フリルの妄想劇 / 弾丸少女 | 安眠妨害水族館

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フリルの妄想劇/弾丸少女

¥1,620
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1. フリルの妄想劇
2. パレット舞踏
3. 露光の新
4. 邪魔をしないでxxx
5. 少女と秘密のクロヲゼット

2007年に結成し、2014年に活動停止となった弾丸少女。
本作は、2009年にリリースされた1stCDです。

ヴィジュアル系演歌歌手TAKASHIとして活動中である、ex-NOi'X、ex-モル・ノヲドのVo.詩那さんが在籍。
2ヵ月連続リリースの第一弾として発表された初音源が、この「フリルの妄想劇」でした。
シングル扱いだったのかミニアルバム扱いだったのか、あまりはっきりとは示されていませんでしたが、インスト曲を含む全5曲を収録して1,500円+消費税。
それなりにお買い得だったのではないかと。

基本的には生音をベースにした骨太なサウンド。
スピード感のある楽曲も多く、文字にするとロック色が強いように思えるのだが、実際に耳にしてみると、もうひとつ違ったニュアンスが重なる。
詩那さんの艶っぽい歌声も手伝って、レトロで非現実的な世界観を纏っているのだ。
同期を使わずに、この雰囲気を構築できるのだから、伊達にキャリアを積んでいないな、と感心してしまいます。

表題曲である「フリルの妄想劇」、「バレット舞踏」と、激しくも弾丸少女ワールドにコーティングされた楽曲でスタートダッシュ。
言ってしまえば、比較的似ている楽曲を並べたといったところで、一歩間違えれば悪手でしかないセレクトであったと思う。
初音源にして、最初の2曲で"楽曲が似通っている"というレッテルを貼られかねないからだ。

しかしながら、ところどころテンポを落としてダークに仕立てることで、ドラマティックな流れになるように演出。
2曲がシリーズもののような一体感を生み出しており、それぞれをバラバラに聴くよりもかえってインパクトを残す結果になっているのが興味深い。
デカダンを感じさせるミディアムナンバー「露光の新」を挟むもとはいえ、「邪魔をしないでxxx」で再びレトロパンクに戻ってくることからも、やりたいことが徹底されているのがうかがえました。
早い段階で次の作品が送り込まれるのがわかっているからこそ、音楽性を固めて印象付けるアプローチに出る覚悟ができたのかも。

最後の「少女と秘密のクロヲゼット」は、インストナンバー。
少し歪んだオルガン風のサウンドが、美しいような不気味なような。
1分程度の楽曲ではあるけれど、メルヘンチックに幕を閉じます。

飛び抜けた強みがあるわけではないのに、見せ方が上手い。
粗削りであり、演奏力は必ずしも高くないのかもしれないが、そのムラも彼らの音楽性の中では個性として効いているとすら感じますよ。
活動期間に対して、残した音源が少なすぎるのがもったいない。
もっとバラエティを広げ、熟成されてからの作品も聴いてみたかったです。