星空列車の汽笛を聞きながら / Kra | 安眠妨害水族館

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星空列車の汽笛を聞きながら/Kra

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1. 時の列車
2. 街の灯
3. ダイアリー
4. 行方知れぬ時
5. 天の川逃避行

2006年に発表されたKraのミニアルバム。
「ケラビアンナイト」との同時リリースでした。

"星空列車"をモチーフにKraらしいメルヘンロックを繰り広げる本作。
テーマがテーマだけに、七夕の夜に聴くとロマンティックな世界が広がります。
どこかノスタルジックで、どこか幻想的なサウンドワーク。
「ケラビアンナイト」と比較して、シンプルなロックナンバーを中心に収録しているのだが、そこにプラスアルファを添える演出の上手さは、この頃から抜群でしたね。

その中でもっともキラーチューンであると言えるのはトップバッターである「時の列車」。
「星空列車の汽笛を聞きながら」というタイトルを体現するように、星空が浮かぶ美しさと、これから旅がはじまるという期待と不安。
それらがまざりあって、フワっと浮かび上がるあの感覚を伴っているのだ。
疾走感があってメロディアスという、ヴィジュアル系の王道を意識した構成に、彼ららしさをこれでもかというくらいに落とし込んだのだから、そりゃ、グッとくるのも当然でしょう。

お洒落なサウンドと懐かしいメロディが心をくすぐる「街の灯」、ストレートだからこそ胸をキュンとさせるミディアムチューン「ダイアリー」、ほんのり纏ったダークさがアクセントになっている「行方知れぬ時」・・・
その後に送り込まれる楽曲についても、味があってクオリティが高い。
楽曲構成としては必ずしもドラマティックではないのかもしれないが、"星空列車"の乗客ひとりひとりのエピソードとして捉えるのもよし、主人公を置いて徐々に成長していく物語ととるのもよし、背景を想像することでぐんぐんドラマ性を高めていくのですよ。

そして、最後に待っている「天の川逃避行」。
捻くれた構成で、ダークなのかポップなのか捉えどころがないのですが、哀愁漂うサビのメロディでノックアウトされてしまった。
不思議な世界観には中毒性があるし、単体でのインパクトも十分なのですが、アルバムを総括する役目としても機能。
1曲目でガツンと来た分、尻すぼみになるのでは…という懸念を見事に払拭してくれました。

SEがない分、「ケラビアンナイト」とよりも1曲少ない全5曲。
コストパフォーマンス的には、フルアルバム1枚にまとめてくれよ、と思わないでもないのだが、中古であれば安価で手に入ることもあり、そこは許容できる範囲内か。
少なくとも、「ケラビアンナイト」のような実験性、雑多感はなく、正統派にコンセプトアルバム。
改めて彼らのメロディセンスに触れるにはちょうど良い作品です。

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