宇宙トラベラーCELL盤 / Kra | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

宇宙トラベラーCELL盤(通常盤)/Kra

¥2,808
Amazon.co.jp

1. 愛の惑星
2. メイデイ
3. エクリプス
4. 流星シグナル
5. 夜の果てで

"宇宙"をテーマにしたミニアルバムを2枚同時リリースしたKra。
本作は、もう1枚の"CORE盤"に対して、"CELL盤"と題されています。

"CORE盤"が、文字通りKraの"核"であり、原点的なもの、本質的なものであるなら、こちらの"細胞"は、ひとつひとつのピース。
意識的にも、無意識的にも、様々な役割を担っている組織であり、主役ではないにしても、Kraを構成している大事な要素であると言えるでしょう。

もともとは1枚のフルアルバムを予定していたというだけあって、テーマは共通しているのだけれど、同期を使わず、ライブ感を強調していた"CORE盤"とは、明らかに異なる雰囲気。
こちらは、実験的なサウンドも取り入れて、バリエーションを広げるアプローチが多く見られ、結果として歌モノが多くなっているように感じます。
例えが適切かどうかは別として、"CORE盤"がシングルベストであれば、"CELL盤"はカップリングベスト。
イメージとしては、そんなところかなぁ。

シンセを使ってアンニュイな感覚を強めた「愛の惑星」でスタートする、世界観重視の様相。
「メイデイ」では、そこに華やかさを加えてメロディアスに疾走するので、このまま加速度を増していくのかと思わせるのですが、キーとなっているのは、続く「エクリプス」か。
不気味というか、寂しげというか、なんとも不思議な手触りがあるピアノのフレーズに、淡々と無感情に歌う景夕さんのボーカルが、じわじわと不安な気持ちを助長させる。
終盤になって、バンドサウンドがガツン!と入ってきて空気が変わるのだけれど、序盤での引き込まれ方が半端じゃないので、その対比によりこちらも感動的になるのですよ。
シングルにはなりえない曲調ではあるが、これは紛れもない名曲でした。

美しい鍵盤の旋律と、軽やかなリズムにより、本当に宇宙旅行に連れて来られた錯覚を起こす「流星シグナル」は、サビでのキャッチーさが爽快。
最後を締めくくる「夜の果てで」は、彼ららしいメルヘンチックな譜割りにニヤリとしてしまう。
本来、アルバムを作るにあたっての潤滑油的なナンバーとして作られた楽曲も多く含まれているのだろうな、とは思うものの、1曲1曲のクオリティが高いKraだけに、決して個の力が弱いわけではありません。

はっきりと個性が分かれた2枚。
強いて言うなら、こちらのほうが"宇宙旅行"という世界観はダイレクトに伝わってくるでしょうか。
直球的なサウンドとライブ感が好きか、変化球的なサウンドと雰囲気モノが好きか。
どちらか一方を選ぶのであれば、そんな判断基準で良いのかと。

もっとも、どちらも聴いてこそ、完結するストーリー。
片方だけでは、もう片方はどんな仕上がりなのだろう、と気になってしまうはず。
ここは、両方手に入れて聴き比べておきたいところです。

<過去のKraに関するレビュー>
宇宙トラベラーCORE盤
次の物語
サタヒナト
Joker’s KINGDOM
雨音はショパンの調べ
ケラビアンナイト
星空列車の汽笛を聞きながら
Brise