弱い人たち/マツタケワークス
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弱い人たち
2,160円
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1. エスパー病み
2. 新興宗教マゴコロ
3. ハッとしてグッとこない
4. 犯罪者モブくん
5. 怪人ぐるぐる男奇憚
6. 頭痛ちゃん
7. 神様は君を透明に塗るんだ
キボウ屋本舗としても不定期活動中のVo.マツオカエイジさんを中心に結成されたマツタケワークス。
メンバーチェンジを経て、5人編成にて制作されたミニアルバムです。
エイジさんが過去に在籍したマカロニ、秘密結社コドモA、サンドイッチで120分?などの楽曲を継承。
ライフワークとも言えるピコピコポップスが展開されていきます。
"作詞"のクレジットを"物語"と表現していることからもわかるとおり、それぞれの楽曲には設定が存在。
どこか鬱屈したメンタリティの主人公たちが、非日常的な世界の中の日常を綴っていく、ファンタジーなのだけれどリアリティを感じる内容になっていました。
ゴシック要素を取り入れたダークチューン「新興宗教マゴコロ」や、性急なリズムが焦燥感を誘う「怪人ぐるぐる男奇憚」、透明感のあるミディアムナンバー「神様は君を透明に塗るんだ」と、継承曲についてはバラエティー性を優先。
リメイクとなると話題性も高まるのが常ですが、あえて王道ではなく隙間を埋めてくるような楽曲をセレクトした印象です。
そのうえで、こういうのが彼らの真骨頂なのだろうな、というのが「エスパー病み」や「頭痛ちゃん」をはじめとした少し歪んだセツナポップ。
メンヘラ感と言うべきか、電波系と言うべきか、歌詞の設定はややエキセントリックなのだけれど、その世界線の中での思春期真っ只中という青臭さが切なさを駆り立てているのですよ。
この「頭痛ちゃん」がたまらなくツボで。
音楽性としても王道寄りの構成になっていて、メロディラインがすっと入ってくる。
更にはギミックも凝っていて、女声コーラスのソロパートを持ってくることによって、ストーリーテリングに留まらず、登場人物をより立体的にするという手法も効いていました。
イントロやアウトロに用いられているのは、「コロブチカ」のフレーズ。
こんなに切ない「コロブチカ」、聴いたことがないよ、と。
ここまでくると、ノリが良く盛り上がりそうな「ハッとしてグッとこない」や、病んだ歌詞に対して突き抜けた明るさがある「犯罪者モブくん」にまで、切なさを感じ取れてしまうから面白い。
いくらデジタルサウンド満載でも、いくらファンタジーの世界設定でも、どこか人間臭さのある主人公の思考回路には、不思議と共感してしまう部分が見つけられます。
デジタルの中で、バンドサウンドがしっかりソリッドに主張しているのも、そんなところとリンクしていて味わい深いですね。
音楽性にしても、世界観にしても、マイナス人生オーケストラとの親和性は極めて高い。
ハルさんは、キボウ屋本舗にてエイジさんとのツインボーカルを張っているわけで、相互影響は少なからずあるのでしょう。
満を持して、といった初音源。
待たされただけの価値はある、名曲揃いの作品でした。