッシュの勢いで、シーンの流行をガラっと変えてしまうぐらいの活躍を期待せずにはいられません。