Love Missile / TЯicKY | 安眠妨害水族館

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Love Missile/TЯicKY


1. Love bite-instrumental-
2. 腹ペコ乙女
3. 沈没寸前-海賊Ver.-
4. わがまま王子を迎えに来てよ
5. Love Missile
6. 電影ロマンティック
7. 其ノ口・嘘吐キ・社交辞令
8. SpeeD canDy
9. meanness
10. シャンプー☆プロカリテ
11. Dear Princess
12. しあわせになりたい

2009年にリリースされたTЯicKYのデモCD。
12曲で1,800円という、コストパフォーマンスが良い作品となっています。

TЯicKYとしての王道ばかりを収録するのではなく、アルバム全体で1枚の作品となるように意識したとのこと。
自主制作時代のデモ作品であり、まだまだ垢抜けなさはあるのですが、確かにバラエティには富んでいますね。

「腹ペコ乙女」、「沈没寸前」、「わがまま王子を迎えに来てよ」と、打ち込みサウンドにアイドルポップスという彼のベースとなる音楽性を固めて流れを作ると、中盤以降はやりたい放題。
マイナー調でヴィジュアル系的なアプローチを試みた「電影ロマンティック」に、打ち込みメインでありながら、ヘヴィーでダークな雰囲気を持ち合わせる「其ノ口・嘘吐キ・社交辞令」など、今の彼が歌っているのを想像できない楽曲たちが、多数収録されていました。
テクノ風あり、メタル風あり、試行錯誤によって核を形成しようとしているイメージでしょうか。

アイドルポップスのパートについてもそうなのですが、本作は、TЯicKYのルーツを知ることができるという側面もあるのかな。
影響を受けてきたアーティストの音楽性を、影響を受けたままに発表してしまっているきらいはあるのですが、オリジナリティにあまり拘っていない分、予測がつかない作品に仕上がっている。
ひとつのコードだけで構成された「meanness」については、BUCK-TICKやSOFT BALLETからの影響を公言しており、こんな楽曲をトリ様がやっていたのだ、という驚きがあるかもしれません。

全体的には、最後のところで吹っ切ることができておらず、あくまでヴィジュアル系的なサウンドワークの範囲内で、何とかしようとしていたイメージ。
一方で、風呂敷を広げすぎた感もあり、特に中盤以降の散漫な印象は拭いきれず。
本当に過渡期だったのだろうな。
ここからの飛躍を知っていれば微笑ましくも見えるのですが、リアルタイムでは未知数すぎたというのが実感です。

ただし、その中で「シャンプー☆プロカリテ」といった代表曲も生まれているのがポイント。
明るくポップで、ワンフレーズの繰り返しがキャッチーに響く。
このナンバーがあることで、カオスな流れが正常化したというか、"TЯicKYらしさ"に戻ってくる。
過去と未来を繋ぐ、重要な1曲となりました。

なお、nueのギタリストであり、当時ドクターモルモットに在籍していた稲さんや、ex-十神のGt.重さん、アムのメンバーなどがゲスト参加。
プレイヤーの個性がよく出ているアレンジになっているので、そんな視点から切り取っても面白いかも。
この辺り、デモではなく、もう少し高音質で聴きたかったものです。

<過去のTЯicKYに関するレビュー>
おひとりさま
マジで恋する黒魔術48
とびきりコンプレックス