LUNA SEA / LUNA SEA | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

LUNA SEA(DVD付)/LUNA SEA
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1. FATE

2. TIME IS DEAD

3. SANDY TIME

4. BRANCH ROAD

5. SHADE

6. BLUE TRANSPARENCY ~限りなく透明に近いブルー

7. THE SLAIN

8. CHESS

9. MOON

10. PRECIOUS...


今更語る必要もないと思い、これまであえて触れてこなかった伝説的なバンド、LUNA SEA。

ワールドツアー&LUNACYとしての黒服限定無料ワンマンと、話題性のある復活を遂げた彼らの、原点となる1stアルバムです。


本作は、1991年にEXTASY RECORDSからリリースされたフルアルバム。

彼らがインディーズで発表した唯一のCDとなるため、他の作品と比較して、音質的にはかなり粗く、特に、低音においてはスカスカ感がどうしても目立ってしまうのは事実でしょう。

しかしながら、それを補って上回るのが、このアルバムにパッケージされているパッション、攻撃性、刹那的な衝動の数々。

音質の悪さすら、むしろそういった初期衝動の激しさを表現しているようにも思えるぐらいです。

ヴィジュアル系のすべてが、この1枚から始まったといっても過言ではない、名盤中の名盤。


1曲目からラストまで、すべてに共通して言えるのは、尖った刃物で切り付けられたかのような鋭さを感じられること。

ミディアムテンポの楽曲や、バラードの位置づけにあるナンバ―までも、冷たく光るナイフさながらの、張りつめた緊張感を持っているのです。

緩急織り交ぜながら、突き放すようにがなるRYUICHIさんのボーカルは、オーディエンスすら拒絶するような孤高の存在であり、だからこそ魅かれてしまう。

これをカリスマ性と呼ばずして何と呼びましょうか。


ゴシックパンクや、ジャパメタの影響を受けながらも、オリジナルのスタイルを編み出した演奏面も、特筆すべき点。

パワーコードやギターソロにより、テンションをグイグイ上げて行くリードギターと、アルペジオや、印象的なリフを淡々と奏でることで世界観の構築に徹するサイドギターのツインギター構成は、当時としては斬新なものでした。

このアプローチについては、現在のヴィジュアル系ミュージックにおいて、あまりにスタンダードになっているので、もしかすると、現在のファンが振り返って聴いても、ベタだ、王道だ、という感想に留まってしまうのかもしれません。

ただし、それは、20年近く前に彼らが好んだ手法が、未だに受け継がれているという証明でもあるのかと。


他にも、手数の多いドラムに、サビになるとツタツタ刻む激しさの表現、三拍子と四拍子を行き来するマニアックな転調、バイオリンを入れたクラシカルな演出・・・

数えきれないくらいの"原点"が、ここに詰まっているのですよね。

1分ちょっとで終わる「FATE」を聴いただけで、これが名盤だと納得してしまうほどのインパクト。

暗くて、激しくて、荒々しいけど、繊細で・・・

最後に収録された代表曲「PRECIOUS...」まで、息を吐く暇すら与えられない絶対的な存在感。

ところどころに見られるポップセンスも、その後の飛躍の予兆と言えるでしょうか。


なお、本作は、2007年の1日復活に合わせて、リマスタリング+DVD付きという仕様で再発もされています。

今から聴いてみようとするリスナーは、それも考慮に入れておくとよいでしょう。