【iroha】/唯
1. 「ヒカリ」とは
2. 戯言
3. 切り刻んだ日常
4. ミルクティーフロート
5. シャボン
6. Bluff
7. 熱病
umbrellaのVo&Gt.唯さんによる、ソロでは通算3枚目となった2ndミニアルバム。
なんて言えば良いのでしょう。
ソロ作品だからこその自由度と言うべきか、サウンドワークとしては唯さんが持っている引き出しを手を変え品を変え提示していくスタイルで、まるでラジオをザッピングしているような。
深夜帯にはこういう楽曲だよね、という共通項はあるものの、放送局によって個性やこだわりが見られて、総合的に雑多という言葉に丸められていく感覚で、その心地良い雑多さがしっくりくるのです。
ギミック等は、前作【本音】を踏襲していると言え、歌詞カードについてはデザイン重視。
なんなら読まなくていいよ、と言いたげなレタリングもあるのですが、その分、歌詞の内容を補完する短編小説が付属しています。
本来であればとっつきやすい歌詞を読みにくく加工したのは、小説への導線を作り出すため。
内容を知りたければ、まずはこちらを、といったところで、一度読もうと腹を括ってしまえば、あとはのめり込むだけなのですよ。
最初の『「ヒカリ」とは』と「戯言」を聴いた段階では、小説の登場人物や設定にリンクが見られず。
今回はオムニバス形式の短編集といった様相なのかな、と思わせるのですが、徐々に判明する登場人物同士の繋がりに、歌モノが多い曲構成とは裏腹、テンションは右肩上がり。
あえて時系列もバラバラにしているところに、想像力を膨らませる余地を残す展開の巧みさも感じます。
興味深いのは、ファルセットを主体にして浮遊感を出そうとするメロディパートが多いこと。
"ひとりの女性の死"が物語に横たわっている本作。
命の儚さを、朧げで淡い色彩で描いているような印象を受けました。
ただし、描かれているのは、あくまで生きている人間であるというのが、また上手いところ。
要所要所でずっしりとしたバンドサウンドや力強いミドルヴォイスで、"それでも先に進まなければいけない"という生命力を表現していて、それを引き立てるために、やわらかくてやさしい歌声を主軸に構築しているのかな、と。
「戯言」のストーリーが、単体では一番好き。
全体の中で、この曲をどの時系列に位置付けるかはリスナーに委ねられている感もあり、視点人物を誰と置くかについても、いくつか選択肢があるのだが、明確に、停滞から前身への切り替わりが示唆される楽曲。
当てはまり得る誰にとっても、前に進むべき一歩が、今ここにあるのだと解釈してみた。
やはり、考察の余地があるコンセプト作品は、何度聴いてもワクワクするものですね。
なお、先行予約者特典として、「4.19」のデモヴァージョンのダウンロード用URLが別送されました。
こちらも、伸びやかな和メロが美しく、旋律だけで涙腺を刺激してくる名曲の予感。
デモという位置づけですし、弾き語り形式で進行するのかな、と思いきや、中盤からバンドサウンドで圧倒してくるからズルい。
完成版では、まだまだ進化するとのことなので、期待は高まります。
<過去の唯に関するレビュー>