Fragments of Time / Mystic Moon | 安眠妨害水族館

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Fragments of Time/Mystic Moon

 

1. SOLITUDE

2. ENDLESS GAME

3. DOOR

38.

 

Mystic Moonの2ndシングル。

2000年にリリースされた作品です。

 

1999年に1stシングル「Solitude」を発表し、すぐに完売されると、翌年1曲追加での2ndプレス盤を発売。

テレビへの露出なども増え、勢いづいたところでドロップされたシングルが本作となるのですが、リード曲はまたも「SOLITUDE」。

やや、ゴリ押し感は強かったでしょうか。

 

ただし、再録されたことでのレベルアップ度合いが半端じゃない。

これを聴いてしまえば、短期間でリテイクに踏み切ったのも納得せざるを得ない出来栄えなのですよ。

イントロのギターのリフから、音の深みが圧倒的に増しており、全体的に音圧も上がった印象。

バンドの顔となるべき代表曲をもうひとつ用意するよりも、既に育ちつつある1曲をじっくり完成させる方法論を選んだと捉えれば、なかなか悪くない選択だったのかもしれません。

Vo.Sayaさんのハイトーンボイスを活かして、切なく疾走する白さを際立たせたナンバー。

ど真ん中を撃ち抜かれたというリスナーも多かったのでは。

 

「ENDLESS GAME」は、ロック色を強めたアッパーチューン。

ディストーションをかけてぐいぐい攻めるギターと、軽快に走り抜けるリズムのコンビネーションにより、ハードさが際立っています。

Sayaさんの中性的な歌声に対して演奏が硬派で男らしいため、部分的にミスマッチ感も出てしまいますが、キメを作っての盛り上がりなど、V系バンドとして押さえるべきところは押さえていましたね。

 

ラストの「DOOR」は、メジャー感のあるメロディアスな楽曲。

もし、メジャーデビューしていたら、こういう楽曲が増えていったのだろうな、と思わせるキャッチーさ、華やかさ。

3曲ともタイプは異なるのだけれど、それぞれが教科書通りとも言えるほど、ソフトヴィジュアル系の王道だったりするのです。

 

なお、Sayaさんの名前と掛けてか、38トラック目にボーナストラックも収録。

ほぼインストで構成されているのだけれど、終盤にワンフレーズだけボーカルが入り、バンドサウンドでのアウトロに移行していきます。

これは、後にシングル付きのVTとしてリリースされる「Moonscape」のCDに収録された「Silhouette」の予告編。

このアレンジもなかなかどうして印象的だし、歌入りの全編が聴きたいという気持ちが煽られる意味では、効果的だったのかと。

 

課題としては、歌い方が一辺倒になりがちで、せっかく収録楽曲のタイプを分けているのに、個々のインパクトを強く残せなかったことか。

ハードな曲は強く荒々しく、切ない曲は弱さが滲み出るぐらいの表現があっても良かったところ、

カップリング曲を、「SOLITUDE」に続く楽曲へとブラッシュアップできていたら、ここまで短命なバンドで終わることもなかったのかもしれないな。

再評価されてもおかしくない、素材の良さが理解できるであろう1枚。

 

<過去のMystic Moonに関するレビュー>

Solitude