CROSS / LUNA SEA | 安眠妨害水族館

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CROSS/LUNA SEA

 

DISC1

 

1. LUCA

2. PHILIA

3. Closer

4. THE BEYOND

5. You're knocking at my door

6. 宇宙の詩 ~Higher and Higher~

7. anagram

8. 悲壮美

9. Pulse

10. 静寂

11. so tender...

 

DISC2

 

1. BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~

 

 

LUNA SEAにとって、記念碑的な10枚目のオリジナルフルアルバム。

初の試みとして、外部プロデューサーのSteve Lillywhite氏を迎えて制作された作品です。

 

外部プロデューサーを立てた効果として、すぐにわかるのはサウンドプロダクションの進化。

LUNA SEAと言えば、各パートの主張がバチバチとぶつかったスリリングなアンサンブルが特徴だったわけですが、それぞれがソリッドさを保ちつつ、調和を意識したアレンジ、および音作りになっているのですよ。

音の分離もはっきりして、紡がれたフレーズがのびのびと広がっていくようなイメージ。

強引すぎるほどのせめぎ合いに魅力を感じていたリスナーには大人しく聞こえてしまう部分はあるかもしれませんが、ここにきて更にポテンシャルが解放されたカタルシスには、素直に"進化である"と評価したいところでしょう。

 

加えて、何度か通して聴いていくと、構成の妙にも気付くことができます。

曲順の決定にはSteve Lillywhite氏も噛み込んだということですが、長尺曲を中盤に配置し、シングル的な楽曲を固めて勢いを出し、といったLUNA SEA構文的なお約束を脱した印象。

凝り固まったセオリーが一掃されたことで、昔から彼らの作品を聴き込んでいればいるほど新鮮さが損なわれず、次はどんな曲が待っているのだろう、という初めて聴くときのワクワク感が何度も体験できるのです。

 

もちろん、それらが効いてくるには、用意された楽曲たちのクオリティの高さが絶対条件。

ドリーミーなミディアムチューンである「LUCA」から、キャッチーさを保ちながらもプログレッシブに展開する「PHILIA」、正統派すぎてかえって新鮮な王道ビートロックナンバー「Closer」と、既存のLUNA SEA像を守りつつ、それを上回るプラスαを兼ね備えた楽曲たちを次々と畳みかけることで、あっさりとそれをクリアしていくのが彼らが王者たる所以。

シューゲイザー風の轟音ロック「You're knocking at my door」、退廃的でディープな「anagram」、緻密な構成と、表現力の高いヴォーカリゼーションのたまもの「静寂」など、アルバム曲らしいアルバム曲が王道曲を喰うぐらいの勢いで個性を発揮しているのも、作品としての完成度を底上げしていました。

 

雑な表現をすれば、終幕前のパブリックイメージを踏襲した「A WILL」に、賛否両論を巻き起こしながらも実験性を高めた「LUV」で得た手ごたえを還元した、REBOOT後の集大成的なアルバムとなったのではないかと。

しかも、過去から蓄積してきたものだけで勝負するのではなく、新たな目線を加えて、再構築したうえで。

何より、"LUNA SEAは、まだまだ伸びしろがある"という事実を示したことが、現役活動中のバンドである彼らにとっては、大きな意味を持つのかもしれません。

 

なお、ライブアルバム等が付属した会場限定盤、SLAVE限定盤など、様々なタイプが存在。

相当な覚悟がないと全部揃えることは出来なかったと思われますが、いつかライブ盤も聴いてみたいものです。

 

<過去のLUNA SEAに関するレビュー>

LUV

A WILL
THE ONE -crash to create-
PROMISE
LUNA SEA

LUNACY

MOTHER

EDEN
LUNA SEA(インディーズ)