時巡りの列車～Prequel～/MIMIZUQ
1. Tic-Tac
2. 孵化
3. MONSTER GIRL
4. NAMIDA MUSIC FACTORY
5. Child Room
6. 涙の成分
7. 忘縁峡
8. アオイトリ
9. 走れ！走れ！走れ！
10. アイラブユーの世界
"時巡りの列車"をコンセプトにした第二期MIMIZUQとしては初のアルバム作品となる2ndフルアルバム。
Vo.森 翼を迎えて再始動してから、約２年。
遂にリリースとなったフルアルバムは、先行して発表されていたシングルや、YouTubeにてダイジェスト版が公開されていた「涙の成分」の完全版を含んだ全10曲。
ベストアルバムと呼んでもおかしくない、粒の大きな作品と言えるでしょう。
MIMIZUQの音楽を聴いていて感じるのは、叙情的な表現と、叙事的な表現のハイブリッドだな、ということ。
ヴィジュアルとサウンドを融合させて、その世界観を立体的にするというヴィジュアル系の本質を突き詰めている彼ら。
そのコンセプトやストーリーはよく練られていて、物語として楽しむことができるのが大前提になっているのですが、淡々と綴って良しとするのではなく、登場人物たちの感情が、溢れんばかりにパッケージされているのです。
「忘縁峡」から「アオイトリ」にかけて、神懸ったように強い感情を放つ翼さんが印象的ではあるものの、歌声だけでなく、ギターにベース、ドラムから発せられるサウンドにも、心が宿っているかのよう。
先行シングルにて、あえて音数を減らしたり、打ち込みにしたりという実験的、引き算的なアプローチにも挑戦していただけに、ここまでバンドであることを主張した、演奏全体の圧でその場を支配するアルバムに仕上がっていたのは、良い意味で裏切られたと言える、心が躍る誤算でした。
バンドのコンセプトを体現する「NAMIDA MUSIC FACTORY」をはじめ、前半戦はおもちゃ箱から飛び出したようなファンタジックで可愛らしいポップチューンが主軸。
歌モノである「涙の成分」からの後半戦は、叫びにも似た激情で迫る「忘縁峡」、ツインヴォーカルで障害物をなぎ倒す「走れ！走れ！走れ！」など、未知の未来に突き進んでいく力強い楽曲が中心に据えられた構成になっていて、子供から大人へ、というイメージにも繋がりそう。
これだけ濃厚で、まだまだ"Prequel（前日譚）"というのが末恐ろしい。
"時巡りの列車"シリーズとして、更なる冒険が待ち受けているのだとしたら、結末まで聴き続けていきたいものです。
＜過去のMIMIZUQに関するレビュー＞