silk tree. / 圭 | 安眠妨害水族館

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silk tree(初回限定盤B)(DVD付)/圭

¥3,780
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1. wailing wall.
2. end of Sunday/black hircine.
3. 17.
4. pitiful emotional picture.
5. barred door.
6. the blueroom.
7. vesperbell.
8. gresham face cream.
9. the primary.
10. ring clef.

BAROQUEのギタリスト、圭さんによるソロアルバム。
2009年の作品です。

当時は、kannivalismが活動休止中。
その間、圭さんはソロプロジェクトを始動させたわけですが、これが、予想以上にアーティスト然としたものだったから驚きました。
ギタリストのソロ、という感覚はあまり受けず、なんというか、もっと俯瞰的に音楽と向き合っているサウンドクリエーターのそれ。
若くしてシーンに登場しただけあって、アンテナも人一倍高かったのだな、と。

ジャンルとしては、エレクトロニカ。
ギターやパーカッションを取り入れて、メロディラインもキャッチーに仕立てられており、バンドからの流れも引き継いではいるのだけれど、より空間を意識した作風となっています。
何層にも重ねられた音の洪水。
だけど、詰まりすぎていてうるさい、といったことはなく、その中でフワフワと浮かび上がるような感覚を呼び覚ます。
まさか、ヴィジュアルシーンでこんな音に出会えるなんて。

シングル「the primary.」、「vesperbell.」もきちんと収録されていますね。
この2曲は、本作の中でも歌メロが立っているというか、圭さんの持つポップさを引き出すナンバー。
雰囲気モノ重視の作品ではありますが、こうやってわかりやすい聴きどころを持ってくることも、フルアルバムでは大事。
緩急をつけていますよね。

その後の「for a fleeting moment.」を聴いているからこそ言えることだが、この段階では、大衆受け路線にも、マニアック路線にも転がれるような両睨みといった印象。
ぐっと世界観を凝縮した「for a fleeting moment.」のほうが、密度としては濃いものに仕上がっているのでしょう。
ただし、いきなりディープな部分を提示されても準備が追い付かないわけで。
BAROQUEやkannivalismからのリスナーを取りこぼさず、次に待っている真髄まで連れていくツールとして、しっかりと機能していたのでは。

もちろん、本作単体でも衝撃的だったのは言うまでもなく。
バンドでも、ソロでも、常に新しい音楽を届けてくれるアーティストであると証明してくれました。
歌唱力に課題はあっても、それを補って上回るほどの作曲センス。
発売からしばらく経ったけれど、未だに新鮮味を帯びている作品です。

<過去の圭に関するレビュー>
for a fleeting moment.